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31. オカミとの戦い
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事件と言うのは物事が順調に行きかけた時に起きる物かもしれない。ある日、夕食を食べていると長老の天幕の前に吊るされている鐘がカン、カン、カン、カン、カンと激しく鳴り響いた。この鳴らし方はオカミの群が来た合図だ。ヤラン兄さんが弓矢を持って天幕を飛び出す。鐘が鳴ったら、男達は長老の天幕に集合することになっている。ラナさんをラサール王国に売ろうとしていた奴隷商人達を襲ったオカミの群がやって来たのだろうか。母さんと姉さんも弓矢を持って天幕を出て行く。女たちは家畜を守るのが役目だ。
そろそろ日が陰り薄暗くなっている。オカミと戦うには不利な状況だ。今夜は新月で月明かりも期待できない。オカミの群を叩くなら太陽の光が残っている内にやった方が良い。長老達もそう考えたのか、ヤラン兄さんが馬を入れている囲いに向かって走って来た。オカミの群に向かって男達が攻撃を掛ける様だ。
馬に乗った男たちが居住地を出て行く。探査魔法でオカミの群を探ると100匹程度の大群だ。これはまずいかもしれない。男達は20人程度しかいない。数の上では断然不利だ。だが有利な点もある。馬と弓矢だ。馬の速度はオカミより速い。速度と遠距離攻撃が出来る弓矢を利用して攻撃と離脱を繰り返すのだ。
私とラナさんは天幕の中で顔を見合わせた。私達は魔法を使える。十分な戦力になり得るのだ。ここでおとなしくしていて犠牲者が出たりしたらと思うと、じっとしては居られない。ラナさんが使える魔法は土魔法だ。アーススピアと言って地面を硬化して槍の様に突き出す攻撃魔法が使える。攻撃速度が遅いのが欠点だが、あらかじめ設置しておけば敵の進攻を防ぐことができる。拠点防御に適した魔法だ。それならと、ラナさんに居住地の防御をお願いする。なにせ私達の居住地の周りは4隅に杭を打って、出入り口以外の場所にロープを張ってあるだけだ。あくまで居住地を訪ねてきた人に、ここは入り口ではない事を示すための物で、入ろうと思えばどこからでも入れる。もちろん塀等で侵入できない様に囲うのが理想だが、草を求めて移動を繰り返す私達遊牧民には無理な話だ。
私は天幕から居住地の上空に瞬間移動した。既に薄暗くなっているから空を飛んでも目立ちはしない。上空からこっそりとオカミの群を攻撃するつもりだ。群のボスをやっつければ、他のオカミは引き上げるかもしれない。
居住地の外では、一族の男達がオカミの群に攻撃を開始していた。一列になってオカミの群に接近し馬上から矢を放つ。スピードは一切落とさない。オカミ達が矢に当たり次々と倒れる。男達の乗った馬はそのまま止まることなく、オカミの群の傍を通り過ぎた。止まったらオカミに囲まれてしまうのが分かっているのだ。オカミの群を通り過ぎた馬達は、そのまま大きく弧を描いて再びオカミの群に迫る。オカミの群に近づくと矢を放つ。男達は一糸乱れることもなくこの攻撃を繰り返す。見事なものだ。だが周りはますます暗くなって行く。日が完全に落ちれば夜目の効くオカミが有利になる。それを悟ったのか、男達は最後の一撃をオカミの群に加えると、そのまま居住地に向かった。居住地でかがり火を頼りにオカミの群を迎え撃つつもりだろう。
チャンスだ。今なら魔法を使っても誰にも見られる心配はない。私は男達を追いかけるオカミの群の前にアーススピアを展開した。たちまち、横幅100メートル、奥行き5メートルの帯状の地面に、長さ10センチメートル程度の短く鋭い刃が上を向いて密集する。
「「「「「ギャゥーーーー!」」」」」
アーススピアの範囲に踏み込んだオカミ達が悲鳴を上げて立ち止まる。勢いよくアーススピアの範囲に飛び込んだ10匹くらいのオカミ達は足を深く傷つけ、前にも後ろにも進めなくなる。だが、残りのオカミ達は仲間の悲鳴を聞いたことで警戒し、アーススピアの前で立ち止まった。問題は無い。アーススピアの目的は一族の男達とオカミの群に距離を開けることだ。男達の乗った馬は居住地の方に一目散に駆けている、今なら強力な魔法を使っても見られる心配はない。昔オカミの群に襲われた時と違って、今の私には群れ全体を対象とする面の攻撃も可能だ。むしろ群れが散らばると個々を攻撃するのに時間を取られて、私の不在がばれてしまう可能性が高くなる。
私は高度を下げて、アーススピアを挟んでオカミと反対側に降り立った。私をターゲット認識させることで、オカミの群が散り散りになるのを防ごうと考えたのだ。私の姿を認めたオカミ達が一斉に私に向かって唸り声を上げる。だがアーススピアの地面が邪魔で跳びかかって来ることが出来ない。ギリギリのところで立ち止まり私に唸り声を上げるのみだ。目論見どおり、群れのすべてのオカミ達がアーススピアを挟んで私の前に固まった。私は攻撃魔法を群全体に放とうと杖を高く掲げる。
だが、次の瞬間、
「ウォォォォォォ~~~」
と、一際大きなオカミが吠えた。たちどころに、すべてのオカミ達が全速で私と反対の方向に逃げ出す。アーススピアの生えている地面に飛び込み身動きの取れなかったオカミ達も、「キャン、キャン」と悲鳴を上げながら無理やりアーススピアから抜け出し、よたよたしながら逃げ出そうとしている。だが、足を怪我しているから、「キャン、キャン」と鳴きながら歩く様にしか進めない。そして、先ほど大きな声で吠えた大柄なオカミだけが逃げ出さず、私の前に立ち塞がっていた。恐らくこいつがオカミの群のボスなのだろう。
「ガゥッ! ガゥッ! ガゥッ! ガゥッ!」
とボスが私に向かって吠える。ボスのやろうとしていることは明白だ。私を強敵と認め、自分が盾となって仲間を逃がすつもりなのだ。私はボスに向かって杖を構える。既に私の目論見は失敗した。散り散りになって逃げだしたオカミの群を全滅させることは不可能だろう。せめてこいつだけでもと、ボスに杖を向ける。だが、ボスの後でよたよたと逃げる10匹くらいのオカミ達と、彼らを守る様に私の前に立ち塞がるボス。きっと仲間思いの良いボスなんだろうな...そう思うと攻撃する気になれなかった。代わりに私の杖から発せられたのは回復魔法。足を怪我したオカミ達が一瞬で回復する。「キャン、キャン」という悲鳴が聞こえなくなったからか、ボスが振り返って仲間のオカミ達を見る。私はその間にアーススピアを消去した。ボスが再び私の方を向く。もし、ボスが仲間と一緒に私を襲って来るなら迎え撃つまでだ。だが、ボスはクルリと後を向くと、仲間のオカミと共に駆け去った。後を向く前にペコリと私に頭を下げた様に見えたのだが、きっと気のせいだろう。
そろそろ日が陰り薄暗くなっている。オカミと戦うには不利な状況だ。今夜は新月で月明かりも期待できない。オカミの群を叩くなら太陽の光が残っている内にやった方が良い。長老達もそう考えたのか、ヤラン兄さんが馬を入れている囲いに向かって走って来た。オカミの群に向かって男達が攻撃を掛ける様だ。
馬に乗った男たちが居住地を出て行く。探査魔法でオカミの群を探ると100匹程度の大群だ。これはまずいかもしれない。男達は20人程度しかいない。数の上では断然不利だ。だが有利な点もある。馬と弓矢だ。馬の速度はオカミより速い。速度と遠距離攻撃が出来る弓矢を利用して攻撃と離脱を繰り返すのだ。
私とラナさんは天幕の中で顔を見合わせた。私達は魔法を使える。十分な戦力になり得るのだ。ここでおとなしくしていて犠牲者が出たりしたらと思うと、じっとしては居られない。ラナさんが使える魔法は土魔法だ。アーススピアと言って地面を硬化して槍の様に突き出す攻撃魔法が使える。攻撃速度が遅いのが欠点だが、あらかじめ設置しておけば敵の進攻を防ぐことができる。拠点防御に適した魔法だ。それならと、ラナさんに居住地の防御をお願いする。なにせ私達の居住地の周りは4隅に杭を打って、出入り口以外の場所にロープを張ってあるだけだ。あくまで居住地を訪ねてきた人に、ここは入り口ではない事を示すための物で、入ろうと思えばどこからでも入れる。もちろん塀等で侵入できない様に囲うのが理想だが、草を求めて移動を繰り返す私達遊牧民には無理な話だ。
私は天幕から居住地の上空に瞬間移動した。既に薄暗くなっているから空を飛んでも目立ちはしない。上空からこっそりとオカミの群を攻撃するつもりだ。群のボスをやっつければ、他のオカミは引き上げるかもしれない。
居住地の外では、一族の男達がオカミの群に攻撃を開始していた。一列になってオカミの群に接近し馬上から矢を放つ。スピードは一切落とさない。オカミ達が矢に当たり次々と倒れる。男達の乗った馬はそのまま止まることなく、オカミの群の傍を通り過ぎた。止まったらオカミに囲まれてしまうのが分かっているのだ。オカミの群を通り過ぎた馬達は、そのまま大きく弧を描いて再びオカミの群に迫る。オカミの群に近づくと矢を放つ。男達は一糸乱れることもなくこの攻撃を繰り返す。見事なものだ。だが周りはますます暗くなって行く。日が完全に落ちれば夜目の効くオカミが有利になる。それを悟ったのか、男達は最後の一撃をオカミの群に加えると、そのまま居住地に向かった。居住地でかがり火を頼りにオカミの群を迎え撃つつもりだろう。
チャンスだ。今なら魔法を使っても誰にも見られる心配はない。私は男達を追いかけるオカミの群の前にアーススピアを展開した。たちまち、横幅100メートル、奥行き5メートルの帯状の地面に、長さ10センチメートル程度の短く鋭い刃が上を向いて密集する。
「「「「「ギャゥーーーー!」」」」」
アーススピアの範囲に踏み込んだオカミ達が悲鳴を上げて立ち止まる。勢いよくアーススピアの範囲に飛び込んだ10匹くらいのオカミ達は足を深く傷つけ、前にも後ろにも進めなくなる。だが、残りのオカミ達は仲間の悲鳴を聞いたことで警戒し、アーススピアの前で立ち止まった。問題は無い。アーススピアの目的は一族の男達とオカミの群に距離を開けることだ。男達の乗った馬は居住地の方に一目散に駆けている、今なら強力な魔法を使っても見られる心配はない。昔オカミの群に襲われた時と違って、今の私には群れ全体を対象とする面の攻撃も可能だ。むしろ群れが散らばると個々を攻撃するのに時間を取られて、私の不在がばれてしまう可能性が高くなる。
私は高度を下げて、アーススピアを挟んでオカミと反対側に降り立った。私をターゲット認識させることで、オカミの群が散り散りになるのを防ごうと考えたのだ。私の姿を認めたオカミ達が一斉に私に向かって唸り声を上げる。だがアーススピアの地面が邪魔で跳びかかって来ることが出来ない。ギリギリのところで立ち止まり私に唸り声を上げるのみだ。目論見どおり、群れのすべてのオカミ達がアーススピアを挟んで私の前に固まった。私は攻撃魔法を群全体に放とうと杖を高く掲げる。
だが、次の瞬間、
「ウォォォォォォ~~~」
と、一際大きなオカミが吠えた。たちどころに、すべてのオカミ達が全速で私と反対の方向に逃げ出す。アーススピアの生えている地面に飛び込み身動きの取れなかったオカミ達も、「キャン、キャン」と悲鳴を上げながら無理やりアーススピアから抜け出し、よたよたしながら逃げ出そうとしている。だが、足を怪我しているから、「キャン、キャン」と鳴きながら歩く様にしか進めない。そして、先ほど大きな声で吠えた大柄なオカミだけが逃げ出さず、私の前に立ち塞がっていた。恐らくこいつがオカミの群のボスなのだろう。
「ガゥッ! ガゥッ! ガゥッ! ガゥッ!」
とボスが私に向かって吠える。ボスのやろうとしていることは明白だ。私を強敵と認め、自分が盾となって仲間を逃がすつもりなのだ。私はボスに向かって杖を構える。既に私の目論見は失敗した。散り散りになって逃げだしたオカミの群を全滅させることは不可能だろう。せめてこいつだけでもと、ボスに杖を向ける。だが、ボスの後でよたよたと逃げる10匹くらいのオカミ達と、彼らを守る様に私の前に立ち塞がるボス。きっと仲間思いの良いボスなんだろうな...そう思うと攻撃する気になれなかった。代わりに私の杖から発せられたのは回復魔法。足を怪我したオカミ達が一瞬で回復する。「キャン、キャン」という悲鳴が聞こえなくなったからか、ボスが振り返って仲間のオカミ達を見る。私はその間にアーススピアを消去した。ボスが再び私の方を向く。もし、ボスが仲間と一緒に私を襲って来るなら迎え撃つまでだ。だが、ボスはクルリと後を向くと、仲間のオカミと共に駆け去った。後を向く前にペコリと私に頭を下げた様に見えたのだが、きっと気のせいだろう。
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