42 / 100
肆拾弐 死神
しおりを挟む
「死神様。本日も、よろしくお願いいたします」
「構わん。これが私の仕事だ」
死神の目の前には、ロープで縛られた二人の人間が座っている。
彼ら二人とも、殺人の容疑がかけられている。
死神の恐ろしい姿を見て震えあがり、二人は必死に無実を泣き叫ぶ。
「死神様! 私は無実です! 人など殺していません!」
「私もです死神様!」
「静かにしろ!」
看守の一声で、二人は押し黙る。
助けを求めるような表情で、死神を見る。
死神は、興味深そうに二人の人間の心臓部分を――心を見る。
死神には見える。
その人間の心の汚れが。
曰く、人間の心は、罪を重ねれば重ねるほど、黒く汚れていくらしい。
「ふうむ」
死神は、ぎょよぎょろと二人の人間を眺めた後、一人の人間を指差す。
「こいつはもらっていく。汚い」
「し、死神様あああ!?」
死神は、自分が指差した人間に近づき、その左胸に手を伸ばす。
死神の手は、人間の皮膚も骨もすり抜けて、心にたどり着く。
優しく心を掴み、そっと抜き取る。
心は壊れやすくデリケート。
最期の瞬間まで、優しく扱うのが死神の礼儀だ。
心を抜き取られた人間は、その瞬間意識を失い、心臓も脈も動きを止める。
さっきまで生きていたのが嘘のように、人形のようにごとりと倒れた。
「死神様、ありがとうございました」
「うむ」
頭を下げる看守に見送られ、仕事を終えた死神は、その場を立ち去った。
残された人間は、死神によって死刑をする必要はなしと判断されたため、この後の裁判で死刑以外の刑で終わるだろう。
死神の裁きは、冤罪の回避と、人間が人間を殺すという抵抗感を排除し、速やかな死刑の判決と執行を可能にした。
これによって、日本中の牢に捕らわれる死刑囚の数は0となった。
人間は、死刑の判断を下す、という恐怖から解放されたのだ。
「久々の綺麗な心……。美味い……」
もっともこれは、死神が常に正しいことを言い続けている、という前提ありきではあるが、
そのことを口にする人間は、誰もいない。
口にした瞬間に、死神がやってくるから。
死神は、常に正しい。
「構わん。これが私の仕事だ」
死神の目の前には、ロープで縛られた二人の人間が座っている。
彼ら二人とも、殺人の容疑がかけられている。
死神の恐ろしい姿を見て震えあがり、二人は必死に無実を泣き叫ぶ。
「死神様! 私は無実です! 人など殺していません!」
「私もです死神様!」
「静かにしろ!」
看守の一声で、二人は押し黙る。
助けを求めるような表情で、死神を見る。
死神は、興味深そうに二人の人間の心臓部分を――心を見る。
死神には見える。
その人間の心の汚れが。
曰く、人間の心は、罪を重ねれば重ねるほど、黒く汚れていくらしい。
「ふうむ」
死神は、ぎょよぎょろと二人の人間を眺めた後、一人の人間を指差す。
「こいつはもらっていく。汚い」
「し、死神様あああ!?」
死神は、自分が指差した人間に近づき、その左胸に手を伸ばす。
死神の手は、人間の皮膚も骨もすり抜けて、心にたどり着く。
優しく心を掴み、そっと抜き取る。
心は壊れやすくデリケート。
最期の瞬間まで、優しく扱うのが死神の礼儀だ。
心を抜き取られた人間は、その瞬間意識を失い、心臓も脈も動きを止める。
さっきまで生きていたのが嘘のように、人形のようにごとりと倒れた。
「死神様、ありがとうございました」
「うむ」
頭を下げる看守に見送られ、仕事を終えた死神は、その場を立ち去った。
残された人間は、死神によって死刑をする必要はなしと判断されたため、この後の裁判で死刑以外の刑で終わるだろう。
死神の裁きは、冤罪の回避と、人間が人間を殺すという抵抗感を排除し、速やかな死刑の判決と執行を可能にした。
これによって、日本中の牢に捕らわれる死刑囚の数は0となった。
人間は、死刑の判断を下す、という恐怖から解放されたのだ。
「久々の綺麗な心……。美味い……」
もっともこれは、死神が常に正しいことを言い続けている、という前提ありきではあるが、
そのことを口にする人間は、誰もいない。
口にした瞬間に、死神がやってくるから。
死神は、常に正しい。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【お願い】この『村』を探して下さい
案内人
ホラー
全ては、とあるネット掲示板の書き込みから始まりました。『この村を探して下さい』。『村』の真相を求めたどり着く先は……?
◇
貴方は今、欲しいものがありますか?
地位、財産、理想の容姿、人望から、愛まで。縁日では何でも手に入ります。
今回は『縁日』の素晴らしさを広めるため、お客様の体験談や、『村』に関連する資料を集めました。心ゆくまでお楽しみ下さい。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる