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「なるほど。Rの諸君に多いのは、『エネルギーボール系』『シールド』『ウォール』か」
レイカは全員のスキルを確認した後、少し考え込む。
生徒達はレイカを体育座りで囲み、評価が下るのを待っている。
「それって凄いんですか?」
女子の誰かが耐え切れず、レイカの判断を促した。
レイカは教師の時とは違う口調で、まるで教師の様に説明を行った。
「汎用的で便利なスキルだ。『エネルギーボール系』は、離れた所から攻撃できるし、扱いも容易だ。『シールド』と『ウォール』も防御的に秀でたスキルだ」
「『シールド』と『ウォール』は、どう違うんですか?」
「シールドは基本的に自分自身で使うものだ。目の前にエネルギーの防御壁を作成して、相手からの攻撃を防ぐことが出来る。
ウォールは、作成可能な範囲に壁を作って、敵の攻撃を防ぐ。少し離れた味方の目の前に作って、味方を守る事も可能だ」
「じゃあ、ウォールの方が優れているってことですか?」
「スキルに優劣は無く、使い方次第だ。シールドは展開したまま移動も可能だし、突撃して攻撃もできる。
ウォールは暫く持続するから、場合によっては複数展開できるし、敵の動きを邪魔する使い方もある。ただ、一度貼った場所から動かす事は出来ない」
「なるほどー」
レイカの回答に、女の子は納得した様子。
しかし、カズオは意地悪く口を挟んだ。
「スキルに優劣は無いっていうのは、ウソだろーぜ」
「何が言いたい?」
「つーか、R同士のスキルでは、優劣が無いってことだろ?でも、SR以上とR以下のスキルには、優劣がある。
その証拠が、スミレの『バリアー』な訳。あれも防御用だけど、シールドやウォールより上じゃねーか」
『バリアー』とは、さっきスミレが披露していたスキルだ。使用者の全方位を覆うように、身を護る壁が出来ていた。強度も物凄く高いらしい。
「だが、バリアーは自分にしか掛けられないし、攻撃にも使えないぞ?」
「使う必要がねーんだろ」
カズオは、勝ち誇るように続けた。
「Rにはスキルが1つしかねぇから、中途半端な防御のスキルを攻撃にも使わないといけない。けど、URとSSR+にはスキルが3つあるから、攻撃スキルは攻撃で、防御スキルは防御なんだよ」
「言いたい事は分かるが。本当に、君達は優劣をつけるのが好きだな」
「は!俺は皆揃ってゴール!皆揃って1位!みたいなの嫌いなんだよ。社会に出たら、競争なんだしよー」
カズオは楽しそうに語っている。
レイカは特に言葉を返すこともなく、説明に戻った。
「まず、君達には王都に赴いて貰う。地図はこれだ。スキル画面で確認してくれ」
レイカが言うと、トウタの目の前に地図が表示された。
電子的な表示で、ピンチすれば拡大縮小もできるし、スワイプで動かすことも可能だ。
「地図の通り、この召喚神殿は山の上にあり、王都へは山を下りなければならない。魔物や盗賊もいる為、隊列を整える必要がある」
レイカが言うと、地図が隊列表に切り替わった。
「僕は雑用……か…」
隊列はカズオを先頭に、近接系のスキル保持者を前列に配置している。中列にシールドやウォールを持つ守備系のスキル保持者、後列にファイヤーボールなどの後方からの攻撃手段を持つスキル保持者を置いていた。
N+の1人とNの3人は雑用係として、隊列の外に記載されていた。
トウタは周りの視線が集まっているのと、くすくすと笑いが起きているのを感じた。恥ずかしくて顔を伏せるが、異議を申し立てる勇気もない。
実際問題トウタのスキルは、ディレイのみ。カズオの前に置かれて、弾除けにされるよりは人道的な待遇かもしれなかった。
「あちらの武器庫から、自分に合う武器を選んできてくれ。使い心地も大切だが、スキルなど、自分に合うモノを選んだ方が良いぞ」
レイカが言うと、皆から歓声が上がった。
レイカの示す先には物々しい扉があり、剣や盾のマークが描かれていた。
「カズオ、早く良い武器取りに行こうぜ」
ジュンがカズオに近付き、彼の肩を叩いた。
しかしカズオは、不愛想にジュンの手を払う。
「は?Rは後だろーが。普通に考えろ」
「あ、悪い……」
二人は仲が良かっただけに、皆の間にざわめきが広がる。
むしろジュンの方が、カズオより上の力関係だったのではないか?と、2人と同じグループの面々は顔を見合わせた。
「行こーぜ、スミレ」
「あら、私も一緒でいいんですの?」
「ああ。支援が期待できそうなのは、スミレ位だろ」
URのカズオとSSR+のスミレは、連れ立って武器庫の前に立つ。
彼らは扉を開けようとして、思い出したようにこちらを振り返った。
「おい、レン。お前も来いよ」
カズオに声を掛けられたレンは、慌てて扉に向かった。彼らが扉の中に消えた後には、新しい常識が学生たちの間に生まれる。
いや学校で教え込まれたテンプレートの中から、それぞれがふさわしいと思う物を取り出したと言うべきだろうか?
残りの皆は互いのレア度を再確認し、武器庫に入る順番の列を作り始めていた。
レイカは全員のスキルを確認した後、少し考え込む。
生徒達はレイカを体育座りで囲み、評価が下るのを待っている。
「それって凄いんですか?」
女子の誰かが耐え切れず、レイカの判断を促した。
レイカは教師の時とは違う口調で、まるで教師の様に説明を行った。
「汎用的で便利なスキルだ。『エネルギーボール系』は、離れた所から攻撃できるし、扱いも容易だ。『シールド』と『ウォール』も防御的に秀でたスキルだ」
「『シールド』と『ウォール』は、どう違うんですか?」
「シールドは基本的に自分自身で使うものだ。目の前にエネルギーの防御壁を作成して、相手からの攻撃を防ぐことが出来る。
ウォールは、作成可能な範囲に壁を作って、敵の攻撃を防ぐ。少し離れた味方の目の前に作って、味方を守る事も可能だ」
「じゃあ、ウォールの方が優れているってことですか?」
「スキルに優劣は無く、使い方次第だ。シールドは展開したまま移動も可能だし、突撃して攻撃もできる。
ウォールは暫く持続するから、場合によっては複数展開できるし、敵の動きを邪魔する使い方もある。ただ、一度貼った場所から動かす事は出来ない」
「なるほどー」
レイカの回答に、女の子は納得した様子。
しかし、カズオは意地悪く口を挟んだ。
「スキルに優劣は無いっていうのは、ウソだろーぜ」
「何が言いたい?」
「つーか、R同士のスキルでは、優劣が無いってことだろ?でも、SR以上とR以下のスキルには、優劣がある。
その証拠が、スミレの『バリアー』な訳。あれも防御用だけど、シールドやウォールより上じゃねーか」
『バリアー』とは、さっきスミレが披露していたスキルだ。使用者の全方位を覆うように、身を護る壁が出来ていた。強度も物凄く高いらしい。
「だが、バリアーは自分にしか掛けられないし、攻撃にも使えないぞ?」
「使う必要がねーんだろ」
カズオは、勝ち誇るように続けた。
「Rにはスキルが1つしかねぇから、中途半端な防御のスキルを攻撃にも使わないといけない。けど、URとSSR+にはスキルが3つあるから、攻撃スキルは攻撃で、防御スキルは防御なんだよ」
「言いたい事は分かるが。本当に、君達は優劣をつけるのが好きだな」
「は!俺は皆揃ってゴール!皆揃って1位!みたいなの嫌いなんだよ。社会に出たら、競争なんだしよー」
カズオは楽しそうに語っている。
レイカは特に言葉を返すこともなく、説明に戻った。
「まず、君達には王都に赴いて貰う。地図はこれだ。スキル画面で確認してくれ」
レイカが言うと、トウタの目の前に地図が表示された。
電子的な表示で、ピンチすれば拡大縮小もできるし、スワイプで動かすことも可能だ。
「地図の通り、この召喚神殿は山の上にあり、王都へは山を下りなければならない。魔物や盗賊もいる為、隊列を整える必要がある」
レイカが言うと、地図が隊列表に切り替わった。
「僕は雑用……か…」
隊列はカズオを先頭に、近接系のスキル保持者を前列に配置している。中列にシールドやウォールを持つ守備系のスキル保持者、後列にファイヤーボールなどの後方からの攻撃手段を持つスキル保持者を置いていた。
N+の1人とNの3人は雑用係として、隊列の外に記載されていた。
トウタは周りの視線が集まっているのと、くすくすと笑いが起きているのを感じた。恥ずかしくて顔を伏せるが、異議を申し立てる勇気もない。
実際問題トウタのスキルは、ディレイのみ。カズオの前に置かれて、弾除けにされるよりは人道的な待遇かもしれなかった。
「あちらの武器庫から、自分に合う武器を選んできてくれ。使い心地も大切だが、スキルなど、自分に合うモノを選んだ方が良いぞ」
レイカが言うと、皆から歓声が上がった。
レイカの示す先には物々しい扉があり、剣や盾のマークが描かれていた。
「カズオ、早く良い武器取りに行こうぜ」
ジュンがカズオに近付き、彼の肩を叩いた。
しかしカズオは、不愛想にジュンの手を払う。
「は?Rは後だろーが。普通に考えろ」
「あ、悪い……」
二人は仲が良かっただけに、皆の間にざわめきが広がる。
むしろジュンの方が、カズオより上の力関係だったのではないか?と、2人と同じグループの面々は顔を見合わせた。
「行こーぜ、スミレ」
「あら、私も一緒でいいんですの?」
「ああ。支援が期待できそうなのは、スミレ位だろ」
URのカズオとSSR+のスミレは、連れ立って武器庫の前に立つ。
彼らは扉を開けようとして、思い出したようにこちらを振り返った。
「おい、レン。お前も来いよ」
カズオに声を掛けられたレンは、慌てて扉に向かった。彼らが扉の中に消えた後には、新しい常識が学生たちの間に生まれる。
いや学校で教え込まれたテンプレートの中から、それぞれがふさわしいと思う物を取り出したと言うべきだろうか?
残りの皆は互いのレア度を再確認し、武器庫に入る順番の列を作り始めていた。
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