MOMO

百はな

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第4章 Jewelry Pupil 狩り

狩られる者達 ll

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CASE 九条美雨

ふわふわして気持ち悪い。

視界がぐるぐる回って、頭が痛い。

美雨…、どうなっちゃったんだっけ…。

赤い髪のお兄さんと、おじさんが学校に来て…。

「へ、へへへ。美雨は可愛いなぁ…。」

誰かが美雨の頬を撫でた。

嫌だ。

この手を知っている。

美雨が嫌いで、怖いおじさんの手だ。

慌てて目を開けると、目の前におじさんの顔があった。

「い、いや!!」

ドンッ!!

力強くおじさんの体を押した。

「酷いなぁ、美雨。やっと、会えたのにそれはないだろ。」

「触らないで!!来ないで!!」

「あははは!!元気があって、良いねぇ。」

おじさんは薄気味悪い笑みを浮かべて、ケラケラと笑っていた。

ここは、どこなの?

周りを見渡すと、大きな倉庫のような建物の中にいた。

倉庫に似合わない玉座に座らされていて、足には鎖が嵌められていた。

「何…、これ。」

「美雨にピッタリな椅子だろ?お、俺が用意したん
だ。なぁ、どうだ?気に入ったか?」

「…。」

「どうして黙るんだよ、美雨?」

怖い。

また、このおじさんに誘拐されてしまった。

嫌だ、嫌だ、嫌だ。

こんなおじさんに触られたくなんかない。

「美雨ちゃん、おはよう。」

「っ…。」

赤い髪のお兄さんがニッコリ笑って、美雨に近付いて来た。

このお兄さん、美雨と同じJewelry Pupilの目を持ってる。

赤い髪のお兄さんの手がどんどん伸びて来て、触れられそうになった。

嫌、嫌だ。

「来ないで!!」

ピシッ!!

キィィィンッ。

目の前に赤い鎖が現れ、赤いお兄さんに触れられないように張り巡らせていた。

クラッ。

視界が揺れて、気持ち悪くなった。

この鎖は美雨の血液で作ったもの、美雨の体力を削って出来たもの。

「辰巳以外の人に触れたくない。美雨に触って良いのは…、辰巳だけ。」

そう言って、赤いお兄さんとおじさんを睨み付ける。

「辰巳、辰巳、辰巳って、うるせぇんだよ!!」

ガシャーンッ!!!

おじさんは怒鳴りながら近くにあった物を蹴飛ばす。

パリーンッ!!

赤いお兄さんが鎖に触れた瞬間、鎖が砕けた。

やっぱり、このお兄さんはJewelry Pupilだ。

美雨と同じで、不思議な力を使える。

「美雨ちゃん、今は言う事を聞いていた方が良いよ。遊び相手は連れて来てあげたから。」

「え?」

「双葉(ふだは)、おいで。」

カツカツカツ。

赤い髪のお兄さんに呼ばれて来たのは、美雨と同じ歳位の女の子。

黒いテディベアを持っていて、栗色のツインテールヘアーを靡かせ、色白な肌にお人形のような見た目。

目が怖い。

「こんにちは美雨ちゃん。双葉とおしゃべりしよ。」

「う、うん。」

「ねぇ、何して遊ぶ。」

「え?」

「遊びだよ、遊び。あ、的当てゲームにする?」

「ま、的?」

そう言うと双葉と言う女の子は銃を出した。

「え?」

「的はアイツ等。」

「ゔっ、うぅ…。」

声のした方に視線を向けると、壁に貼り付けにされた傷だらけの男の子人達がいた。

よく見ると、家にいたお兄さん達だった。

「お、お嬢!!ここにいたんですね!!怪我はしてな…。」

パァァァァン!!

銃弾の発砲音が倉庫内に響き渡る。

赤い血が花火のように飛び跳ね、壁に赤い花を咲かせた。

「あ、あ…。」

声が出ない。

バクバクと心臓が脈を打って、吐きそうだ。

隣にいる双葉ちゃんがお兄さんを…。

「やった!!大当たり!!あははは!!」

「な、何が面白いの?」

この子、おかしいよ。

人を殺して笑ってるなんて…。

美雨の言葉を聞いた双葉ちゃんはこっちを見て楽し
そうに言葉を放った。

「面白くないの?美雨ちゃんもやってみたら、分かるよ。」

「こーら、双葉。何しとんねん。」

双葉ちゃんを抱き上げた人物を見て驚愕した。

「瞬(しゅん)!!お仕事は?終わったの?」

「終わらせたんや。久しぶりやなぁ、美雨ちゃん。」

「な、何で?二見のお兄さんがいるの?」

もしかして、美雨を助けに来てくれた?

恐る恐る尋ねてみるが、求めていた言葉は返って来なかった。

「あぁ、双葉のパートナーやからおって当然やろ?そんで、美雨ちゃんのお家も襲撃させて貰っとるんや。」

「え?」

「コイツ等見てさ、大体は察しがつくやろ。」

理解したくない。

理解してしまったら、体が恐怖で支配されてしまう。

辰巳…。

辰巳は無事なの?

「辰巳は…。」

「あぁ、辰巳は殺した。」

「え?殺した…?」

おじさんはニヤニヤしながら、美雨の髪を触る。

「辰巳じゃなくて俺で良いだろ?昔は俺に懐いていたじゃないか?また絵本を読ませてあげる。へ、へへへ。辰巳は来ないよ?なんせ俺が…。」


「嘘だ!!」

「っ!?」

「辰巳はっ、辰巳は美雨を置いて死んだりしない!!」

辰巳との思い出が頭の中に流れて来る。

そうだ。

辰巳は誓ったもの。

あの日、あの場所で死ぬ時は一緒だって誓ったもの。


「お嬢、力を使う時は俺が美雨と呼んだ時だけにして下さい。」

「どうして?美雨、辰巳が怪我するの嫌だよ。」

「俺もお嬢が怪我や自分を犠牲にしてまで、力を使って欲しくないんですよ。」

「辰巳…、美雨は辰巳が大事なんだよ…。辰巳が死んじゃったりしたら、美雨は生きていけないよ。」

美雨の言葉を聞いた辰巳は、優しく美雨を抱き締めた。

「お嬢が大事だから言ってるんですよ。お嬢を残して死んだりなんかしない。俺を生き返らせたのは、美雨だろ。」

辰巳の泣きそうな声を聞いたのは初めてだった。

「辰巳、死ぬ時は一緒だよ。だから、美雨のモノに
なってくれる?」

そう言うと、辰巳は真っ直ぐ美雨の目を見つめて来た。

「俺はお嬢のモノだよ。俺の感情も命も、全てがお嬢のモノだ。約束するよ、死ぬ時は一緒だ。もう、1人にはさせないから。」


辰巳は美雨を1人にしない。

辰巳は絶対に美雨を助けに来てくれる。

「辰巳は美雨を迎えに来てくれる。だって、辰巳は
美雨を1人にしないって約束したもん。」

「どうして、辰巳がいんだよ!?俺はこんなにも美雨を愛しているのに!?」

「おじさんは美雨の王子様にはなれないよ。美雨の王子様は辰巳だけ、この先ずっと死ぬまで。」

「うわぁぁあぁ!!嫌だ、嫌だ、嫌だ!!」

おじさんは地面に頭を何度も打ち付けながら叫んだ。

「瞬、このおじさんヤバイじゃん。」

「この人は昔から美雨ちゃんの事が好きやったもんなぁ。当の本人は嫌っとるけどなぁ、どないすんの椿。」

二見のお兄さんはそう言って、赤髪のお兄さんを見つめた。

「美雨ちゃん、飴は好き?」

「え?」

「この飴を食べたら、どうなっちゃうかなぁ?」

赤髪のお兄さんは飴玉を見せて来た。

その飴玉は、いつも食べている飴玉と違ったからだ。

この飴は食べたらダメだ。

「い、いや。食べたくないっ。」

「ほら、良い子だから。"言う事を聞け"。」

ピシッ!!

体が動かなくなった。

言葉を発しようとしても、声が出ない。

視線だけは動かせるのに何も出来ない。

怖い、怖い、怖い、怖い。

赤髪のお兄さんは美雨の口を開け、飴玉を口の中に放り込んだ。

「大丈夫、気持ち良くなるだけだ。」

美雨の意識はプチンっと切れた。


九条家ー

ブシャアアアア!!!

「グァァアァァア!!!」

「や、やめっ…、ああ、あああああ!!!」

九条組の組員達が次々に佐助の手により斬り倒されていた。

キンキンキンッ!!!

そんな中、佐助と九条光臣は斬り合いを続けていた。

「おじさん、それだけ血を流しても立てるんだ。凄いね。」

九条光臣の体には沢山の斬られた傷があり、血を大量に流していた。

佐助の言う通り、今の九条光臣は気力だけで立っていた。

「お前等みたいな外道な輩は許せんだけだ。俺の孫まで手に掛けて、死んで詫びろ。」

「助ける事は出来た筈だけど。気付かなかったのが悪い、あの世で会えると良いね。」

キィィィン!!!

佐助の振り下ろした刀を九条光臣は受け止めた。

「親父から離れろ!!」

パンパンパンパン!!!

シュンッ!!

九条光臣の後ろから組員達が一斉に、佐助に向かって銃弾を放つ。

だが、放たれた銃弾は佐助の前に止まってしまった。

「同じ事の繰り返し、死ぬだけなんだから大人しくしてれば良いのに。」

「お前等、一旦はなれ…っ。」

シュンッ。

ブシャアアアア!!!

佐助がその場で剣を振るうと、九条光臣の後ろにいた組員達の首が吹っ飛んだ。

「頭、この女は只者じゃなありませんね。」

「あぁ、お前は大丈夫なのか。」

「はい、大丈夫です。頭は下がって下さい。」

そう言って前に出たのは、顔に傷がある男だった。

男の手には刀が握られていて、佐助に斬り掛かる。

キィィィン!!

男は隠し持っていた銃を取り出し、佐助の脇腹に向かって発砲した。

パァァァァン!!

シュンッ!!

銃弾は動きを止め、その場で停止した。

ゴフッ!!

佐助の口から大量の血が吐き出された。

よく見ると、佐助の体に巻かれている包帯が赤く染まっていた。

「お前、自分の体を傷付けて能力を使っているのか。」
「だったら?何。」

「Jewelry Pupilも万能じゃねーって事だよな。お前等、やれ!!!」

「「うおおおおおおおおお!!!」」

佐助に向かって一斉に組員が向かい銃弾を放った。

パァァァァン!!!

ブシャアアアア!!

放たれた銃弾は動きを止めたが、流れ弾が佐助の体に当たり刀の刃が肩を貫いた。

ボタッ、ボタッ…。

佐助の足元に血溜まりが出来ていた。

「お前さん、どうして椿なんぞの側にいる。まだ、高校生ぐらいだろ。」

「椿なんか?椿様の何を知ってる?お前なんかに分かる筈がない。椿様は私の神様だ。」

ブシャアアアア!!!

「ぐ、ぐあああああああ!!」

「死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。」

佐助は一心不乱に刀を振り下ろす。

「あはは、コイツ相変わらずぶっ飛んでんね。」

ピタッ。

男の言葉を聞いた佐助は動きを止めた。

「お、お前な雪哉(ゆきや)の所の坊主か?!」

後ろから歩いて来ていたのは三郎(さぶろう)だった。

返り血を大量に浴び、椿会の組員を引き摺りながら歩いて来ていた。

「四郎の邪魔しないでくれるかなぁ?アンタ等がいると迷惑なんだよね。」

「お前、何でここに…。」

「え?何でって、ボスと来たからだよ。」

「椿の所の殺し屋はお前か。」

そう言ったのは、兵頭雪哉だった。

「お前には聞きたい事がある。」

兵頭雪哉は佐助に向かって銃口を向けた。


バシャアアア!!

「はっ!?」

「ゴホッ、ゴホッ!!」

喜助と伊助は思いっきり水を掛けられ、目を覚ました。

2人の手足には手錠がされており、壁に貼り付けにされていた。

「こ、ここはどこ?と言うか…。どうなったの?」

「分からない、ここは…。地下?」

喜助と伊助が居た場所は兵頭会本家の地下だった。

「よぉ…。」

白い煙が地下室の中に焚き込めていた。

「お前は…、辰巳零士か。」

「お前等、吐くまで殺さねぇ。」

カラン。

辰巳零士が手に持っていたのはバールだった。

「俺の美雨はどこだ。」

そう言って、伊助の顔をバールで殴った。
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