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新しい出会い

1:プロローグ

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私は元の世界…日本では、孤児だった。

生まれてすぐ、乳児院の前に捨てられて
そこからずっと施設で育った。


親から捨てられるような子だから
誰にも愛されないと思っていて。


人とかかわることを極力避け、
どうせ結婚なんてできないと思っていたから
昼は工場で働き、夜は居酒屋でバイトをして。


お金を溜めることだけが趣味のような生活をしていた。

そんな私にも、唯一、大切な子がいた。

私より年下の、勇くん。


勇くんは幼いころ、母に虐待され
義理の父親にも、性的虐待を
受けそうになったらしい。


そんな勇くんは、確かに綺麗な顔をしていた。


でも、勇くんはそんな過去から、
私以上に他人を拒絶して、
世間の人たちを怖がっていた。


同じ施設で育ち、私たちは…
たぶん、共依存のような関係だった。


互いが互いを必要とすることで、
私たちは、なんとか生きてきた。


「大好き」って言い合って。

男女の関係ではなかったけれど、
互いに『特別』であることが嬉しかった。


でも。
勇くんが学校を卒業し、
社会人になった頃。


私が忙しくて、会えない間に、
勇くんは…自殺をしてしまった。


勇くんは『他人との関係』を
うまく築くのができなかったのだと思う。


私とふたりだけの世界で生きていたから。


私は自殺をしてしまった勇くんの声に導かれ、
女神に出会った。


その女神は、新しい世界を創ったけど
うまく繁栄しないから、手伝って欲しいと言う。


本来は勇くんに手伝いを依頼したそうだが
勇くんが泣いて嫌がり、
私を呼んだそうだ。


この異世界とも呼べる
女神が創った世界に来るにあたり、
私と勇くんは魂と身体を入れかえた。


死んでしまって魂になった
勇くんならともかく、
生きている私を別の世界に
移すのは無理だったみたい。


そんなわけで、
私がこの世界にいる間は、

勇くんの魂が私の身体の中に入って
私として生活をしてくれて、
私は勇くんとしてこの世界で頑張る。


そしたら、世界を救った後は、
私はこのままこの世界にいてもいいし、
元の世界で生活をしてもいい。

と言う話になった。


勇くんは私の身体と
生活を守ってくれて、

もし私が元の世界に
戻らなかったら
勇くんはそのまま私として
生きていけるし、

私が元の世界に戻ったら、
勇くんの魂は輪廻転生の輪に入れるらしい。


勇くんは自殺をしてしまったから、
このままだと…私が女神が
創った世界を救わないと、
魂は輪廻の輪に入れないらしいのだ。


私は勇くんが自殺をしてしまった
ショックもあったし、

私がもっと勇くんを
気にかけていれば!
と後悔していたこともあり、
異世界に行くことを決めた。


そして私は
勇くんのためにも世界を救うぞ!
と決意をしたのだけれど。


この世界に来てみたら、
なんと、女の人がいなかった。

そう、BLの世界だったのだ。


なるほど。
勇くんの身体でないと
無理なわけだ。


女神は……地球にいる
先輩女神の真似をして、
地球で見たゲームの世界を
ベースにしてこの世界を創ったらしい。


それは別に構わないけど、
ベースにしたゲームと言うのが、
成人向けBLゲームの『激エロの金字塔』だった。

……泣く。


そうして私は、
美形聖騎士団の6人に愛され、
全員と……成人向けの…。


声に出しては言えないあんなことや、
こんなことをして、
世界を救った。

のに。


女神は…あのエロの女神は、
またしょうこりもなく、
この世界に新しい国を作ってしまった。


この世界の女神はいきあたりばったりで、
思いついたことを、
どんどん行動してしまう。


この世界も最初は

『可愛い女の子が聖女になって
美形に愛される世界』

にしようと思って創ったらしい。


けれども

『やっぱり女の子より可愛い男の子が
美形に愛される世界の方がいい』


と思い直し、
途中で世界の設定を変えてしまった。


そんなわけで、
しわ寄せがあちこちで起こって、
私は女神に激怒り。


女神を女神ちゃんと呼び、
ホウレンソウ(報告、連絡、相談)を
徹底するよう指導して、
『女神の愛し子』ならぬ
『女神の友達』の地位をゲットした。


だが、女神ちゃんの
いきあたりばったりは
直らなかった。


私はまだ、
この国でせねばならないことがあるのに、
女神ちゃんは私に相談もなく
新しい国を作り、


それを助けて欲しいと
言ってきたのだ。


……頭が痛い。



そして私は、突然、
聖獣に拉致された。


愛してくれた皆と
別れの挨拶もきちんとできず。


準備も何もできずに、
着の身着のまま、
突然の拉致だった。


ふざけんなーっ!
って怒鳴るぐらい、許して欲しい。

ほんとに。






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