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新しい出会い
10:聖女設定はご遠慮します
しおりを挟むいきなり『聖女』と言う
言葉がでてきて私の頭はフリーズした。
ディランがいう『セイジョ』は
たぶん…というか、絶対に『聖女』だ。
女神ちゃんがやりたいと言っていた
聖女の話だ。
でも、この世界は男性しかいないはず。
女神ちゃんは、
『可愛い幼女が聖女になって
イケメンに溺愛されまくる』
というのをやりたがっていたが、
そもそもこの世界では無理だ。
だって幼女、というか
女性ががいない世界なんだから。
設定だけ作っても、世界はもう
変えられないし、無理なんだから、
やたらと設定を変更するとか
世界の路線を変えるのは
本当に、本当にやめて欲しい。
誰がしりぬぐいをすると
思ってるんだ?
って、まてよ。
私が…しりぬぐいをするのか?
私が?
セイジョ?
ははは。
いやー、ないない。
聖女って。
私、もう22歳だし、
幼女って年でもないでしょ。
幼女っていうからには
あれでしょ?
3歳ぐらいの女の子ってことでしょ?
いくら勇くんの体が
幼く見えるとはいえ、ないない。
「おい」
私が天井を見上げて固まっていたからか
ディランが心配そうな顔で
私を見ている。
ごめん、ごめん。
現実逃避してたわー。
「えっと、話の途中でごめんなさい。
いきなり難しい言葉がでてきてビックリして。
えっと、そのセイジョってなんですか?」
一応、聞いておく。
女神ちゃんの聖女設定の話だと思うけど
勘違いかもしれないし。
ディランは聞き返されるとは
思ってもいなかったようで、
しぶい顔をした。
「あ。
言いたくないならいいです。
聞かなかったことにします」
知らない方が良いこともある。
「いや…いい。
聞いてくれ。
ユウはまだ幼い。
自覚がないだけかもしれんしな」
自覚はある。
あるよーっ!
言えないけど。
聞きたくないし、言いたくないけど。
でも仕方ない。
ディランの話を聞いて、
ほっとけないようなら手助けしよう。
私も助けてもらったし。
急ぐ必要がないなら、
この国の『聖樹』をめぐる旅にも
一緒に来てもらおう。
そしたら私も安心だしね。
私は起き上がり、ベットから下りた。
喉も乾いたし、何か飲みたい。
そして落ち着いてから…
ゆっくり話がしたい。
そうディランに言うと、
ディランはそうか、と言って
私に水筒の水を飲ませてくれた。
「まだ夜中だ。
話は明日の朝でもいいぞ。
それとも、何か食うか?」
早く話がしたいだろうに
私の体調を気にしてくれる。
ディランはやっぱりいい人だ。
それにマイクの幼女趣味を疑って
一生懸命私を守ってくれたし。
……もしかして
私が聖女だから、守ってくれてた?
なんて思って。
違う、って否定する。
だって、ディランは
最初から私を守ってくれたもの。
ダメだな。
この世界に来て、優しさに触れて。
人を信じようって思うのに、
すぐに疑ってしまう。
そして、それが
私に対する『愛情』であれば
なおさらだ。
私に『力』があるから
親切にしてくれるんじゃないか。
相手にメリットがあるから
愛してくれるんじゃないかって
すぐに疑ってしまう。
初めて会った時から
私を助けてくれているディランの
親切心を、そうやって疑うのは失礼だ。
私は、大きく息を吸った。
こころは、まだモヤモヤしている。
ディランを見ると、
優しい目で、私の返事を待っていた。
……待ってくれる。
これって、安心する。
私が、私のやりたいように
動いていいんだって、思えるから。
私はお腹に手を当てた。
お腹はすいてない。
話は……きっと早く聞いた方がいいだろう。
でも。
今は疲れていて話したくないというか、
甘えたくなった。
クマちゃんに。
そして……
甘えさせてくれるだろう
ディランに。
「じゃあ、寝る」
私は短く言った。
ディランはそうか、と笑う。
「子どもは睡眠時間が大切だからな。
しっかり寝て、朝、また話そう」
「一緒に寝る?」
ベットに戻って聞くと、
ディランは悩む仕草をした。
「ディランも幼児趣味?」
「ちげーよ!」
「なら、一緒にどうぞ」
ベッドは広いし、大丈夫だろう。
毛布をめくって、
ディランが寝る場所を空けてあげる。
「……わかった。
だが、こうやって誰もかれも誘うなよ?」
何を言ってんだか。
「幼女趣味の人なんてそうそういないよ」
私は笑う。
「でも、気を付ける。
ありがとう」
幼児趣味でなくても、
私を愛してくれる人たちはいる。
それを知ってるから、
私は大丈夫、なんて言わない。
「そうか、じゃあ話は明日だ」
「うん、おやすみ」
「あぁ」
私はクマちゃんを頭のそばに置いた。
「おやすみ、クマちゃん」
目を閉じると、すぐに眠くなってくる。
興奮して眠れないと思ってたのに。
というか、もしかして
<愛>を使い過ぎてまだ
回復してないのかな?
私の【器】の感覚だったら
大丈夫な量のハズだったのに。
……もしかして<愛>の質が
関係してるとか言わないわよね?
金聖騎士団長のヴァイオリンに
抱きつぶされたときは
<愛>の質が高かったけど、
あの村で与えてもらった<愛>は
質がそれよりも劣っていて、
力がでなかったとか、
そんなことないわよね?
……絶対にない、とは言えない。
だって、女神ちゃんは
『エロの金字塔』に関しては
まったくもってブレない女神だから。
まじか。
嫌な予感が頭をよぎる。
どうあっても
女神ちゃんは私をエロの世界に
浸からせたいんだな?
……というか、
この私…勇くんの顔とかが
女神ちゃんの好みなんだろうな、
って思った。
だって、女神ちゃん、
どう考えても勇くんを
この世界に来させようと
狙ってたと思うもん。
良かった。
勇くんがこの世界に来なくて。
そうでないと、
優しい勇くんがこの世界に来ていたら
あっという間に『エロの金字塔』から
抜けれなくなってるよ、絶対。
早く…この世界を立て直さなくっちゃ。
でも、女神ちゃんはすぐに
私を放置する。
私が一人でなんでもできるとか
思ってるんじゃないだろうか。
私はただの異世界の人間で、
女神ちゃんは神様なんだから、
あんまり私を頼らないで欲しい。
あーあ。
女神ちゃん、そろそろ事情を説明してよ。
女神ちゃんにもらった
『女神ちゃんが会いたいときに
いつでも会える祝福』って
全然役に立たないじゃん!
私が会いたいときに会えるようにしてよね。
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