一寸先は闇 秋の特別編

北瓜 彪

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先駆者

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 ある女が1つの重たい本を手に先駆者のもとを訪ねた。その本に書かれている説ーー2つの巨大な力を衝突させるとまれに穴ができることがあり、その穴に入れば空間、時間もしくはその両方が今とは違う場所へ行くことができるーーを確かめるためであった。
 女は先駆者にその本を見せる。
「あの、この本の著者って、あなたですよね?」
 先駆者は鼻から息を吐いた。
「そんな本、知らないよ。」
そして言葉を継いだ。
「それより今の私の研究というのはな、巨大なエネルギー分子を大量に含んだパワーAと、同じ条件のパワーBを同時に超光速で衝突させると、マグダリディスホールという、2空間を接続する穴ができ、それを通ると一部の記憶はなくなってしまうもののテンズ方程式にもとづいた時空間移動が達成され…」
言いながら先駆者は2つのボールのようなものをぶつけた。
 そのとたん先駆者の持っていたボールのぶつかったところから白い光が飛び散って、女は光に包まれた。
 先駆者が気づいたときには、もう女はどこにもいなかった。ただ、女の持っていた重たい本が残されていた。
 先駆者はこの現象について論文を書いた。

 それから5年が経ち、先駆者には女性の助手がついていた。助手は先駆者の研究に非常に興味をもっていた。
 そしてある日、彼女は勝手に先駆者の書斎に立ち入った。
 そこで1つの本を見つける。
 さらに彼女は先駆者の机の上にあった2つのボールのようなものを見つける。
「なんだろう、これ?」
 助手は2つのボールをコツコツとぶつけてみた。
 何も起こらない。
 「なあんだ。」
 助手は本を手に取って立ち上がり部屋を出ようとした。
 その時、背後から何やら物音がして、彼女が「あっ」という前に光が彼女と本を包み込んだ…。

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