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第7話 幸子の父とオーパーツ
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幸子の母が足しげく、硲宗司(幸子の父:母京香の嘗てのパトロン)の病院へ通いだし始めると、夜は一人になることが多くなったためか、やたらと僕の部屋にやってくるようになっていた。当然ながら昔は足を踏み入れたことが無い領域に侵入し始めた、珍獣はパジャマ姿でウロウロしながらチョッカイを出して来る様になった。最初はウザイと思い追い払おうとしたが、それが無駄なことが分かったので、このごろは無視を決め込んでいたが、
「レポート書いてるんだから邪魔するな!」
「おう、それなら見せてやるぞ。」
「いい、自分でやるから。」
一段落して、居間へ行ってお茶を作って持ってくると、
「俺のベットで寝るな。自分の部屋に行けよ。」
「何もなしか…」
「お茶やるから、出てってくれ。ああ、それと週末には雪乃が戻って来るから。来週一杯母の墓参りも兼ねて実家に行ってくる予定だ。北のかんなぎ(巫)、婆ちゃんにも会ってくるつもりなんだが。幸子も行かないか?」
「行っても良いのか?」
「どうせ、婆ちゃんはお見通しだろうから・・・」
「ふん、そうだな。大事な孫だろうからな。」
「いや、大事なのは、曾孫かもしれない。」
「曾孫?」
「僕らの子供てこと。幸子は既に一人予約が入ってるだろう、硲家のさ。」
「え、てことは、かんな婆ちゃんの所もて事か?」
「うん、本来なら母の梢が正当な後継者なんだけど、母無き今では、俺か雪乃が婆ちゃんの後継者に成るはずだったんだろうけど・・・かんなぎに成るためには、三歳位からそれなりの修行が必要なんだ。そうしなかったと言う事は、俺か雪乃のどちらかの子供が後継者候補って事になる。」そんな話を終えてから、遅い朝食をとり、先日訪れた鎌倉の幸子の父の所での出来事を思い返していた。
近くに源氏山を頂いた、硲家の本家は、一般の通りからはうかがい知る事が出来ない様な、木立の中に在った。確かに此所なら、将棋のトーナメントをするには打って付けな場所で、巷の雑踏からは隔絶されているとも言って言い環境であった。知らない人間が迷い込んだら、何処かの山寺だろうと思うに違いない配置をしている幾つかの平屋から成り立っていた。幸子の前に突然現れ、忽然と消えかけている硲家の現頭首、硲宗司は、無理を承知で病院を抜け脱し、この本家に僕達、幸子と僕を招待してくれていた。
「俺が死ねば、名目上本家の血は途絶えるのだが・・・後は、幸子に期待するしか無いんでな、兄ちゃん頑張ってくれるかい。」
「はあ・・・」唐突な突っ込みに面食らったが
「僕の方も事情が在りまして、幸子には頑張ってもらわないといけないんです。」そんな会話を切っ掛けに、暫く朱鷺家の事情も聞いてもらっていた。
「不思議な縁だよな。ほったらかして置いた俺の娘が、朱鷺家の血筋の兄ちゃんと絡んでくるとは・・・」
そう言うと、幸子の父は、茶を立ててくれた。部屋の隅の炉に幾つか炭を入れ直してから、和菓子を僕らの前に出して、
「まーあ、固くならずに、付き合ってくれ。」と言って、お手前を披露し、略式だからと言ってそれぞれに、立てた茶を出した。
僕は、かんな婆から教わったやり方で、その茶を受けていると、
「兄ちゃん、心得が有るんだな。」
「祖母から教わったものですけど。」
「朱鷺家の総代かい?」
「ええ、暫くご無沙汰していますが。」
「この界隈のしきたりで、一寸改まった話の時は、茶席か酒席を設けるんだ。俺は今、酒はドクターストップだからな。」
そう言ってから、ひとしきりお茶茶碗の解説と、床の間に飾った桔梗の花の由来を話してから、
「昼にするか。」と言って、身の回りの世話をしてくれている女性に、声を掛け、箱膳に乗せられたうな重を持ってこさせた。
「俺の先の事もあって、使用人は皆、暇を出してしまったので、ろくな物がないが、まー食べてくれ。」
本人は、もう一寸サッパリした物だと言って、ひつまぶし茶漬けを食べていた。
昼食後、屋敷の案内をするっからと言って、苔むした日本庭園や東屋、一寸した観音堂を見てから、立派な土蔵に入り、硲家の家宝と言われる品々を見せてもらったが、僕には、その価値が如何ほどなのか分からないため、言われるままに聞いていた。そんな中で
「兄ちゃんは、確か工学部系だっけか・・・なら、この機械、何だか分かるかい。」とガラス張りの重厚な容器に入れられた、何かの紋章の様なものが刻まれた、金属製の容器を見せた。その周りには、明らかにガイガーカウンターと思われる装置が設置されいて、時折ピーピーとカウンター音がしていた。
「放射性物質ですか?」
「なんだか分からんが、先代位の頃からこのピコピコ言う装置を取り付けて有るらしいが、本体はもっと前から有ったもので、北欧の国のものだそうだが、ご先祖さんの誰かが、かけ将棋に勝って手に入れた物だと言うんだが、調べたら結構危ないものらしく、こんな状況になってるんだ。元の持ち主に返すにも、さっぱり由来がわからないので困っている代物さ。」僕は、許可を得て、携帯で写真を取って置いた。
後日、その写真を綾佳さんに見てもらった所、とんでもない代物である事が分かり、一寸した騒動に巻き込まれる羽目になってしまっていた。
「レポート書いてるんだから邪魔するな!」
「おう、それなら見せてやるぞ。」
「いい、自分でやるから。」
一段落して、居間へ行ってお茶を作って持ってくると、
「俺のベットで寝るな。自分の部屋に行けよ。」
「何もなしか…」
「お茶やるから、出てってくれ。ああ、それと週末には雪乃が戻って来るから。来週一杯母の墓参りも兼ねて実家に行ってくる予定だ。北のかんなぎ(巫)、婆ちゃんにも会ってくるつもりなんだが。幸子も行かないか?」
「行っても良いのか?」
「どうせ、婆ちゃんはお見通しだろうから・・・」
「ふん、そうだな。大事な孫だろうからな。」
「いや、大事なのは、曾孫かもしれない。」
「曾孫?」
「僕らの子供てこと。幸子は既に一人予約が入ってるだろう、硲家のさ。」
「え、てことは、かんな婆ちゃんの所もて事か?」
「うん、本来なら母の梢が正当な後継者なんだけど、母無き今では、俺か雪乃が婆ちゃんの後継者に成るはずだったんだろうけど・・・かんなぎに成るためには、三歳位からそれなりの修行が必要なんだ。そうしなかったと言う事は、俺か雪乃のどちらかの子供が後継者候補って事になる。」そんな話を終えてから、遅い朝食をとり、先日訪れた鎌倉の幸子の父の所での出来事を思い返していた。
近くに源氏山を頂いた、硲家の本家は、一般の通りからはうかがい知る事が出来ない様な、木立の中に在った。確かに此所なら、将棋のトーナメントをするには打って付けな場所で、巷の雑踏からは隔絶されているとも言って言い環境であった。知らない人間が迷い込んだら、何処かの山寺だろうと思うに違いない配置をしている幾つかの平屋から成り立っていた。幸子の前に突然現れ、忽然と消えかけている硲家の現頭首、硲宗司は、無理を承知で病院を抜け脱し、この本家に僕達、幸子と僕を招待してくれていた。
「俺が死ねば、名目上本家の血は途絶えるのだが・・・後は、幸子に期待するしか無いんでな、兄ちゃん頑張ってくれるかい。」
「はあ・・・」唐突な突っ込みに面食らったが
「僕の方も事情が在りまして、幸子には頑張ってもらわないといけないんです。」そんな会話を切っ掛けに、暫く朱鷺家の事情も聞いてもらっていた。
「不思議な縁だよな。ほったらかして置いた俺の娘が、朱鷺家の血筋の兄ちゃんと絡んでくるとは・・・」
そう言うと、幸子の父は、茶を立ててくれた。部屋の隅の炉に幾つか炭を入れ直してから、和菓子を僕らの前に出して、
「まーあ、固くならずに、付き合ってくれ。」と言って、お手前を披露し、略式だからと言ってそれぞれに、立てた茶を出した。
僕は、かんな婆から教わったやり方で、その茶を受けていると、
「兄ちゃん、心得が有るんだな。」
「祖母から教わったものですけど。」
「朱鷺家の総代かい?」
「ええ、暫くご無沙汰していますが。」
「この界隈のしきたりで、一寸改まった話の時は、茶席か酒席を設けるんだ。俺は今、酒はドクターストップだからな。」
そう言ってから、ひとしきりお茶茶碗の解説と、床の間に飾った桔梗の花の由来を話してから、
「昼にするか。」と言って、身の回りの世話をしてくれている女性に、声を掛け、箱膳に乗せられたうな重を持ってこさせた。
「俺の先の事もあって、使用人は皆、暇を出してしまったので、ろくな物がないが、まー食べてくれ。」
本人は、もう一寸サッパリした物だと言って、ひつまぶし茶漬けを食べていた。
昼食後、屋敷の案内をするっからと言って、苔むした日本庭園や東屋、一寸した観音堂を見てから、立派な土蔵に入り、硲家の家宝と言われる品々を見せてもらったが、僕には、その価値が如何ほどなのか分からないため、言われるままに聞いていた。そんな中で
「兄ちゃんは、確か工学部系だっけか・・・なら、この機械、何だか分かるかい。」とガラス張りの重厚な容器に入れられた、何かの紋章の様なものが刻まれた、金属製の容器を見せた。その周りには、明らかにガイガーカウンターと思われる装置が設置されいて、時折ピーピーとカウンター音がしていた。
「放射性物質ですか?」
「なんだか分からんが、先代位の頃からこのピコピコ言う装置を取り付けて有るらしいが、本体はもっと前から有ったもので、北欧の国のものだそうだが、ご先祖さんの誰かが、かけ将棋に勝って手に入れた物だと言うんだが、調べたら結構危ないものらしく、こんな状況になってるんだ。元の持ち主に返すにも、さっぱり由来がわからないので困っている代物さ。」僕は、許可を得て、携帯で写真を取って置いた。
後日、その写真を綾佳さんに見てもらった所、とんでもない代物である事が分かり、一寸した騒動に巻き込まれる羽目になってしまっていた。
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