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新しい世界

61:もう一度……?

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時間も遅かったし、
話もできて私は満足していた。

だから、私はもう寝よう、って
ディランに声を掛けた。

ディランも頷いて、
私を抱っこする。

もう、私に触れるのに
ためらう仕草はなかった。

さっきの寝室まで
ディランは連れて行ってくれた。

まだ魔石で部屋の明かりは
ついていたけれど。

魔力が減っているからか
薄暗かった。

ディランは私を
ベットに下す。

「明かりはどうする?
消すか?」

って聞かれて、
そのままでいい、って答えた。

ちょっとだけ古い館だから
幽霊…はでないかも、だけど。

真っ暗なのは
遠慮したかった。

「そうか、じゃあ
このままでいいな」

ってディラン言うと、
私のベットに入ってきた。

……入ってきた?

ん?

ディランは私を抱き込む。

んんん?

そりゃ、今まで野宿とかで
一緒に抱き合って寝たことあるけど。

これ、ちょっとおかしくない?

距離感が掴めない。
というか、やっぱりおかしい。

だってディランは
私を抱きしめて、頬にキスしたり
髪を撫でたりしてくる。

今まで、
こんな甘い仕草、
したことあった?

「あ、あの、ディラン?」

何してるの?

って聞いたら、唇が重なった。

「あんなにユウを抱いたのに。
またヤりたくなってきた」

って、どんなに絶倫なの!?

いくら女神ちゃんの
『祝福』があったからといって、
やりすぎなんじゃないかと思う。

絶倫って噂があった
金聖騎士団の団長だって、
私を抱きつぶしたけど、
こんなに絶倫ではなかった。

正直【器】は満タンだし、
眠たいし。

もう寝たい。

でも、ディランは
私の服の中に指を潜り込ませてくる。

「ディラン、眠たい」

って言ったけど。

「寝てていいぞ」って言われる。

いや、無理だし。

「触られてたら眠れないよ」

「大丈夫。
眠たかったら寝れるぞ」

って、もしかして
ディランは脳筋系なのか。


「ユウは寝てていいぞ。
俺はユウを触りながら寝るから」

いや、だからね。
って思ったけど、もういいや。

眠たい。

私はウトウトしてしまう。

だって、ディランの体温は心地良い。

キモチイイ…

って、ゆるゆる思考を
沈ませていったら…

気持ちイイって思う波が
大きくなったり、小さくなったり。

私の意識の底から
快感を引きずりだそうとする。

眠たいのに…キモチイイ。

そんなことを思いながら
私は目を開けた。

ディランが私の足の間に挟まっている。

「え?」

何?

どうなってんの?

状況が良くつかめない。

「ディラン…?」

「お、起きたか?」

って爽やかに言われたけれど。

部屋は薄暗くて、
私は…まだベットの上にいる。

ディランを見て、
私は……固まった。

ディランが私の下着を脱がし、
足の付け根を舐めていたのだ。

「さっき、ユウは
イってなかっただろ?

だから、気持ち良くしてやろうと思って」

……なんで。
だから、なんでこんな
タイミングでそういうことを思うわけ?

しかも、私は寝てるのに。

何をどう言おうか悩んでいるうちに
またディランは私の付け根を舐めた。

「ちょ…っ!」

「大丈夫。
気持ちイイだろ?」

そうだけど。
そうじゃなくて。

「ユウは…まだ
精通してないんだな」

ディランは私の幹を
扱きながら言う。

「だから、うまく
射精できなかったんだ。
こんなに…蜜は溢れ出るのに」

ぐちゅぐちゅと音がする。

『祝福』の蜜が
きっと零れてきてるんだ。

「だから俺が、
ユウをちゃんと導いてやるよ」

物凄く嬉しそうな声で言われて、
私は絶句した。

こういうときは、
何を言えばいいんだろう?

これは愛情から?

親切心から言ってること?

私は当たり前だけど
男性じゃなかったから、

こういう時、友達とか
親子だとか兄弟とかで
どういう話をするのか、
わからない。

女性の時は…
生理とかの時は、
どうだったかな。

施設の女の先生に
話をしたと思う。

生理用品とか、
施設のお金で買ってもらう
品物が増えてしまったから
そういうのが気になったんだった。

なんて何の役にも立たない
過去のことを思い出した。

生理もそうだけど
精通って、勝手になるものだから
わざわざ、導かなくても
いいのでは…?

そう思って、
大丈夫、って言ったのに。

逆にディランは
大丈夫だ、って笑った。

……何が?

わからないまま…
ディランは私の幹を口に入れた。

おしゃべりは終わりだって
言わんばかりに、
幹を舐め、先端を吸い、
先ほどの行為と同じように
私のことなど関係ないように
私を快感の渦に巻きこもうとする。

私はディランの肩を
必死で叩いた。

「ディランっ!」

ディランが顔を上げた。

「顔…見せて?」

ディランが不思議そうな顔をする。

「私の顔も、見て?
一人でどんどん、進めていかないで」

怖くなるから。

そう言ったら。
ディランの目が見開いた。

「そっか……ごめん」

へにょって、
ディランの目が下がった。

ディランの腕を引っ張ったら、
ディランは私に視線を合わせてくれた。

「こうして、一緒に居てくれたら
それだけで、私は嬉しいの」

抱き合うだけが、
【愛】じゃないって、
私はもう知ってるから。

「無理にキモチイイに
ならなくたって、構わない」

手を繋いで、
笑うだけで満たされるって
教えてもらったから。

「ディランが私を抱きたいなら…
仕方ないけど。

でも、そうじゃないなら
こんなこと…しなくていい」

そんなことよりも、
胸に顔を擦りつけて。

あったかい腕の中で
眠りたい。

その方が安心するんだもの。

今はキモチイイより、甘えたい。

「そ…うか。ごめん。
俺、ユウが喜ぶと思って」

「うん」

ディランも人間関係で躓くタイプだって、
なんとなく思った。

でも、そう思って。

ディランは『生まれたて』なんだと
ふと気がついた。

女神ちゃんが創ったばかりの
国の人なんだから。

ディランの記憶は、
女神ちゃんが作り上げたもの。

人間関係も…本で読んだ知識と
同じで、実践するのは
きっと初めてなんだ。

だから、他人のことが
置き去りになってしまったり。

自分の考えだけで動いてしまう。

なんだ、そうか。

私も随分と
コミュニケーションが
できない人だと思っていたけど。

そんな私を上回るレベルの
コミュニケーション不足の人がいた。

こんなに大きな体をしてるのに。
私よりも、ずっと大人なのに。

でも、生まれたばかりなんだ。

ディランもまた、
女神ちゃんの暴走の被害者だ。

私はディランを抱きしめた。

「ユウ?」

さすがに、ディランの国が
生まれたてだってことは言っていない。

言えるわけがない。

だから、女神ちゃんに
迷惑を掛けられている同士だね。
なんて言えないけれど。

私の中に、確実に
ディランへの連帯感というか
他の人には感じない愛情が芽生えた。

「ディラン、沢山おしゃべりしよう?
何を考えてるか、教えて?
私の話も聞いて欲しい」

「……わかった」

「それでね、今は私は…
このまま、ディランと眠りたい」

「そうか」

「ディランは? やっぱり、したい?」

って聞いたら。
ディランは顔をゆがめた。

しょうがない、って
思ってしまう。

いつも私はこうやって
『しょうがない』って受け入れてる気がする。

でも、やっぱり。
しょうがない、んだ。

「じゃあ、ディラン。
ゆっくり…してね?」

って言ったら。

ディランはパっと嬉しそうな顔をして
私にしがみついてきた。

わんこみたいだ。

唇が重なって。
頬をペロペロと舐められる。

しっぽがあったら、
ブンブンと振っている気がする。

「しょうがないなー」

私は、笑った。

しょうがない。
だって私は。

ディランのことも。
女神ちゃんのことも。

暴走気味なところも含めて
大好きなんだから。

だからこのまま…
夜通し愛されるなんて
この時はわからなかったけど。

ディランを受け入れたことに
後悔はしていない。

……たぶん。






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