上 下
176 / 355
隣国へ

175:愛し子、叱られる

しおりを挟む



 かなりやらかした後、
私はマイクとディランに連れられて
大広間に戻った。

マイクに水を飲ませてもらいながら話を聞くと、
二人は食事をした後、私の姿が見えないことに焦り
探しに出かけてくれたらしい。

まさか露天風呂に入っているとは
思わなかったらしく、
すぐにあの岩のある場所だと
あたりをつけてくれたそうだ。

そこで岩の所に向かっていると、
急に大きな光を感じたらしい。

そこへ、あの辻馬車の御者が現れた。

御者さんはマイクとの約束で
たまたま食料を運んできてくれただけだったけど
森がいつもと違うような気がして
様子を見に来たんだとか。

そしたら森の奥で光が見えた。

御者さんはやっぱり
何かが起こっていると確信して
光の方向へ走っている途中、
マイクとディランに出会ったらしい。

マイクとディランは私がやらかしていると
気が付いていたので、
危険だろうからここにいろと
御者さんを説得して
岩の場所に向かったけれど、
きっと御者さんも心配からか
好奇心からか、あとからついて来てしまったらしい。

二人が岩の場所へと到着すると
岩は無くなり、大きな泉が生まれ、
しかも私が全裸で聖獣と水浴びしてるのだ。

そりゃもう、驚くだろう。

ついでにあとから来た御者さんは
驚いて腰を抜かしていたそうだ。

それでディランが気が付き、
固く口留めをして今日は帰したらしい。

ただし、後日、
きちんと説明をするという約束をして。

ディランにしてみても
私に話を聞いてからできないと
何もできないと判断してくれたようだ。

良かった。
いや、ごめんね。
ほんと、申し訳ない。
私もこんなことになるとは思ってなかったのよ。

と、私は二人に事の経緯を説明する。

一人で露天風呂に出かけた理由は
昼寝をしようと思ったけれど
寝付けなくて、お風呂に入りたくなった、と
言うことにした。

そこからホワイトが呼びに来て……と、
ありのままに伝える。

露天風呂の但し書きについても
考えていたことがそのまま書かれていたこと。

たぶん、女神の泉に浸かったから
『力』が増したのだろうと付け加えて、
女神の水の濃度の話や、
地熱を利用した露天風呂の話なんかもする。

ディランもマイクも、
頷きながら「すごいな」とか
「よくそこまで思いつかれましたね」なんて
言ってくれたけど。

「私は村長さんが守りたかったものを
守りたかっただけなの」

「それを成し遂げるユウさまは
優しく、素晴らしいお方です」なんてマイクは言う。

「俺としてはあまり無茶をして欲しくないが」
ディランはそういうと、
私の髪をわしゃわしゃと撫でた。

「心配したぞ」

「うん。ごめんなさい」

私は素直に謝る。

「そうです、ユウさま。
何も言わずに出かけられるなど……
私がどれほど心を痛めたか」

マイクが私の手を取った。

「どうか、せめて私だけでも
常におそばにおいてください」

「いや、違うだろう。
まず俺がユウのそばにいて
おまえはオマケだ」

「な……っ。何を!
ユウさまのおそばにいるのは
身も心も捧げた私が相応しい」

なんかいい方がやらしい、いや、重い?

「何言ってる。
俺の方がユウと先に会ってるし、
最初から俺とユウは一緒に旅をしていたんだ。
あとからお前が押しかけて来たんだろう」

ディランの冷たい言葉に
マイクは黙る。

いやいやだから、仲良くしよう?

「ふ、二人とも、ごめんね。
喧嘩するぐらい、心配してくれたんだね」

二人の間に入ると
二人の視線が同時に私に向いた。

「そうだ、ユウが一人で出かけるから」

「ええ。ユウさま。
本当に本当に心配致しました」

あ、矛先が私に向いてしまった。

どうしよう。
あやまってるのに、許してもらえそうにない。

それぐらい心配してくれたってことだとは思うけど。

そうだ。
レオが言ってたよね。
私が一人でどっかに行ってしまうかもって
不安になってるって。

レオの姿を見たから
余計にそう思ったのかも。

私ってば、高確率で問答無用で
聖獣に連れ去られてるもんね。

だから私は大きく手を広げて
二人に抱きついた。

「大丈夫。
ちゃんと、二人のそばにいるからね」

伝わった?
一緒にいるよって気持ち。

そっと二人の顔を見上げると、
嬉しそうな顔が見えた。

ぎゅっと、二人に抱きしめられる。

「二人は、あったかいね」

私は、ふふ、って笑う。

「女神ちゃんの泉もあったかくて
気持ちいいと思ったけど、
二人も、あったかい。
安心する」

私の不安も、わがままも、
二人はこうして受け止めてくれる。

絶対に私を拒否しない、ってわかってるから。
だから、安心してなんでも話せるし、
こうして……自分から抱きつくこともできる。

こんなこと、今までしたこと無いのに。
この世界に来て、沢山愛されて。

私は幼児返りをしてるんじゃないかって
たまに思う。

甘えたくなったり、抱きつきたくなったり。
拗ねたり、わがままを言ってみたり。

そしてこうして受け止めて貰えて、
私は嬉しくなるのだ。

すりすりと二人にすり寄ると、
ディランが私の頬に触れた。

「なぁ、ユウ。
お願い、してもいいか?」

「お願い? いいけど?」
して欲しいこと言ってね、ってやつかな。

「貴様、こんな時に……」

マイクが私の体を引き寄せる。

「何言ってる、お前だって
ユウにお願いしたいだろう?」

「そ、それは……」

マイクがうろたえた。

「マイク?
マイクもなにかお願いがあるの?
何でも言って」

頑張る!と宣言したのだけれど。
私は数分後、物凄く後悔した。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。

ふまさ
恋愛
「……き、きみのこと、嫌いになったわけじゃないんだ」  オーブリーが申し訳なさそうに切り出すと、待ってましたと言わんばかりに、マルヴィナが言葉を繋ぎはじめた。 「オーブリー様は、決してミラベル様を嫌っているわけではありません。それだけは、誤解なきよう」  ミラベルが、当然のように頭に大量の疑問符を浮かべる。けれど、ミラベルが待ったをかける暇を与えず、オーブリーが勢いのまま、続ける。 「そう、そうなんだ。だから、きみとの婚約を解消する気はないし、結婚する意思は変わらない。ただ、その……」 「……婚約を解消? なにを言っているの?」 「いや、だから。婚約を解消する気はなくて……っ」  オーブリーは一呼吸置いてから、意を決したように、マルヴィナの肩を抱き寄せた。 「子爵令嬢のマルヴィナ嬢を、あ、愛人としてぼくの傍に置くことを許してほしい」  ミラベルが愕然としたように、目を見開く。なんの冗談。口にしたいのに、声が出なかった。

ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?

望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。 ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。 転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを―― そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。 その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。 ――そして、セイフィーラは見てしまった。 目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を―― ※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。 ※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)

【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 前話 【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

【R18】溺愛される公爵令嬢は鈍すぎて王子の腹黒に気づかない

かぐや
恋愛
公爵令嬢シャルロットは、まだデビューしていないにも関わらず社交界で噂になる程美しいと評判の娘であった。それは子供の頃からで、本人にはその自覚は全く無いうえ、純真過ぎて幾度も簡単に拐われかけていた。幼少期からの婚約者である幼なじみのマリウス王子を始め、周りの者が シャルロットを護る為いろいろと奮闘する。そんなお話になる予定です。溺愛系えろラブコメです。 女性が少なく子を増やす為、性に寛容で一妻多夫など婚姻の形は多様。女性大事の世界で、体も中身もかなり早熟の為13歳でも16.7歳くらいの感じで、主人公以外の女子がイケイケです。全くもってえっちでけしからん世界です。 設定ゆるいです。 出来るだけ深く考えず気軽〜に読んで頂けたら助かります。コメディなんです。 ちょいR18には※を付けます。 本番R18には☆つけます。 ※直接的な表現や、ちょこっとお下品な時もあります。あとガッツリ近親相姦や、複数プレイがあります。この世界では家族でも親以外は結婚も何でもありなのです。ツッコミ禁止でお願いします。 苦手な方はお戻りください。 基本、溺愛えろコメディなので主人公が辛い事はしません。

契約妻は御曹司に溺愛フラグを立てられました

綾瀬麻結
恋愛
役員秘書を務める萌衣は、社内外で才色兼備と言われるものの、実は恋愛がよく分からないというコンプレックスを持っている。このまま結婚もできないのでは……ともやもやしていたところ、なんと取引先の御曹司である玖生に、契約結婚を持ち掛けられた。どうにかして、親のすすめる政略結婚を避けたいらしい。こんなチャンスはもうないかもしれない――そう思った萌衣は、その申し出を受けることに。そうして始まった二人の新婚生活は、お互いに干渉し過ぎず、想像以上に快適! このまま穏やかに暮らしていければと思っていたら、突然玖生に夫婦の夜の営みを求められて……!?

仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

処理中です...