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愛を求めて

88:女子パワーさく裂!

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私は慌てて、一生懸命言葉を綴る。

「えっと、バーナードは
私のお兄ちゃんだけど、
お兄ちゃんなので、愛してるのは
ジュリさんなんです。

バーナードは私のことは好きだけど
一生愛するのは幼馴染だけだって
いっつも言ってますし、


私はヴァレリアンたちがいなくて
寂しくなって、

バーナードに抱っこしてもらったり、
お膝に乗せて貰ったり、
ぐりぐりしちゃったりして
つい甘えたい大魔王になるけど、

ジュリさんからバーナードを
取るとか、そんなつもりは無くて!


バーナードはジュリさんの
ことをいつも嬉しそうに話してくれるし、
「俺の幼馴染は可愛い」って
いっつも言って……っ!」


まくし立てた私の口を、
バーナードの手が塞いだ。


「ユウ、落ち着け」


バーナードを見上げると、
バーナードは顔を真っ赤にしていた。


レアだ。


こんなバーナードは見たことが無い。


「こんな話が聞けるなんて
嬉しいです」

ってジュリさんが笑った。


「もしかして、ユウ様は
私が、ユウ様とバーナードの仲を
疑っていると思ってましたか?」


と、聞かれて、正直に頷いた。


「独り占めしすぎたと
反省してます」


って素直に言うと、
ジュリさんは笑った。


「大丈夫ですよ。
バーナードは私の所に来たら
ユウ様の話ばかりですから」


って、全然、大丈夫じゃないんじゃない?


でも、ジュリさんは楽しそうだし、
バーナードは真っ赤だし。


変な誤解がないみたいで良かった。


私とジュリさんはお茶を飲んで
お菓子を食べて。


バーナードとの出会いの話とか…
子どもの頃の話を沢山してくれた。


バーナードは慌てて
やめさせようとしたけれど、
私はおかまいなしに、
どんどん聞いた。


話が一段落して、
ジュリさんはドアのそばにいた
侍従さんに何やら合図をした。


侍従さんは頷いて、
私の前に跪いて
何やら平べったい大きな箱を
テーブルに乗せる。

「ユウ様は可愛い物が
好きだと伺ったので、
よければ…と」


ジュリさんが箱を開けると
そこには、めちゃくちゃ可愛い
小さな服が沢山あった。

レースにリボン。
小さい宝石が付いた煌びやかな服ばかりだ。

中には聖騎士の制服もある。


凄い!


「あと、こちらも」


とジュリさんの声に、
侍従さんが、もう一つ、
包みを私の前に置いた。

それを開けてみると…
ぬいぐるみが!


クマの…
たぶん耳は尖って三角だけど、
クマだと思う。

とっても可愛いぬいぐるみが入っていた。

しかも双子みたいにお揃いのクマが2つ!

クマは目が黒くて真ん丸で。
物凄く可愛い!


箱に入っていた小さい服は
このぬいぐるみの服だったんだ。


着せ替え人形ならぬ、
着せ替えクマね!

最高だ!


私が大喜びしていると、
ジュリさんも良かった、と
小さな服を手に取った。


「この服は、私が作ったのですよ」


「え? すごい!」

「私の小さいころの服を
手直しして…」

と説明しながら
ジュリさんはぬいぐるみのクマに
小さな服をあてて、
これがいいかな、こっちもいいね、と
話しかけてくれる。

ついでに、アクセサリーは
こっちかな、とか。

リボンやブローチを
取り出し始めて…

もう私は誘惑に勝てなかった。

着せ替え遊び。
ずっとしたかったのだ。

施設にいたら、
人形やぬいぐるみは贅沢しなだったし、
ましてや、着せ替えの服など
手に入るはずもない。

ずっと夢見てた。

自分は無理でも、
せめてぬいぐるみには、
人形には、可愛い服を着せてみたいって
ずっと思っていたのだ。

それが…こんな形で叶うなんて!

そこからは…もう女子の世界だった。

ジュリさんと私は、
きゃいきゃい言いながら、
ぬいぐるみの服を選び、
何度も着せ替え、
アクセサリーを選んだ。

色んなシチュエーションを
考えて、服を着せ直し、
2匹のくまでごっこ遊びまでしてしまった。

おおはしゃぎで…

気が付いたら、昼食の時間を
大幅に過ぎてしまった。

ジュリさんも一緒にお昼を
食べようと誘ったけれど、
どうやら私の警備上の問題があるらしく、
いきなり誰かと一緒にご飯を
食べるのは無理らしい。


なにかと
…『女神の愛し子』は不便だ。


物凄く残念だったけど、
ジュリさんはまた来てくれるって
約束をしてくれて。

クマさんと洋服を
お会いできた記念に、と
プレゼントしてくれた。


「……ありがとうございます」
ってお辞儀をして。


でも、いただいても
お返しできるものが無いし、
私はジュリさんのバーナードを
借りてるのに…と
辞退しようとしたら、

ジュリさんはコロコロ笑って、
「どんどん使ってやってください」
って笑った。


「お返しとかは必要ないので、
ユウ様。
お友達になっていただけますか?」

って手を掴まれて、
嬉しくて泣きそうになった。


頑張って頷くと、


「次は今作ってる
別の服を持ってきますね」

って言ってもらって。


次はもっとおしゃべりしましょう、
って言われて。

私は大喜びで了承した。


ジュリさんが帰ったら
バーナードが疲れたような
顔をしていて…。


大丈夫?
って聞いたら
素直に疲れた、と言われてしまった。


「あんなユウちゃん、
初めて見たよー」

ってエルヴィンも苦笑していて、
女子パワーがさく裂していたみたいだ。


この世界には女子はいないもんね。


女子のパワーに驚いたでしょ?


でも、楽しかったよん。






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