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章間<…if>
44:仲良くいこう!
しおりを挟む翌朝、遅い時間に目を覚ますと
何故か険悪な二人がいた。
私の寝ているベットの傍で
にらみ合うようにヴァレリアンと
カーティスが立っている。
テーブルにはたぶん、朝食だろう。
パンやサラダなどがベットの上からでも見えた。
しかし…朝からなんで喧嘩しているんだろう。
声を掛けるタイミングが見つからない。
「言っておくけど、ユウは
私の愛撫で3度は蜜を放ってた」
は?
「これだから、経験が浅い子どもは
笑わせてくれる。
ユウは俺のモノで肉壁を抉る度に
何度も絶頂を迎えてたぜ」
ちょ…っ。
な、何を……!?
「経験があればいいってものじゃないだろう?」
「ただ突っ込んで、射精することしか
できない癖に、物知り顔は
やめた方が良いんじゃないか」
何を言っているんだーっ!!!
私はがばっと起き上がった。
「ユウ、おはよう」
カーティスがすぐに反応した。
「お、おはよ…」
「体はしんどくない?
どこかの誰かさんが無理にユウの中に
突っ込んだりしたから…」
「ちょ、ちょ…」
カーティスは私の言葉にかぶせて
聞き捨てならないことを言う。
「何を言う。
おはよう、ユウ。
朝からおまえの可愛らしい顔が
見れるなんてな」
嬉しいぞ、と言いながら
ヴァレリアンは私を抱っこした。
「私が先に声を掛けたんだぞ
勝手にユウを抱き上げるな」
「それとこれは別だろう。
ユウ、朝食を用意している。
何が良い?
好きなのを選んでくれ」
カーティスを軽くかわしたヴァレリアンに
テーブルに連れていかれる。
テーブルの上には確かに
色々なものが並べてあった。
先ほどはパンやサラダしか見えなかったが
ハムやチーズ、スープ。
あとフルーツなんかもある。
「美味しそう」
「そうだろう?」
ヴァレリアンが椅子に座らせてくれたので
私はカーティスを呼ぶ。
「一緒に食べよう」
「そうだね」
不機嫌そうな顔をしていたカーティスが
笑顔で私の隣に座った。
反対側にはヴァレリアンが座る。
「いただきます」
私はそう言って、
まずは果実水を飲む。
喉が渇いてたんだよね。
「ユウ、今日もこの街で
のんびりしようね」
カーティスが私を見ながら言った。
「そうだな。
この街は新婚の街と言われているようだし、
俺もユウと新婚気分を味わうのも
悪くはないな」
ヴァレリアンが私より先に返事をする。
「団長なら、先に帰った方が良いんじゃないか?」
カーティスが言うと、ヴァレリアンも
負けてはいない。
「それを言うなら、
おまえこそ任務が終わったのなら、
早く報告するために
王宮に戻ったらどうだ?
副団長だろう」
「団長のお前にすでに報告済だから
別にいいだろう」
カーティスがむっとしたように言ったが
「報告は聞いたが、
報告書はまだだろう?」
とヴァレリアンに言われて口をつぐんだ。
私はおろおろと二人を見てしまう。
そんな私にカーティスが気が付いた。
「ユウ、酷いよね?
ヴァレリアンは私をのけ者にして
ユウと街を楽しもうと思ってるんだ」
「……おまえが言うな」
ヴァレリアンがぼそりと言う。
「カーティス、ヴァレリアンも
仲良くご飯食べようよ。
せっかく一緒に食べてるのに、
喧嘩をしたら美味しくなくなっちゃうでしょ」
そういうと、カーティスは
見るからにしょんぼりした様子で
そうだね、ごめん、と呟いた。
この顔に私は弱いのだ。
だからつい、髪を撫でてしまう。
王子様にしてもいいのだろうかと
思わないことも無いけれど。
「俺も悪かったよ、大人気なかった」
ヴァレリアンも反省したように言うので
私は二人の手を取る。
「ご飯を食べたら街を歩いてみよう?
一緒に、ね?」
「そうだね」
「そうだな」
2人が頷いたのを見て
私はまた食事を再開する。
2人はまた、何かと言いあうけれど
それも…私が好きで
嫉妬してくれているからだと
理解できるようになったから。
困るけれども、嬉しい。
「どうした? ユウ」
ヴァレリアンが私の様子に気が付いて
声をかけてくれた。
「ううん。二人が私のことを
大好きだってわかって
嬉しいなぁ、って思って…」
って、恥ずかしいことを言ってしまった。
でも二人は目を輝かせて私を見る。
「こいつよりも俺の方がユウを好きだがな」
「私の方がユウを愛しているよ」
なんて、言ってくれることすら
嬉しく思う。
私の中にあった倫理とか道徳とか、
そういうものは、どこかに消え去ってしまったようだ。
朝食を食べ終わり、
着替えをしたところで部屋のドアを
叩く音がする。
ヴァレリアンが扉を開けると
宿の人だろう。
何やら手紙のようなものを
ヴァレリアンに渡していた。
ヴァレリアンがそれを見て、顔をしかめる。
「どうした?」
カーティスがヴァレリアンの手元を覗き込んだ。
ヴァレリアンはドアを閉めてから
封筒の中から手紙を抜き、
封筒をカーティスに渡した。
「…怒らしたかな?」
と、カーティスは封筒を見ながら言う。
ヴァレリアンは手紙を素早く読むと
それもカーティスに渡した。
「どうしたの? 大丈夫?」
私が聞くと、ヴァレリアンは
私をぎゅーっと抱きしめて来た。
「ヴァレリアン?」
「ユウと甘い新婚旅行を堪能する予定が…」
「ごめんね、ユウ。
明日までには王都に戻るために
出発しないとダメになったようだ」
カーティスまでうなだれている。
「その手紙…誰から?」
「スタンリーだ」
ヴァレリアンは嫌そうに言う。
「仕事を押し付けて来たからな。
ユウと合流してすぐに戻らないなら
どんな手段を取っても迎えに行くと書いてある」
「スタンリーは私たちにさえ容赦がないからね。
何をしでかすかわからない」
さすが、3人は幼馴染だけある。
遠慮もないし、通じ合っている…らしい。
「じゃあ、もう出発しようか」
私は二人に提案する。
「だが、せっかくユウと
この街にいるというのに…」
ヴァレリアンは物凄く嫌そうだ。
「じゃあ、一緒に散歩しよう!
そして午後から出発しようよ。
ね、カーティスもそう思うでしょ?」
カーティスに話を振ると、
物凄く嫌そうな顔で頷いた。
「そう…だな。
私とユウがこの街に来た翌日に
この手紙が届くなど…用意周到すぎる。
ヴァレリアンの行動も読まれているようだし、
素直にスタンリーの思惑に従った方が
良い…ような気もするけど、納得したくない」
物凄い本音が出た。
でもきっと。
スタンリーたちも私やカーティスを心配して
くれているんだと思う。
教会のことも連絡が入っているといると思うし。
だから早くみんなの所に戻って
顔を見せて安心させたいとも思う。
そういうと、カーティスは仕方がないと
頷いてくれた。
ヴァレリアンも肩をすくめて頷いてくれる。
「ヴァレリアンも、カーティスも大好き」
金聖騎士団の皆は、私の特別なの。
そう言ってヴァレリアンに抱きつき返すと、
後ろからカーティスに抱きしめられた。
「ユウを仲良く愛するのは難しい」
「全くだ」
とヴァレリアンも頷く。
でもこればかりは、私にはどうすることもできない。
……と、思う。
逆に私の『祝福』が外れて
元の世界の貞操観念とか倫理観とか
そう言ったものが戻ったら、きっとみんなとは
一緒にいれなくなると思うのだ。
もちろん、誰か一人を選ぶなんて
できそうにないし。
だから、私は「大好き」しか言えない。
現状維持を望むことしかできない。
でも、大好きなのは本当だ。
元の世界で、他人に対してこんなに
大好きだって思ったことなど
一度もなかった。
私にとって金聖騎士団は特別で、
ヴァレリアンやカーティス。
ここにはいないけど
スタンリーは、もっと特別だと思う。
そのことを伝えたら、
2人から順番に口付けられた。
「じゃあ、出かけよう、ユウ」
カーティスが私から離れて
手を差し出してくれる。
「エスコートは俺がしてやる」
ヴァレリアンも手を差し伸べてくれた。
だから私は二人の手を取って
笑顔を作る。
「たくさんお土産買おうね!」
私、お金は持ってないんだけどね。
そう言って笑って。
私たちは、ひとときの休暇を楽しむべく
街へと繰り出したのだ。
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