野狐と大正妖奇譚

狛枝ころや

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「あ」
夕方の街中でバッタリと出会ってしまったのは気まずい相手。いつもなら笑顔で挨拶を交わして、そのまま合流してしまったりもするのだが、今日はそうしづらいものがあった。

「…元気か?」
「ん…まぁ」
「そうか…」
「…漢三は?」
「まぁ…うん」

歯切れの悪い返事をしつつ、互いに表情を探る。
耐えられなくて何をいうでもなく口を開くと篠崎も同じタイミングで口を開いた。
「ぁ…ごめん、いいよ。なに?」
「あ…いや、その…ち、ちょっと一緒に歩かんかや?」
「…べ…つにいい…けど…」


並んでぶらぶらと歩く。たまたま公園を通ったので、ぎこちなくベンチに腰掛けた。
「…こ、このあと用事とか…あるん?」
「いや、もう帰るだけだけど?」
「そ、か…」

沈黙が流れる。

「…そろそろいいか?」
居た堪れなくなった漢三が席を立つと、篠崎がギュッと袖を引いた。
「…なに?」
「…」
篠崎は何も喋らない。

「…なぁ、行っていいか?」
「…っ嫌いに…なったかや…?」
やっと話した篠崎。俯いていて顔は見えないが、声が震えていた。

「……お前のこと?」
静かに。でも意地悪して聞いてやった。
「…」
ぴた、と静止した篠崎の膝を見ると、ぎゅ、と拳が握られている。

…敵わねえな。
大きなため息を吐いて、引かれる袖と反対の手で篠崎の腕を引いて立たせた。
「…っ」
驚いて顔を上げた涙目の篠崎をしっかりと抱きしめて言ってやる。
「俺がお前のこと嫌いになれると思ってんのかよ。馬鹿」
「~っ」
潤む瞳につられて唇を合わせようとしてハッと気づいた。ここは外だ。人目を気にして篠崎から手を離して解放してやる。
「…ちゃんと好きだから。大丈夫」
「…でも怒ってたやろ?」
「…それは……うん」
「…ごめん…本当…っ…ごめん」
ぐずぐずと泣き出した篠崎が、それでも袖を離してくれないから逃げようがない。
通りすがりのサラリーマンが訝しげな顔でこちらを見ながら去っていった。
「な、なぁ。とりあえずどっか違うとこ行かねえか?」
「ごめん…ウチが悪いのに、ホンマに…」
「なぁおい…分かったから…いいよ、許すよ」
「でも…」
「ああもう!家行くぞ」
ぐずる篠崎の手をグイグイ引っ張りながら自宅へと向かった。


部屋の戸を閉める。
とりあえずお茶の前に座らせた篠崎が、珍しく手を出さずに座っている。…相当こたえたんだろうな
目の前に座ると圧迫感が出そうだったのですぐ横に座ってやる。ちんまりと正座する篠崎をちらりと見やると視線に気づいたのかこちらを向いた。
「…ごめん」
「…もういいよ。悪気があってやったわけじゃないんだろ。それくらい分かる」
「…ごめん」
「分かったって」
「でも漢三の事傷つけた」
「…ああ」
「七尾ん時だってウチのせいや」
「……」
「本当に…ごめん」

ぐい、と肩を抱き寄せた。こつんと頭を合わせて言う。
「前に俺が謝らなきゃいけない時があったろ。おあいこだよ。それでいいだろ?」
「…でも」
「ああもううるさいなぁ。お前はどうしたら満足なんだよ」
「…酷く…してくれんかや…?」
「…はぁ…?」
「…なんか、やりたい事…とか…ないんか?なるべく酷くして欲しいんよ…頼む…」
「…そしたら気が済むのか?」
「…うん。漢三が傷ついた分だけ…同じだけしてや」
「……馬鹿かよ…」
「馬鹿でえいい。頼む…苦しゅうてたまらんのや、お願いやから」
「…今日だけだぞ」



ギシ…と縄が軋む。篠崎宗旦の手首に絞められた縄が柱に結えつけられていた。
「…始めるぞ」
「…うん…」
「篠崎、お手」
差し出された漢三の手に縛られた両手を差し出す。
「えらいな」
そう言って漢三が頭を撫でる。
「おすわり」
す、と正座すると、また褒めてくれた。
「伏せ」
ぺたりと床に伏せる。
「よし」
合図で体を起こすと漢三が顔を寄せてキスをしてくれた。
「ん、…良い子」
ふわふわの狐耳と尻尾を撫でて愛でてやる。
一度こうしてみたかった。逃げられないように捕まえて、俺だけのものにしたかった。
今日だけ、篠崎は俺のもの…。
頼まれて仕方なくだが、夢が叶ってしまうのはやはりどこか嬉しい。乗り気になっている自分を責めながらも、欲望には抗えなかった。

ゴクリと喉を鳴らして篠崎に囁く。
「あのさ…俺…昨日まで発情期で…」
ぴくりと狐耳が震えたのを見逃さなかった。
「ずっとお前でヌいてたんだよね」
ひくひくと狐耳が狼狽えている。
ぺろ、とその頬を舐めてやった。
「でも足りなくてさ…ね、俺のこと満足させてよ」
ごくり。篠崎が生唾を飲んだ。
「どうするか見てるから。始めていいよ」
あぐらをかいて目の前に座り込む。
篠崎が繋がれた腕の中に俺を迎え入れて、抱き寄せて唇を合わせてきた。
「ん…む…」
ちゅ、ちゅっと舌を絡ませる。篠崎が絡ませてきた舌になるべく受動的に応えてやる。
「は…っ」
とろ…っと涎が顎を伝って垂れた。
「あーあもったいない…」
ぺろ、と垂れつつある涎を舌で受け止めて顎から唇へと舐める。ちゅっと音を立てて唇を吸った。
「ほら、続きは?」
「ん…」
可愛らしい音を立てて篠崎が首筋にキスをしながら下へと下がっていく。抱き寄せていた腕から逃げてやった。
近寄ってやると篠崎が着物を脱がせようとしてくる。両手を縛っているからやりにくそうで、漢三は胸元を自分で開けてやった。そうすると必然的に着崩れて、裾はがばがばになる。あぐらをかいてるから尚更だ。
篠崎は床に両手を着きながら俺の胸を舐めている。舌のピアスが当たって硬い。ああ、篠崎の舌だ。

漢三の着物をさらにはだけさせる。既に生地が盛り上がっているところを退けると、ギチギチに勃ったそれが顔を覗かせた。
むわりとした雄の臭いに鼻をひくひくと動かす。縛られた両手で優しく擦ってやると、張り詰めた血管のスジがありありと分かった。
「…ふー…」
漢三が興奮しているのを押し殺して息を吐く。それを気にしながら優しく握って上下に扱いてやる。それだけでも気持ちいいらしくて彼の腰が震える。
「はぁ…」
熱い吐息が狐耳にかかる。くすぐったくてぴくりと耳が震えた。
ゴクリと飲まれる生唾の音も鮮明に聞こえて、自分まで興奮してきてしまう。どくん、どくんと脳を乗っ取りそうなほどうるさい心臓の音を押さえつけながら、漢三のそれに舌をちょんと触れさせた。
…すごく熱い。自分も、舌の先に触れるモノも。舌を一旦しまって、たっぷりの涎で濡らした唇で亀頭に吸い付いた。
チュ、と音を立ててやるといきなりブルンとそれが上を向いた。相当気持ちよかったらしい。ヒクヒクと揺れるそれが一層雄々しくて、また、漢三の息が荒い。
それでも篠崎の名を呼ばないのは、あくまでも篠崎が自分から動いたことを受け入れたいからなのだろう。
狐耳をピクリと震わせて漢三の息遣いを聞きつつ、あむ、と唇だけで亀頭を挟む。そのまま舌でチロチロと先端を舐めてやると、しょっぱい先走りが舌に触れた。ちゅる、とそれを啜り、こくりと飲み干すと全体を舐めにかかる。
漢三があぐらのまま後ろに手をつき、上体を起こしてこちらを見ている。舌をつけたままチラリと目線を配ると漢三は必死に耐える顔をしていた。
(我慢せんくてええのに…)
そう思って漢三の方を見ながら竿を舐め、縛られた両手でそれを扱いた。
再度改めて漢三を見ると、欲を写した瞳がぎらぎらとしている。ふー…と深く息を吐いた後、立ち上がった。
「…ごめん、やっぱ我慢できねぇわ」
そう言って、座っている篠崎のその口に肉棒を突っ込んだ。
「んぅ!?」
突然、ぐっと喉の奥まで突っ込まれて思わず声がくぐもる。二、三度抜き差しして解放された。
「ぷぁっ…は、はぁ…っ」
「腕上げて。こっちちょうだい」
縛られた両手を頭上から背中に回されて、両肘を支えに掴まれてまた喉の奥にそれが突っ込まれる。
「んぐ…ッ!ん、ぅ…ッ」
ズンズンと突かれる喉奥。しかしそれでもなるべく奥に咥え込みたくて喉を開く。
「ン、ぐッ…ぅ、うぇ…ッ!」
開きすぎて、びく、と反射でえづいてしまった。吐くのを我慢して飲み下すと生理的な涙が溢れる。
「は、ぁ…ッぁ、う…っ」
んく、とえづきを飲み込んで漢三の肉棒に舌をつける。
…自分から献身的にしてくれる篠崎に興奮して、いじめたくなってしまった。
「はは…っ」
ゴクリと喉を鳴らして、竿を舐めている篠崎の頭を鷲掴んだ。
「篠崎…」
呼ぶと篠崎は顔を上げ、涙に濡れた目でにこ、と微笑んでくれた。いじらしくてたまらない。ぎゅっと胸が苦しくなって、何も言えないままに篠崎の頭に腰を打ちつけた。

ぱちゅ、バチュッ
喉奥に竿が入り込んではえづくたびにギュッとしまって気持ちがいい。
「んゔっ!…は、ぁぐ…ッ、ン゛ぐ、ゔッ」
ぎゅぽっ!と喉から肉棒を抜く。篠崎の口からはだらだらと涎が落ちて、鼻水も涙も出ている。篠崎はズズ、と鼻を啜り、漢三の手から解放された腕でグイと顔を拭いた。

「…篠崎」
呼ばれて篠崎がぐちゃぐちゃの顔を上げた。
「かわいいな」
にこ、と漢三に微笑まれて、頭から頬、そして胸、脇腹へとしゃがみながら撫でられる。
ふう、と溜めていた息を吐くと、また名前を呼ばれて、今度はゆっくりと押し倒された。
「篠崎…」
「…ん」
「玩具、使っていいか?」
「…うん」
漢三、玩具なんて持っとったんや…と内心驚く。
よし、と一言呟いた漢三が引き出しからそれらを持ってきた。

「へ…?」
「これは玉口枷。これは張型、あと紐」
「…なにこれ…?」
「文句ある?」
「あ、いや…ない…」
ん、と返事して篠崎の口に玉の付いた猿轡を着ける。穴だらけの空洞なボールが口を塞ぐ。
「んんあうう?」
「意味あるのかって?あるよ。お前の声が余すことなく聞ける」
うっとりした顔で篠崎の頬を撫でる。いつもイきすぎて辛くなると唇を噛む癖のある篠崎の声が、ずっと聞きたくてたまらなかった。額にキスをして、紐を手に取り、股間をさする。
「ここに紐つけたことある?」
ふるふる、と横に首を振る篠崎。
「じゃあ今日は楽しめるな」
嬉しそうな漢三がそっと篠崎の股間に触れる。着物をかきわけて性器を露出させ、つつ、と優しくなぞる。
そしてするりと平たく細長い紐を陰茎の付け根につけられた。キツめに巻きつけられ、固く蝶々結びをされた。
ちゅ、と首筋を舐めながらモノをなぞり、そしてだんだんと指を増やして握り込む。太くなってきたそれを上下に扱き、くちくちと先走りを撫でる。
「ふ、ぅ…んん…っ」
ぴく、と篠崎の腰が震えて、漢三がそれから手を離した。
「はは、ビンビンじゃん」
押さえた指先から外れた陰茎が篠崎の腹をビタリと叩く。ガチガチに勃ったそれが愛しくて、劣情がゾクゾクと背筋を這い上がる。
「それじゃ、今からイッちゃダメね。」
「…ん…」
「まぁイきたくてもイけなくなるようにするんだけどさ」
「んぅ…?!」
陰茎の根本をキツく縛ると、勃起が長く維持される。と同時に射精管理も行える。自分でもやってみたことがあるが、死ぬほど苦しくて、死ぬほど気持ちよかった。あれを篠崎にさせることが出来たらと常々思ってはいた。実際行動に移すことは今までなかったのだけど。
「ん、んー!」
「なに、やだ?」
こくこく、と頷く篠崎の頬を撫でた。
「まだまだこれからなんだから。頑張れよ」
そう言って真っ黒な手ぬぐいを篠崎の目に当て、後ろでギュッと縛って目隠しする。
「…よし…今から犯すからな。よがってくれよ?」
スル、と胸を撫でた。




「んぁう…ッ!!」
ガク、と篠崎の背筋が反る。腕を頭上から後ろに回させた状態で固定して穴に肉棒を突っ込み胸に吸い付く。ゆるゆると腰を動かしつつちゅぱちゅぱ吸い付いてやると篠崎の口からは声が漏れた。
「ふぅ、う、ん…ッ」
ギチギチに勃った篠崎の陰茎がびくびくと震えている。あえてそれには触れず、中の刺激と、それ以外の所で快感を与えてやる。
「んんぅッ!!♡」
ゴリ、と中を抉ってやったらビクリと篠崎が跳ねた。
「はー…かわいい…かわいいよ…篠崎…」
思わず鼻息が荒くなってしまう。物足りないが、一旦竿を抜いて休憩させてやる。必死に呼吸をするから腹が凹んで可愛い。愛しくて腹筋を撫でてやった。

篠崎が落ち着いたのを見計らって、張型を取り出した。
「挿れるぞ」
なにを、とは言わずに伝えてワセリンを塗りたくり、ゆっくりと硬いそれを穴にねじ込んだ。
「う??」
篠崎は眉を顰めた。なんだかいつもと違う。冷たくて、硬い。漢三のもいつも固いけど、コレは何か違う。硬質的なもの。なんだ、これ…?疑問符を浮かべていると抜ける寸前まで行ったそれが一気に中を貫いた。
「ン゛ーー!!?!?!」
ゴリゴリゴリッ!内壁を擦り上げながら内臓を押される。
そして抽送が開始された。
グッチュグッチュと大きく揺さぶられたかと思えば、グチグチグチグチッと細かく連打される。
硬い、硬い。いつもと違う。怖い。漢三、漢三…ッ!
涙が出るも手ぬぐいに吸い取られて流れやしない。
「ゔ、ゔーっ」
「はは…っ」
「ぁあああッ!」
グリグリと一点をゴリ押しされて、ビクビク!と体が反応した。
怖い…!
「んんぅ!ぅあ、あーっ」
「んー?どうした」
「ンー!」
声をあげて必死に伝えようとするも、漢三の顔も見えないし言葉にもならず何も伝わらない。
「はは!何も分かんねえなあ」
漢三がするりと腹を撫でて、またその硬いモノが中を這った。
とんとん、と今度は優しく奥を叩かれる。奥に当てたままグリグリと押し付けて動く。
「んん…ッ」
身体を捻り抵抗する篠崎を見て漢三は余りの縄を取り出した。
「逃げるなよ。お前が言い出したんだぞ」
慣れた手つきで篠崎の手は後ろに回ったまま首元にまとめて縛り付けられ、脚は膝を畳んで太ももで固定された。
「ん、ん゛ーッ」
「うっわ…エッロ…」
全身を縄で縛られた上、目隠しに猿轡、そしてガチガチに勃ったそれはキツく固定されている。
「…はー…癖になりそう」
ペロ、と舌舐めずりをした漢三が張型をまた動かし始めた。
「あ、ぐ…ッ!は…ぁ…ッ」
硬いそれが体内をぐちゃぐちゃにしていく。
ズルリと出してはゆっくりと中に沈める。また抜いては挿れて…
「あ゛ぁあッ!!!」
ドチュ!といきなり突いた。そしてガツガツと掘り進め、勢いよく抜き取った。
すると荒い息を吐く篠崎の尻の穴が、ぱくぱくと開いたり閉じたりしている。

「あー………」
抑えきれない興奮が意味を持たずに声に出て…すう、と一呼吸置いてその穴にむしゃぶりついた。
「ぅあ!?」
びくりと驚いた篠崎を置いてけぼりにして舐める。尻を揉みしだきながらジュルジュルと啜り、舌を突っ込んで中を舐め回した。
「うゃあ!ぃ、んぁ…ッ!」
篠崎の足の指先がピンと伸びてぴくぴくと震える。気持ちいいんだろうな。
ちゅぽッと舌を抜き、汚れた自分の口元を舐める。美味いもんではないが篠崎のモノは何でも欲しい。
腹壊すだろうな、と思いつつも全てゴクリと飲み干した。

一旦落ち着こうと一息吐くが、やはり篠崎の姿が淫猥でどうにも虐めたくてたまらない。
普段は我慢しているタガが、外れかかっていた。
ゴクリ、喉を鳴らして篠崎に問いかける。
「なぁ、酷くして…いいんだよな?」
「ん…っ」
篠崎の狐耳がへにょりと垂れて、尻尾も項垂れた。
「なぁ…いいんだよな…?」
念を押すと篠崎は躊躇った後小さく頷く。
「はは…」
良い子、と覆い被さって頭を撫でてやる。そのまま狐耳もふわふわと撫でる。その耳元でそっと囁いた。
「すっげぇエロいよ、篠崎…」
「んぅ…!」
びくん、と震えた篠崎の反応が楽しくて更に責めた。
「はは…こんな格好して…酷くしてってお前さぁ…本当にはしたないな」
「…っ」
すす、と陰茎の先を指で辿る。
「変態」
「ぅ、」
「なんか言ってみろよ。このド淫乱がよぉ」
「~~ッ!」
ピン!と指で陰茎を弾かれて、ビク、と篠崎の身体が震える。そして漢三の手によって胸の突起を弄られる。
「ほら、気持ちいい?」
「ん、ん」
こくこく、頷くと漢三が笑う。
「ふふ。じゃあコレは?」
蜜の濡った先端に指先で触れられる。少しだけ。
「ぅう…っ」
こく、と頷くと、あはは!と笑う声が聞こえた。
「じゃあお預けな」
「んぅ!?」
うーうーと声を上げて強請る。さっきから寸止めばっかりで辛い。
「んー?何言ってんだかさっぱりだな。もっと焦らして欲しいんだな?」
「んんぅう!」
「分かった分かった」
ほら、とゆったり竿を撫でられる。指先だけでそろそろとなぞられるも、敏感になっているソコは普段以上に快感を伝えてきた。
「んんぅ…ッ♡」
背筋に穏やかな快楽が走る。ぞわわ、と総毛立つ。
気持ちいい…♡
意識を竿に集中していると、尻も撫でられた。
むちむちと揉みしだかれて、漢三が息を吐いた。
「あー…エッロ…」
そして覆い被さっていた漢三が体を起こす。
「なぁ、中欲しいか?」
「ん、ん」
頷くと、そうか、と一言呟いてそれを擦り付けてきた。
「これがいい?」
ふるふる、と首を振る。さっきの冷たくて硬い方だ。
「それともこっちがいい?」
ぴと、と熱い肉棒が当てられる。
こくこくと頷いてみせると、漢三は嬉しそうに言った。
「ちゃんと俺のが分かるんだな」
「んんぅ」
当たり前やろ、と言ったつもりが言葉にならない。
「そろそろどれか外してやろうか」
うーん、と考えて、漢三が脚の縄を外してくれた。解放されて楽になる。ぐったりと力を抜いた。
「股間丸見えだぞ」
言われてしまうとちょっと気になる。む、と眉間に皺を寄せて少しだけ脚を閉じた。それをグイと阻止される。
「俺には見せたままでいいんだよ」
…なら言わんでも良かったやん。
「何、不服?」
「…んーん」
「ふぅん」
固定されてガチガチなままの陰茎をピンと指で弾かれる。
「これ、あいつらに見せたらなんて言うだろうなあ」
ドキッとした。正直なところ、いつもの面子、全員と今までに関係を持ったことがある。
「なぁ?なんて言うと思う?」
「…」
「…なんて言われたんだよ?なぁ。」
静かに怒気を孕んだ声で問われた。
「ん…んんぁう…」
「あ、喋れねえんだったな。悪い。聞いてみただけだよ」
ズキリと痛む心を見ないふりしながら漢三の手に感覚をむける。
太腿から尻を撫でられ、陰茎も撫でられる。スリスリと亀頭を撫でられれば先端からは蜜が溢れた。
そっと漢三が抱き起こしてくれて、体を彼にもたれかける。
すると囁かれた。
「俺が何にも知らないでお前のこと抱いてると思ってんのか?」
「…!」
「いつ、誰に抱かれたか…知ってんだよ。俺は…」
「…っ」
「俺の鼻が良いの知ってんだろ…!」
何も答えられない。
「誰に抱かれたかくらい…匂いでわかるんだよ…クソ…」
ぎゅ、と抱きしめて肌に爪を立てられる。
「…お前と俺は友人以外の何者でも無いんだろ。だからお前が誰と寝ようが俺には関係ねぇ。お前はそう思うだろうけど…」
ぐ、と一際強く爪に力が入る。
「俺には関係あるんだよ…!俺が居ない時にお前が誰かに抱かれてるってだけで俺は…」
そっと体を離された。
「苦しいよ…」
聞こえる声はか細くて震えていた。
「…ごめん。恨みごと言いたかったわけじゃ無いのに」
スン、と鼻を啜る音がして、目隠しが外された。
少し目の赤い漢三がこちらを見ていた。
「んん…」
視線を合わせていられなくて、うろうろと目が泳ぐ。
「あはは、もっかい目隠ししとくか」
そう言って、また手ぬぐいをつけてくれた。
「…さて」
そう言って漢三が何かを取り出す音がした。そして猿轡が外される。
「はぁ…っか、漢三…?」
漢三は無言でコルク瓶を開けた。ざらら、と錠剤が雪崩れる音がして、また蓋が閉められる。コトリと卓に置く音がした。
「篠崎、今からこれ渡すから飲んでくれよ」
「え、渡す…たって…手塞がれて…」
出したその錠剤を舌に乗せて水を口に含み、篠崎に口伝いで飲ませた。
「わ、んむ…っんぅ…っ」
ごく、と飲み込んだ篠崎に二度、三度と同じ様にして錠剤をいくつか飲ませた。
「ん…っな、なん、なんなんこれ?甘い…けど…」
「ん~なんだろうな?」
「えぇ…?体に悪いもんとちゃうんか…」
「はは。これ、結構気持ちいいんだぜ」
そう言って瓶を棚にしまった。
「さ、仕切り直しだ」


「あぅあぉうぅッッッ♡ん゛ーーーッッ!!!♡」
「あっはは!」
あの後また猿轡を着けられた篠崎は漢三に貫かれて涎を垂らして喘いでいた。
後ろに回された手は手首こそまだ縛られたままだが解放され、床に手をつき四つん這いで犬の様に呻く。
「ほらほら、気持ちいいか?」
「ゔーッ♡♡」
ズン!と突き上げられて耐えきれずに肘を折ってうつ伏せた。
「は、はぁッ」
「ほら、喘げよ!」
ガツガツと腰を打ち付けられてたまらず叫ぶ。
「んんぅあぁぉおおッ♡」
は、は、と必死に息をする。垂れる涎なんかにかまってられないくらいに気持ちよくて、なんかもう…だめ…っ
「んあああああッ♡」
ガクガクと腰が震えるも射精には至らない。イく寸前で気持ちいいところを外される。
「は…ッ」
ズル…ッと穴から陰茎が抜かれて、支えきれなくて倒れ込んだ。床と腹の間で潰された陰茎が脈打って仕方ない。
「あ、あぅう…ううっ…!」
我慢できなくてそれに手を伸ばし扱こうとした。
「こら」
ぱっと手を掴まれてしまう。
「んー!んぅう…っ」
「まだイっていいって言ってないだろ」
「んんんぅううう…ッ」
顔をブンブンと横に振り、もう限界だと必死に伝える。
「だーめ」
「ゔ~…ッ」
篠崎の眉がへにゃへにゃと悲しげに歪んだ。
「んははっ!そんな悲しい顔するなよ」
漢三が手ぬぐいと、そして猿轡を外してくれた。
「は、あ、ぁ…っん…っか、かんぞ、かんぞぉ…っ」
ぼろ、と涙をこぼして懇願された。
「も、もうあかん、もぉだめ…っイきたい…っ」
ぞくぞくっと加虐心が燃え上がり思わずニヤついてしまった。はは…と乾いた笑いが出る。
「はー…っ」
「漢三…ったのむ…っ」
「じゃあイかせてやろうか」
「漢三…!」
「よしよし」
頭を撫でてやりつつ仰向けにさせた篠崎に覆い被さりまた肉棒を穴に挿れる。ゆるゆると中を撫でてやりながら性感を高めていく。
「あ、ぁ♡か、漢三…っ」
「ん?もうイきそ?」
「い、いく、イく、イく…っ」
緩い刺激なのにびくびくと膝が震える。あ、あ、い、い…
「はいおしまい」
「えっ…!」
「ん?イくって言ったじゃないか」
「で、でもまだイってな…」
「はいはい、続きしような」
「ちょ、えっ待っ、あ、あっあっあっ♡」
「やべ、調子乗るとイかせちまう」
ふぅ、と息を吐いて腰を止めた。
「イ、いぎだい…っ漢三…っかんぞぉ…っ」
「ふふ、キュンキュン締め付けてきてて気持ちいいぜ、篠崎」
「う、ゔぅ…っもぉやだぁ…っもぉむりっもぉむりぃやだぁいかせてぇッ」
「はっ子どもみたいに騒ぐなよ、大人だろ?」
「むりぃいいいやだあああ」
「お仕置きだよ。誰にでも身体差し出しやがって」
くりくりと指先で尿道口を撫で回してやる。
「ごめんなさいっごめんなざいっごめんなざっゔーっっっ♡」
「おら、気持ちいいかよ」
「きもちいいっきもちいーからっもーやめてもぉやだっやだぁっ」
「あは…っかわいい…っ」
垂らした涎を絡めて陰茎を少しだけ慰めてやった。
「ん゛ーーーッッッむりむりむりむりむりッッッやだヤダヤダヤダやだぁ!!!」
「あっはは!」
「ん゛ゔううぁあああッッッ♡♡♡」
「お前が悪いんだぞ。この淫乱」
ゆるゆると中を揺する。
「あああああごめんなざいッこ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛ッッッッ」
「はは…っ」
ふー…と大きくため息をついた。
(そろそろいいか…満足だ)
「うっ、う、うぅ…っ」
「篠崎、篠崎」
ぺちぺちと頬を叩いて、泣きべそをかいた篠崎にこちらを向かせる。
「ひぐ、…ひっく、う、かんぞ…?」
「ごめんな、お待たせ。イっていいぞ」
「へ…?」
しゅる、と陰茎につけていた蝶々結びを解く。赤黒くなってしまっているそこをそっと撫でて、そして篠崎を抱きしめてキスをした。
「んぅ…っ」
「…は、篠崎…っ」
「か、んぞ…っ」
「良いとこ突いてやるから、思いっきりイけよ?」
「…ん、うん、うんっ」
もう一度触れるだけの口付けをして、ゆっくりと腰を引き、そしてバチュ!と前立腺を思い切り押しつぶした。
「ひぁあああああッッッ♡♡♡」
ゴツッガツ、がちゅッごんごんがつッと打ち付けてやる間篠崎は髪を振り乱して暴れた。
「あああぅううううううッッッ♡♡♡♡うあああッッッ」
暴れる篠崎の陰茎からはずっと白濁がトロトロ流れ続けていて、篠崎が暴れるから、腹だの胸だの布団だのにひどく飛び散る。
そして最後に漢三も今まで我慢していた精を思い切り篠崎の中にぶちまけた。
「く…っ…はぁ…っは、はぁ…ッ」
「あ、はっ…はーッひっ、ひっひぐ、ぅっ」
だるくなった体を無理矢理叩き起こし、泣き続ける篠崎の拘束を解いてやる。縄の跡をさすってやり、ぎゅ、と抱きしめてやった。
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mono黒
BL
呉服屋の次男、李仁と和装モデルの棗の激しい恋の物語。 一目惚れから発展した恋は、その愛の深さの分だけ醜悪だった。 愛=幸せ とは違う愛がある。 執着は愛なのか苦しみなのか。龍虎の愛が火花を散らす。 それは2人だけにしか理解出来ない愛の境地。 本当はこれはBLと言う括りしか無いのかと、作者自身悩ましい作品です。しかし男同士の恋愛を描いている以上、それはBLなんだと思います。 ★マークは性描写もしくは暴力描写が有ります。ご注意ください。

うつくしき僧、露時雨に濡れ

餡玉(あんたま)
BL
とある山中の小さな村に、美しい顔かたちをした若い僧がいた。名を、翠円という。翠円は故あって、独りで鄙びた寺を預かっている。とある日、その寺で、三人の賊が酒盛りをしている場に出くわした。『尻穴を差し出すならば村を襲わぬ』という賊からの申し出に身を差し出す翠円であったが、雄々しい男たちから与えられる熱い責め苦に、身体は甘い快楽を拾ってしまい—— ☆表紙を自分で描いてみました(〃ω〃) タイトル文字はかんたん表紙メーカーさんより。

旦那様と僕

三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。 縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。 本編完結済。 『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。

色褪せない幸福を

三冬月マヨ
BL
雪緒の回顧録。或いは手記。 思い出した事を徒然と雪緒が語ります。 『旦那様と僕 向日葵の庭で』を読んだ後に読まれる事をお勧めします。

寿命が来るまでお元気で

ゆれ
BL
二十まで生きられない――生まれてすぐにそんな予言を受けながらも異界への門番として役目をまっとうしていた来良。しかしあとひと月でその日を迎えるというときに、因縁のあやかしが再来する。半死半生の目にあわされ、生きたいかと問われて、否と答えたにもかかわらず目覚めるとふたりの関係は一変していた。※もふ要素はごく薄いですごめんなさい……

月夜の湖 (改訂版)

志生帆 海
BL
── 帝の美しい皇子は、早く次の世へ行きたいという願いだけを胸に生きていた ──  平安時代。帝の美しい息子「洋月の君(ようげつのきみ)」は、華やかな女性との遍歴の中に隠された、帝との秘密を抱えていた。そんな暗い世界で出会ったのは、一人の貴公子「丈の中将」(じょうのちゅうじょう)だった。 いきなり痛くて切ない展開から始まりますが、その後甘い雰囲気へとなっていきます。凌辱描写ありですが、最後は甘いハッピーエンドですので、ご安心を。 有名な平安物語のエッセンスをお借りして、別連載している『重なる月』『悲しい月』につながるお話しを書いていきます。合わせてお読みいただけると世界が広がります。

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