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隣国へ

176:愛し子、誘惑する

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 私は露天風呂から戻った時に
取り急ぎにと、マイクにシャツを
羽織らせてもらっていた。

けれど。
ディランは目の前でそれを脱ぐように言う。

「ユウから俺を誘ってくれよ」

ニヤリとしながら言われ、
私は硬直する。

「何でもするんだろ?
俺を誘惑してみてくれ」

って、物凄くハードルが高い!
誘惑って、どうするの?

そういうのは、妖艶な美女がすることであって
愛されたことすらなかった私が
できるわけがない。

「ほら。俺の言うとおりに動けばいいから」

と言われ、私はディランに言われるまま
シャツのボタンに手を掛ける。

最初はおろおろしていたマイクだったが、
私がディランに従っている姿を見て
次第に何も言わず……
じっと息を飲んで私を見つめている。

……何も言わないのも
それはそれで不気味だ。

私はシャツ一枚羽織っただけなので、
下半身は下着一枚だった。

だからシャツを脱いだら
すぐに裸になってしまう。

ボタンをできるだけゆっくり外し、
私はシャツを脱いだ。

二人の視線が、痛い。

「ユウ、そのままでいい……から
そこに座って、俺を、見ろ」

うわずった声で言うディランに従い、
私は折りたたんだ毛布の上に座り
ディランを見る。

毛布は椅子のように折り重なっていたけれど
座ると不安定だ。

「じゃあ、足を広げて」

「え?」

「うん?」

まるで私が拒否するなど
思ってもいない様子でディランが首を傾げる。

「あぁ、まだ下を履いたままだったからか?
そのままでいいぜ」

全然違うけど。
恥ずかしいからできないと言う「え?」
だったんだけど。

いつもならディランの暴走を
すぐに止めてくれるマイクも
何も言わずに私を見ている。

私は思い切って足を左右に広げた。
……恥ずかしい。

「じゃあ、布の上からでいいから
自分で慰めてみてくれ」

「え?」
今度こそ、できないの「え?」だ。

「なんだ?
いつも俺がキモチイイを探して
やってるだろう?

同じように、キモチイイ場所を探して
俺に教えてくれればいい」

ディランは軽く言うけれど。

「で、でも」

できそうにない。
だって。
この体は勇くんのもので……

「自分でちゃんと触ったこと無いから、
で、できないよ」

私の訴えに、ディランも、マイクも
目を見開いた。

驚くよね?
でも、この体になったばかりの頃は
トイレだって一人でできないレベルだったんだよ?

年頃の男の人の体なんて初めて見たし、
勇くんの体を勝手に触るみたいで
罪悪感と言うか、背徳感みたいなのもあって。

お風呂で体を洗うのだって、
どこを触っていいのかわからず、
ドキドキだった。

なんたって、
あまりにもうろたえていたからか、
王子さまなのにカーティスが付きっ切りで
お世話をしてくれたんだから。

「へぇ、じゃあ、余計に見たいな」

ディランは私を見て、愉しそうな顔をした。

「お願い、聞いてくれるんだろ? ユウ」

その声に私は「無理」と言う言葉を飲み込んだ。

ゆっくりと下着の上から樹幹に触れる。
布地があるので比較的すんなりと
触れることができた。

とはいえ、ここからどうすればいいかわからない。

助けを求めてマイクを見るが、
マイクは固まったように動かず……瞳の奥に
熱い熱を秘めたまま私を凝視している。

「ユウ、ほら手を動かして」

言われて布地の上から
手の平で包むように樹幹を握る。

「緊張してるのか? 可愛いな。
じゃあ、胸の突起にも触れてみろよ」

え?
と、拒否しようと口を開いたけれど
ディランの愉しそうな顔に口を閉ざす。

「摘まんで……そう、いい子だ。
押しつぶしてもいいし、
擦ってもいい。

そこもキモチイイになれる場所だろう?」

その声に、私はディランに
胸を吸い付かれたときのことを思い出した。

熱い舌で突起を転がされ、
腰がうずくような……あの感覚を。

ぁぁ、ダメだ。
蜜が……滲む。

樹幹を覆った布が蜜で染みていくのがわかる。

期待している、あの快感を。

言われるままに胸の突起を摘まむ。

けれど、自分では上手く指が動かない。

触って欲しい。
そう思ってディランを見ると、
ディランがにやり、と笑った。

「触れて欲しそうだな、ユウ。
じゃあ次は下着をずらして……足を、
片足だけでいい、脱いでみろ」

言われた通りに、下着をから片足を抜く。

甘い蜜の匂いが、鼻孔をくすぐった。

「じゃあ、もう一度だ。
キモチイイの場所は、どこだ?」

ディランの声に私は胸の突起から
指を離して、樹幹の先端に指を乗せた。

「こ、ここ……」

つーっと、蜜が、先端から零れる。

「そこだけか?」

「それと、こ、ここ、も」
先端から指先で、樹幹のくびれから
裏側をなぞる。

樹幹は徐々に固くなり、
勃ちあがりはじめている。

「じゃあ、擦ってみろよ。
指だけじゃないぞ。
両手で……そうだ、包むようにして
扱いてみろ」

おそるおそる樹幹を軽く掴み、
手を上下に動かした。

すると、いきなり快感が沸き起こる。

私は思わずのけぞった。

「すげぇな。
そんなに気持ちいいのか?」

そんなディランの言葉も理解できない。

キモチイイ、に私は支配される。
まさか自分の指でも、
こんな刺激を得ることができるなんて!

私は樹幹を扱いた。

指は蜜でぐしょぐしょになり、
けれど、私は射精ができず
両足を広げて呻くだけだ。

勇くんの体は少し幼い年齢になっていたので
精通が来てないんじゃないかと思う。

ただ、精液の代わりに
『祝福』の媚薬にもなる甘い蜜は
溢れ出てしまうのだけど。

逆に言えば、この体は際限なくキモチイイになる。
何度も「キモチイイの絶頂」と思う状態になるのに。

その絶頂が来ても、またすぐにキモチイイの波が来るのだ。

男性の体なら、本来であれば
射精とかしたら落ち着くんだと思う。

……たぶん。

でもこの体はそれができないので、
体力的に気を失うまで
私はキモチイイを求めることができるのだ。

いや、求めてしまう、と言った方が良いのかもしれない。

これも『祝福』のうちの1つだとは思うけど、
女神ちゃんの施す『祝福』は、本当に容赦がない。

神様だから人間のことが良くわからないんだろうな。
感情も、体力も、何もかも。

そうでなければ
『抱かれることで力を得て世界を救う』なんて
妙な世界を創るわけがない。

心の中で女神ちゃんを罵ったけど、
私は指の動きを止めることができない。

キモチイイが過ぎて、
私はのけぞり、そのまま背中から毛布の上に倒れ込んでしまう。

けれど、手の動きは止まれなかった。

「すげぇ、いやらしすぎだろう」

ディランの声が聞こえる。
けれど、私は仰向けに転がっていて
ディランの顔は見えない。

「手伝ってやろうか?」

不意に、ディランの気配がして、
夢中で扱いていた手を掴まれる。

と、ディランと視線が絡んだ。

あぁ、こんな時に……。
淫らな感情を持っている時に
視線が合うなんて、最悪だ。

だって……『祝福』が発動してしまう。

咄嗟に顔を背けると、
今度は……じっと私を見つめるマイクと
視線が合った。

どくん、と心臓が鳴る。

いまさら、か。

『淫らな気持ちになる祝福』など
いまさら、あってもなくても、同じだ。

だって……こんなに部屋は熱く、
むせかえるような媚薬効果のある蜜の匂いで
充満しているのだから。



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