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RooF-屋上-
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「その傷……」
緋葉の視線に気づいたのか、手を頬に当てると絆創膏に触れる。
「それ……今朝のよね?」
どこか影のある緋葉の言葉に、どう答えたら良いものか考えていると下からよく知っている声が聞こえてきた。
「いたいた、時ー!!」
声のした方を見下ろしてみると、冬樹が息を切らしながらこちらに手を振っていた。
そこで、自分が二人を置いて走ってきていた事に気づく。
「あなたの友達?」
緋葉は、横から下を見ると聞いてきた。
時は、少し照れくさそうに小さく微笑む。
「まぁ……親友」
冬樹は、寮に走っていくと暫くして屋上にやって来た。もう走れないと言わんばかりに息を切らしており、ふらふらと時に歩み寄る。
「時……はぁ、はぁ、……なにしてるんだよ……散々走ったんだけど…………ってその子は?」
緋葉の存在に気づくと、冬樹は時に質問を投げ掛けた。
どう話そうか迷ったが、ここは正直に話しておくべきなのだろう。
「あー……今朝話した奴。」
「今朝って……あの自殺志願者?」
冬樹の言葉に、緋葉から不審な視線が時に向けられる。
時は、緋葉の視線から逃げるように顔を背けた。
「自殺志願者ってあなたね……」
冬樹は、二人の気まずい雰囲気に気づいたのか、緋葉に笑顔を向けると手を差し出した。
「どうも、時の友!柊 冬樹です。よろしく」
「……何だか馴れ馴れしいわね。本当にあなたの友達なの?」
冬樹の行動に、緋葉は眉を寄せる。
「まぁ……」
先程から「まぁ……」としか答えない時に、呆れた緋葉は冬樹をジロジロと見た。暫く見つめた後に目を座らせると、警戒心を解かないまま冬樹の顔を見つめた。
「緋葉 雫よ」
緋葉は、差し出された手を握らずに自己紹介を済ませた。
そんな態度に、冬樹はショックだったのか影を背負いながら隅に座り込んでしまった。
「変な人ね」
「それは同感」
そんな会話をしていると、ニ講目の終わりのチャイムが辺り一体に響き渡る。それと同時に生徒の笑い声や話し声が聞こえてきた。
「授業、終わったのか」
鳴り響く鐘の方を見つめると、とある事を思い出した。
「やばっ、向日葵忘れてた!」
その言葉に、冬樹は立ち上がる。
「向日葵なら職員室に行ったよ」
「なら、早く行きなさい」
緋葉が二人を急かすと、冬樹は慌てた様子もなく扉に向かい、時もそれに続いた。だが、出る直後振り返り緋葉に向き直った。
「緋葉は行かないのか?」
「私は授業に興味ないからいいのよ」
「時ー早くー」
「分かってるって。それじゃあ」
冬樹に急かされ、去り際に緋葉に別れを告げると向日葵の元へ向かった。
残り約157時間
緋葉の視線に気づいたのか、手を頬に当てると絆創膏に触れる。
「それ……今朝のよね?」
どこか影のある緋葉の言葉に、どう答えたら良いものか考えていると下からよく知っている声が聞こえてきた。
「いたいた、時ー!!」
声のした方を見下ろしてみると、冬樹が息を切らしながらこちらに手を振っていた。
そこで、自分が二人を置いて走ってきていた事に気づく。
「あなたの友達?」
緋葉は、横から下を見ると聞いてきた。
時は、少し照れくさそうに小さく微笑む。
「まぁ……親友」
冬樹は、寮に走っていくと暫くして屋上にやって来た。もう走れないと言わんばかりに息を切らしており、ふらふらと時に歩み寄る。
「時……はぁ、はぁ、……なにしてるんだよ……散々走ったんだけど…………ってその子は?」
緋葉の存在に気づくと、冬樹は時に質問を投げ掛けた。
どう話そうか迷ったが、ここは正直に話しておくべきなのだろう。
「あー……今朝話した奴。」
「今朝って……あの自殺志願者?」
冬樹の言葉に、緋葉から不審な視線が時に向けられる。
時は、緋葉の視線から逃げるように顔を背けた。
「自殺志願者ってあなたね……」
冬樹は、二人の気まずい雰囲気に気づいたのか、緋葉に笑顔を向けると手を差し出した。
「どうも、時の友!柊 冬樹です。よろしく」
「……何だか馴れ馴れしいわね。本当にあなたの友達なの?」
冬樹の行動に、緋葉は眉を寄せる。
「まぁ……」
先程から「まぁ……」としか答えない時に、呆れた緋葉は冬樹をジロジロと見た。暫く見つめた後に目を座らせると、警戒心を解かないまま冬樹の顔を見つめた。
「緋葉 雫よ」
緋葉は、差し出された手を握らずに自己紹介を済ませた。
そんな態度に、冬樹はショックだったのか影を背負いながら隅に座り込んでしまった。
「変な人ね」
「それは同感」
そんな会話をしていると、ニ講目の終わりのチャイムが辺り一体に響き渡る。それと同時に生徒の笑い声や話し声が聞こえてきた。
「授業、終わったのか」
鳴り響く鐘の方を見つめると、とある事を思い出した。
「やばっ、向日葵忘れてた!」
その言葉に、冬樹は立ち上がる。
「向日葵なら職員室に行ったよ」
「なら、早く行きなさい」
緋葉が二人を急かすと、冬樹は慌てた様子もなく扉に向かい、時もそれに続いた。だが、出る直後振り返り緋葉に向き直った。
「緋葉は行かないのか?」
「私は授業に興味ないからいいのよ」
「時ー早くー」
「分かってるって。それじゃあ」
冬樹に急かされ、去り際に緋葉に別れを告げると向日葵の元へ向かった。
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