111 / 187
高等部とイケメンハーレム
111:結局は伴侶が一番
しおりを挟む俺が首を傾げていると、
すぐにまた部屋の扉をノックする音がする。
クルトが返事をすると
先ほどの侍従が頭を下げて
部屋に入って来た。
そしてその後ろから……
「ヴィー兄様?!」
何故ここに?
ヴィンセントが騎士服のまま
侍従の後ろに立っている
すっげー。
ヴィンセントの騎士服姿、
初めて見た!
「かっこいい!
凄い!
ヴィー兄様、好きーっ」
思わず立ち上がって
つい、いつもみたいに
口から余計な言葉が飛び出した。
好き、好き、とずっと
言い続けてたから、
すぐに口から飛び出してしまう。
言い過ぎは信憑性が無いし
控えめにしようと
心に誓っていたはずなのに、
俺の口はすぐに
「好きー」と言ってしまう。
俺の言葉にヴィンセントは
苦笑しているが、
俺の言葉に驚いているのは
レオナルドだった。
「好き?
イクス、この騎士のことが
好きなのか!?」
俺同様に立ち上がるレオナルドに
俺はうん、と頷いて、
ヴィンセントのそばに行く。
「僕のヴィー兄様だよ」
あれ?
ちょっと違ったな。
隣国の王子にこういう
紹介の仕方は間違ってるよな?
俺はヴィンセントの腕を掴んで
レオナルドに紹介したが、
ヴィンセントはその俺の手の上に
やんわりと包むように
大きな手を置いた。
それから俺に少し笑ってから
手を離して、見惚れるような騎士の礼をする。
「お初にお目にかかります。
ウエールズ国の第二王子であらせられる
レオナルド・ジョーンズ殿下に
お会いできて光栄でございます。
私の名はヴィンセント・ハーディマン。
パットレイ公爵領と隣接している
ハーディマン侯爵家の嫡男であり、
長年イクスの婚約者でありましたが
ようやく念願がかない、
イクスの伴侶となることができました」
念願かなって!だって。
嘘でも嬉しいけれど、
今それを言う必要ある?
というか、なんか、
刺々しい?
いつも優しいヴィンセントらしくないぞ。
俺がヴィンセントを見上げると
何故か、にやり、と
口元が歪んだ気がした。
「このようにイクスは
いまだに幼く、
すぐに私への思慕を
口にすることが可愛らしく
思っておりましたが、
なかなか互いの仲が
進展しなかったことも事実。
殿下のおかげで
この関係が一気に進むこととなりました。
心から感謝申し上げます」
え?
なにそれ。
そんなこと言っていいの?
というか、腹黒っぽい?
かっこいいけど、
なんだ、これ。
どういう状況?
「ヴィンセント、どうやって
ここまで来た?」
混乱する俺を前に
クルトが冷静に聞く。
「アキレスからすぐに
騎士団に連絡が来ましたので」
「ヴィー兄様、仕事は?」
俺のためにちょくちょく仕事を
抜けるのはどうかと思う。
それでなくても
父にこき使われてるのに。
「大丈夫だ。
俺の父も、陛下も、
公爵殿からも、
イクスを最優先に動くことの
許可は貰っている」
職権乱用!
父だな。
父が裏から手を回してるんだな。
「はは。
公爵殿の過保護は
相変わらずだなぁ」
まさか父王まで動かすとは。
クルトが呆れたように言う。
だがその言葉に少し
寂しさが混ざっているのを感じた。
もしかして、陛下が自分よりも
他人の子どもの俺を
優先してるとか思ってないよな?
違うぞ。
俺は国にとって
価値があるから大切に
してもらってるだけだぞ?
……いや、違うか。
俺の父が周囲の目も関係なく
俺を溺愛するのが
羨ましい、とかだろうか。
クルトが陛下の愛情を
疑ってるとは思えないし。
なんだ、クルトもまだまだ
子どもじゃんか。
俺はクルトに手を伸ばして
頭をよしよしと撫でてやる。
「なんだ? いきなり」
何だと言われても
クルトが子どもで可愛いってことだ。
というのをさすがにためらっていると
レオナルドが俺たちを見た。
「……仲が良いんだな」
何を羨ましそうに言っている?
「僕とレオも仲が良いよね?」
俺が言うと、
レオナルドは、そうだな、と
表情を少し明るくした。
そしてレオナルドは立っている
ヴィンセントに今頃気が付いたかのように
椅子に座る許可を出したが
いくらソファーが四人掛けとはいえ
隣国の王子の隣に座ることが
できる者はこの場にはいない。
というか、もしかしたら
友人枠の俺は座っても良いのかもしれないが
あのプロポーズが本気だったのなら
さすがにそれは無神経すぎる……
ということぐらい、俺にもわかる。
王子たちの前でなければ
ヴィンセントの膝に座るところだが
さすがにそれも無理だろう。
「私のことはお気遣いなく」
ヴィンセントは色々考える
俺をソファーに座らせると
護衛の様に俺の背に回った。
ヴィンセント一人だけ
立たせてもいいのか?と思ったけれど
椅子もないし、長居するつもりは
なかったから、侍従を呼んで
椅子を持って来てもらう
気にもれない。
まぁ、いいか。
ヴィンセントが背中にいると心強いし。
俺は改めてレオナルドを見た。
ここに来た当初の目的を果たして学校に戻ろう。
ミゲルたちも心配するかもしれないし。
「ねぇ、レオ。
学校においでよ、
それとも僕と友達なのはもう嫌になった?」
「なってない!」
俺の言葉に覆いかぶさるようにレオナルドが言う。
よかった。
でもプロポーズのことは
無かったことにするから、とは言えないよな?
でも俺、プロポーズはお断りするしかないし。
俺が困っていると
俺の後ろにいたヴィンセントが
レオナルドに発言を求めた。
「怖れながら、
レオナルド殿下はイクスの
どこが気に入られたのでしょうか」
おい、なんだその聞き方は。
俺がダメダメだって聞こえるぞ。
いくら俺を甘やかすヴィンセントだからって
その言葉は酷いぞ。
俺が不機嫌を隠さずに振り返ると
ヴィンセントは任せておけ、と
言うような顔をした。
いいのか?
本当だろうな。
信じるからな。
196
お気に入りに追加
929
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
薬師、奴隷を買う、、、ん?奴隷に襲われるってどういうこと!?
さえ
BL
薬剤師として働いていた35歳未婚男性。過労死で異世界転生を果たす。
有り余る金と有能スキルで伸び伸びと暮らす夢を叶えるために奴隷を買う。
なんで奴隷にベッドに押し倒されてるの!?
※主人公と奴隷は両思いになる予定です。
※処女作ですのでご容赦ください。
※あんなシーンやこんなシーンは☆マークつけます。(後半の予定)
もしかして俺の主人は悪役令息?
一花みえる
BL
「ぼく、いいこになるからね!」
10歳の誕生日、いきなりそう言い出した主人、ノア・セシル・キャンベル王子は言葉通りまるで別人に生まれ変わったような「いい子」になった。従者のジョシュアはその変化に喜びつつも、どこか違和感を抱く。
これって最近よく聞く「転生者」?
一方ノアは「ジョシュアと仲良し大作戦」を考えていた。
主人と従者がおかしな方向にそれぞれ頑張る、異世界ほのぼのファンタジーです。
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~
ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉
攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。
私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。
美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~!
【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避
【2章】王国発展・vs.ヒロイン
【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。
※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。
※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差)
イラストブログ https://tenseioujo.blogspot.com/
Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/
※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる