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第1話 数年後の京都の出会い
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和服姿のシオリは、背筋を伸ばしたままの姿でベットの端に座っていた。誠司が近づくと、
「今日は、付き合ってくれて有難う。」と言って笑顔を見せてくれた。誠司は必死に想いを抑えながら
「こんなんで良かったのか?京都に居るのにたいした所も知らないで、悪かったな。」
「うんん、私も修学旅行以来でとっても楽しかった。大学に入ってから殆ど、旅行なんてしたこと無かったし。」シオリの言葉で、誠司はシオリの横に座りながら言った。
「今朝は驚いたぜ、和服姿のシオリを見たのは初めてだったから・・・綺麗だよ、お世辞無しにな。」シオリは少し恥じらう様な仕草で
「有難う。誠司にそんな事言われたの初めてだわ。」シオリの弾んだ声だけが部屋に染み込んでいく中、誠司は手持ち無沙汰そうに、部屋を見回し、シオリの旅行カバンやハンガーに下がったままでまだ収納されていない、シオリの洋服を眺めてから訊いた。
「今夜は、ここに泊まる?」
「うん、母がお世話になった、置屋の叔母さんが入院したって聞いたんでお見舞いがてらに来たのよ。昨夜はそのおばさんの家に泊めさせてもらったの。鎌倉の東堂の家にも何度か来た事がある人よ。そしたらねその叔母さん、先月手術して今はもうケロリとしてるの、平気で自分は乳がんで先が無いからとか言い出して、私拍子抜けがしちゃったわ。そして、形見だからとか言って、着物を沢山出してきたのよ。それでこの着物を頂いたのよ。今朝は着付けまでさせてもらってね。」
「ふーん、脱いだらまた着れるのか?」
「一人じゃ無理だわね。脱がせたいの?」
「ああ、俺を部屋に誘ったのは訳が有るんだろう?」シオリは暫く黙っていたが、
「健司から聞いてるんでしょ?あなた達喧嘩ばかりしてて仲が悪いくせに、そう言う話はちゃんと連絡しあってるんだから、私の知らない間に。」少し腹立たしそうにシオリは言った後
「健司の後じゃいや?私はどっちが先でも良かったの。分かってもらえるならね。」
「健司からの電話の後、二日ほど頭に血が上って、何も手につかなかった。」
「健司が先だったから?」
「うん、それもあるが、それで健司は納得したのか?」
「納得しなかったら、させなかったわ。」
「じゃー俺が納得しなかったら、如何するんだ?」
「こんりんざい、口を利いてやらないし、触らせてもやらない。」
「だが強引に、しちまう手だってあるぜ。あの時の海の様にな?」
「でも未遂だったでしょ。それにそんな事したら、これ使うから。」そう言ってシオリは手に隠していた防犯ブザーの様な物を見せた。誠司はそれを見た瞬間、高ぶっていた気持ちに水をかけられた様に萎えて行く自分を感じた。
あの夏の事件以来、二年ほど三人はまともに顔を合わせて居なかった。健司は、家を出て都内で下宿暮らしを初め、京都の大学に進んだ誠司は、夏休みでも顔さえ見せなかった。そんな日々の中シオリはこまめに、二人に葉書を出して近況やら、鎌倉の東堂家の事やら、周囲の山々の情景、こぢんまりとした鎌倉の海岸の様子などを綴った。
「今日は、付き合ってくれて有難う。」と言って笑顔を見せてくれた。誠司は必死に想いを抑えながら
「こんなんで良かったのか?京都に居るのにたいした所も知らないで、悪かったな。」
「うんん、私も修学旅行以来でとっても楽しかった。大学に入ってから殆ど、旅行なんてしたこと無かったし。」シオリの言葉で、誠司はシオリの横に座りながら言った。
「今朝は驚いたぜ、和服姿のシオリを見たのは初めてだったから・・・綺麗だよ、お世辞無しにな。」シオリは少し恥じらう様な仕草で
「有難う。誠司にそんな事言われたの初めてだわ。」シオリの弾んだ声だけが部屋に染み込んでいく中、誠司は手持ち無沙汰そうに、部屋を見回し、シオリの旅行カバンやハンガーに下がったままでまだ収納されていない、シオリの洋服を眺めてから訊いた。
「今夜は、ここに泊まる?」
「うん、母がお世話になった、置屋の叔母さんが入院したって聞いたんでお見舞いがてらに来たのよ。昨夜はそのおばさんの家に泊めさせてもらったの。鎌倉の東堂の家にも何度か来た事がある人よ。そしたらねその叔母さん、先月手術して今はもうケロリとしてるの、平気で自分は乳がんで先が無いからとか言い出して、私拍子抜けがしちゃったわ。そして、形見だからとか言って、着物を沢山出してきたのよ。それでこの着物を頂いたのよ。今朝は着付けまでさせてもらってね。」
「ふーん、脱いだらまた着れるのか?」
「一人じゃ無理だわね。脱がせたいの?」
「ああ、俺を部屋に誘ったのは訳が有るんだろう?」シオリは暫く黙っていたが、
「健司から聞いてるんでしょ?あなた達喧嘩ばかりしてて仲が悪いくせに、そう言う話はちゃんと連絡しあってるんだから、私の知らない間に。」少し腹立たしそうにシオリは言った後
「健司の後じゃいや?私はどっちが先でも良かったの。分かってもらえるならね。」
「健司からの電話の後、二日ほど頭に血が上って、何も手につかなかった。」
「健司が先だったから?」
「うん、それもあるが、それで健司は納得したのか?」
「納得しなかったら、させなかったわ。」
「じゃー俺が納得しなかったら、如何するんだ?」
「こんりんざい、口を利いてやらないし、触らせてもやらない。」
「だが強引に、しちまう手だってあるぜ。あの時の海の様にな?」
「でも未遂だったでしょ。それにそんな事したら、これ使うから。」そう言ってシオリは手に隠していた防犯ブザーの様な物を見せた。誠司はそれを見た瞬間、高ぶっていた気持ちに水をかけられた様に萎えて行く自分を感じた。
あの夏の事件以来、二年ほど三人はまともに顔を合わせて居なかった。健司は、家を出て都内で下宿暮らしを初め、京都の大学に進んだ誠司は、夏休みでも顔さえ見せなかった。そんな日々の中シオリはこまめに、二人に葉書を出して近況やら、鎌倉の東堂家の事やら、周囲の山々の情景、こぢんまりとした鎌倉の海岸の様子などを綴った。
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