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2020年 11月の作品
1匹の虫
しおりを挟む1匹の虫が、教室内を飛んでいる。
教師は平坦に喋り続けている。
それを遮ったのは男子生徒の声だった。
「うわ、虫っ!」
数人がそちらを見て、いくつかの小声が立った。
虫はあちこちへ飛び遊ぶが特に彼の周りを彷徨っていた。
「やめろよ!」
はじめは顔を顰めて腕を振っていた彼だったが、やがて抵抗をやめてしまった。小声の波紋もすぐに床へ吸い込まれた。
虫は暫くしていなくなった。
数分後、怪人・虫人間が彼の隣にやって来た。彼はそれを一瞥し、顔を顰めて前へ向き直った。
教師の声はモノトーンを奏で、虫人間は男子の横で踊り始めた。
何か言おうとした生徒がいたが、結局やめた。
怪人も暫くしていなくなった。
数分後、メガネウラが入って来た。
それは鳴き喚きながら火を吹いて、後ろの黒板が焼け落ちた。
誰も気には留めなかった。
「では号令。」
教師が言って授業が終わった。
何の変哲もない日常の途上だった。
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