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愛とエロはゆっくりはぐくみましょう
58:くまさんに女神の呪い発動
しおりを挟む部屋に戻って、
私はとりあえずお風呂に入った。
その間に、バーナードは宿屋の人に
グラスと軽いつまみになるようなものを
頼んでくれていて、私が部屋着に着替えて
風呂場から出ると、すでに飲み会の
セッティングが終わっていた。
準備万端だ!
私はうきうきと、
ベット横にある椅子に座る。
小さなテーブルには
先ほどのお酒の瓶とグラスが置いてあって、
肴…と言っていいのか、アーモンドみたいな
木の実や、チーズっぽい食べ物が
お皿においてある。
「俺も汗を流してくるから
先に飲んでていいぞ」
とバーナードが言うので、
私は風呂場に行くバーナードを
見送ってから、お酒の瓶を手に取った。
お酒は…嫌いじゃない。
めちゃくちゃ好きだ!とは言わないけど、
でも…飲んだ時の感覚は好きだ。
ちょっとふわふわして、
辛いことを忘れられる。
あと美味しいお酒も好きだ。
私は甘いものが好きだが、
お酒に関してだけは、辛口も
美味しいと思う。
私はお酒を開けると、
空のグラスに入れた。
先ほど味わった樹の香りが
部屋に広がる。
ほっとするような、
いい匂いだ。
テーブルの上にはちゃんと
お水も用意してあって、
これは沢山飲んだら酔うやつかもしれない。
と、思った。
アルコールの度数は瓶に書いてなかったけど、
調子に乗って飲んだらヤバイ奴だと
一応は自戒する。
まぁ、さっき沢山食べたし、
そんなに飲めないよね?
グラスの中身を少し飲み、
「甘い~い」と声を出してしまう。
確かに飲んだ時は樹の香りがして
すっきりとした口当たりなのに。
飲んだ後は、なぜか甘く感じるのだ。
不思議だ。
くぴくぴ飲んで、
味の解明をする。
何か混ざってるのかな?
花の蜜?
でも、お酒を混ぜて…
カクテルみたいにして作ったものでは
ないと思う。
これは、蒸留酒だ。
たぶんだけど。
色んなことを考えて飲んでいたら
「ユウ!」っていきなり
バーナードに声を掛けられた。
驚いて顔を上げたら、
髪もまだびしょびしょに濡れた
バーナードが、焦ったように
私の手を掴んでいる。
「飲みすぎだ。
一人で…こんなに飲んだのか?」
って言われたけど。
そんなに飲んでないよ?
だって、バーナードのこともわかるし、
自分が何杯飲んだかも覚えてるもん。
「……じゃあ、何杯飲んだ?」
って聞かれて。
何杯だっけ。
1杯…だったかな?
いや、2杯?
うーん、と考えたら、
バーナードが私からグラスを取り上げた。
まだ飲んでないのに!
「まずは、これを飲んで」
と水を押し付けられたけど、
水より、グラスを返して欲しい。
手を伸ばしてバーナードから
グラスを取り返そうとしたら
バーナードは片手で私の反撃をかわし、
「そんなに美味しかったの?」
なんて言う。
美味しかったに決まっている。
樹の匂いがするのに、
飲み終わったら甘いのだ。
こんな変わったお酒は初めてだし、
飲み口はすっきりして飲みやすいし、
あれだ。
ウイスキーだって思ったけど、
カクテルっぽくて。
でも、これ、絶対にそんな何かを
混ぜて作ってるやつじゃないと思う。
ね?
そうだよね?
とバーナードに聞いたけど、
バーナード何も言わなかった。
軽くため息をついて、
抱き上げられる。
抱っこされて膝に座らされて。
バーナードの髪は濡れていたけど、
体が熱くて気にはならなかった。
「はい、飲んで」
と少し強く言われて、仕方なく水を飲む。
「結構強い酒なのに…。
水も飲まず、何も食べずに飲むなんて」
呆れたように言われたが、
美味しかったから仕方ない。
もっと飲みたい、と訴えてみる。
バーナードはダメだ、と言って
私の飲みかけだったグラスのお酒を
飲み干した。
ひどーい!
私のお酒だったのに。
でも、文句を言っても
バーナードはとりあってくれなかった。
バーナードはこんな時、
物凄く『お兄ちゃん』だ。
同じ『お兄ちゃん』キャラでも、
スタンリーは違う。
スタンリーは外見は、
厳しい鬼畜眼鏡的なキャラに
見えるけどじつは、
意外とちょろい…いや、甘い。
別に狙って媚びたりはしてないけど、
たまに私の主張が通らないときに、
私がちょっと拗ねた顔をすると、
スタンリーは眼鏡の奥で
困ったような目をして妥協案を出してくる。
優しいし、甘い。
でもバーナードは違う。
ダメなことはダメだし、私が甘えたら
表面上は甘えさせてくれるけど、
折れてくれることはない。
たとえば、お腹いっぱい食べた後、
お腹を壊すかもしれない状態で
デザートが出てきたとき。
スタンリーはおねだりしたら
「半分だけなら…」とか、
「小さい菓子なら」なんて言ってくれるけど
バーナードは無理だ。
「これ以上食べたら
お腹を壊すから食べたらダメだ」
と、ぴしゃり、と言われる。
つまり…
私はあの美味しいお酒を
これ以上、飲めないということになる。
不満だ。
物凄く、不満だ。
だから、私は抗議することにした。
お酒がどんなに美味しかったかを
バーナードに訴える。
「わかった、わかった」
膝の上で暴れたからか、
バーナードは苦笑するが、だからと言って
飲んでいいよ、とは言わない。
だから、バーナードの膝から
立ち上がって、飲むー!って
手を上げた。
けど。
ぐらり、と視界が揺れた。
アレ?
こんなに飲んだっけ?
酔ってる…??
まさか、と思ったけど、
体が揺れる。
「ユウ!」ってバーナードが
慌てて私の身体を支えてくれたけど。
その弾みで、私はバーナードの
唇に咬みついてしまった。
キス…した。
って思った瞬間、私の呪い…
いや、祝福が発動した。
こぽり、と、甘い蜜が…
私の奥から溢れた感覚が…してしまった。
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