令和百物語 ～妖怪小話～

参拾壱 隠里

　スクープ！
　超人気Ｙ○ｕＴｕｂｅｒ三十一名が、緊急事態宣言下に自粛破りの大パーティ。
　深夜三時まで泥酔カラオケ。
　
　緊急事態宣言下の東京で、次から次へと人が吸い込まれていく場所があった。
　吸い込まれていくのは全員、一般人ではない。
　ほとんどが、登録者五十万人以上の人気Ｙ○ｕＴｕｂｅｒだ。
　
　政府による自粛要請が出ている中、彼らは次々と都内某所Ｘへと入っていく。
　Ｘは、隠里と呼ばれる異空間へつながる入り口で、一見すると何の変哲もない居酒屋だが、店内は飲食店の外観からは想像がつかないほど広い空間が広がっているらしい。
　記者がこっそりとのぞき込んでみると、そこではまるで治外法権のような光景が繰り広げられていた。
　残念ながら、不特定多数が見るこの雑誌には書けないほどに過激な光景だ。
　確かに、隠里は異世界であり、日本の法律が適用されないが、とはいえ日本からすぐにのぞき込める場所でこれはいかがなものだろうか。
　
　詳細については、次週の発刊号で詳しく説明する。
　
　なお、より詳しく取材するため、記者が隠里へと入ろうとしたところ、突然隠里の入り口が消え去り、目の前にあったはずの居酒屋も跡形もなく消えてしまった。
　
　あれから一週間。
　消えた人気Ｙ○ｕＴｕｂｅｒたちは、未だに発見されていない。
　
　彼らは今頃、日本とは違う時間軸で楽しく飲み会をしているのか、それとも既に異世界ごと消滅してしまったのか。
　記者としては、彼らの無事を願うばかりだ。