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章間<…if>
41:いたずらで淫ら
しおりを挟む宿に着いてから
私は少しだけ休ませてもらった。
さすがにずっと馬に乗っていたから
疲れてしまったのだ。
ヴァイオリンとカーティスは
仕事の話があるとか言って
私の前から姿を消したので、
大きなベットを独りで
堪能させてもらった。
ふかふかのマットレスに、
やわらかいクッション。
元の世界の私の枕は
お世辞にも、かなり固くて
寝やすい枕とは言えなかった。
安売りで買ったもので、
枕なんて固くても柔らかくても
どっちでもいいと思っていたけど、
この世界のふわふわクッションで
眠ることを知ってしまったら、
もうあの枕では寝れないだろう。
……もう、寝ることはないだろうけど。
この世界の枕は、大きなものを1つ使ったり、
小さめのものを2つ、3つ並べて
自分の寝やすいようにベットを
調えたりするのが主流だと思う。
だって、今まで泊って来たどの宿もそうだったし
私の部屋…と言っていいのかわかんないけど
『大聖樹の宮』のベットもそうだった。
でも、この世界は何でも大きいので、
クッションも抱き枕になってしまう大きさなのだ。
そんなわけで、
私はクッションを1つ、抱き枕に。
もう1つを頭の下に置いた。
うん、ふかふか。
シーツに包まっていると、
すぐに眠たくなってくる。
「クッションにしがみついて
ほんと、ユウは可愛いな」
ってカーティスの声がする。
でも眠くて目を開けれない。
「お前が移動に無理させたんだろ?
疲れたんだよ」
ヴァイオリンの声だ。
「おまえがこんなに早く
この街に来るのがわかってたら
急がなかったのに」
カーティスの拗ねた声は珍しい。
幼馴染の前だから口調も幼くなるのかな。
いいな、こんな関係って。
私の幼馴染は、施設の弟妹たちだけど
対等と言うよりは守る相手だったから。
思えば、職場もバイト先も、
私ってばちゃんと人間関係を
築くことができなかったんだよね。
愛されたかったのに、
愛されるはずがないとか、
勝手に自分から拗ねて諦めていて。
この世界に来てわかったことがある。
愛されたいと思っていても
思うだけではダメだってこと。
この世界を救うには
誰かに愛されることで『器』に
愛をためなければならない。
だから、愛されなくっちゃ!って
最初は思っていて。
でもどうしたらいいのか
わからなくて、女神ちゃんの『祝福』が
あるからなんとかなる、って
無理やり不安を押さえ込んでいた。
でも、結果的に
私は『祝福』があっても
それだけで愛されることは
なかったんだと思う。
『祝福』はあくまでも
きっかけにすぎない。
人間の感情まで女神ちゃんは
操ることなどできないのだから。
最初にこの世界に来た時、
私はこの世界の言葉がわからなかった。
だから最初に私を拾ってくれた
金聖騎士団の皆のことを
一生懸命見ていたし、
私の気持ちも理解してもらおうと
頑張った。
だから、愛してくれたんだと思う。
誰かに愛されるのは、
相手のことを理解しようとする気持ちと、
理解してもらおうと言う気持ちが
大切なんだ。
自分の気持ちを、きちんと伝える。
何を思っていて、自分がどうしたいのか。
そして相手の言葉もきちんと聞く。
相手が何を考え、どうしたいのか、
そしてそれに対して自分はどう思うのか。
そうやって心を相手に見せていくことで
信頼関係は生まれるし、
近しい存在になっていくのだ。
このことに気が付いてから
私はできるだけ、自分の気持ちは
素直にみんなに伝えて来たし、
皆のことを、気にしてい見るようにした。
たったそれだけで私は
金聖騎士団の皆に受け入れて貰えたのだ。
私の…初めての、居場所だ。
大好きって思う。
失いたくないし、守りたい。
なんとしても、この国を。
この世界を。
元の世界に帰らないと決めているから
私は大好きな皆と一緒に
この世界で生きていきたい。
早く…女神ちゃんの暴走を止めて
世界を平和にしなくっちゃ。
「可愛いなぁ、ユウは。
大好き、だって」
カーティスの声がする。
「何度も言われると、
誰の夢を見てるか気になるな」
ヴァレリアンの声がするけど、
金聖騎士団の皆だよ、って
心の中で返事をする。
ウトウトしていて、心地いい。
抱き枕が絶妙なふわふわ具合で、
私はすりすりした。
「くそ、可愛すぎるな」
ヴァレリアンの声がして
ごつごつした大きな指…だと思う。
私の髪を撫でて、頬に触れる。
「もっと顔を見せろよ、ユウ」
クッションにしがみついていた私の指を
ゆっくりと外される。
起きなくっちゃ、って思うのに
身体が重くて動かない。
「ユウの瞳は見てたら
自然と心臓が高鳴るぐらい可愛いけど」
カーティスの声がした。
それって『祝福』のせいかも。
「目を閉じてても、
ユウはこんなに魅力的で可愛い」
ベットのきしむ音がして、
たぶん、カーティスだと思う。
私の横に気配がする。
「まぁ、起きていようが
寝てようが、ユウが愛しくて…
抱きたい、って思う気持ちは変わらないな」
ヴァレリアンの言葉に、やっぱり
『祝福』なんて関係なく
私を想ってくれているんだと
嬉しくなる。
「それにユウはいつだって
私が愛しあいたいって言えば
私に応えてくれるしね」
ってカーティスが少し含みを持たせて言う。
ヴァレリアンの気配が、一瞬、変わる。
「カーティス、俺に喧嘩を売ってるのか?」
「まさか、でも、この宿のこの部屋で、
私はすでにユウと何度も愛し合ったからね」
少し冷たい指先が、私の頬に触れる。
これはたぶん、カーティスの指だ。
「新婚グッズもたっぷりつかって、
可愛い姿も堪能したよ」
ピシって、空気がひび割れる音が聞こえた気がした。
私も固まる。
何で、新婚グッズとか言うかな。
「ほぉ?
つまり、道具を使って
ユウをいたぶったってことか?」
言い方!
ヴァレリアン、言い方に気を付けて!
「ふふ、可愛かったよ、ユウは」
カーティス、何故に自慢する。
そして服を脱がす?
ヴァレリアンだろうか。
私から抱き枕のクッションを取りあげ、
顔のあたりに誰かの気配を感じたと思ったら
口付された。
「だからお前とユウを二人で
行かせるのは反対だったんだ」
言いながら、何故かヴァレリアンの
指も…私の服を脱がしている?
横向きに寝ていたのに、
仰向けにさせられて、
シャツが脱がされた。
優しい手つきで、
私が眠っていると思っているからか
そっと、傷つけないように
起こさないように丁寧に脱がしてくれる。
ズボンも脱がされて
さすがに起きねば!っと思ったけど
だめだ、頭が重たいし身体もだるい。
もっと寝てたいって思うけど
2人が気になって眠れない。
寝ている私に、何する気?!
2人の指が私の肌をなぞる。
手のひらで感触を確かめるように撫で、
指先で胸やお腹を押さえられた。
と、思ったら、それは指ではなく
唇だったようだ。
滑った…舌が私をぺろりと舐めた。
「ユウ、早く起きないかな?」
カーティスが言う。
起きてる…というか、意識はあるのに
身体が動かないの。
脳は起きてるのに、身体が寝てる感覚だ。
金縛りとか、こういう原理なんだって
何かで聞いたことがあるのを思い出した。
「まぁ、起きてても寝てても
やることは一緒だがな」
ヴァレリアンの愉しそうに笑う顔が目に浮かぶ。
悪戯を仕掛けるときに
ヴァレリアンが良くする顔だ。
「俺はおまえらが楽しく遊んでいる間、
クソ面白くもない仕事を押し付けられてたんだ。
やっと会えたユウを堪能して何が悪い?」
カーティスは何も言わなかった。
ヴァレリアンはそれに気を良くしたのか
「じゃぁ、堪能するか」と明るく言った。
まるで「じゃあ、かくれんぼして遊ぶか」
と子どもが無邪気に言うように。
そしてカーティスに
「部屋から出て行ってもいいぞ」
なんて言ったけど。
カーティスは「出て行わけがないだろう」と
少し怒ったように言う。
そんな二人の会話を聞きつつ、
私はなんとか体を動かそうと、
必死で頑張っていた。
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