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冒険者パーティーイレヴンズ
うん、メイドの拍手がうるさい!!
しおりを挟む「どうなの、カエル肉美味しい?」
森に入らずにちゃんと待っていたユラにハルが話しかけにいく。
なんで1人でさっき買った腐りかけのカエル串を食べてるんだろ。
いや、食べたいとかそういうんじゃないけど。
「エメ、偉いですね!よく案内してくれました、よしよしよーし、よーし、ちゅちゅちゅちゅ」
よし、王女様の事は視界に入れないようにしよう、そのうちR指定がつく。
「だめだよ、塩は腐りかけの風味に負けてるし、タレの方はタレも危険、タレが危険」
両手に塩とタレのカエルを装備して弱々しく首を振るユラの額にたらりと汗が、そしてそれをすかさずハンカチで拭き取るメイドのラズ。
「無理して食べずに捨てなさいよ!お腹壊すわよ!森でお腹壊すとか最悪よ!葉っぱよ、葉っぱ!」
葉っぱ、何がとは言わないけど葉っぱだな。話を聞きながら顔を歪めてしまう、森で葉っぱは辛すぎる。
「ダメ!自分が食べると買った物を途中で残すなんて僕のプライドが許さないよ」
「何そのプライド、職業剣士じゃなくてフードファイターにすれば?」
「ユラ様、大丈夫です。ラズはハンカチや布をいっぱい持ってますから」
「ありがと、ラズちゃん。もしもの時は借りるかも」
なんて最悪なもしもなんだ。あの人、見た目は女性に人気ありそうな長身美少女なんだぜ。
「仕方ないわね。私も私の錬金スキルで木片を紙に出来ないか試してみるわ」
「いや、その前に腹の薬を作ればいいだろ。正露丸みたいなの」
「・・・なるほど、それもそうね。ほら、飲みなさい私の作ったポーション、私の回復魔法が込められてるからきっと何にでも効くわ」
出た!宿屋のシャンプーから作られたという謎のポーション、ハルは取り出した瓶を両手の塞がったユラの口元に持っていって飲ませてやってる。
メイドが裏切られたみたいな顔してる・・・自分が飲ませたかったんだろうな。
「うっ、ラムネ美味しい!意外とカエル肉との相性が抜群!」
どうやったのかラムネ味って話だったな、元気を回復したユラがパクパクと食べ進める、コンビニのおにぎりサイズの肉があっという間になくなっていく、普通にデカイ肉なんだよな、大きさ考えるとそんなにボッタクリ価格じゃなかったのかもな。
自分のポーションを褒められて嬉しそうなハルは2本目の瓶を取り出しながら慎ましやかな胸を張る。
しかし、本当にそのポーションに食当たりを防ぐ機能はあるのか?
「そうでしょ!味にもこだわったからね!次も期待しなさい!」
「アクエリアスが飲みたい!」
がっつり商品名を出すなよ!
「なー、この辺って木を斬ってもいいんだよな?」
いつまでも見てても仕方ないから俺はスキルを試すとしよう。
ここまで歩いてくる間にMPは8割程は回復しているのだ。
「問題ないです。木を切って何をしようが自由です」
「いらないなら私がスキルの素材にするから、たくさん切っていいわよ」
この世界の住人のラズの許可も出たし早速試してみよう。
鞘から剣を抜き両手で構える、まずは勇者武技は無し剣術スキルのみで。
よし、あの太い木にしよう!
踏み込んで剣を左から右に薙ぐっ!!
「っう!!」
うわ、痛っ!!マジでビックリした、凄い衝撃、ビビビと肘を貫通して肩まで衝撃が駆け抜けた。
なるほど、心の準備なしで堅い木を全力で斬りにいったのは不味かったかも。
でもその甲斐はあったのか、剣はちゃんと木を斬り裂いて進んでる、3センチくらいだけど。
うん、多分充分な筈、多分。
実際剣術スキルの効果は実感できなかったが、剣を振った経験なんて今までなかったからな、比べられない。
次は勇者武技(水)、剣に纏った水を動かして、さっきと同じ様に踏み込む!!
剣を振り抜っ!!
ビギぃー!! またも衝撃!!
勇者武技の名を持つスキルだし、太い木でも一振りで斬り倒せるかもとかほんの少し期待してたけど幻想だった。
「・・・」
むしろ斬り進んだ距離が1回目と誤差くらいしか違わないんだが。
「やっぱり面白いスキルになりそうね」
俺の横に並んだハルが幹に刺さったままの剣を見てニヤリとする。
「見て、今も水が木を削り続けてる」
・・・それって、水が少し掻き出す消しゴムのカスみたいな木屑のこと言っている?
果たしてうちの賢者様は正しい評価を下せているのか、俺はこの賢者様の言葉を信じていいのか?
「なるほど。これが勇者武技なんだ。僕もちょっと木を切ってみたいな」
寄ってきたユラが剣を抜くので俺とハルはユラから距離を取る。
最前列にメイドが陣取った。
ユラの剣は昨日貴族街の高級服店でプレゼントされた白い綺麗な長剣だ、改めて思うとなんだそのイケメンエピソード。
「うーりっ!!」
変な声と共に振られた白剣は俺の時の倍くらい木を斬り進んだ。
「さすがです、ラズの騎士様!」
・・・えっ、なんで? 使ってる剣の差?
「いいえ、違うわ。ユラの方が動きが洗練されてる気がするわ」
心を読んだ様なハルの発言に胸が震える、剣術スキルっていったい?
「あと、身体能力に差がある気がするわ。ユラって何気に元のスペックが高いのよ」
確かにやたら足速かったりするけどさ、勇者と聖女とかの枠っていったい・・・
悲しくなった俺はみんなから少し離れた所でスキルレベルを上げた。
勇者武技(水)3
剣術3
脚力強化1
浮遊剣1
スキルレベルはこうなった、ポイントはまだ温存して16残してある。
「え、それってウォータージェットカッター? あれって細い水をレーザーみたいに打ち出して切る機械だから剣で再現とかそういうのは出来ないと思うよ、水の形が違うから」
「えっ?そうなの?」
スキルレベルを上げた直後にユラとハルの話が耳に入ってしまった。なぜこのタイミングで・・・
いや、最初からウォーターカッターの再現は無理だと思ってたし、うん、そう思ってたし大丈夫。
「そ、そうだ、アキ。私の剣型爆弾も試してみてよ、浮遊剣のスキルを使ってさ」
「お、おう」
本当はもう少し離れてレベルの上がった水の剣を1人で試そうかと思ってたけど後にするか。なんなら夜に宿屋の部屋でとかでもいいしな。
取り出した木剣をふわふわ浮かせる。
「おー、マジックだね」
初見のユラはそんな反応。
なんか切なくなるけど大丈夫、大丈夫。
「衝撃を受けると爆発する仕様だから、本当は防御に使ってカウンターで爆発させたいんだけど、今は相手がいないからそこら辺の木にぶつけてみて!」
「・・・」
爆発すると分かってるのを木にぶつけるのか? このスキル自分の近くでしか動かせないんだけど。
あと、防御に使うって・・・やっぱり爆発するの俺に近すぎるんだよな・・・
「大丈夫、威力は残念な事にかなり低いから」
はー、確かにさっきハルが試してた自作爆弾もかなりショボかったしな。
ため息を吐きながら木剣を動かして木の枝にぶつける。
パン!
「・・・」
「・・・」
「・・・」
分かっていたがあまりのショボさに言葉を失う俺たち、細い木の枝が揺れないどころか葉っぱすらも微動だにしないんだけど。
「っ!!」
何かが視界の端をよぎる!
茶色の兎!?別の木の根元にいたのが音に驚いて飛び出したのか?
俺がそれを兎だと認識出来た時には後ろからユラが飛び出していた、剣を抜きながら木の間を駆け抜けて
一閃
「・・・」
「・・・」
兎の頭が飛ぶのを俺とハルはポカンと見送った。
地面に落ちる寸前の兎の頭の耳を掴んだユラが勝者の勲章の様にそれを掲げる!
パチパチパチパチ
えっ、なんでなんの躊躇いもなくそんな事が出来るの!?
なんで!? 食育の授業とかやってた?
パチパチパチパチ
もしかして俺達ってそれぞれ別の世界から来てるとか? だから価値観が違うのか?
パチパチパチパチ
「・・・」
俺の方を見ながら首を小刻みに振るハルは俺達は同じ世界から来たと伝えたいみたいだ。
パチパチパチパチ
うん、とりあえずメイドの拍手がうるさい!!
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