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獣人の国
244:獣化よりも愛【ディランSIDE】
しおりを挟む耳としっぽが生えた!
耳が生えた時は驚きすぎて、
俺はうろたえ、長兄の元に駆け込んでしまった。
俺を見た長兄も最初は、ぽかん、と
口を開けて俺を見つめていたので、
耳の衝撃はかなりのものだったと思う。
俺の耳は、俺の意志とは関係なく
ぴくぴく動き、そのたびに髪が揺れる。
うっとおしいが、自分では制御できない。
こんなみっともない姿になって、
ユウは俺のことを嫌いにならないだろうか。
それだけが不安で、俺は長兄に泣きついた。
長兄は驚いてはいたが、
さすがに父王の補佐をしているだけあって
すぐさま俺を連れてユウの元に向かった。
ユウから話を聞き、状況を整理して
対策を考えると言ってくれたのだ。
とはいえ長兄がユウと話ている間、
俺はユウのそばで、ただ座るしかできなかった。
気持ち悪い、とか言われたら
落ち込むだけで済むはずがない。
だが、俺の脅えに反して、
ユウの表情は明るく、
どこか俺の姿に肯定的だった。
そして口から「可愛い」と言う言葉が漏れる。
可愛い。
俺が、可愛い。
そんな言葉など、言われたことがない。
死ぬほど辛い気持ちにはならないが、
落ち込むには十分な言葉だ。
守るべき可愛いユウから、
逆に「かわいい」と呟かれるなんて。
ユウは一生懸命、俺に気を遣ってくれたが
なかなか気分は上昇しない。
そうこうしているうちに、
ユウが湯殿に行く話になり、
またマイクに頼ろうとする。
それが嫌で、子どものように
駄々をこねて、俺も一緒に湯に入ることにした。
どうも感情がうまくコントロールできない。
ユウが俺の頭を洗いたいと言うので
言われるがまま洗ってもらったが、
小さな指が俺の頭や耳に
ちょこちょこ触れるのが心地いい。
ユウが耳を触りたいと言うので
頭を触らせたときも思ったが
ユウに頭を撫でられるのは
思った以上に、いい気持ちだ。
うっとりとユウに髪を洗ってもらっていたら
いきなり湯が頭から掛けられた。
驚いて、
「うぉ! テメぇっ」
と怒鳴ってしまったが、
目の前にいたマイクから嫉妬に駆られた
視線で見下ろされる。
「うるさい。
貴様ごときがユウさまに
蕩けるような表情をさせるなど
100万年早い」
「え? ユウ、俺のことを
そんな目で見てたのか!?」
まさか、ユウが俺に見惚れていたなんて。
嬉しすぎて、テンションが一気に上がった。
と、湯殿の床に落ちている水が
何故がパシャパシャと俺の脚に
かかっていることに気が付く。
なんだ?
と思ったが、すぐにユウが俺の髪についた
石鹸を洗い流し始めたので
俺はその違和感をすぐに消し去った。
それからはマイクがやたらと
俺の邪魔をするので
ユウを膝の上に乗せて湯に浸かったり
抱っこして脱衣所へ向かうのに必死で
俺は自分の身体に意識を向けることができなかった。
俺が頭についた耳を思い出したのは、
タオルで髪を拭いていた時だ。
水を吸った耳は、すぐには乾かない。
それにタオルで拭くと、なんだか痒くなるのだ。
必死で耳と格闘していると、
突然、ユウがマイクに抱っこされて寝ると言う。
「ユウ、またコイツと寝るのか?
俺と一緒じゃないのか?」
やっぱり耳が生えた俺ではダメなのか?
急に自信がなくなってきて、
俺はうなだれる。
するとユウはもう一度ソファーに座り
俺を呼んだ。
「ディラン、しっぽ、拭いた上げる」
そう言われて、俺は首を傾げた。
「しっぽ?」
何を言っているんだ?
俺にしっぽなんてあるわけがない。
そう思ったが、耳が生えたのだ。
もしかしたら、尻尾も……?
俺は慌てて、尻に手を当てた。
素肌の腰に巻いたタオルが手に触れ、
タオル以外の……感触が、指に当たる。
まさか!?
「し、しっぽーっ!!」
ぎゅっと掴むと、痛い。
本物だ。
「ディラン、大丈夫。
かわ……かっこいいよ、しっぽ」
また、可愛いと言われた。
俺はうなだれる。
だがユウはそんな俺を見ながらも
後ろ向くように言ってきた。
水に濡れた尻尾を拭くつもりなのだろう。
俺は抵抗する気も失せていて
言われるがまま後ろを向いた。
ユウはソファーに座ったまま
俺の尻尾を拭き始める。
小さな手が俺の尻尾に触れた。
タオルで優しく包み込まれ、
丁寧に水分を取られる。
ユウに尻尾を掴まれる度に、
俺はいいようのない興奮が沸き起こり、
自然と……勃起しはじめた。
ユウに気づかれないように
つい、前かがみになる。
するとさらに尻尾をユウに
押し付けるような仕草になり、
ユウは俺の尻尾をなぞりながら
また、可愛いね、と言う。
俺の尻尾の根元から、
尾の先まで指で丁寧に毛を梳いていく。
たったそれだけの仕草で
射精感が高まる。
尻尾は性感帯になっているのかもしれない。
俺はぷるぷる震えながら、
猛る欲棒を必死で隠す。
「ディラン? 痛かった?」
ようやく拷問のような快感が終わり、
ユウはそんなことを言ったが
俺は首を振るしかできない。
そんな俺に、
マイクがいきなりユウに言った。
「ユウさま、危険です。
この場から離れましょう」
マイクには俺の変化がわかっていたようだ。
「危険? なにが?」
ユウが首を傾げる。
「愛玩動物が、愛玩ではなくなったようです」
マイクの言葉に反発したかったが、
ユウが望むのであれば、
ユウだけの愛玩動物でもいいか、とも思えた。
つまりは、ユウが俺のことを
愛して、愛でるということだろう?
少し気を良くしていると、
マイクがさっさとユウを抱き上げ
ベットに向かう。
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冷たい目に、思わず反論する。
「し、仕方ないだろっ。
ユウが可愛いから」
そう、仕方がないんだ。
「せ、生理現象なのは確かだけど、
俺はユウが大好きで、愛してて、
いつだって抱きたいし」
尻尾を触れられて勃起したのは
確かに生理現象だ。
だが、ユウを抱きたいのは
愛しているからだ!
それを非難されたくはない。
それにマイクだって同じのはずだ。
「お前だってそうだろっ!
ユウと二人っきりで手を繋いで寝たなんて
真面目なふりして、お前ばっかり
いいかっこすんな!」
本当はユウを抱きたい癖に。
本心を隠してユウのそばにいて、
そんなんでユウが喜ぶとでも思ってるのか?
ユウは俺たちに心を許してくれているのに、
俺たちが本心を隠すなんて、
ユウを傷つけていることにならないのか?
そんなお前が、なんでユウのそばにいて
ユウと寝て、俺がはじかれないとダメなんだ?
ぐちゃぐちゃの感情が沸き起こり、
俺は癇癪を起した。
こんなことは初めてだ。
これも獣化のせいなのだろうか。
感情がうまく制御できない。
だから思ったことを
そのままぶちまけた。
「俺はこの国に来てから
ずっと、ずっと我慢してたんだぞっ。
俺だってユウに触れたい。
抱きたい。
ぎゅーってしたい!
お前が嫌なら、そこで見てろっ!」
俺はユウを抱きたい。
肌を重ねて、俺の欲棒でユウを貫きたい。
文句あるか!
俺は強引にユウの両腕を掴むと
ユウの体を持ち上げるようにして
唇を重ねた。
我がままだろうと、癇癪だろうと
なんでもいい。
とにかく俺はユウを感じたい。
俺はその感情のまま動いた。
ただ夢中で。
我慢するとか、
感情を抑えるとか
今までできていたそんな些細なことを
どうすればできていたのか、
俺はわからなくなっていたのだ。
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