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本編
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「なっ、失礼であろう?」
私の溜息は流石にレオナード様の耳まで届いたらしい。
それならば、もはや取り繕う必要もないだろう。
「私はこの様な豪華な部屋も、着尽くせない程のドレスも要りません。」
レオナード様の方を見て告げると、彼の顔にサッと怒りが広がる。
「…。」
私の予想であれば、自分の考えを否定されたレオナード様はヒステリックに怒り出すだろうと考えていた。
勢いに負けてはいけない…と。
そんな私の予想を裏切る形で、彼はしばらくの沈黙の後、落ち着いた口調で喋り始めた。
その顔には微笑みさえ浮かんでいる。
「素直に謝っておけばいいものを…。」
想定外の彼の様子に、思わず数歩後退る。
「サラサであれば、私の理想通りの美しく従順な妻になると思っていたのに…今回はとんだ恥をかかされたよ。こんな反抗的な態度を取るなど、教育が足りなかったのだな。甘やかした私の責任だ。」
「何を…仰っているんですか…?」
先程まで自分の中にあった強気な気持ちが、未知の物に対する恐怖で薄らいでいく。
それくらい…目の前のレオナード様が怖い。
誰…?こんな人…知らない。
「大丈夫。一から教育して、私に反抗しようなどと思わないようにしてやる。」
ゆっくりと近付いてくるレオナード様から逃れるように、一歩ずつ後退すると、不意に膝の裏に柔らかいリネンが触れて、ドサっと尻餅を着いた先は、この部屋に入った時に真っ先に目についた大きなベッドだった。
まずいと思ったのは、トンっと肩を押されて、背中からベッドに倒された後だった。
「じ…冗談では済みませんよ?」
何か言わねば…と気持ちを奮い立たせるも、私に覆い被さるように見下ろすレオナード様は依然笑顔を浮かべたままだ。
「そう言えば、まだ言ってなかったね。今日の装いは一際美しいよ。まさに理想どおりの従順な妻だ。破いてしまうのが勿体ないよ。まぁ…また、同じ物を仕立てさせるから、安心してくれ。」
頭から足元まで舐め回るようにじっくりと眺めてから、彼は言った。
だが、そんなレオナード様の言葉は、私の耳に入って来ない。
ただ、その表情と視線、そしてペダル・ネックになっているドレスの胸元へと迫る手の気配に全身がガクガクと震え出す。
「や…やめて…。」
何とか声を絞り出せば、レオナード様はくっくっと面白そうに笑う。
「怯えた表情もいいよ、サラサ。素直に謝るのなら、優しくしよう。無残に破られたドレスで兄上の前に戻るのは、いくら反抗的な君でも嫌だろう。」
優しく…けれど、彼の中でこの後行為に及ぶのは決定事項とでも言いたげな言い方だった。
そんな事になれば…それが人に知られれば…私は婚姻前に純潔を失った者として、後ろ指を差され、他家に嫁ぐ事など出来ないだろう。
それこそ、行為の相手であるレオナード様以外には。
「大丈夫。ちゃんと謝れば酷くはしない。さぁ、レオナード様、申し訳ございません。今後二度と貴方に逆らう事は致しませんと、言ってごらん。」
そんなの…絶対に嫌だ。
「だ…誰か!!助けてーっ!」
未だかつて、これほどの大声を出した経験などない。それでも、持てる限りの力で叫んだ。
誰でもいい。この人を止めて。
「なっ!黙れ。やはり、お前には厳しい躾が必要なようだ。」
レオナード様が振り上げた右手で、頬を張られ、そのまま口を塞がれれば、それ以上叫ぶ事も叶わない。
叩かれた頬がジンジンと痛む。
逃げようとデタラメに身を捩るも、男女の力の差の前には虚しい結果しか得られず、
胸元から聞こえたビリビリとドレスの破れる音に、思わず閉じた瞳から涙が溢れた。
私の溜息は流石にレオナード様の耳まで届いたらしい。
それならば、もはや取り繕う必要もないだろう。
「私はこの様な豪華な部屋も、着尽くせない程のドレスも要りません。」
レオナード様の方を見て告げると、彼の顔にサッと怒りが広がる。
「…。」
私の予想であれば、自分の考えを否定されたレオナード様はヒステリックに怒り出すだろうと考えていた。
勢いに負けてはいけない…と。
そんな私の予想を裏切る形で、彼はしばらくの沈黙の後、落ち着いた口調で喋り始めた。
その顔には微笑みさえ浮かんでいる。
「素直に謝っておけばいいものを…。」
想定外の彼の様子に、思わず数歩後退る。
「サラサであれば、私の理想通りの美しく従順な妻になると思っていたのに…今回はとんだ恥をかかされたよ。こんな反抗的な態度を取るなど、教育が足りなかったのだな。甘やかした私の責任だ。」
「何を…仰っているんですか…?」
先程まで自分の中にあった強気な気持ちが、未知の物に対する恐怖で薄らいでいく。
それくらい…目の前のレオナード様が怖い。
誰…?こんな人…知らない。
「大丈夫。一から教育して、私に反抗しようなどと思わないようにしてやる。」
ゆっくりと近付いてくるレオナード様から逃れるように、一歩ずつ後退すると、不意に膝の裏に柔らかいリネンが触れて、ドサっと尻餅を着いた先は、この部屋に入った時に真っ先に目についた大きなベッドだった。
まずいと思ったのは、トンっと肩を押されて、背中からベッドに倒された後だった。
「じ…冗談では済みませんよ?」
何か言わねば…と気持ちを奮い立たせるも、私に覆い被さるように見下ろすレオナード様は依然笑顔を浮かべたままだ。
「そう言えば、まだ言ってなかったね。今日の装いは一際美しいよ。まさに理想どおりの従順な妻だ。破いてしまうのが勿体ないよ。まぁ…また、同じ物を仕立てさせるから、安心してくれ。」
頭から足元まで舐め回るようにじっくりと眺めてから、彼は言った。
だが、そんなレオナード様の言葉は、私の耳に入って来ない。
ただ、その表情と視線、そしてペダル・ネックになっているドレスの胸元へと迫る手の気配に全身がガクガクと震え出す。
「や…やめて…。」
何とか声を絞り出せば、レオナード様はくっくっと面白そうに笑う。
「怯えた表情もいいよ、サラサ。素直に謝るのなら、優しくしよう。無残に破られたドレスで兄上の前に戻るのは、いくら反抗的な君でも嫌だろう。」
優しく…けれど、彼の中でこの後行為に及ぶのは決定事項とでも言いたげな言い方だった。
そんな事になれば…それが人に知られれば…私は婚姻前に純潔を失った者として、後ろ指を差され、他家に嫁ぐ事など出来ないだろう。
それこそ、行為の相手であるレオナード様以外には。
「大丈夫。ちゃんと謝れば酷くはしない。さぁ、レオナード様、申し訳ございません。今後二度と貴方に逆らう事は致しませんと、言ってごらん。」
そんなの…絶対に嫌だ。
「だ…誰か!!助けてーっ!」
未だかつて、これほどの大声を出した経験などない。それでも、持てる限りの力で叫んだ。
誰でもいい。この人を止めて。
「なっ!黙れ。やはり、お前には厳しい躾が必要なようだ。」
レオナード様が振り上げた右手で、頬を張られ、そのまま口を塞がれれば、それ以上叫ぶ事も叶わない。
叩かれた頬がジンジンと痛む。
逃げようとデタラメに身を捩るも、男女の力の差の前には虚しい結果しか得られず、
胸元から聞こえたビリビリとドレスの破れる音に、思わず閉じた瞳から涙が溢れた。
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