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第5章 ゴールデン・ドリーム
66.殺し屋募集 I
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数日後 東京警察署ー
捜査一課に用意された部屋で、八代和樹(やしろかずき)はキーボードを叩いていた。
カタカタカタカタ。
「ふぅ…、目が疲れるな」
ブルーライトカットのメガネを外すし、目頭を指で抑える。
「今月も、アイツ等とは会えそうにないな」
そう言って、八代和樹は壁に貼られたカレンダーに視線を向けた。
10月10日、槙島(まきしま)と共に行動するようになって2ヶ月程が経った。
八代和樹が言っているアイツ等とは月に1回、定期的に会っている友人達がいた。
年齢はバラバラだが、八代和樹にとっては大事な友人達だ。
八代和樹自身も友人達と会う事は、1番の楽しみだった。
「和樹、コーヒー買って来たぞ」
「悪いな、裕二(ゆうじ)」
八代和樹に声を掛けて来たのは、缶コーヒーを2本持った櫻葉(さくらば)裕二だった。
「椿恭弥が主犯の事件の処理が多過ぎるな。ま、大体は自己処理で済ませなきゃいけねーけどな」
「雑用仕事のオンパレードだよ。俺達、いつから事務員みたいな仕事しかしなくなったんだ?」
八代和樹の言葉を聞いた櫻葉裕二は、そう吐き捨てなから隣のテーブルの椅子に腰を下ろす。
「上の連中が椿に金を握らせれてるからしょうがない。証拠の映像とかあれば、状況が変えれんだけど…」
「椿が証拠が残るような事はしないだろう。密会する場所も椿が管理している店が殆どだ。おまけに個室と来た」
「今の上の連中を変えない限り、俺達はまともに仕事なんか出来ねーよ。ったく、椿にいくら貰ってんだか…」
そう言って、櫻葉裕二は溜め息を吐く。
カツカツカツ。
廊下からヒールの鳴る音が響き渡る。
「和樹さん、少し良いですか」
捜査一課の部屋に顔を出したのは槙島ネネだった。
「槙島?どうしたんだ」
「ここではちょっと…」
槙島ネネは櫻葉裕二を一度見てから、八代和樹に視線を向ける。
「あぁ…、分かった。裕二、少し出て来る」
「了解。俺は引き続き自己処理の書類作業してるわ」
八代和樹と槙島ネネは部屋を出て、駐車場に向かった。
槙島ネネは駐車してある白のプリウスの鍵を開け、車に乗り込む。
八代和樹も助手席のドアを開け車に乗り込んだ。
「少し、警察署から離れますね」
「何かあったのか」
「えぇ、ヨウから連絡が来ました」
そう言ってから、槙島ネネはドライブに変え車を走らせる。
行き先は特にないしらしく、適当な道を走っていた。
「四郎君が計画に賛同してくれました。ただ、モモちゃんのJewelry Wordsを使った事で肺が炎症を起こしたらしくて。四郎君がJewelry Wordsを使う事は、限られました」
「どう言う事だ?何回も使用したから、肺が?」
「1回だけですね」
「1回…か。俺も何回か使った事があるが、体に影響は出ていないな」
八代和樹は使った時の事を思い出していた。
「力が強大過ぎて、体に影響が出たんでしょう。兵頭雪哉もモモちゃんに使わせたくないだろうし」
「そのJewelry Wordsってのにも力の差があるのか?」
「ありますよ。1から5のレベルで例えると、私の力はレベル4で、モモちゃんの力はレベル5になります。レ
ベル5は1番強い事になりますね」
「成る程な、よく分からない世界の話だな」
窓から流れる風景を見ながら、八代和樹は呟く。
「私自身も分からない事だらけですよ。何で、私達のようなJewelry Pupilを持った者が生まれたのか。こんなの要らないのに」
「槙島、1つ聞きたい事があるんだか…」
「あぁ、晶(あきら)の事ですか?」
そう言って、槙島ネネはチラッと八代和樹に視線を送る。
「お前がその、晶って子の恋人を殺したって…」
「和樹さん。晶はヨウの恋人だったんですよ?知らなかったんですか?」
「ヨウの恋人!?アイツ、女が居たのか…。全く、そんな事を匂わせなかったから気が付かなかった」
「まぁ、晶は兵頭雪哉に買われてしまったし…。普通の子ではないので、ヨウも貴方に言わなかったのでしょう」
「…。お前、あの子の事を挑発するような口調で話していたな。それは何でだ」
八代和樹の言葉を聞いた槙島ネネは、唇を舐めてから口を開けた。
「私が晶の親を殺してしまったから」
槙島ネネは悲しげに笑いながら、言葉を放った。
「殺した…?」
「私と晶は隣同士の家で、いわゆる幼馴染じみと言う関係でした。他の子達よりも仲は良くて、お互いの家を行き来したりもして。だけど、私のJewelry Wordsが暴走してしまって。ここまで言ったら、察しがつくでしょ?」
「誤って殺してしまった…って事か。だけど、槙島の
意思ではなかっただろ?Jewelry Wordsの力が勝手に暴走しただけだろ?」
「だけど、晶は割り切れませんよ。親を殺されて、親戚にたらい回しにされた挙句、売られてしまったのだから」
八代和樹には槙島ネネの言っている意味が分かった。
自分の所為で、晶と言う子の人生を壊してしまった事。
東京市内 高級マンションの最上階
木下穂乃果(きのしたほのか)は慣れない手付きで、キーボードを叩いていた。
パソコン画面に映し出されたのは、椿会の情報が書かれたサイトであった。
「うーん、欲しい情報はないなぁ…」
「まーた、パソコンかよ。熱心に何を調べてんだか」
呆れながらソファーに座って、晶は煙草を吸っていた。
「椿会の事をちょっと…」
「ハッ、テメェに調べられたら椿会も終わりだな」
「どこのサイトも知ってる情報しかないんだよなぁ…」
「そう言うのは専門の奴に聞くんだよ」
「専門?」
木下穂乃果は不思議そうな顔をして晶に尋ねる。
「情報屋だよ。俺達みたいな仕事の奴等は情報屋から
買うんだ」
「成る程!!」
「七海(ななみ)に前払いで頼めば?」
「七海?」
キーボードから手を離した木下穂乃果は、晶の隣に腰を下ろしながら尋ねた。
「四郎の所のハッカーだよ」
「え!?お兄さんの所の!?」
「椿恭弥の情報を集めてどうするんだ?お前にアイツは殺せねぇぞ」
吸っていた煙草を灰皿に押し当てながら、晶は言葉を吐いた。
「少し殺しに慣れて来たから殺せると思ったか?」
「今のお前は下の下だ。椿恭弥は殺しに慣れているし、経験も遥かに積んでる。俺よりも弱い奴が椿恭弥を殺せる訳かわねーよ」
その言葉を聞いた木下穂乃果は視線を下に落とす。
「無駄死にしたいなら止めねーよ」
「…、七海って人の連絡を教えて」
晶はスマホを取り出し、木下穂乃果に画面を見せた。
そこには、七海と登録された電話番号が映し出されていた。
木下穂乃果はスマホを取り出し、番号を登録して行く。
「へぇ、死に行くのか」
「違うよ。あたしの知りたい情報を買うだけ」
「あっそう。俺は仕事があるから、夜には帰かえる」
そう言って、晶はソファーに掛けてあった大きめのジージャンを手に取る。
素知らぬ顔のままリビングを出て行った。
パタンッと扉が閉まり、木下穂乃果は七海に着信を入れた。
CASE 七海
プルルッ、プルルッー
天音(あまね)とノアの2人で、僕達は嘉助が用意してくれた部屋に引っ越して来ていた。
何台かのパソコンとモニターが部屋を占めていた。
幅160㎝×長さ195㎝のクイーンベットと車椅子だけが、部屋に配置されていた。
モゾモゾとベットの上で、僕は寝返りを打っている中だった。
白いシーツに包まれながら寝ていた僕は、着信の音で目を覚ます。
眠い目を擦りながら、スマホを手に取り画面に視線を落とした。
「誰だ…?」
知らない番号が画面に表示され、眉を顰める。
だが、もしかしたら依頼の連絡なのかもしれない。
そう思った七海は、渋々ながら電車に出た。
「あ、あの。な、七海さんですか?」
電話越し聞こえて来たのは、おどおどした女の声だ。
「そうだけど、この番号を知ってるって事は依頼人でしょ?」
「はい、そうです」
だったら、早く誰の情報を知りたいか言ってほしいんだけど。
僕に掛かって来る電話の内容は至ってシンプルなものだ。
誰の情報を欲しいか言ってから、前払いで振り込んで貰う。
枕の横に置いてあるパソコンを起動させ、仕事が出来るように準備をした。
だが、女は一向に話そうとしない。
何なんだ?
「あのさ、誰の情報が欲しいわけ?」
「あ、えっと…。椿会と椿恭弥の情報を…」
その名前を聞くと、思わずキーボードから手を離した。
「椿恭弥だって?お前、正気?」
「いや、正気ですけど…」
「あのさ、目的は何?」
「ある人の為に…、集めて行動したいんです」
この女…、素人か?
それとも、同業者?
話し方からして、電話に慣れてない感じだ。
「行動ね…。椿恭弥の情報は100万からスタートになるけど。それは大丈夫なの?」
「は、はい。依頼を受けた時のお金は、貯めてあります」
同業者で当たりだな。
あまり情報が入らない椿恭弥の情報は、高値で取り引きされている。
それを分かった上で、この女は了承してきた。
「了解。振り込み先はショートメールで送る。3時間だけ待ってて」
「分かりました」
通話を切った瞬間、部屋の扉が開いた。
「マスター、依頼の電話ですか?」
部屋に入ってきた天音がベットに腰を下ろしながら、尋ねてきた。
「うん、椿恭弥の情報をね。申し訳ないんだけど…、椅子まで運んでくれる?」
「分かりました」
そう言って、天音は軽々と僕の体を抱き上げパソコンが置かれているテーブルまで歩いた。
ソッと椅子に下ろしてくれると、ノアが部屋に入ってきた。
「おっはよー、マスター!!カフェオレ淹れたよー」
「あ、ノア。ありがとう。」
ノアはカフェオレの入ったマグカップをテーブルに置く。
「マスター、今から何すんの?」
「ん?依頼が入ったから、情報収集をね。」
ノアの問いに答え、僕は何台かのパソコンのキーボードを叩き始める。
カタカタカタカタカタカタ!!
「うわっ!?キーボード打つの早!?」
「凄いな…。モニターにもの凄い量の文字が出てきたな…」
2人が唖然としてるのを他所に、ひたすらにキーボードを打つ。
モニターにさっと目線を向け、欲しい情報が出て来ているか確認する。
どれもこれも、普通に調べたら出て来る情報ばかりだ。
椿恭弥自身の事を事細かく書かれた情報は、今の所はなさそうだな。
1つのモニターに映った黒い画面に、小さな四角形だけのホームページに目を止めた。
「ん?何これ?」
「ホームページ?みたいなものか?」
ノアと天音が左右から顔を覗き込んで、モニターの画面を見つめた。
「2人共、思ったより早く見つかったよ」
「「え?」」
僕の言葉を聞いた2人は目を丸くさせた。
「このホームページ、どうやら裏サイトにアクセス出来るみたい。」
そう言って、カーソルを小さな四角形をクリックする。
様々な内容が投稿されている掲示板に飛び、観覧できるようになった。
内容を見て行くと、自殺志願者の募集や闇バイトの募集が掲示されていた。
「凄い、こんなサイトがあるんだ」
「あるよ、闇市場があるくらいだし。組織に所属してない奴等はこれを見て、集まったりするみたいだよ」
天音の呟きに答えながら、掲示板を辿って行くと1つの投稿に目に入った。
[ 椿会直属の殺し屋募集中。経験者、未経験者歓迎。詳しくはこちらをご覧ください ]
投稿の内容としては、椿会が殺し屋を集めたいようだ。
文書の下には、違うサイトに飛ぶURLが記載されている。
試しにURLをクリックすると、面接日と時刻、椿会の住所だけが書かれたサイトに飛んだ。
「面接日は10月11日、時刻は23時丁度か…」
「これって、本当に椿会の奴等が載せた情報なのかな?」
「どうかな。探ってみよう」
セキュリティーも掛かっていないサイトだな。
このサイトを作った人物の足取りを探るか。
カタカタカタカタカタカタ。
僕の作った人物探索アプリを導入しつつ、Whois(フーイズ)を使いドメイン名やPCアドレスを探る。
すると、ひとりの人物がサイトを作った事が判明した。
坂田隆(さかだたかし)と言う男がサイトを作ったよう
だ。
人物探索アプリの結果も同様で、坂田隆は椿会の組員だった。
坂田隆のPCをハッキングし、メールボックスやフォルダーの中を確認する。
フォルダーの中を見ると、ズラッと人の名前が書かれ
たページが現れた。
名前の上に赤の×印が書かれ、その横には泉病院配置と書かれていた。
泉淳病院配置?
それやから…、他の名前の横にはヒルトン東京配置と書かれていた。
これって…、もしかして…。
坂田隆は本当に素人を集めて、殺しの仕事をさせていたのだろう。
死んだ人物に×を付け、どこに配置したのかを書いてあるようだ。
成る程、これであの投稿は本物だと立証出来た。
本当に椿会は殺し屋を集めたいのだ。
坂田隆のパソコンに侵入した痕跡を消し、スマホを手に取った。
1時間弱で、椿会の新たな情報を手に入れたが…。
椿恭弥自身に関しては、何もないな。
掛かったて来た電話番号に、口座番号をショートメールに送り、通話を掛けた。
プルルッ、プルルッ。
「も、もしもし」
「思ったよりも早く情報が手に入ったから、報告させ
てもらうよ」
僕は女に集めた情報を口頭で説明した。
「す、凄い。こんな短時間で…」
「口座番号は送ったから、振り込んだらメールは消去されるようになってる。ま、この情報を聞いてどうすかは、アンタ次第だね。椿恭弥自身の情報は得れなかったから、50万で良いよ」
「は、はい。ありがとうございます、お金は必ず振り込みますから」
「よろしく」
僕はそう言って、通話を終わらせた。
「さっすが、マスターだな!!お疲れ様」
「少し遅いけど、食事にしよう。マスターの好きなエッグベネディクトを作ったよ」
ノアが僕の頭を撫でる中、天音は車椅子を持って来てくれた。
「本当?楽しみだな」
「リビングに行こうか」
「うん、ありがとう」
パソコンを手に持つと、ノアが体を持ち上げ車椅子に移動してくれた。
車椅子に乗った事を確認すると、天音が取手を持ちリビングに誘導してくれたのだ。
CASE 木下穂乃果
七海と言う人物から連絡を受けた後、その足で銀行に向かった。
ショートメールに送られた口座番号にお金を振り込む為だ。
マンションから数分歩いた先に銀行はある。
だが銀行に向かう中、頭の中は聞いた情報の事が占めていた。
椿会の殺し屋になれば、調べるよりも椿恭弥の情報を
得られる。
明日の夜23時、椿会の事務所に行こう。
そう思っていると、銀行に到着した。
銀行の中に入り、ETMで先に50万を下ろした後、教えられた口座番号に50万を振り込んだ。
その瞬間、ショートメールは自動で消去された。
本当に消されるようになっていたのかと、驚いたまま銀行を後にした。
マンションに戻り、カレーを作りながら晶の帰りを待つ事に。
手慣れない手付きでジャガイモと人参の皮を剥いて行く。
熱した鍋の中に一口大に切った牛肉を炒め、切った野菜達を入れる。
ジュワワワッと音を立てながら、白い湯気が立った時だった。
ガチャッと扉が開き、晶が帰って来た事が分かった。
「何、料理作ってんの?」
「うん。カレーだけど」
「あ、七海から情報を買ったんだって?」
そう言って、晶はドカッとソファーに腰を下ろす。
鍋の中に中辛のカレーのルーを入れ、ソースを隠し味程度に回し入れる。
沸々と温まるカレーを混ぜながら、晶に手に入れた情報を話した。
晶は煙草を吸いながら黙って聞いていた。
「まぁ、七海の情報なら確かだろうな。それで?どうすんの」
「行くよ、私。椿会の殺し屋に応募する」
「へぇ」
「お兄さんの為に殺し屋になったんだもん。椿恭弥の情報を集めて、お兄さんに渡すの」
炊き立てのご飯を注ぎ、カレーをかける。
テーブルに2人分のカレーと小皿のサラダを置くと、晶が腰を上げた。
「行くのは良いが、スマホは俺に渡せ。万が一に受かったとしたら、椿恭弥はお前の事を調べ上げるだろうよ」
「分かった」
「上手く嘘を付けよ、椿恭弥の懐に入りに行くんだろ。俺や雪哉さんの事を知られたら、お前は間違いなく殺されるよ」
晶の言葉が重く突き刺さる。
分かっていた事を改めて人に言われると、かなり重い。
「うん、分かってる」
「そう。なら、頑張んな」
そう言って、晶はカレーを頬張った。
私も黙りながら黙々とカレーを口に運んだ。
10月11日 22:30
あっという間に募集日当日になってしまった。
全身黒で揃えたカジュアルな服装のまま、紙に描いた住所に向かって歩いていた。
緊張で胸が張り裂けそうになる。
ズボンの尻ポケットにいれたハンドガンの感触で、気持ちが収まる。
いや、そう思い込んでいるだけだ。
椿会の事務所は、六本木の裏道に入った所に事務所を構えている。
街灯が少なく、夜の所為で真っ暗だ。
嫌な感じだな…。
そう思っていると、前の方からガラの悪い男達の話し声が聞こえてきた。
あの人達も椿会の殺し屋になる為に来たのかな…。
事務所の前に到着すると、ざっと20人の男女がいた。
若い人や50代前半と言った年齢層はバラバラみたい。
顔付きは皆、どこか暗く感じた。
騒がしいのは私の前方を歩いていた男達だけだった。
キキッと言うブレーキ音が聞こえ、目を向けると黒塗りのバスが停車していた。
ガチャッ。
事務所の扉が開き、数人の組員達が階段を降りて来た。
赤い柄シャツを着た男が口を開く。
「このバスに乗って試験会場まで向かう。さ、順番にバスに乗り込め」
その言葉を聞き、集まった人達はバスに乗り込んで行く。
私も続けてバスに乗り込み、1番後ろの窓際の座席に腰を下ろす。
ドサッと隣に腰を下ろして来たのは、セーラー服を聞いた包帯だらけの女子高生だった。
この子も…、殺し屋なのかな?
あまりの肌の白さに不気味さを感じてしまう。
バンッと乱暴に扉を閉められ、バスが動き出した。
その瞬間、ガラの悪い男達が立ち上がり銃を取り出したのだ。
「っ!?」
「場所に着くまで待ってられっかよ!!俺達がお前等を皆殺しにしてやる!!」
金髪の猿顔の男が隣にいる女子高生に向かって、引き金を引こうとした。
まずい!!
私は慌ててハンドガンを取り出した時だった。
シュンッ!!
猿顔の男の首元に一筋の光が走ると、動脈から血が噴き出した。
女子高生の手には刀が握らせており、猿顔の男を斬った事が分かった。
一瞬だった。
何が起きたのか分からなかった。
「う、うわぁぁぁあぁぁぁ!!!」
「こ、こいつ、本当に殺しやがった!?」
猿顔の男の仲間達が騒ぎ出すと、車内にいた男女が一斉に立ち上がる。
そして、車内から発砲音が鳴り響き始めた。
捜査一課に用意された部屋で、八代和樹(やしろかずき)はキーボードを叩いていた。
カタカタカタカタ。
「ふぅ…、目が疲れるな」
ブルーライトカットのメガネを外すし、目頭を指で抑える。
「今月も、アイツ等とは会えそうにないな」
そう言って、八代和樹は壁に貼られたカレンダーに視線を向けた。
10月10日、槙島(まきしま)と共に行動するようになって2ヶ月程が経った。
八代和樹が言っているアイツ等とは月に1回、定期的に会っている友人達がいた。
年齢はバラバラだが、八代和樹にとっては大事な友人達だ。
八代和樹自身も友人達と会う事は、1番の楽しみだった。
「和樹、コーヒー買って来たぞ」
「悪いな、裕二(ゆうじ)」
八代和樹に声を掛けて来たのは、缶コーヒーを2本持った櫻葉(さくらば)裕二だった。
「椿恭弥が主犯の事件の処理が多過ぎるな。ま、大体は自己処理で済ませなきゃいけねーけどな」
「雑用仕事のオンパレードだよ。俺達、いつから事務員みたいな仕事しかしなくなったんだ?」
八代和樹の言葉を聞いた櫻葉裕二は、そう吐き捨てなから隣のテーブルの椅子に腰を下ろす。
「上の連中が椿に金を握らせれてるからしょうがない。証拠の映像とかあれば、状況が変えれんだけど…」
「椿が証拠が残るような事はしないだろう。密会する場所も椿が管理している店が殆どだ。おまけに個室と来た」
「今の上の連中を変えない限り、俺達はまともに仕事なんか出来ねーよ。ったく、椿にいくら貰ってんだか…」
そう言って、櫻葉裕二は溜め息を吐く。
カツカツカツ。
廊下からヒールの鳴る音が響き渡る。
「和樹さん、少し良いですか」
捜査一課の部屋に顔を出したのは槙島ネネだった。
「槙島?どうしたんだ」
「ここではちょっと…」
槙島ネネは櫻葉裕二を一度見てから、八代和樹に視線を向ける。
「あぁ…、分かった。裕二、少し出て来る」
「了解。俺は引き続き自己処理の書類作業してるわ」
八代和樹と槙島ネネは部屋を出て、駐車場に向かった。
槙島ネネは駐車してある白のプリウスの鍵を開け、車に乗り込む。
八代和樹も助手席のドアを開け車に乗り込んだ。
「少し、警察署から離れますね」
「何かあったのか」
「えぇ、ヨウから連絡が来ました」
そう言ってから、槙島ネネはドライブに変え車を走らせる。
行き先は特にないしらしく、適当な道を走っていた。
「四郎君が計画に賛同してくれました。ただ、モモちゃんのJewelry Wordsを使った事で肺が炎症を起こしたらしくて。四郎君がJewelry Wordsを使う事は、限られました」
「どう言う事だ?何回も使用したから、肺が?」
「1回だけですね」
「1回…か。俺も何回か使った事があるが、体に影響は出ていないな」
八代和樹は使った時の事を思い出していた。
「力が強大過ぎて、体に影響が出たんでしょう。兵頭雪哉もモモちゃんに使わせたくないだろうし」
「そのJewelry Wordsってのにも力の差があるのか?」
「ありますよ。1から5のレベルで例えると、私の力はレベル4で、モモちゃんの力はレベル5になります。レ
ベル5は1番強い事になりますね」
「成る程な、よく分からない世界の話だな」
窓から流れる風景を見ながら、八代和樹は呟く。
「私自身も分からない事だらけですよ。何で、私達のようなJewelry Pupilを持った者が生まれたのか。こんなの要らないのに」
「槙島、1つ聞きたい事があるんだか…」
「あぁ、晶(あきら)の事ですか?」
そう言って、槙島ネネはチラッと八代和樹に視線を送る。
「お前がその、晶って子の恋人を殺したって…」
「和樹さん。晶はヨウの恋人だったんですよ?知らなかったんですか?」
「ヨウの恋人!?アイツ、女が居たのか…。全く、そんな事を匂わせなかったから気が付かなかった」
「まぁ、晶は兵頭雪哉に買われてしまったし…。普通の子ではないので、ヨウも貴方に言わなかったのでしょう」
「…。お前、あの子の事を挑発するような口調で話していたな。それは何でだ」
八代和樹の言葉を聞いた槙島ネネは、唇を舐めてから口を開けた。
「私が晶の親を殺してしまったから」
槙島ネネは悲しげに笑いながら、言葉を放った。
「殺した…?」
「私と晶は隣同士の家で、いわゆる幼馴染じみと言う関係でした。他の子達よりも仲は良くて、お互いの家を行き来したりもして。だけど、私のJewelry Wordsが暴走してしまって。ここまで言ったら、察しがつくでしょ?」
「誤って殺してしまった…って事か。だけど、槙島の
意思ではなかっただろ?Jewelry Wordsの力が勝手に暴走しただけだろ?」
「だけど、晶は割り切れませんよ。親を殺されて、親戚にたらい回しにされた挙句、売られてしまったのだから」
八代和樹には槙島ネネの言っている意味が分かった。
自分の所為で、晶と言う子の人生を壊してしまった事。
東京市内 高級マンションの最上階
木下穂乃果(きのしたほのか)は慣れない手付きで、キーボードを叩いていた。
パソコン画面に映し出されたのは、椿会の情報が書かれたサイトであった。
「うーん、欲しい情報はないなぁ…」
「まーた、パソコンかよ。熱心に何を調べてんだか」
呆れながらソファーに座って、晶は煙草を吸っていた。
「椿会の事をちょっと…」
「ハッ、テメェに調べられたら椿会も終わりだな」
「どこのサイトも知ってる情報しかないんだよなぁ…」
「そう言うのは専門の奴に聞くんだよ」
「専門?」
木下穂乃果は不思議そうな顔をして晶に尋ねる。
「情報屋だよ。俺達みたいな仕事の奴等は情報屋から
買うんだ」
「成る程!!」
「七海(ななみ)に前払いで頼めば?」
「七海?」
キーボードから手を離した木下穂乃果は、晶の隣に腰を下ろしながら尋ねた。
「四郎の所のハッカーだよ」
「え!?お兄さんの所の!?」
「椿恭弥の情報を集めてどうするんだ?お前にアイツは殺せねぇぞ」
吸っていた煙草を灰皿に押し当てながら、晶は言葉を吐いた。
「少し殺しに慣れて来たから殺せると思ったか?」
「今のお前は下の下だ。椿恭弥は殺しに慣れているし、経験も遥かに積んでる。俺よりも弱い奴が椿恭弥を殺せる訳かわねーよ」
その言葉を聞いた木下穂乃果は視線を下に落とす。
「無駄死にしたいなら止めねーよ」
「…、七海って人の連絡を教えて」
晶はスマホを取り出し、木下穂乃果に画面を見せた。
そこには、七海と登録された電話番号が映し出されていた。
木下穂乃果はスマホを取り出し、番号を登録して行く。
「へぇ、死に行くのか」
「違うよ。あたしの知りたい情報を買うだけ」
「あっそう。俺は仕事があるから、夜には帰かえる」
そう言って、晶はソファーに掛けてあった大きめのジージャンを手に取る。
素知らぬ顔のままリビングを出て行った。
パタンッと扉が閉まり、木下穂乃果は七海に着信を入れた。
CASE 七海
プルルッ、プルルッー
天音(あまね)とノアの2人で、僕達は嘉助が用意してくれた部屋に引っ越して来ていた。
何台かのパソコンとモニターが部屋を占めていた。
幅160㎝×長さ195㎝のクイーンベットと車椅子だけが、部屋に配置されていた。
モゾモゾとベットの上で、僕は寝返りを打っている中だった。
白いシーツに包まれながら寝ていた僕は、着信の音で目を覚ます。
眠い目を擦りながら、スマホを手に取り画面に視線を落とした。
「誰だ…?」
知らない番号が画面に表示され、眉を顰める。
だが、もしかしたら依頼の連絡なのかもしれない。
そう思った七海は、渋々ながら電車に出た。
「あ、あの。な、七海さんですか?」
電話越し聞こえて来たのは、おどおどした女の声だ。
「そうだけど、この番号を知ってるって事は依頼人でしょ?」
「はい、そうです」
だったら、早く誰の情報を知りたいか言ってほしいんだけど。
僕に掛かって来る電話の内容は至ってシンプルなものだ。
誰の情報を欲しいか言ってから、前払いで振り込んで貰う。
枕の横に置いてあるパソコンを起動させ、仕事が出来るように準備をした。
だが、女は一向に話そうとしない。
何なんだ?
「あのさ、誰の情報が欲しいわけ?」
「あ、えっと…。椿会と椿恭弥の情報を…」
その名前を聞くと、思わずキーボードから手を離した。
「椿恭弥だって?お前、正気?」
「いや、正気ですけど…」
「あのさ、目的は何?」
「ある人の為に…、集めて行動したいんです」
この女…、素人か?
それとも、同業者?
話し方からして、電話に慣れてない感じだ。
「行動ね…。椿恭弥の情報は100万からスタートになるけど。それは大丈夫なの?」
「は、はい。依頼を受けた時のお金は、貯めてあります」
同業者で当たりだな。
あまり情報が入らない椿恭弥の情報は、高値で取り引きされている。
それを分かった上で、この女は了承してきた。
「了解。振り込み先はショートメールで送る。3時間だけ待ってて」
「分かりました」
通話を切った瞬間、部屋の扉が開いた。
「マスター、依頼の電話ですか?」
部屋に入ってきた天音がベットに腰を下ろしながら、尋ねてきた。
「うん、椿恭弥の情報をね。申し訳ないんだけど…、椅子まで運んでくれる?」
「分かりました」
そう言って、天音は軽々と僕の体を抱き上げパソコンが置かれているテーブルまで歩いた。
ソッと椅子に下ろしてくれると、ノアが部屋に入ってきた。
「おっはよー、マスター!!カフェオレ淹れたよー」
「あ、ノア。ありがとう。」
ノアはカフェオレの入ったマグカップをテーブルに置く。
「マスター、今から何すんの?」
「ん?依頼が入ったから、情報収集をね。」
ノアの問いに答え、僕は何台かのパソコンのキーボードを叩き始める。
カタカタカタカタカタカタ!!
「うわっ!?キーボード打つの早!?」
「凄いな…。モニターにもの凄い量の文字が出てきたな…」
2人が唖然としてるのを他所に、ひたすらにキーボードを打つ。
モニターにさっと目線を向け、欲しい情報が出て来ているか確認する。
どれもこれも、普通に調べたら出て来る情報ばかりだ。
椿恭弥自身の事を事細かく書かれた情報は、今の所はなさそうだな。
1つのモニターに映った黒い画面に、小さな四角形だけのホームページに目を止めた。
「ん?何これ?」
「ホームページ?みたいなものか?」
ノアと天音が左右から顔を覗き込んで、モニターの画面を見つめた。
「2人共、思ったより早く見つかったよ」
「「え?」」
僕の言葉を聞いた2人は目を丸くさせた。
「このホームページ、どうやら裏サイトにアクセス出来るみたい。」
そう言って、カーソルを小さな四角形をクリックする。
様々な内容が投稿されている掲示板に飛び、観覧できるようになった。
内容を見て行くと、自殺志願者の募集や闇バイトの募集が掲示されていた。
「凄い、こんなサイトがあるんだ」
「あるよ、闇市場があるくらいだし。組織に所属してない奴等はこれを見て、集まったりするみたいだよ」
天音の呟きに答えながら、掲示板を辿って行くと1つの投稿に目に入った。
[ 椿会直属の殺し屋募集中。経験者、未経験者歓迎。詳しくはこちらをご覧ください ]
投稿の内容としては、椿会が殺し屋を集めたいようだ。
文書の下には、違うサイトに飛ぶURLが記載されている。
試しにURLをクリックすると、面接日と時刻、椿会の住所だけが書かれたサイトに飛んだ。
「面接日は10月11日、時刻は23時丁度か…」
「これって、本当に椿会の奴等が載せた情報なのかな?」
「どうかな。探ってみよう」
セキュリティーも掛かっていないサイトだな。
このサイトを作った人物の足取りを探るか。
カタカタカタカタカタカタ。
僕の作った人物探索アプリを導入しつつ、Whois(フーイズ)を使いドメイン名やPCアドレスを探る。
すると、ひとりの人物がサイトを作った事が判明した。
坂田隆(さかだたかし)と言う男がサイトを作ったよう
だ。
人物探索アプリの結果も同様で、坂田隆は椿会の組員だった。
坂田隆のPCをハッキングし、メールボックスやフォルダーの中を確認する。
フォルダーの中を見ると、ズラッと人の名前が書かれ
たページが現れた。
名前の上に赤の×印が書かれ、その横には泉病院配置と書かれていた。
泉淳病院配置?
それやから…、他の名前の横にはヒルトン東京配置と書かれていた。
これって…、もしかして…。
坂田隆は本当に素人を集めて、殺しの仕事をさせていたのだろう。
死んだ人物に×を付け、どこに配置したのかを書いてあるようだ。
成る程、これであの投稿は本物だと立証出来た。
本当に椿会は殺し屋を集めたいのだ。
坂田隆のパソコンに侵入した痕跡を消し、スマホを手に取った。
1時間弱で、椿会の新たな情報を手に入れたが…。
椿恭弥自身に関しては、何もないな。
掛かったて来た電話番号に、口座番号をショートメールに送り、通話を掛けた。
プルルッ、プルルッ。
「も、もしもし」
「思ったよりも早く情報が手に入ったから、報告させ
てもらうよ」
僕は女に集めた情報を口頭で説明した。
「す、凄い。こんな短時間で…」
「口座番号は送ったから、振り込んだらメールは消去されるようになってる。ま、この情報を聞いてどうすかは、アンタ次第だね。椿恭弥自身の情報は得れなかったから、50万で良いよ」
「は、はい。ありがとうございます、お金は必ず振り込みますから」
「よろしく」
僕はそう言って、通話を終わらせた。
「さっすが、マスターだな!!お疲れ様」
「少し遅いけど、食事にしよう。マスターの好きなエッグベネディクトを作ったよ」
ノアが僕の頭を撫でる中、天音は車椅子を持って来てくれた。
「本当?楽しみだな」
「リビングに行こうか」
「うん、ありがとう」
パソコンを手に持つと、ノアが体を持ち上げ車椅子に移動してくれた。
車椅子に乗った事を確認すると、天音が取手を持ちリビングに誘導してくれたのだ。
CASE 木下穂乃果
七海と言う人物から連絡を受けた後、その足で銀行に向かった。
ショートメールに送られた口座番号にお金を振り込む為だ。
マンションから数分歩いた先に銀行はある。
だが銀行に向かう中、頭の中は聞いた情報の事が占めていた。
椿会の殺し屋になれば、調べるよりも椿恭弥の情報を
得られる。
明日の夜23時、椿会の事務所に行こう。
そう思っていると、銀行に到着した。
銀行の中に入り、ETMで先に50万を下ろした後、教えられた口座番号に50万を振り込んだ。
その瞬間、ショートメールは自動で消去された。
本当に消されるようになっていたのかと、驚いたまま銀行を後にした。
マンションに戻り、カレーを作りながら晶の帰りを待つ事に。
手慣れない手付きでジャガイモと人参の皮を剥いて行く。
熱した鍋の中に一口大に切った牛肉を炒め、切った野菜達を入れる。
ジュワワワッと音を立てながら、白い湯気が立った時だった。
ガチャッと扉が開き、晶が帰って来た事が分かった。
「何、料理作ってんの?」
「うん。カレーだけど」
「あ、七海から情報を買ったんだって?」
そう言って、晶はドカッとソファーに腰を下ろす。
鍋の中に中辛のカレーのルーを入れ、ソースを隠し味程度に回し入れる。
沸々と温まるカレーを混ぜながら、晶に手に入れた情報を話した。
晶は煙草を吸いながら黙って聞いていた。
「まぁ、七海の情報なら確かだろうな。それで?どうすんの」
「行くよ、私。椿会の殺し屋に応募する」
「へぇ」
「お兄さんの為に殺し屋になったんだもん。椿恭弥の情報を集めて、お兄さんに渡すの」
炊き立てのご飯を注ぎ、カレーをかける。
テーブルに2人分のカレーと小皿のサラダを置くと、晶が腰を上げた。
「行くのは良いが、スマホは俺に渡せ。万が一に受かったとしたら、椿恭弥はお前の事を調べ上げるだろうよ」
「分かった」
「上手く嘘を付けよ、椿恭弥の懐に入りに行くんだろ。俺や雪哉さんの事を知られたら、お前は間違いなく殺されるよ」
晶の言葉が重く突き刺さる。
分かっていた事を改めて人に言われると、かなり重い。
「うん、分かってる」
「そう。なら、頑張んな」
そう言って、晶はカレーを頬張った。
私も黙りながら黙々とカレーを口に運んだ。
10月11日 22:30
あっという間に募集日当日になってしまった。
全身黒で揃えたカジュアルな服装のまま、紙に描いた住所に向かって歩いていた。
緊張で胸が張り裂けそうになる。
ズボンの尻ポケットにいれたハンドガンの感触で、気持ちが収まる。
いや、そう思い込んでいるだけだ。
椿会の事務所は、六本木の裏道に入った所に事務所を構えている。
街灯が少なく、夜の所為で真っ暗だ。
嫌な感じだな…。
そう思っていると、前の方からガラの悪い男達の話し声が聞こえてきた。
あの人達も椿会の殺し屋になる為に来たのかな…。
事務所の前に到着すると、ざっと20人の男女がいた。
若い人や50代前半と言った年齢層はバラバラみたい。
顔付きは皆、どこか暗く感じた。
騒がしいのは私の前方を歩いていた男達だけだった。
キキッと言うブレーキ音が聞こえ、目を向けると黒塗りのバスが停車していた。
ガチャッ。
事務所の扉が開き、数人の組員達が階段を降りて来た。
赤い柄シャツを着た男が口を開く。
「このバスに乗って試験会場まで向かう。さ、順番にバスに乗り込め」
その言葉を聞き、集まった人達はバスに乗り込んで行く。
私も続けてバスに乗り込み、1番後ろの窓際の座席に腰を下ろす。
ドサッと隣に腰を下ろして来たのは、セーラー服を聞いた包帯だらけの女子高生だった。
この子も…、殺し屋なのかな?
あまりの肌の白さに不気味さを感じてしまう。
バンッと乱暴に扉を閉められ、バスが動き出した。
その瞬間、ガラの悪い男達が立ち上がり銃を取り出したのだ。
「っ!?」
「場所に着くまで待ってられっかよ!!俺達がお前等を皆殺しにしてやる!!」
金髪の猿顔の男が隣にいる女子高生に向かって、引き金を引こうとした。
まずい!!
私は慌ててハンドガンを取り出した時だった。
シュンッ!!
猿顔の男の首元に一筋の光が走ると、動脈から血が噴き出した。
女子高生の手には刀が握らせており、猿顔の男を斬った事が分かった。
一瞬だった。
何が起きたのか分からなかった。
「う、うわぁぁぁあぁぁぁ!!!」
「こ、こいつ、本当に殺しやがった!?」
猿顔の男の仲間達が騒ぎ出すと、車内にいた男女が一斉に立ち上がる。
そして、車内から発砲音が鳴り響き始めた。
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