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58. ラナさんのお母さん救出作戦 - 7
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<< トスカさん! 無事ですか? 心配してたんですよ。>>
<< 悪い。魔物にやられてしばらく動けなかった。今はもう大丈夫だ。>>
<< 分かりました。すぐにそっちに向かいます。>>
<< いや来なくていい。そっちにも直ぐに魔物の群が行くはずだ。国の皆を守ってやってくれ。>>
トスカさんの言う魔物がどんなものか分からないが、探査魔法で魔力を持つものを探ると、確かに魔力を持つ生き物がトシマル山脈からこちらに向かって来る。スピードからして空を飛んでいる様だ。魔力は大きくないが、とてつもなく数が多い。多過ぎる。数万、いや十万以上だ...。
探査魔法を使っている間に、オークションが開かれている広場に10匹くらいの緑色をした鳩くらいの大きさのものが空から降って来た。あちこちで叫び声が上がる。良く見るとバッタだ。トノサマバッタに似た姿をしている。だが体長が30センチメートルくらいある。こんな大きなバッタは見たことが無いからこれも魔物なんだろう。微かに魔力も感じる。先行していた群が町まで到達したのだろうか。地面に降り立った魔物バッタは特に人に襲いかかることも無く、そのまま再度羽を広げて飛び立った。誰かが「空を見ろ!」と叫ぶ。釣られて上を見上げると、北の方向から大きな雲の様な物が近づいて来る。でも緑色の雲なんて見たことがない。あれは魔物バッタの群? とんでもない数だ!
咄嗟に、ラナさんに緊急事態であることを伝え、私は町の上空に瞬間移動した。町中で瞬間移動しては注目を浴びてしまうが、そんなことを言っている事態では無さそうだ。上空からトシマル山脈の方向を見ると、緑色の雲がどんどん近づいて来る。探査魔法で調べるとやはり先ほどと同じ魔物バッタだ。魔物バッタたちは町近くに広がる耕作地に着くと一斉に畑に降り立ち、畑の作物を片っ端から食べ始めた。何せバッタにしては大きい上に数が多い。襲われた畑の作物はあっと言う間に食い尽くされる。大変だ、この辺は農園が多い、きっと大打撃を受ける。放って置いたら国中の畑が荒らされかねない。
私は風魔法を使って魔物バッタの雲の中に竜巻を発生させた。竜巻はどんどん大きくなり魔物バッタの群を飲み込んで行く。だが、なにせ相手は数が多い。私は2つ目、3つ目の竜巻も発生させる。何とか空中にいた魔物バッタのほとんどを竜巻に捉えることが出来たが、すでに畑に降り立っていたバッタは地面に足を踏ん張っているのか捉えられない。それならばと、私は土魔法を併用して地面を揺らす。これは効果があった。地面に降りていた魔物バッタが驚いて一斉に飛び上がる、そこを4つ目、5つ目の竜巻を発生させて捉えて行く。その時突然、私の手にある魔法使いの杖が振動を始めた。こんなことは初めてだ。だがここで止めるわけにはいかない。風魔法に火魔法を混ぜて炎の竜巻で魔物を焼き尽くすのだ。だが、火魔法を発動しょうとした途端魔法使いの杖がパンッという乾いた音と共に弾けた。途端に魔法が無効となり全ての竜巻が消え去る。私も空中に浮かんでいることが出来ず地面に向かって落下を始めた。
私の魔力に杖が耐えられなかったんだと気付く。杖が無ければ、魔力遮断結界を張ったままでは魔法を使えない。でも、結界を解除したら私の魔力をたくさんの人に感知されるだろう。私を手に入れようと国が動き出すかも知れない。一瞬迷ったが。考えるまでもない。私は魔力遮断結界を解除し魔法を再開した。驚くほど魔法の発動がスムーズだ!威力も高い。今まで魔法使いの杖を使うことで相当魔力をロスしていたのかも。
一旦消えてしまった竜巻を5つ同時に再生し、一瞬にして火魔法を含ませる。魔物バッタ達はあっという間に灰になっていった。
<< イル! 逃げろ! ドラゴンだ!>>
魔物バッタを退治してホッとしたのもつかの間、トスカさんから緊迫した念話が届く。ドラゴン? それって龍のこと?まさか、こんなところに?
だが長く考えている暇はなかった北の空に現れた黒い点があっという間に大きくなって、目の前に迫ってきたからだ。「龍!」と私は呟いた。地龍の様な紛い物ではない、正に伝説通りの姿をした龍が目の前にいた。体長は50メートル、鬣を生やし、全身が青い鱗で覆われている。地龍と違ってちゃんと手足と翼がある。その巨体が迫って来ると迫力が半端ない。私は息を飲み逃げ出そうとしたが、次の瞬間、近くまで来た龍が言葉を発した。本人はそのつもりはないかもしれないが、とんでもない大声だ。
「新たなる神よ、お待ちしておりました。儂はドスモと申す。貴方様の忠実な僕に御座います。」
<< 悪い。魔物にやられてしばらく動けなかった。今はもう大丈夫だ。>>
<< 分かりました。すぐにそっちに向かいます。>>
<< いや来なくていい。そっちにも直ぐに魔物の群が行くはずだ。国の皆を守ってやってくれ。>>
トスカさんの言う魔物がどんなものか分からないが、探査魔法で魔力を持つものを探ると、確かに魔力を持つ生き物がトシマル山脈からこちらに向かって来る。スピードからして空を飛んでいる様だ。魔力は大きくないが、とてつもなく数が多い。多過ぎる。数万、いや十万以上だ...。
探査魔法を使っている間に、オークションが開かれている広場に10匹くらいの緑色をした鳩くらいの大きさのものが空から降って来た。あちこちで叫び声が上がる。良く見るとバッタだ。トノサマバッタに似た姿をしている。だが体長が30センチメートルくらいある。こんな大きなバッタは見たことが無いからこれも魔物なんだろう。微かに魔力も感じる。先行していた群が町まで到達したのだろうか。地面に降り立った魔物バッタは特に人に襲いかかることも無く、そのまま再度羽を広げて飛び立った。誰かが「空を見ろ!」と叫ぶ。釣られて上を見上げると、北の方向から大きな雲の様な物が近づいて来る。でも緑色の雲なんて見たことがない。あれは魔物バッタの群? とんでもない数だ!
咄嗟に、ラナさんに緊急事態であることを伝え、私は町の上空に瞬間移動した。町中で瞬間移動しては注目を浴びてしまうが、そんなことを言っている事態では無さそうだ。上空からトシマル山脈の方向を見ると、緑色の雲がどんどん近づいて来る。探査魔法で調べるとやはり先ほどと同じ魔物バッタだ。魔物バッタたちは町近くに広がる耕作地に着くと一斉に畑に降り立ち、畑の作物を片っ端から食べ始めた。何せバッタにしては大きい上に数が多い。襲われた畑の作物はあっと言う間に食い尽くされる。大変だ、この辺は農園が多い、きっと大打撃を受ける。放って置いたら国中の畑が荒らされかねない。
私は風魔法を使って魔物バッタの雲の中に竜巻を発生させた。竜巻はどんどん大きくなり魔物バッタの群を飲み込んで行く。だが、なにせ相手は数が多い。私は2つ目、3つ目の竜巻も発生させる。何とか空中にいた魔物バッタのほとんどを竜巻に捉えることが出来たが、すでに畑に降り立っていたバッタは地面に足を踏ん張っているのか捉えられない。それならばと、私は土魔法を併用して地面を揺らす。これは効果があった。地面に降りていた魔物バッタが驚いて一斉に飛び上がる、そこを4つ目、5つ目の竜巻を発生させて捉えて行く。その時突然、私の手にある魔法使いの杖が振動を始めた。こんなことは初めてだ。だがここで止めるわけにはいかない。風魔法に火魔法を混ぜて炎の竜巻で魔物を焼き尽くすのだ。だが、火魔法を発動しょうとした途端魔法使いの杖がパンッという乾いた音と共に弾けた。途端に魔法が無効となり全ての竜巻が消え去る。私も空中に浮かんでいることが出来ず地面に向かって落下を始めた。
私の魔力に杖が耐えられなかったんだと気付く。杖が無ければ、魔力遮断結界を張ったままでは魔法を使えない。でも、結界を解除したら私の魔力をたくさんの人に感知されるだろう。私を手に入れようと国が動き出すかも知れない。一瞬迷ったが。考えるまでもない。私は魔力遮断結界を解除し魔法を再開した。驚くほど魔法の発動がスムーズだ!威力も高い。今まで魔法使いの杖を使うことで相当魔力をロスしていたのかも。
一旦消えてしまった竜巻を5つ同時に再生し、一瞬にして火魔法を含ませる。魔物バッタ達はあっという間に灰になっていった。
<< イル! 逃げろ! ドラゴンだ!>>
魔物バッタを退治してホッとしたのもつかの間、トスカさんから緊迫した念話が届く。ドラゴン? それって龍のこと?まさか、こんなところに?
だが長く考えている暇はなかった北の空に現れた黒い点があっという間に大きくなって、目の前に迫ってきたからだ。「龍!」と私は呟いた。地龍の様な紛い物ではない、正に伝説通りの姿をした龍が目の前にいた。体長は50メートル、鬣を生やし、全身が青い鱗で覆われている。地龍と違ってちゃんと手足と翼がある。その巨体が迫って来ると迫力が半端ない。私は息を飲み逃げ出そうとしたが、次の瞬間、近くまで来た龍が言葉を発した。本人はそのつもりはないかもしれないが、とんでもない大声だ。
「新たなる神よ、お待ちしておりました。儂はドスモと申す。貴方様の忠実な僕に御座います。」
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