36 / 102
35. 闇の精霊アルガ様
しおりを挟む
(シロム視点)
「みぎゃ~~~~~~~~~~~っ!」
恐怖のあまり思いっきり叫んでいた。周りは人一人が腹ばいになってギリギリ通れる大きさの洞窟だ。その中を僕はかなりのスピードで飛んでいるのだ。ちょっとでも身体を動かしたら壁にぶつかるだろう。身動きも出来ず、永遠とも感じる長い長い距離を行く間、僕はひたすら叫び続けた。
目を開けると真っ暗だった。手に持っていたランプはどこかで手放してしまった様だ。でも地面に腹ばいになった状態から寝返りをうって上を見て驚いた。無数ともいえる妖精が僕の上空を飛び交っていた、まるで星空を見ている様だ。ここはかなり広い空間なのだろう妖精たちは自由に飛び回っている。
<< ここが私が封印されているところよ。ここから外にでるのは妖精に分かれないと無理なの、でも妖精になったら知性が大きく下がってしまって感情のままに行動するだけになる。この穴の外部で元の姿に戻れたのは貴方が神気を分けてくれたお蔭よ。もっとも妖精の数が少なかったからこんな幼い姿にしか成れなかったけどね。>>
すぐ近くから声がした。真っ暗で見えないが幼女姿のアルガ様がすぐ傍にいる様だ。
<< ふ、封印されていたのですか? >>
<< 昔ちょっと悪さをしてね。偉い神様に罰を与えられたのよ。ここで1000年間先ほどの町に加護を与える様にってね。>>
<< 1000年ですか! 酷い罰ですね。>>
心底そう思った。僕ならこんな暗闇で1000年間過ごすなんて気が狂いそうだ。もっともそんなに長く生きられないけど。
<< そうでもないわ。精霊にとって1000年なんて大した期間じゃないの。もう半分は過ぎたから後500年よ。それに私は闇の妖精。暗闇は大好きよ。だから封印した神様も軽い罰のつもりだったと思う。実際、ほんの20年ほど前まではここは快適な場所だったわ。でも異変が起こったの。地面から湧き出す神気が減って来たのよ。私達精霊は自分で神気を作り出すことが出来ない......大精霊様レベルになれば別だけどね。だから外部から神気を吸収する必要があるの。この場所は地面から神気が湧き出していてね、その意味でも快適な場所だった.....最初はね。今は湧き出す神気が減ったから自分の姿を維持することすら難しくなってしまった。それであの有様よ。上で飛び交っているのは私の身体が分解した成れの果てよ。>>
<< そうなのですか.....。僕にはとても綺麗に見えます。>>
<< そう、ありがとう。>>
実際とてもきれいだ。まるで満天の星空を眺めている様だ。そして地面の下深くにはまるで天の川の様な白い大河が流れている。
<< 地面の下に見える白い流れはなんですか? >>
<< へー、あれが見えるのね。あれは龍脈、神気の流れよ。ここに神気が湧いてこなくなったのは龍脈の流れが衰えたから。その原因は人間達が魔晶石を取る為に掘っている坑道が原因よ。20年前のある日、深く掘った坑道のひとつが龍脈を貫通してしまったのよ。だから鉱山の方で神気があふれ出して、その分こちらに流れて来なくなった。私は巫女のマーブルを通じて坑道を広げるのを止める様に人間達に伝えたけれど、金儲けに目がくらんだ人間達は聞く耳を持たなかったわ。むしろ私を闇の邪神と呼ぶ人が増えて祭壇を訪れる人が減ってしまった。龍脈を貫く坑道はますます多くなって、今ではほとんど神気が湧かなくなってしまったの。このままでは私は消滅してしまうわ。貴方がこの町に来たのは最後のチャンスなの。>>
<< 大変じゃないですか! 僕はどうすれば良いですか? >>
<< 簡単よ、さっきみたいに神気を分けて欲しいのよ。そうすれば後何十年かは消えずに済むわ。>>
<< そうですか、でもその後は? >>
<< 貴方がまた来てくれれば良いのよ。お願いできる? >>
<< もちろ......無理です。後何回かは来られるかもしれませんがそれが限度です。とても500年なんて付き合えません。人間の寿命は短いのです。>>
<< あら、貴方は人間だったの。てっきり神かと思ったのに。人間なのにあれだけの神気を発せられるなんて驚きだわ。本当かしら? >>
<< 嘘じゃありません。僕が神気を使えるのはこの杖のお陰です。聖なる山の神様から頂いたのです。>>
といって亜空間から杖を取り出す。
<< 聖なる山の神! 嫌だ、私を封印した奴じゃ無い! 貴方はあいつの関係者ってわけね。それなら腹いせに貴方を道連れにして消滅してやるってのも有りかしら。>>
<< ま、待ってください!!!! >>
恐ろしい事をさらりと言われた。どうしよう、どうしよう、どうしよう......何とかしなければ......。
<< なんとかします。なんとかしますから......>>
そう言って時間を稼ぐが何も考え付かない。不味い、不味いぞ。このままでは僕まで消されてしまう。こうなったのは人間達が金儲けの為に坑道を掘り過ぎたのが原因なんだ、死んだら恨むぞ.....。坑道? そうだ、もしかしたら。
僕は手探りで龍脈の真上まで移動し、地面に杖を垂直に立てた。ここから龍脈まで穴を掘る。アルガ様は神気の流れが衰えたから地面から湧き出さなくなったと言ったけれど、龍脈まで穴を開ければそれを通って神気が出て来るのじゃないだろうか。
龍脈までどれだけの距離があるか分からない。とにかく届くところまで細い穴を開ける。広げるのはその後だ。
だが始めて見ると思った以上の難工事だった。神力が無駄に流れているのが分かる。きっとこの下に水晶の層があって、杖が発した神力が吸収されているのだ。だから穴が水晶の層で止まってしまっている。くそ、駄目か.....。考えたらアルガ様だってこのくらいのことは考えただろう。でも出来なかったわけだ。
杖に込められた聖なる山の神の神力がどんどん減って行くのが分かる。きっと地面の下ではとんでもない量の魔晶石が生成されているのだろう。神様、神力を無駄にして申し訳ありません.....。
もう駄目かと思った時、水晶の層を突き抜けて穴が進み始めた。そして次の瞬間、地面から大量の神気が噴き出し洞窟に満ち溢れた。眩しさに思わず目を瞑る。
穴は細くて正解だった様だ。あれ以上太い穴だったら吹き上がって来る神気が多すぎただろう。それくらい龍脈を流れる神気は勢いがある。
恐る恐る目を開けると、いつの間にか真っ暗だった洞窟が明るくなっている。そして目の前にアルガ様が立っていた。祭壇の上にあった女神像と同じ姿だ。ただし背丈は僕の2倍程もある。良かった、元に戻ることが出来たようだ。
「助けて頂きありがとうございました。小さき勇者殿。」
アルガ様が優雅に頭を下げる。あれ? 念話じゃなくて肉声だ。
「ほら、あなたもお礼を言いなさい。」
アルガ様が後ろを振り返って言う。アルガ様の後から先ほどの幼女が姿を現した。
「ありがとう。脅かして悪かったわ。」
「この者は私のほんの一部が人格を持っただけなので、精神的に未成熟なのです。知性もその分低いです。貴方をこんなところに連れて来て脅したのは感情的になったからの様です。許してやってください。」
「何よ、ジロジロ見て。」
「い、いや、てっきりアルガ様はひとりだけだと思っていたから。それに念話じゃなく普通に話せるんだ。」
「ひとりだけのつもりだったわよ。でも本体にひとつになるのを拒否されたの。」
「当然です。私は後500年ここから出ることができません。でも別人格となったあなたなら可能です。貴方はこの方に同行してお守りするのです。この方の杖にはほとんど神力が残っていません。もはや使えないでしょう。貴方の責任でこうなったのですからお守りするのは当然です。」
「まあ仕方ないわね。どうせ人間の寿命なんて長くて100年くらいだから、付き合ってあげるわよ。神気もたっぷりと吸収させてもらったから実体化も出来たしね。念話じゃなく肉声で話が出来るのもそのお陰よ。」
ちょっと待て! それって僕が死ぬまで一緒ってことか? いやいやいや、こんなのと一生一緒だなんて御免被る。
「だ、大丈夫です。僕には頼りになる親友がいます。それに神が遣わしてくれたドラゴンも一緒ですから杖がなくても何とかなります。ご厚意はありがたいですが遠慮させていただきます。」
「何よそれ、私と一緒に居るのが嫌だってこと? 人間の分際で失礼しちゃうわね。」
「アルガ、落ち着きなさい。」
「何よ、あなただってアルガじゃない。そうだ、あなたシロムだったわよね。私に素敵な名前を付けて頂戴。もう本体とは別人格なのだから、名前だって別の方がややこしくないわ。そうしたらさっきの失礼な態度は許してあげる。」
突然そんなことを言われても.....
「ち、小さなアルガ様だからチーアルとか.....」
僕がそう言ったとたん、ふたりのアルガ様が目を合わせて頷きあった。何だ? と思った途端、僕の右手の甲にバシッと衝撃が走った。小さく不思議な文様が描かれている。
「はい契約終了。精霊に名前を付けると言う行為は精霊と契約するのと同意義よ。これであなたが死ぬまで私達は一緒。諦めなさい。」
「シロム様、申し訳ありません。私としてもこのままお返ししてはアルガの名が廃ります。出来る限りシロム様のお邪魔をしない様にさせますので、同行することを許してやって下さい。」
詐欺だった。しまった大きい方のアルガさんは信頼できると思ったが、考えてみればこのふたりは元同人格だ。その上ここにいるのは昔何か悪いことをして封印されたからと言っていたじゃないか。完全に嵌められた。
「それにしてもチーアルなんて酷い名前ね。もうちょっとネーミングセンスがあるかと思った。ガッカリしたわ。」
「チーアル、たとえ本当のことでも、ご主人様に向かってそんなことを言うものではありません。」
やっぱりこのふたりは同人格だ。ん? ご主人。
「それではご主人様、地上に戻りましょうか? 」
「ご、ご主人様って? 」
「あら決まっているじゃない。契約をしたのだからシロムは私のご主人様よ。大抵のことは命令に従ってあげる。」
「大抵のことって? 」
「そうね。私の初めてが欲しいとか、結婚したいとか以外ならね。」
な、無い。100%無いから。
「言っとくけど契約をすると心も繋がるの。100%無いって酷いじゃない。」
自分で言っといて.....何? 心が繋がっている? だけど僕にはチーアルの考えていることは分からないぞ。
「そりゃ読まれない様にガードしているからね。ご主人様のガードは甘々だから読むのは簡単よ。」
やっぱり詐欺だ.....。ただでさえ僕の心の声はダダ洩れと言われているのに.....。
「さて行きますか。飛ばすわよ。」
行くって? ひょっとしてあの細い穴をもう一度通るのか? 止めてくれ! あの恐怖は2度と御免だ。だが僕の身体は無慈悲に地面から浮かび上がる。
「待って!!!!」
アルガ様が緊張した叫びを上げた。
「久々に力を取り戻せたから周りの様子を確認していたの。鉱山の様子が変だわ。沢山の生きものが坑道を通って地表に向かっている。鉱夫たちが次々に殺されているわ。」
「殺されている!? 何に?」
チーアルが尋ねる。一瞬で顔が真剣になった。
「これは虫ね。百足、蟻、蜘蛛、竈馬、蟋蟀その他にも沢山。それぞれが何百という大軍よ!」
「人間が虫に殺されているの?」
「そうよ! もっとも体長は人間と変わらないくらい大きい。こんな虫、今までいなかったのに.....。そうか! 龍脈から噴き出している神気を浴びて変化したのよ。あれだけ濃密な神気だもの何が起きても驚かない。人間達を助けないと...。」
そういった途端アルガ様の身体が妖精に分解した。後には半分以下の大きさになったアルガ様が残っているが、僕達の周りは再び妖精で溢れかえった。でも先ほどと違い妖精の動きに規則性がある。
「行きなさい。」
アルガ様がそう命じると、妖精達は一斉に僕が入って来た穴に突入していった。
「私達も行くでしょう?」
チーアルが尋ねて来る。行くって、人間サイズの虫を退治しに? 想像したら全身に悪寒が走った。
「無理! 僕には無理! 虫は嫌いなんだ.....。」
「ヘタレね.....。でも良いの? 虫は坑道の出口に向かっているの。そこから町はすぐ傍よ。確実に町に侵入するでしょうね。貴方の仲間も危ないわよ。」
仲間? 頼りない僕を心配して付いて来てくれた親友のマーク、僕のことを好きだと言ってくれたアルムさん。出会って間もないけれど僕達を鍾乳洞まで案内してくれたマーブルさん。もし彼らに万が一のことがあったら.....。でも預言者の杖には神気が残っていない。杖が使えない僕が行ったところで役に立たない。
「大丈夫。貴方には私が居るわ。よく聞いて、私単独でも戦えるけど圧倒的な数を前にしては限度がある。アルガがやった様に身体を妖精に分解して、数には数で対応する方が優利よ。でも私は小さいから司令塔として自分の一部を残すことは出来ないの。妖精は知性が低いから司令塔なしでは秩序立った戦いは無理なのよ。だからね、貴方が司令塔になるの。私達は契約で心が繋がっているのよ、貴方ならできる。」
そ、そんなこと言ったって無理なものは無理。僕に戦いなんて.....。
「ええい、ごちゃごちゃ考えない。私を指揮して外に出るの。行くわよ。」
チーアルがそう言ったとたん、彼女の身体が妖精に分解する。それと同時に彼女の心が見える様になった。と言っても相手はひとりじゃない、数十もの心と繋がった。しかも何を考えているのか良く分からない.....考えていないのかも....伝わってくるのは彼女の感情だけだ。だが彼女の記憶と知識がまるで自分の物の様に思い出せる。チーアルに出来ること、この町や鉱山の地理、アルガ様から送られた敵の映像.....アルガ様の妖精は早くも虫と戦っている様だ。虫は逃げる鉱夫達を追いかけながら町に侵入しつつある。急がないと今この瞬間にも町の人達が犠牲になっている。
チーアル、僕を連れて飛んで.....そう願った瞬間僕の身体が浮き上がり、出口の細い穴に向かって猛スピードで飛び込んだ。
「待って~~~~! ゆっくり、もっとゆっくり! スピードを落として.....お願いだから....」
僕の泣きそうな声が洞窟に木霊する。
「みぎゃ~~~~~~~~~~~っ!」
恐怖のあまり思いっきり叫んでいた。周りは人一人が腹ばいになってギリギリ通れる大きさの洞窟だ。その中を僕はかなりのスピードで飛んでいるのだ。ちょっとでも身体を動かしたら壁にぶつかるだろう。身動きも出来ず、永遠とも感じる長い長い距離を行く間、僕はひたすら叫び続けた。
目を開けると真っ暗だった。手に持っていたランプはどこかで手放してしまった様だ。でも地面に腹ばいになった状態から寝返りをうって上を見て驚いた。無数ともいえる妖精が僕の上空を飛び交っていた、まるで星空を見ている様だ。ここはかなり広い空間なのだろう妖精たちは自由に飛び回っている。
<< ここが私が封印されているところよ。ここから外にでるのは妖精に分かれないと無理なの、でも妖精になったら知性が大きく下がってしまって感情のままに行動するだけになる。この穴の外部で元の姿に戻れたのは貴方が神気を分けてくれたお蔭よ。もっとも妖精の数が少なかったからこんな幼い姿にしか成れなかったけどね。>>
すぐ近くから声がした。真っ暗で見えないが幼女姿のアルガ様がすぐ傍にいる様だ。
<< ふ、封印されていたのですか? >>
<< 昔ちょっと悪さをしてね。偉い神様に罰を与えられたのよ。ここで1000年間先ほどの町に加護を与える様にってね。>>
<< 1000年ですか! 酷い罰ですね。>>
心底そう思った。僕ならこんな暗闇で1000年間過ごすなんて気が狂いそうだ。もっともそんなに長く生きられないけど。
<< そうでもないわ。精霊にとって1000年なんて大した期間じゃないの。もう半分は過ぎたから後500年よ。それに私は闇の妖精。暗闇は大好きよ。だから封印した神様も軽い罰のつもりだったと思う。実際、ほんの20年ほど前まではここは快適な場所だったわ。でも異変が起こったの。地面から湧き出す神気が減って来たのよ。私達精霊は自分で神気を作り出すことが出来ない......大精霊様レベルになれば別だけどね。だから外部から神気を吸収する必要があるの。この場所は地面から神気が湧き出していてね、その意味でも快適な場所だった.....最初はね。今は湧き出す神気が減ったから自分の姿を維持することすら難しくなってしまった。それであの有様よ。上で飛び交っているのは私の身体が分解した成れの果てよ。>>
<< そうなのですか.....。僕にはとても綺麗に見えます。>>
<< そう、ありがとう。>>
実際とてもきれいだ。まるで満天の星空を眺めている様だ。そして地面の下深くにはまるで天の川の様な白い大河が流れている。
<< 地面の下に見える白い流れはなんですか? >>
<< へー、あれが見えるのね。あれは龍脈、神気の流れよ。ここに神気が湧いてこなくなったのは龍脈の流れが衰えたから。その原因は人間達が魔晶石を取る為に掘っている坑道が原因よ。20年前のある日、深く掘った坑道のひとつが龍脈を貫通してしまったのよ。だから鉱山の方で神気があふれ出して、その分こちらに流れて来なくなった。私は巫女のマーブルを通じて坑道を広げるのを止める様に人間達に伝えたけれど、金儲けに目がくらんだ人間達は聞く耳を持たなかったわ。むしろ私を闇の邪神と呼ぶ人が増えて祭壇を訪れる人が減ってしまった。龍脈を貫く坑道はますます多くなって、今ではほとんど神気が湧かなくなってしまったの。このままでは私は消滅してしまうわ。貴方がこの町に来たのは最後のチャンスなの。>>
<< 大変じゃないですか! 僕はどうすれば良いですか? >>
<< 簡単よ、さっきみたいに神気を分けて欲しいのよ。そうすれば後何十年かは消えずに済むわ。>>
<< そうですか、でもその後は? >>
<< 貴方がまた来てくれれば良いのよ。お願いできる? >>
<< もちろ......無理です。後何回かは来られるかもしれませんがそれが限度です。とても500年なんて付き合えません。人間の寿命は短いのです。>>
<< あら、貴方は人間だったの。てっきり神かと思ったのに。人間なのにあれだけの神気を発せられるなんて驚きだわ。本当かしら? >>
<< 嘘じゃありません。僕が神気を使えるのはこの杖のお陰です。聖なる山の神様から頂いたのです。>>
といって亜空間から杖を取り出す。
<< 聖なる山の神! 嫌だ、私を封印した奴じゃ無い! 貴方はあいつの関係者ってわけね。それなら腹いせに貴方を道連れにして消滅してやるってのも有りかしら。>>
<< ま、待ってください!!!! >>
恐ろしい事をさらりと言われた。どうしよう、どうしよう、どうしよう......何とかしなければ......。
<< なんとかします。なんとかしますから......>>
そう言って時間を稼ぐが何も考え付かない。不味い、不味いぞ。このままでは僕まで消されてしまう。こうなったのは人間達が金儲けの為に坑道を掘り過ぎたのが原因なんだ、死んだら恨むぞ.....。坑道? そうだ、もしかしたら。
僕は手探りで龍脈の真上まで移動し、地面に杖を垂直に立てた。ここから龍脈まで穴を掘る。アルガ様は神気の流れが衰えたから地面から湧き出さなくなったと言ったけれど、龍脈まで穴を開ければそれを通って神気が出て来るのじゃないだろうか。
龍脈までどれだけの距離があるか分からない。とにかく届くところまで細い穴を開ける。広げるのはその後だ。
だが始めて見ると思った以上の難工事だった。神力が無駄に流れているのが分かる。きっとこの下に水晶の層があって、杖が発した神力が吸収されているのだ。だから穴が水晶の層で止まってしまっている。くそ、駄目か.....。考えたらアルガ様だってこのくらいのことは考えただろう。でも出来なかったわけだ。
杖に込められた聖なる山の神の神力がどんどん減って行くのが分かる。きっと地面の下ではとんでもない量の魔晶石が生成されているのだろう。神様、神力を無駄にして申し訳ありません.....。
もう駄目かと思った時、水晶の層を突き抜けて穴が進み始めた。そして次の瞬間、地面から大量の神気が噴き出し洞窟に満ち溢れた。眩しさに思わず目を瞑る。
穴は細くて正解だった様だ。あれ以上太い穴だったら吹き上がって来る神気が多すぎただろう。それくらい龍脈を流れる神気は勢いがある。
恐る恐る目を開けると、いつの間にか真っ暗だった洞窟が明るくなっている。そして目の前にアルガ様が立っていた。祭壇の上にあった女神像と同じ姿だ。ただし背丈は僕の2倍程もある。良かった、元に戻ることが出来たようだ。
「助けて頂きありがとうございました。小さき勇者殿。」
アルガ様が優雅に頭を下げる。あれ? 念話じゃなくて肉声だ。
「ほら、あなたもお礼を言いなさい。」
アルガ様が後ろを振り返って言う。アルガ様の後から先ほどの幼女が姿を現した。
「ありがとう。脅かして悪かったわ。」
「この者は私のほんの一部が人格を持っただけなので、精神的に未成熟なのです。知性もその分低いです。貴方をこんなところに連れて来て脅したのは感情的になったからの様です。許してやってください。」
「何よ、ジロジロ見て。」
「い、いや、てっきりアルガ様はひとりだけだと思っていたから。それに念話じゃなく普通に話せるんだ。」
「ひとりだけのつもりだったわよ。でも本体にひとつになるのを拒否されたの。」
「当然です。私は後500年ここから出ることができません。でも別人格となったあなたなら可能です。貴方はこの方に同行してお守りするのです。この方の杖にはほとんど神力が残っていません。もはや使えないでしょう。貴方の責任でこうなったのですからお守りするのは当然です。」
「まあ仕方ないわね。どうせ人間の寿命なんて長くて100年くらいだから、付き合ってあげるわよ。神気もたっぷりと吸収させてもらったから実体化も出来たしね。念話じゃなく肉声で話が出来るのもそのお陰よ。」
ちょっと待て! それって僕が死ぬまで一緒ってことか? いやいやいや、こんなのと一生一緒だなんて御免被る。
「だ、大丈夫です。僕には頼りになる親友がいます。それに神が遣わしてくれたドラゴンも一緒ですから杖がなくても何とかなります。ご厚意はありがたいですが遠慮させていただきます。」
「何よそれ、私と一緒に居るのが嫌だってこと? 人間の分際で失礼しちゃうわね。」
「アルガ、落ち着きなさい。」
「何よ、あなただってアルガじゃない。そうだ、あなたシロムだったわよね。私に素敵な名前を付けて頂戴。もう本体とは別人格なのだから、名前だって別の方がややこしくないわ。そうしたらさっきの失礼な態度は許してあげる。」
突然そんなことを言われても.....
「ち、小さなアルガ様だからチーアルとか.....」
僕がそう言ったとたん、ふたりのアルガ様が目を合わせて頷きあった。何だ? と思った途端、僕の右手の甲にバシッと衝撃が走った。小さく不思議な文様が描かれている。
「はい契約終了。精霊に名前を付けると言う行為は精霊と契約するのと同意義よ。これであなたが死ぬまで私達は一緒。諦めなさい。」
「シロム様、申し訳ありません。私としてもこのままお返ししてはアルガの名が廃ります。出来る限りシロム様のお邪魔をしない様にさせますので、同行することを許してやって下さい。」
詐欺だった。しまった大きい方のアルガさんは信頼できると思ったが、考えてみればこのふたりは元同人格だ。その上ここにいるのは昔何か悪いことをして封印されたからと言っていたじゃないか。完全に嵌められた。
「それにしてもチーアルなんて酷い名前ね。もうちょっとネーミングセンスがあるかと思った。ガッカリしたわ。」
「チーアル、たとえ本当のことでも、ご主人様に向かってそんなことを言うものではありません。」
やっぱりこのふたりは同人格だ。ん? ご主人。
「それではご主人様、地上に戻りましょうか? 」
「ご、ご主人様って? 」
「あら決まっているじゃない。契約をしたのだからシロムは私のご主人様よ。大抵のことは命令に従ってあげる。」
「大抵のことって? 」
「そうね。私の初めてが欲しいとか、結婚したいとか以外ならね。」
な、無い。100%無いから。
「言っとくけど契約をすると心も繋がるの。100%無いって酷いじゃない。」
自分で言っといて.....何? 心が繋がっている? だけど僕にはチーアルの考えていることは分からないぞ。
「そりゃ読まれない様にガードしているからね。ご主人様のガードは甘々だから読むのは簡単よ。」
やっぱり詐欺だ.....。ただでさえ僕の心の声はダダ洩れと言われているのに.....。
「さて行きますか。飛ばすわよ。」
行くって? ひょっとしてあの細い穴をもう一度通るのか? 止めてくれ! あの恐怖は2度と御免だ。だが僕の身体は無慈悲に地面から浮かび上がる。
「待って!!!!」
アルガ様が緊張した叫びを上げた。
「久々に力を取り戻せたから周りの様子を確認していたの。鉱山の様子が変だわ。沢山の生きものが坑道を通って地表に向かっている。鉱夫たちが次々に殺されているわ。」
「殺されている!? 何に?」
チーアルが尋ねる。一瞬で顔が真剣になった。
「これは虫ね。百足、蟻、蜘蛛、竈馬、蟋蟀その他にも沢山。それぞれが何百という大軍よ!」
「人間が虫に殺されているの?」
「そうよ! もっとも体長は人間と変わらないくらい大きい。こんな虫、今までいなかったのに.....。そうか! 龍脈から噴き出している神気を浴びて変化したのよ。あれだけ濃密な神気だもの何が起きても驚かない。人間達を助けないと...。」
そういった途端アルガ様の身体が妖精に分解した。後には半分以下の大きさになったアルガ様が残っているが、僕達の周りは再び妖精で溢れかえった。でも先ほどと違い妖精の動きに規則性がある。
「行きなさい。」
アルガ様がそう命じると、妖精達は一斉に僕が入って来た穴に突入していった。
「私達も行くでしょう?」
チーアルが尋ねて来る。行くって、人間サイズの虫を退治しに? 想像したら全身に悪寒が走った。
「無理! 僕には無理! 虫は嫌いなんだ.....。」
「ヘタレね.....。でも良いの? 虫は坑道の出口に向かっているの。そこから町はすぐ傍よ。確実に町に侵入するでしょうね。貴方の仲間も危ないわよ。」
仲間? 頼りない僕を心配して付いて来てくれた親友のマーク、僕のことを好きだと言ってくれたアルムさん。出会って間もないけれど僕達を鍾乳洞まで案内してくれたマーブルさん。もし彼らに万が一のことがあったら.....。でも預言者の杖には神気が残っていない。杖が使えない僕が行ったところで役に立たない。
「大丈夫。貴方には私が居るわ。よく聞いて、私単独でも戦えるけど圧倒的な数を前にしては限度がある。アルガがやった様に身体を妖精に分解して、数には数で対応する方が優利よ。でも私は小さいから司令塔として自分の一部を残すことは出来ないの。妖精は知性が低いから司令塔なしでは秩序立った戦いは無理なのよ。だからね、貴方が司令塔になるの。私達は契約で心が繋がっているのよ、貴方ならできる。」
そ、そんなこと言ったって無理なものは無理。僕に戦いなんて.....。
「ええい、ごちゃごちゃ考えない。私を指揮して外に出るの。行くわよ。」
チーアルがそう言ったとたん、彼女の身体が妖精に分解する。それと同時に彼女の心が見える様になった。と言っても相手はひとりじゃない、数十もの心と繋がった。しかも何を考えているのか良く分からない.....考えていないのかも....伝わってくるのは彼女の感情だけだ。だが彼女の記憶と知識がまるで自分の物の様に思い出せる。チーアルに出来ること、この町や鉱山の地理、アルガ様から送られた敵の映像.....アルガ様の妖精は早くも虫と戦っている様だ。虫は逃げる鉱夫達を追いかけながら町に侵入しつつある。急がないと今この瞬間にも町の人達が犠牲になっている。
チーアル、僕を連れて飛んで.....そう願った瞬間僕の身体が浮き上がり、出口の細い穴に向かって猛スピードで飛び込んだ。
「待って~~~~! ゆっくり、もっとゆっくり! スピードを落として.....お願いだから....」
僕の泣きそうな声が洞窟に木霊する。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる