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新しい出会い

5:あやしい…?神父

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温かい手が、私の手を握っている。

誰の手だろう。

私はウトウトしながら、
金聖騎士団のみんなの顔を思い浮かべる。

でもみんなの手は、戦うことになれた
ごつごつとした手だった。

剣を持つ指にはタコができていて、
筋肉質で。

大きな手で頭を撫でられると
嬉しくて目を細めてしまう。

そんな…優しい手だった。

なら、今、私の手を握っているのは?


……だれ?


ふっと私は目を覚ました。

すぐそばに、心配そうな顔で
私の手を取る……神父さん? がいた。

そう、たぶん、神父さん。

だって紺色の神父さんの服を着ている。

「目が覚めましたか? ユウさま」


ん?
ユウさま?


「お加減はいかがでしょう。
少し熱がおありのようでしたので、
薬をお持ちしたかったのですが、
なにぶん、辺鄙な場所でしたので
ご用意することができず…」

申し訳なさそうに神父さんは言う。

私は状況がわからず、
首を傾げた。

「あぁ、ご挨拶が遅れましたね。
私はこの村の神父を務めております
マイクと申します」

「村…?村!」

私は唐突に思い出した。

そうだ、私は村に行こうとしてたんだ。

「えっと、マイクさんが
私を助けてくれたんですね。

ありがとうございます」

「いえ、正確には
ディランという旅の者が
あなたをここまで連れて来たのです」

ディラン、そうそう、
そんな人、確かにいた。

ちょっとだけ肌が浅黒くて、
ハンサムだったけど、女神ちゃんの
好みではないよね、なんて
失礼なことを思ってしまった人。

ん?

私はマイクさんを改めてみた。

『神父』という括りで見てたけど、
よく見ると、マイクさんこそ、
女神ちゃんの好みのタイプでは?

一つにまとめた銀色の髪は
辺鄙な村の神父と思えないほど
サラサラだし。

顔立ちはもちろん、美形なんだけど
物腰が柔らかい…真面目で優しい
優等生タイプとでもいえばいいんだろうか。

黙っていると真面目な印象だけど、
口をひらくと、目元がやわらかくなり
優しい印象になる。

大きな緑がかった目も、よく見れば可愛いし、
私の好きなお兄ちゃんっぽい感じがする。

と、思って、慌てて首を振る。


やばい。
お兄ちゃんっぽい人は大好きだけど、
好きになったらダメだ。

女神ちゃんの『祝福』が
発動してしまう。

私にはやっかいな女神ちゃんの
『祝福』という名の呪いが
いくつかかかっているのだ。

その中の一つに、
『私が好意を持った相手と目が合うと
みだらな行為をしたくなる祝福』
というのがある。

私も相手も、淫らになるのだ。


……なんてこった。


ただし、これは私が相手に
好意を持っていて、なおかつ。


経験則で、たぶんだけど
私が相手に性的な意味合いを
感じた時に、かなり強烈な『祝福』が
発動するんだと思っている。

だから、極力、『好意」を
いだかないようにしておけば、
なんとかなるはずだ。

以前、大好きだったお兄ちゃん…
もちろん、本当の兄ではないが、

つい先日までお世話になっていた
金聖騎士団の聖騎士の一人にお兄ちゃんっぽい人がいた。


私はめちゃめちゃその人に甘えさせて
もらっていたのだけど。

性的意味合いを感じなければ、
その人と淫らになることはなかった。

見つめ合っても大丈夫だった。

ただし、それ以外の『祝福』に

『私の体臭も体液も、近くにいる人間たちは
それらすべてが甘く感じ、媚薬へと変わる祝福』

という物凄く迷惑な呪い…いや
『祝福』も私は持っている。


この『祝福』が発動してしまうと、
性的な意味合いを感じていなくても
相手に欲情されてしまうことがある。

厄介すぎる『祝福』だ。


だから、私は自戒する。


優しくされたと言っても、
好きにはならない。


過去にあった淫らなことを
つい思い出してしまい、
その後、視線が合った相手と
思い出したくないぐらい淫らな
状態になったことは……

正直、言いたくないが一度や二度ではない。



気を付けないとまた、
『エロの金字塔』をガチで
体現してしまうことになる。

「ユウさま。
もし…よろしければ、
ユウさまの傷を私が治して
さしあげたいのですが。

よろしいでしょうか」

「マイクさんが?」

「はい。
あ、私のことは、マイクと
お呼び下さい、ユウさま」


マイクさんは優しく笑う。

そして、ずっと握っていたままだった
私の手に、唇を落とした。

ふーっと暖かなものが
身体に入ってくる。

『回復魔法』だ。

すると、おそらく小さい擦り傷とかが
できていたのだろう。

身体のあちこちにあった
小さな痛みが消えていく。

「マイクさんは…」

「マイク、と」

「……マイクは聖魔法が使えるの?」

「はい、あまり強い魔法は使えませんが」

マイクは照れたように頷いた。

「実は、私はつい数か月前まで
王都の大神殿に勤めていたのですよ」

「え?」

マイクさんは私の手を
ぎゅっと握る。

「私は…ユウさまが
『大聖樹』に祈りを捧げ、
眠りに入るのをこの目で拝見いたしました。

ユウさまが、女神さまに
この世界への愛を説いたとき…

私は思ったのです。

ユウさまの想いを、
この世界の端にまで届けようと」

マイクはそういうと、
唖然とする私を見つめた。

それは…それは熱いまなざしで。

「そして私は、神官長にお願いをして
この村に神父としてやってきました。

この村に来てから、
私は毎日、女神さまと、ユウさまに
祈りを捧げていたのです。

すると、ある日、
お告げがありました。

寝ていると女神さまの声が
聞こえたのです。

『愛し子がここに来るだろう。
聖樹を育てるがいい』と。


私が目覚めると、
小さな種がベットに落ちていたのです。

私は…教会の裏にそれを植えました。

この村の人たちはみんな
女神さまを深く敬愛している者ばかり。


私のお告げを知ると、
村の人たちは一緒に種を植え、
毎日、その場所に祈りを捧げました。

そして…
あなたが来たのです。

ユウさま」


お待ちしておりました。
と、言われ、私はもうパニックだ。

なにそれ。

全然、聞いてないんですけど?


新しい『聖樹』って
そんな簡単に生やしていいわけ?

そりゃ、近くに『聖樹』がない村は
大変だって話は聞いてたけど。

……頭痛い。


って。
もしかして、女神ちゃん。

私に彼と出会わせるために
ここに私を連れて来たってこと…

ない、よね?


『エロの金字塔』に関しては
ブレない女神を思い出し、
私は思わず天井を見上げた。


女神ちゃんに対する恨み言は
募るばかりだ。


そんな私を見て、
「ユウさま。
お疲れでしょうか」

なんてマイクが声を掛けて来た。

いい人だ。


いい人だから、女神ちゃんに
目を付けられたのかもしれないけれど。

「何かお召し上がりになりますか?
それとも、もう少しお休みになられますか?」

なんて手を繋いだまま、
甲斐甲斐しく言ってくれるのは嬉しい。

私の中でのママポジションだった
王子様騎士のカーティスを思い出す。


でも、なんで手を離さないんだろう?


って思っていたら、
バン!って大きな音がして
この部屋のドアが開いだ。


「何やってる!
こいつはまだ子どもなんだぞっ」

って場違いな指摘をするこの人は…


そうそう、たしかディランさん。


物凄く怖い顔をして
マイクさんに詰め寄ってるんだけど。

何がどうなってるの?


目が覚めたばっかりで
もうもめごとの匂いがする。


女神ちゃん、勘弁してよーっ。




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