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女ですけどBL世界に転生してもいいんですか?

16:BとLの世界の女子とは…?

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真っ白い世界で、
私と女神は話し合うことができた。


いつも大きなクッションが付いた椅子に座っていた女神ちゃんは、
今は一緒に、同じ小さな椅子に座り、
大きなテーブルであの世界の地図を広げている。


地図の上には、例のファンブックが置いてあった。


「つまり、今、あの世界は【聖樹】が枯れていっているのね?」


『そうじゃ。
理由は、人間が増えすぎたからじゃ。
人間の悪意が、あんなに強大になるとは想定外じゃ』


どうやら女神ちゃんが設定していたより
人間の<悪意>は簡単に膨れ上がり、
聖魔術を使う人間や、聖樹の存在、
女神ちゃんがその場しのぎで生み出した聖獣では
対処できなくなったらしい。


「じゃあ、私はその【聖樹】を甦らせたらいいの?」


『そうじゃな』


「そこまでわかってるなら、
何も私や勇くんに頼まなくても
女神ちゃんが一人でやればよかったんじゃない?」


『それができたら苦労はせん。
わしの力は、世界にとっては強大すぎるし、
何より、人間たちが自分の力でなんとかしなくては
先輩たちに【発展している】と認めては貰えん!』


めちゃめちゃ私情がでている…。


神様って、もっと自己犠牲の塊みたいな存在かと思っていた。


『何を言う!
自己犠牲などして、何が楽しい!

好き勝手創るのが女神のだいご味じゃ!
それが楽しいからこそ、わしは女神になりたかったんじゃ』


もう、ツッコむのはやめよう。


「じゃあ…、私はとにかく【大聖樹】を
復活させたらよいのよね」



もう一度、聞いておく。


『そうじゃ』


良かった。
やるべきことがわかってきた。


『そなたは、あの美形騎士たちと【大聖樹】を甦らせるのじゃ!』


芝居がかったように女神ちゃんは言う。


「あ、それなんですが、彼らの言葉がわかりません」


言える時に言っておかなければ、
またいつ会えるかわからない。


『そうじゃった、そうじゃった』


女神はそういうと、
私の額を人差し指でトンっとついた。


体の中に熱い何かが入ってきて、体中を…
いや、脳みそまで沸騰するような感覚になる。


『言葉だけじゃないぞ。
そなたは、わしの初めての友じゃからな。
いろいろ祝福を与えておいたぞ』


「いろいろ…?
それって、どんな…?」


『まぁ、必要になりそうなものをいろいろじゃ、
そのうちわかるじゃろう』


あ、これ、説明がめんどくさいと思っている顔だ。


というか、なんでまた、
いきあたりばったりで祝福とかするかなー。


もう、ダメな妹の面倒を見ている気分になってきた。


「まぁ、それはじゃあ、あとで確かめます。
それよりも大事なことを教えてください」


『なんじゃ?』


「どうやって【大聖樹】を甦らせたら良いんですか?」


これがわからなければ、何もできない。


『わからん』


「え?」


『仕方ないじゃろ?
初めて創った世界なんじゃ。

初めての不具合で…

小さな不具合をその場その場でしのいでいたら
どんどん世界が破滅に向かっていって…

わしも焦っているのじゃ!』


バカ?
この女神、バカなの?



『なにを言う!
女神に対して不敬じゃぞ!』


心を読んだのだろう、女神ちゃんが怒る。


「自分で創ったものなのに
自分で対処できないなんて、バカでしょ?」


『そうかもしれんが…
もっと慰めてほしいのじゃ』


女神ちゃんは、またうなだれた。


でも、まって?


「そういえば、最初の時、
【愛】がどうとか言ってませんでした?」


『そうじゃ、愛じゃ!』


女神は言った。



『愛に飢えた<愛し子>は、
その魂に多くの愛を取り入れることができる。

愛を溜める魂の器が大きいのじゃ。

その大きな器で愛情を溜め、
世界を愛で満たして…【大聖樹】を甦らせてくれ』


「じゃあ、それは具体的にどうやって愛を取り入れ、
世界を愛で満たせばいいんですか?」


女神はわからん、とまた言った。

『じゃが…あの世界のベースは、これ、じゃ』


女神の指は、机の上においてあるファンブックを指さした。

「え?
このエロの金字塔……?」


嫌な予感がした。


『すまん!時間切れじゃ。
そなたの友情をわしは信じる』


「ちょっと待って!」


ぐらり、と空間が揺れた。


やばい、この世界から追い出される。


「女神ちゃん!
また会いたいとき、どうすればいいの!?」


私は叫ぶ。

女神ちゃんは、サポーターとか言ったような気がしたが、
私は言葉を最後まで聞くことなく、
意識を暗転させた。











「大丈夫ですか?」


大きく肩を揺さぶられている。
私は目を開けた。


すぐそばで、ほっとしたような琥珀騎士様が
私の顔を覗き込んでいた。


「すみません。
また早い時間でしたので、
もう少し寝かせてさしあげたかったのですが、
かなりうなされていたものですから…」


琥珀騎士様が申し訳なさそうに言う。


なるほど。
あの世界は寝ている時に行ける場所なのか。


そして肩を揺らされて、
世界が揺れたと感じたのかもしれない。


ん?


そういえば、私。
琥珀騎士様の言葉がわかる!


女神ちゃん、ありがとう!!!


私は嬉しくて、琥珀騎士様に抱きついた。


「どうしました?
やはり、怖い夢でも見ましたか?」


言葉が通じていないのに、
こうして琥珀騎士様はきっと
優しい言葉をかけてくれていたのだろう。


本当に、嬉しい。


「いえ、大丈夫です。
ありがとうございます」


私は琥珀騎士様に頭を下げた。


「え?
……言葉…が…?」


「はい、女神ちゃ…様にお会いできたので、
お願いしてきました」


なんていうと、嘘か頭がおかしいと
思われるのではないかと思ったが、
本当のことだったし、なにより、
この世界ではあの女神ちゃんの存在は
本気で信じられている。


琥珀騎士様は私のベットの傍に跪き、
祈るような仕草をした。


あの女神ちゃんに感謝して祈っても…
いや、なんでもない。


とにかく、私は
騎士様たちと意思疎通ができるようになったのだ。


ブラボー!!





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