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新しい世界

82:誤解と後悔

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 私は広い大きなベットで、
ディランとマイクに両側から
抱きしめられるように眠っていた。

一瞬、状況が分からずにいたが、
昨夜のことを思いだし、
うろた
やってしまった…。

とうとう、3人でしまった。

どうしよう。
きっとなかったことにはできない…よね?

昨夜は疲れていたし、
お酒も飲んだ…そう、酔っていたんだ。

と言い訳しても
やってしまったことは消えない。

2人の腕が私の腰や腕を掴んでいて
私は身動きもできず、
頭を悩ませてしまう。

「ユウさま?」

右隣で寝ていたマイクが目を覚ました。

掴んでいた私の腕を離し、
おはようございます、と言う。

その様子がいつも通りだったので、
もしかしてマイクも酔っていて
昨夜のことは忘れてる?

って期待した。

けれど、マイクはそっとベットから下りると
私の身体を抱き上げて、
そのまま湯殿に連れて行く。

「昨夜のことがありますから
まずは湯あみを致しましょう」

って思えてるじゃん!

ちらりとベットを見たが、
ディランはまだ眠っている。

どうする?
なんて言う?

迷っているうちに
マイクは私を湯殿に連れて行くと
脱衣所で私の服を脱がした。

そのまま自分の服も脱ぎ、
私の身体に湯を掛けてくれる。

いつも通りの流れだ。

自然な様子で、
私が一人、慌てているのが
おかしいのではないかと思えてくる。

マイクは丁寧に私の身体を洗ってくれた。

けれど、淫靡な空気はない。

「ユウさま」

髪を洗ってもらっていると
マイクが私に声を掛けた。

私は目を閉じていて、
マイクの表情は見えない。

「私はユウさまにすべてを捧げております。
心も、命も…身体も。
私はユウさまの為だけに存在するもの。

私に気を遣う必要はありません。
いかようにも…お使いください」

ドキっとした。
それって…昨夜のこと…だよね?

つまり、私が誰かに抱かれたいと思ったら
マイクを誘えってこと?

髪にお湯が掛けられる。

「では、私はお着換えの用意をしておきます」

湯に浸かるようにと私は言われ、
マイクは湯殿から出て行った。

「……え?」

ビックリした。
そんなことを言われるとは思っていなかったから。

ぽろ、っと涙が出た。

そのことにも、驚いた。

物凄く…胸が苦しくなって、
その理由を考えたくなくて。

私は湯に浸かった。

身体が…温まってくる。

それはディランの腕の中や
マイクの腕の中と同じぐらい
あたたかだった。

はは、て乾いた声が出て。

マイクは私を義務で抱いたのかと、
ふいに思った。

私は心のどこかで、
この世界の皆は私を愛してくれると
思っていた。

実際、今まで私と出会った人たちは
みんな優しくて、私を大好きだと言ってくれた。

私を抱いた人たちは
皆、私を愛してくれた。

それが当たり前だと思っていたのだ。

けれど。
マイクは違ったんだ。

マイクは女神ちゃんを敬愛している。
だから私を大切にしてくれている。
それだけだ。

昨夜は『祝福』のせいもあったけど、
マイクは私が性欲を発散するために
マイクやディランに抱かれたと
思っているのだろう。

だから、私が望むなら
マイクの身体を好きに使え、と
そう言ったのだ。

なんだ、って思う。

別に私は、誰でもいいから
抱かれたかったわけではない。

『器』に愛を溜めなければならないけれど、
嫌な相手と無理やり肌を重ねるつもりはない。

マイクの言いぐさに怒りが沸いて。

けれど、愛されたとはいえ
今まで何人もの人に抱かれてきた私を
客観的に見ればそういう風に見えるのかと
落ち込んで。

そして…私は。
少なからず好意を持ち、
心を開いていたマイクに、

性欲を持て余し、身近な相手と
肌を重ねるような人間だと
思われたことに……

信頼関係を築いていたと
思っていたマイクに、
そのように言われ、
心が傷ついたことに、気が付いた。

元の世界では敵意や悪意など
日常茶飯事だった。

施設の子だと蔑まれたことなど
何度だってある。

施設の弟妹たちを背中にかばい、
理不尽な差別に、立ち向かったことだってある。

けれど。

自分はこの世界に来て、
愛を知ってしまった。

甘やかされ、大切にされることを
知ってしまった。

だから…
こんなにも、弱くなってしまったのだ。

今まで親しい人などいなかったから、
その人に誤解されたと思うことが、
理解してもらえないと言うことが、
こんなに辛いことだとは思わなかった。

あとから、あとから、涙が出る。

私が甘え過ぎたから、
ダメだったのだろうか。

ちゃんと適度な距離を
保って付き合えば良かったのか。

けれど、人間関係を学んでこなかった私には
がわからない。

べしょべしょと泣いていると、
急に扉が開き、裸のディランが入って来た。

私は慌ててお湯で顔を洗う。

ディランは、おはよう、と言いながら
身体にお湯を掛ける。

そしてすぐに私の傍に来ると、
湯に浸かりながら私を抱き上げた。

「ディラン?」

湯に浸かったディランの膝に乗せられる。

「どうした?
マイクにいじめられたか?」

私の顔を覗き込み、ディランは
私の目じりを擦った。

私は首を横に振る。

「じゃあ、昨日のことを気にしてんのか?」

私は返事もせずに、
ディランの首に腕を回してしがみついた。

「そっか。
まぁ…あれだ。
俺も悪かったよ、ムキになっちまった」

ディランが私の髪を撫でる。

「ムキに?」

「あぁ、マイクにユウを
取られると思って、けん制した」

だから、強引にマイクの前で
コトを始めてしまったとディランは言う。

そんなこと、必要ないのに。

マイクは私を愛していない。

べしょーっとまた涙が出た。

「ユウ? 大丈夫か?
ごめんな」

って言われたけど。

この涙はディランのせいではないのだ。

でも、言えない。

私は湯に浸かったまま、
涙が出なくなるまで
ディランにしがみついていた。

ディランはそんな私を受け止め、
私が落ち着くままで、
優しく背中や髪を撫で続けてくれたのだ。






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