30 / 60
外れた思惑
しおりを挟む
「セルジュ殿下……どうしてこちらに」
セルジュからの強い眼差しを受けてフェルナンは口を噤む。厳しい表情の中に無言の圧力を感じたからだ。向かいにいたクラリスを見れば、ただでさえ蒼白な顔色がさらに白く怯えた表情で震えている。
いつも柔和な微笑を崩さないセルジュが感情を削ぎ落した冷酷な視線を向けているのだから無理もない。そして彼は王族であり、絶対的な権力者なのだ。
「ずいぶんと楽しそうな話をしていたね。僕の大事な婚約者の妹に何をしようとしていたか、聞かせてくれないかい?」
淡々とした問いかけは疑問ではなく命令だ。
「わ、わたくしは、ただリシャール様のために…っ!」
「僕の従弟が君にそのようなことを頼んだというのかな?そんなことはあり得ない。公爵令息への侮辱、それに冤罪も追加だね」
言葉にならない悲鳴を漏らし、絶望的な表情のクラリスを一瞥してセルジュはフェルナンへ向き直った。
「生徒会長が何やら怪しい動きをしていると、教えてくれる者がいてね。これでも王家の端くれなので囁いてくれる声はいたるところにあるのだよ」
フェルナンは思わず目を丸くした。それがフェルナンの立場を守るための小芝居だと気づいてはいるが、セルジュがわざわざさのために自らこの場に出てきたことに驚き、それを表情に出してしまったのだ。クラリスはそんなフェルナンを疑うことなく、自分と同じ立場と思い込んでいるようでフェルナンの背後に隠れようとしている。
先ほどとは打って変わってひたすら怯えていたクラリスだったが、セルジュが机の上に置かれたリボンを取り上げると絶望に満ちた表情でセルジュに懇願を始めた。
「殿下、どうかそれをお返しください。大切な贈り物なのです!」
「ああ、知っている。リシャールがアネット嬢に贈った大切なリボンだ」
セルジュの冷ややかな声に対して、クラリスは必死で首を振りながら否定する。
「誤解ですわ!どうかアネット様のお言葉に惑わされませんよう―」
「もういい、不快だ」
静かだが怒りに満ちた声に、一瞬室内の時が止まったようだった。こつりと床を鳴らす靴音とともに現れた姿を見て、クラリスの表情が喜色に染まったのは一瞬で、すぐにその瞳から光が失われていく。
「っ…ぁ………リシャール様…」
「名を呼ぶことを許した覚えはない」
セルジュの態度が冷ややかな氷とすれば、リシャールのそれは見る者を凍てつかせるほどの極寒だった。喘ぐように名を呼ぶクラリスに視線を合わせることなく、拒絶する。
フェルナンにはクラリスの心が壊れる音が聞こえた気がした。
「セルジュ、エイダンを借りるぞ。俺はそれに触れたくない」
セルジュの許可を取り呼び寄せたのは、本来控え室にいるはずだった騎士だろう。
形式上、丁重な態度で放心状態のクラリスを連れて行くが、油断ない様子で監視をしていた。
このまま伯爵家に送り届けられ、彼女の起こした顛末についてカディオ家はそれなりの責任と対価を負うことになる。
ほんの僅かに同情めいた気持ちが湧いたが、それだけのことを彼女はしたのだ。
「シアマ会長、ご苦労だったね」
セルジュはいつもの静かな微笑みと柔らかな声音に戻っていた。ほっと息を漏らしたことでフェルナンは自分が無意識に息を詰めていたことに気づく。それはクラリスの危うさに触れただけではなく、王族の威圧感に気圧されていたことが要因だろう。
(畏怖の気持ちは忘れてはならないが、必要以上に呑まれてはならない)
フェルナンはそんな自分を奮い立たせるようにセルジュに話しかけた。
「いえ、お役に立てたなら何よりです。ですが、殿下が現れた時には正直ひやりとしました。貴方様を危険に晒してしまったら、どう責任を取っていいか分かりませんから」
「それは悪かったね。リシャールもいたし、僕もそれなりに訓練を積んでいるから心配しなくていいよ。…彼女が僕に危害を加えようとしたなら、それはそれで簡単だったんだが」
少しだけ先ほどの冷やかさを纏わせたセルジュだったが、リシャールから頭を小突かれればすぐさま霧散した。
「もう行くぞ。クロエ嬢とアネット嬢が待っている」
もう用はないとばかりに去ろうとする二人にフェルナンは気になっていたことを尋ねた。
「どうして、あのように俺を庇ってくれたのですか?」
セルジュの言葉がなければ、クラリスはフェルナンが自分を裏切って場を設けたのだと気づいたかもしれない。逆恨みをされる可能性もあったが、クラリスは罰を受けるだろうし、それくらいのリスクなら許容範囲内だと思っていた。
幸いフェルナンが恨みを買うことは免れたが、それがセルジュに向けられたなら正直困る。リスクを負ってこそ得られる対価は大きい。
せっかくアネットを助ける名目で王族に恩を売る機会だったのに、断罪したのも証人もセルジュなのだからほぼ自力で解決したようなもので、フェルナンは場を提供したに過ぎない存在となってしまった。
「君に借りを作らないほうがいいと助言してくれた人がいるからね」
ふわりと浮かべた笑みは悪戯めいていて、フェルナンは根拠もなくそれが誰だか確信した。
セルジュとリシャールが立ち去って、一人取り残されたフェルナンはソファーにどさりと身を投げ出した。
「……やられたな。まったく、骨折り損だが予想外で面白い。どうしたものか」
好感を上げるどころか警戒されてしまったようだ。アネットの慎重さとそれでもしっかりと利用する強かさに自然と口の端が上がる。
しばらくしてやって来た副会長のエリンに締まりのない顔を注意されたが、フェルナンは上機嫌で書類に取り組むのだった。
セルジュからの強い眼差しを受けてフェルナンは口を噤む。厳しい表情の中に無言の圧力を感じたからだ。向かいにいたクラリスを見れば、ただでさえ蒼白な顔色がさらに白く怯えた表情で震えている。
いつも柔和な微笑を崩さないセルジュが感情を削ぎ落した冷酷な視線を向けているのだから無理もない。そして彼は王族であり、絶対的な権力者なのだ。
「ずいぶんと楽しそうな話をしていたね。僕の大事な婚約者の妹に何をしようとしていたか、聞かせてくれないかい?」
淡々とした問いかけは疑問ではなく命令だ。
「わ、わたくしは、ただリシャール様のために…っ!」
「僕の従弟が君にそのようなことを頼んだというのかな?そんなことはあり得ない。公爵令息への侮辱、それに冤罪も追加だね」
言葉にならない悲鳴を漏らし、絶望的な表情のクラリスを一瞥してセルジュはフェルナンへ向き直った。
「生徒会長が何やら怪しい動きをしていると、教えてくれる者がいてね。これでも王家の端くれなので囁いてくれる声はいたるところにあるのだよ」
フェルナンは思わず目を丸くした。それがフェルナンの立場を守るための小芝居だと気づいてはいるが、セルジュがわざわざさのために自らこの場に出てきたことに驚き、それを表情に出してしまったのだ。クラリスはそんなフェルナンを疑うことなく、自分と同じ立場と思い込んでいるようでフェルナンの背後に隠れようとしている。
先ほどとは打って変わってひたすら怯えていたクラリスだったが、セルジュが机の上に置かれたリボンを取り上げると絶望に満ちた表情でセルジュに懇願を始めた。
「殿下、どうかそれをお返しください。大切な贈り物なのです!」
「ああ、知っている。リシャールがアネット嬢に贈った大切なリボンだ」
セルジュの冷ややかな声に対して、クラリスは必死で首を振りながら否定する。
「誤解ですわ!どうかアネット様のお言葉に惑わされませんよう―」
「もういい、不快だ」
静かだが怒りに満ちた声に、一瞬室内の時が止まったようだった。こつりと床を鳴らす靴音とともに現れた姿を見て、クラリスの表情が喜色に染まったのは一瞬で、すぐにその瞳から光が失われていく。
「っ…ぁ………リシャール様…」
「名を呼ぶことを許した覚えはない」
セルジュの態度が冷ややかな氷とすれば、リシャールのそれは見る者を凍てつかせるほどの極寒だった。喘ぐように名を呼ぶクラリスに視線を合わせることなく、拒絶する。
フェルナンにはクラリスの心が壊れる音が聞こえた気がした。
「セルジュ、エイダンを借りるぞ。俺はそれに触れたくない」
セルジュの許可を取り呼び寄せたのは、本来控え室にいるはずだった騎士だろう。
形式上、丁重な態度で放心状態のクラリスを連れて行くが、油断ない様子で監視をしていた。
このまま伯爵家に送り届けられ、彼女の起こした顛末についてカディオ家はそれなりの責任と対価を負うことになる。
ほんの僅かに同情めいた気持ちが湧いたが、それだけのことを彼女はしたのだ。
「シアマ会長、ご苦労だったね」
セルジュはいつもの静かな微笑みと柔らかな声音に戻っていた。ほっと息を漏らしたことでフェルナンは自分が無意識に息を詰めていたことに気づく。それはクラリスの危うさに触れただけではなく、王族の威圧感に気圧されていたことが要因だろう。
(畏怖の気持ちは忘れてはならないが、必要以上に呑まれてはならない)
フェルナンはそんな自分を奮い立たせるようにセルジュに話しかけた。
「いえ、お役に立てたなら何よりです。ですが、殿下が現れた時には正直ひやりとしました。貴方様を危険に晒してしまったら、どう責任を取っていいか分かりませんから」
「それは悪かったね。リシャールもいたし、僕もそれなりに訓練を積んでいるから心配しなくていいよ。…彼女が僕に危害を加えようとしたなら、それはそれで簡単だったんだが」
少しだけ先ほどの冷やかさを纏わせたセルジュだったが、リシャールから頭を小突かれればすぐさま霧散した。
「もう行くぞ。クロエ嬢とアネット嬢が待っている」
もう用はないとばかりに去ろうとする二人にフェルナンは気になっていたことを尋ねた。
「どうして、あのように俺を庇ってくれたのですか?」
セルジュの言葉がなければ、クラリスはフェルナンが自分を裏切って場を設けたのだと気づいたかもしれない。逆恨みをされる可能性もあったが、クラリスは罰を受けるだろうし、それくらいのリスクなら許容範囲内だと思っていた。
幸いフェルナンが恨みを買うことは免れたが、それがセルジュに向けられたなら正直困る。リスクを負ってこそ得られる対価は大きい。
せっかくアネットを助ける名目で王族に恩を売る機会だったのに、断罪したのも証人もセルジュなのだからほぼ自力で解決したようなもので、フェルナンは場を提供したに過ぎない存在となってしまった。
「君に借りを作らないほうがいいと助言してくれた人がいるからね」
ふわりと浮かべた笑みは悪戯めいていて、フェルナンは根拠もなくそれが誰だか確信した。
セルジュとリシャールが立ち去って、一人取り残されたフェルナンはソファーにどさりと身を投げ出した。
「……やられたな。まったく、骨折り損だが予想外で面白い。どうしたものか」
好感を上げるどころか警戒されてしまったようだ。アネットの慎重さとそれでもしっかりと利用する強かさに自然と口の端が上がる。
しばらくしてやって来た副会長のエリンに締まりのない顔を注意されたが、フェルナンは上機嫌で書類に取り組むのだった。
22
お気に入りに追加
2,118
あなたにおすすめの小説
【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇
愚者 (フール)
恋愛
プリムローズは、筆頭公爵の末娘。
上の姉と兄とは歳が離れていて、両親は上の子供達が手がかからなくなる。
すると父は仕事で母は社交に忙しく、末娘を放置。
そんな末娘に変化が起きる。
ある時、王宮で王妃様の第2子懐妊を祝うパーティーが行われる。
領地で隠居していた、祖父母が出席のためにやって来た。
パーティー後に悲劇が、プリムローズのたった一言で運命が変わる。
彼女は5年後に父からの催促で戻るが、家族との関係はどうなるのか?
かなり普通のご令嬢とは違う育て方をされ、ズレた感覚の持ち主に。
個性的な周りの人物と出会いつつ、笑いありシリアスありの物語。
ゆっくり進行ですが、まったり読んで下さい。
★初めての投稿小説になります。
お読み頂けたら、嬉しく思います。
全91話 完結作品
悪役令嬢はお断りです
あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。
この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。
その小説は王子と侍女との切ない恋物語。
そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。
侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。
このまま進めば断罪コースは確定。
寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。
何とかしないと。
でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。
そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。
剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が
女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。
そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。
●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_)
●毎日21時更新(サクサク進みます)
●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)
(第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。
お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?
夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。
けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。
思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。
──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……?
※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。
かりそめの侯爵夫妻の恋愛事情
きのと
恋愛
自分を捨て、兄の妻になった元婚約者のミーシャを今もなお愛し続けているカルヴィンに舞い込んだ縁談。見合い相手のエリーゼは、既婚者の肩書さえあれば夫の愛など要らないという。
利害が一致した、かりそめの夫婦の結婚生活が始まった。世間体を繕うためだけの婚姻だったはずが、「新妻」との暮らしはことのほか快適で、エリーゼとの生活に居心地の良さを感じるようになっていく。
元婚約者=義姉への思慕を募らせて苦しむカルヴィンに、エリーゼは「私をお義姉様だと思って抱いてください」とミーシャの代わりになると申し出る。何度も肌を合わせるうちに、報われないミーシャへの恋から解放されていった。エリーゼへの愛情を感じ始めたカルヴィン。
しかし、過去の恋を忘れられないのはエリーゼも同じで……?
2024/09/08 一部加筆修正しました
間違った方法で幸せになろうとする人の犠牲になるのはお断りします。
ひづき
恋愛
濡れ衣を着せられて婚約破棄されるという未来を見た公爵令嬢ユーリエ。
───王子との婚約そのものを回避すれば婚約破棄など起こらない。
───冤罪も継母も嫌なので家出しよう。
婚約を回避したのに、何故か家出した先で王子に懐かれました。
今度は異母妹の様子がおかしい?
助けてというなら助けましょう!
※2021年5月15日 完結
※2021年5月16日
お気に入り100超えΣ(゚ロ゚;)
ありがとうございます!
※残酷な表現を含みます、ご注意ください
異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい
千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。
「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」
「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」
でも、お願いされたら断れない性分の私…。
異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。
※この話は、小説家になろう様へも掲載しています
【完結】バッドエンドの落ちこぼれ令嬢、巻き戻りの人生は好きにさせて貰います!
白雨 音
恋愛
伯爵令嬢エレノアは、容姿端麗で優秀な兄姉とは違い、容姿は平凡、
ピアノや刺繍も苦手で、得意な事といえば庭仕事だけ。
家族や周囲からは「出来損ない」と言われてきた。
十九歳を迎えたエレノアは、侯爵家の跡取り子息ネイサンと婚約した。
次期侯爵夫人という事で、厳しい教育を受ける事になったが、
両親の為、ネイサンの為にと、エレノアは自分を殺し耐えてきた。
だが、結婚式の日、ネイサンの浮気を目撃してしまう。
愚行を侯爵に知られたくないネイサンにより、エレノアは階段から突き落とされた___
『死んだ』と思ったエレノアだったが、目を覚ますと、十九歳の誕生日に戻っていた。
与えられたチャンス、次こそは自分らしく生きる!と誓うエレノアに、曾祖母の遺言が届く。
遺言に従い、オースグリーン館を相続したエレノアを、隣人は神・精霊と思っているらしく…??
異世界恋愛☆ ※元さやではありません。《完結しました》
【完結】モブなのに最強?
らんか
恋愛
「ミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢! お前との婚約は破棄とする! お前のようなオトコ女とは結婚出来ない!」
婚約者のダラオがか弱そうな令嬢を左腕で抱き寄せ、「リセラ、怯えなくていい。私が君を守るからね」と慈しむように見つめたあと、ミーシャを睨みながら学園の大勢の生徒が休憩している広い中央テラスの中で叫んだ。
政略結婚として学園卒業と同時に結婚する予定であった婚約者の暴挙に思わず「はぁ‥」と令嬢らしからぬ返事をしてしまったが、同時に〈あ、これオープニングだ〉と頭にその言葉が浮かんだ。そして流れるように前世の自分は日本という国で、30代の会社勤め、ワーカーホリックで過労死した事を思い出した。そしてここは、私を心配した妹に気分転換に勧められて始めた唯一の乙女ゲームの世界であり、自分はオープニングにだけ登場するモブ令嬢であったとなぜか理解した。
(急に思い出したのに、こんな落ち着いてる自分にびっくりだわ。しかもこの状況でも、あんまりショックじゃない。私、この人の事をあまり好きじゃなかったのね。まぁ、いっか。前世でも結婚願望なかったし。領地に戻ったらお父様に泣きついて、領地の隅にでも住まわせてもらおう。魔物討伐に人手がいるから、手伝いながらひっそりと暮らしていけるよね)
もともと辺境伯領にて家族と共に魔物討伐に明け暮れてたミーシャ。男勝りでか弱さとは無縁だ。前世の記憶が戻った今、ダラオの宣言はありがたい。前世ではなかった魔法を使い、好きに生きてみたいミーシャに、乙女ゲームの登場人物たちがなぜかその後も絡んでくるようになり‥。
(私、オープニングで婚約破棄されるだけのモブなのに!)
初めての投稿です。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる