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第2章 Jewelry Pupil Knight
18. モモの精神安定剤
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CASE 四郎
嘉助の目的はどうやら、この招待状を渡すだけだったらしく渡した後はすぐに帰って行った。
「何なんだよ…、一体。」
俺は渡された招待状に再び視線を落とした。
Hero Of Justice 四郎様、明後日の0時ヒルトン東京にお越し下さいと書かれていた。
Hero Of Justice の事を知られてるのは厄介だ。
モモのオークションにいたどこかの組みの奴か?
そう考えた方が色々と都合が付く。
本家を出てから俺の後を付いて来た連中もどこかの組の連中だ。
撃つ時に一瞬だけ、車内いる連中の服装が目に入った。
歳の割には似合わないブランドの服を着ていたし、
その歳では買えない高級車を乗っていた。
「親父に報告しないと…。」
そう呟いた瞬間、俺のスマホが振動した。
着信相手は一郎からだった。
俺は通話ボタンを押し耳を当てた。
「もしもし。」
「もしもし四郎か?帰りが遅いが何かあったのか?」
「あー、いつもみたいに車の処理してたら時間食った。ボスはいるのか?」
「ボスは本家の方でトラブルの処理中だ。こっちには戻って来れなくなったようだ。」
ボスは帰って来ないのか…。
一郎達よりも先にボスに知らせた方が良いだろうな。
「なら、俺も本家に戻るわ。」
「本家に?」
「あぁ。終わったら戻る。」
「モモちゃんが起きる前には帰って来いよ。お前がいないと寂しがるだろうからな。」
モモが暴走した時の映像がフラッシュバックした。
あの状態でモモを1人にする訳にはいかないよな。
「あぁ、分かった。」
俺がそう言うと、一郎は電話を切った。
続いて着信相手を星影にし、車で拾って貰い本家へ向かった。
本家に到着すると、辰巳さんが表門の前にいた。
「辰巳さん、お疲れ様です。」
「四郎、お前の方も何とかなったみたいだな。」
「まぁ…。モモのおかげと言うか…、暴走して大騒ぎなったおかげですかね。」
「モモちゃんが暴走?」
俺は辰巳さんにモモの事を話した。
「Jewelry Words の力が暴走したって事か?」
「前にもあったみたいですけど、詳しくは分からないですね。」
「心配だな…。Jewelry Words はモモちゃん達の体に大きな負担が掛かるからな…。」
「四郎、辰巳。どうしたんだ、門の前で。」
辰巳さんと話していると伊織が出て来た。
「伊織、トラブル処理は終わったのか?」
「あ?終わる訳ねぇよ。警察が動いてんだからな。それより、お前はどうして本家に戻って来たんだ?」
「あぁ、伊織。椿会って知ってるか?」
俺がそう言うと、2人の体がピクッと揺れた。
「お前が何で椿会を知ってるんだ?椿会は兵頭会と敵対してる組みだ。」
兵頭会と敵対してる組み…。
成る程、だからHero Of Justice の事も調べが付いたのか。
「車の処理をしていたら、椿会の男が俺に接触して来た。Hero Of Justice の事も知ってたし、これも渡された。」
俺はそう言って、伊織に招待状を見せた。
「辰巳もこの招待状を貰って来たんだ。頭に報告しに行くぞ、付いて来い。」
辰巳さんもこの招待状を貰っていたのか。
俺と辰巳さんが共通している点は、Jewelry Pupil だけだ。
九条組にJewelry Pupil がいる事も椿会は調べていたのか。
伊織の後を付いて行きながら考えていると、ボスのいる部屋に到着した。
「頭、四郎と辰巳が話があるとの事で通しました。それと、四郎が椿会の人間と接触しました。」
「入れ。」
ボスの返事を聞いた後、伊織が襖を開けた。
ガラッ。
襖を開けるとボスの周りには沢山の書類が散らばっていた。
「適当に座ってくれ。椿会の人間と会ったそうだな四郎。」
「はい、その男は嘉助と名乗り俺にこの招待状を渡して来ました。」
俺が招待状を差し出すとボスは受け取り中身を確認し、辰巳さんがもらった招待状も同様、中身を確認していた。
「辰巳に接触した椿会の男もそう名乗っていた。辰巳と四郎の側にJewelry Pupil がいると知ってこの招待状を渡して来たんだろう。恐らくJewelry Pupil のパートナーにしかこの招待状を渡されていないだろう。」
「椿会は俺達Hero Of Justice の事も知っていました。俺達に襲撃して来た殺し屋達は椿会のやっとている殺し屋だったのかもしれません。Judgement の嘉助とも名乗りました。俺と同じ殺し屋組織の名前かもしれません。」
俺がそう言うとボスは少しの間、考え込んだ。
「Judgement…。七海に調べさせるように俺から連絡を入れる。四郎と辰巳にはこの賭博に参加して来て欲しいんだが、良いか?」
「椿会の主催かもしれませんからね、分かりました。」
辰巳さんはボスの申し出を了承した。
「分かりました。情報を探りながら中の様子を確認します。」
「良いか四郎、椿と言う男には気を付けろ。」
「椿会の組長ですか?分かりました。」
「メンバーにはヒルトン東京周辺に待機して貰うように連絡を入れておく。」
「分かりました。モモの警護はどうしますか?」
「本家で預かる。万が一に備えて俺が側にいた方が良いだろう。」
メンバー総出で、モモの側を離れる訳だしボスと一緒にいた方が安全か。
「お嬢も親父が警備を固めてくれるそうなので、俺は気になる事があるのでそっちのそうも調べて良いですか?」
「お前の好きにして構わない。四郎と辰巳の2人で行動してくれれば良い。」
ブー、ブー。
ボスがそう言うと、誰かのスマホが振動した。
どうやらボスのスマホが鳴っているようだった。
ボスが電話に出ると俺に視線を送った。
「四郎、モモちゃんが起きてお前を探してるようだ。早く戻ってやれ。伊織、星影を呼んでこい。」
「承知しました。」
伊織はそう言って、部屋を出て行った。
「あぁ、分かった。すぐに四郎を戻すからモモちゃんを宥めろ。」
タタタタタタタッ…。
廊下を走っている足音が聞こえて来た。
伊織と星影が戻って来たのか。
「星影です、四郎さんをお迎えに来ました。」
「四郎、もう行って良いぞ。また連絡する。」
「分かりました。失礼します。」
俺がそう言って立ち上がると、辰巳さんも立ち上がった。
「雪哉さん、俺もそろそろ失礼しますね。お嬢の事が気になりますから。」
「あぁ、光臣さんにも連絡を入れておく。」
「分かりました。失礼します。」
俺と辰巳さんは部屋を出て星影と共に本家を後にした。
四郎と辰巳零士がいなくなった後、兵頭雪哉と岡崎伊織は話をしていた。
「椿の野郎、頭の真似事みたいにJudgement を作ったに違いありません。四郎達と同じように人材を集めたんでしょう。」
「だろうな、四郎に接触させたのもJudgement の存在を気付かせたかったのかもな。アイツは昔からそうだったよ。」
兵頭雪哉はそう言って、煙草を咥え火を付けた。
「椿の目的がいまいち掴まめません。Jewelry Pupilを集めて何がしたいのか…。単なるコレクションとして集めているのか。」
「アイツはただ、コレクションの為に集めてる訳じゃない。」
「頭、Jewelry Pupil の賭博への招待状はやっぱり罠なんでしょうか?」
「椿の狙いはどうあれ、俺はアイツを潰すと誓った。あの日にだな。俺と椿には因縁がある。それを終わらす時が近付いてると思う。」
そう言って、兵頭雪哉は吸い終えた煙草を灰皿に押し付けた。
CASE 四郎
アジトに付き、玄関のドアを開けると五郎が慌てて俺に近寄って来た。
「ちょ、四郎!!遅いじゃねーか!!」
「そんなに慌ててどうかしたのか?」
「モモが暴れてんだよ!!」
「はぁ?」
「良いから、こっち来い!!」
グイッ。
俺は五郎に手を掴まれ、モモの部屋に連れて行かれた。
モモの部屋に着くと羽が舞っていた。
部屋の中はぐちゃぐちゃで、枕からは羽が飛び出ていた。
二郎と六郎がモモの側にいて、慌てていた。
「モ、モモちゃんっ、落ち付いて…。」
「いや、いや!!」
モモは二郎の声を無視して枕を振り回した。
どうなってんだ?
「四郎、帰って来たのか。」
部屋の前にいた一郎が振り返り、俺に声を掛けた。
「今な、どうなってんの?この状況。」
「モモちゃんが起きてからずっとこの調子だ。四郎の事を探してるうちにな。」
「情緒不安定になってるって事?」
「Jewelry Words の能力が暴走の影響で、精神的に情緒不安定になってる。」
「爺さんがそう言ったのか?」
「診察が終わった後に爺さんに聞いたら、そうだって。周りが見えてない状態なんだよ。」
モモがJewelry Words を使った後に混乱していた状況を思い出した。
まるでこの世の終わりみたいに怖がった顔が、頭から離れなかった。
その顔を過去の自分もしていたからだ。
「もう、やだ!!やだやだ!!」
モモは泣きながら叫ぶ。
「モモちゃん、泣かないでっ?四郎ならすぐ帰って来るから。」
「あんな姿を見たら四郎が気持ち悪いって思う!!だから帰って来ない!!」
あぁ、嫌な思い出が頭に流れて来る。
小さい頃の俺、母親の顔、嫌な思い出がはっきり鮮明に頭に流れ込む。
「ちょっと、退いて。」
一郎を退かして部屋の中に入った。
二郎と六郎は俺の姿を見ると、モモの側から離れた。
「モモ。」
俺の声を聞いたモモは、ピタッと動きを止めた。
「病み上がりなんだから寝とかねーと駄目だろ。ボスが心配する。」
「し、ろう?」
「ほら、枕貸せ。」
俺はモモから枕を取り床に置いた。
「四郎?」
「あぁ。」
「本当に?」
「あぁ。」
「帰って来たの?」
「今な。」
「どこに行ってたの?」
モモは次々と質問を投げて来る。
俺はその質問に淡々と答え、モモは安心した表情を見せた。
「あの姿を見て気持ち悪いって思わなかった?」
「暴走した時の事か?」
「うん…。」
「気持ち悪いとは思ってねぇ。」
「本当?」
「あぁ。」
「じゃあ…、どう思った?」
どう思った?ってなぁ…。
「鼻血出して平気なのかって思った。」
正直な気持ちを言っといた方が良いだろうと思い、俺は思ったままの事を言った。
「心配してくれたの?」
「まぁ、そうなるな。」
タタッ。
ギュウッ。
「四郎に嫌われなくて良かった…。」
モモはそう言って、俺に抱き着いた。
「私、四郎に嫌われたら生きて行けない。」
「それは大袈裟だろ。」
「大袈裟じゃないよ!!」
モモはパッと顔を上げ言葉を続けた。
「四郎は、私を鳥籠から出してくれた!!私、すっごく嬉しかったの!!私ね、王子様が迎えに来てくれたって思ったのっ、黒い王子様が四郎だったの!!」
俺とお前は似ている。
ボスがあの時、来てくれてボスの事をヒーローだと思った。
ボスの為に人殺しでも何でもするって決めた。
だから、今の俺がいるのはボスのおかげだ。
「四郎、お帰り。」
「あぁ…、ただいま。」
俺はそう言って、モモの髪を撫でた。
「3人共、ちょっと良いか?」
モモの部屋から少し離れ一郎が二郎と五郎、六郎に声を掛けた。
「どうかしたのか?」
「ボスから連絡来て、兵頭会と敵対してる椿会に俺
達の存在が知られたらしい。」
一郎の言葉を聞いた3人は暫く黙り、次々に口を開
けた。
「え、え?それってヤバくない!?ヤバイ事だよな?」
五郎は戸惑いながら一郎に尋ねた。
「遅かれ早かれ俺達の存在は調べられるだろ。それが椿会だっただけで、椿会にもJudgement と言う俺達と同じ組織があるみたいだ。」
「は?何それ、あたし等の真似みたいじゃん。キモイんだけど。」
一郎の言葉を聞いた六郎は苛ついた口調で言葉を放った。
「この間、四郎に怪我させた奴等がそのJudgement?だろ?」
一郎の話を聞いていた三郎が自分の部屋から出て来た。
「恐らく、椿会が手を回してJudgement の奴等をショッピングモールに行かせたんだろう。」
「なら、そのJudgementを潰しても問題ないよね?
喧嘩売って来たのソイツ等なんだから。」
「明後日の夜、Jewelry Pupil の賭博に四郎が招待された。その当日、俺達は四郎のサポートに入る。メンバー総出でヒルトン東京周辺に張り付く。辰巳さんも招待を受けてるそうだ。四郎は辰巳さんと一緒に中の調査を行う。」
一郎の指示を聞いた二郎が口を開けた。
「俺達はJudgement が来た時用の備えって所?」
「椿会の組長も参加する賭博だからな、Judgement が来ないって事はないだろ。」
「了解。」
二郎は短く返事をした。
「どんな奴等なのか見てやろーっと。」
「五郎、アンタ呑気ねー。」
「俺達と一緒の組織なのが気になるんだよ。さてと、銃の手入れでもしようかなー。」
五郎はそう言って、自分の部屋に戻って行った。
それから二郎と六郎も自分の部屋に戻り残ったのは一郎と三郎だった。
「明後日の任務が終わったら俺、暫くここを開けるから宜しく。」
「三郎がここを離れるの珍しいな。ボスからの仕事か?」
「それもあるけど、ちょっとね。」
「分かった。メンバーには俺から言っておく。」
三郎が部屋に戻ろうとした時、一郎が呼び止めた。
「おい、三郎。」
「何?」
「お前、危ない事だけはすんなよ。」
一郎は何かを察したのか三郎に釘を刺す。
「危ない事って?」
「三郎、そうやってはぐらかすのはやめろ。」
「何もないよ、じゃ。」
三郎はそう言って、部屋の中に入ってしまった。
パタンッ。
「はぁ…。一郎の奴、勘が鋭いんだから。」
三郎の部屋の中には成人したアルビノの女性と、男性の写真が散らばっていた。
「この2人が、ボスと関係がある人物。何で、ボスがモモちゃんに執着するのか調べてやる。」
そう言って、三郎は1枚の写真を握り潰した。
嘉助の目的はどうやら、この招待状を渡すだけだったらしく渡した後はすぐに帰って行った。
「何なんだよ…、一体。」
俺は渡された招待状に再び視線を落とした。
Hero Of Justice 四郎様、明後日の0時ヒルトン東京にお越し下さいと書かれていた。
Hero Of Justice の事を知られてるのは厄介だ。
モモのオークションにいたどこかの組みの奴か?
そう考えた方が色々と都合が付く。
本家を出てから俺の後を付いて来た連中もどこかの組の連中だ。
撃つ時に一瞬だけ、車内いる連中の服装が目に入った。
歳の割には似合わないブランドの服を着ていたし、
その歳では買えない高級車を乗っていた。
「親父に報告しないと…。」
そう呟いた瞬間、俺のスマホが振動した。
着信相手は一郎からだった。
俺は通話ボタンを押し耳を当てた。
「もしもし。」
「もしもし四郎か?帰りが遅いが何かあったのか?」
「あー、いつもみたいに車の処理してたら時間食った。ボスはいるのか?」
「ボスは本家の方でトラブルの処理中だ。こっちには戻って来れなくなったようだ。」
ボスは帰って来ないのか…。
一郎達よりも先にボスに知らせた方が良いだろうな。
「なら、俺も本家に戻るわ。」
「本家に?」
「あぁ。終わったら戻る。」
「モモちゃんが起きる前には帰って来いよ。お前がいないと寂しがるだろうからな。」
モモが暴走した時の映像がフラッシュバックした。
あの状態でモモを1人にする訳にはいかないよな。
「あぁ、分かった。」
俺がそう言うと、一郎は電話を切った。
続いて着信相手を星影にし、車で拾って貰い本家へ向かった。
本家に到着すると、辰巳さんが表門の前にいた。
「辰巳さん、お疲れ様です。」
「四郎、お前の方も何とかなったみたいだな。」
「まぁ…。モモのおかげと言うか…、暴走して大騒ぎなったおかげですかね。」
「モモちゃんが暴走?」
俺は辰巳さんにモモの事を話した。
「Jewelry Words の力が暴走したって事か?」
「前にもあったみたいですけど、詳しくは分からないですね。」
「心配だな…。Jewelry Words はモモちゃん達の体に大きな負担が掛かるからな…。」
「四郎、辰巳。どうしたんだ、門の前で。」
辰巳さんと話していると伊織が出て来た。
「伊織、トラブル処理は終わったのか?」
「あ?終わる訳ねぇよ。警察が動いてんだからな。それより、お前はどうして本家に戻って来たんだ?」
「あぁ、伊織。椿会って知ってるか?」
俺がそう言うと、2人の体がピクッと揺れた。
「お前が何で椿会を知ってるんだ?椿会は兵頭会と敵対してる組みだ。」
兵頭会と敵対してる組み…。
成る程、だからHero Of Justice の事も調べが付いたのか。
「車の処理をしていたら、椿会の男が俺に接触して来た。Hero Of Justice の事も知ってたし、これも渡された。」
俺はそう言って、伊織に招待状を見せた。
「辰巳もこの招待状を貰って来たんだ。頭に報告しに行くぞ、付いて来い。」
辰巳さんもこの招待状を貰っていたのか。
俺と辰巳さんが共通している点は、Jewelry Pupil だけだ。
九条組にJewelry Pupil がいる事も椿会は調べていたのか。
伊織の後を付いて行きながら考えていると、ボスのいる部屋に到着した。
「頭、四郎と辰巳が話があるとの事で通しました。それと、四郎が椿会の人間と接触しました。」
「入れ。」
ボスの返事を聞いた後、伊織が襖を開けた。
ガラッ。
襖を開けるとボスの周りには沢山の書類が散らばっていた。
「適当に座ってくれ。椿会の人間と会ったそうだな四郎。」
「はい、その男は嘉助と名乗り俺にこの招待状を渡して来ました。」
俺が招待状を差し出すとボスは受け取り中身を確認し、辰巳さんがもらった招待状も同様、中身を確認していた。
「辰巳に接触した椿会の男もそう名乗っていた。辰巳と四郎の側にJewelry Pupil がいると知ってこの招待状を渡して来たんだろう。恐らくJewelry Pupil のパートナーにしかこの招待状を渡されていないだろう。」
「椿会は俺達Hero Of Justice の事も知っていました。俺達に襲撃して来た殺し屋達は椿会のやっとている殺し屋だったのかもしれません。Judgement の嘉助とも名乗りました。俺と同じ殺し屋組織の名前かもしれません。」
俺がそう言うとボスは少しの間、考え込んだ。
「Judgement…。七海に調べさせるように俺から連絡を入れる。四郎と辰巳にはこの賭博に参加して来て欲しいんだが、良いか?」
「椿会の主催かもしれませんからね、分かりました。」
辰巳さんはボスの申し出を了承した。
「分かりました。情報を探りながら中の様子を確認します。」
「良いか四郎、椿と言う男には気を付けろ。」
「椿会の組長ですか?分かりました。」
「メンバーにはヒルトン東京周辺に待機して貰うように連絡を入れておく。」
「分かりました。モモの警護はどうしますか?」
「本家で預かる。万が一に備えて俺が側にいた方が良いだろう。」
メンバー総出で、モモの側を離れる訳だしボスと一緒にいた方が安全か。
「お嬢も親父が警備を固めてくれるそうなので、俺は気になる事があるのでそっちのそうも調べて良いですか?」
「お前の好きにして構わない。四郎と辰巳の2人で行動してくれれば良い。」
ブー、ブー。
ボスがそう言うと、誰かのスマホが振動した。
どうやらボスのスマホが鳴っているようだった。
ボスが電話に出ると俺に視線を送った。
「四郎、モモちゃんが起きてお前を探してるようだ。早く戻ってやれ。伊織、星影を呼んでこい。」
「承知しました。」
伊織はそう言って、部屋を出て行った。
「あぁ、分かった。すぐに四郎を戻すからモモちゃんを宥めろ。」
タタタタタタタッ…。
廊下を走っている足音が聞こえて来た。
伊織と星影が戻って来たのか。
「星影です、四郎さんをお迎えに来ました。」
「四郎、もう行って良いぞ。また連絡する。」
「分かりました。失礼します。」
俺がそう言って立ち上がると、辰巳さんも立ち上がった。
「雪哉さん、俺もそろそろ失礼しますね。お嬢の事が気になりますから。」
「あぁ、光臣さんにも連絡を入れておく。」
「分かりました。失礼します。」
俺と辰巳さんは部屋を出て星影と共に本家を後にした。
四郎と辰巳零士がいなくなった後、兵頭雪哉と岡崎伊織は話をしていた。
「椿の野郎、頭の真似事みたいにJudgement を作ったに違いありません。四郎達と同じように人材を集めたんでしょう。」
「だろうな、四郎に接触させたのもJudgement の存在を気付かせたかったのかもな。アイツは昔からそうだったよ。」
兵頭雪哉はそう言って、煙草を咥え火を付けた。
「椿の目的がいまいち掴まめません。Jewelry Pupilを集めて何がしたいのか…。単なるコレクションとして集めているのか。」
「アイツはただ、コレクションの為に集めてる訳じゃない。」
「頭、Jewelry Pupil の賭博への招待状はやっぱり罠なんでしょうか?」
「椿の狙いはどうあれ、俺はアイツを潰すと誓った。あの日にだな。俺と椿には因縁がある。それを終わらす時が近付いてると思う。」
そう言って、兵頭雪哉は吸い終えた煙草を灰皿に押し付けた。
CASE 四郎
アジトに付き、玄関のドアを開けると五郎が慌てて俺に近寄って来た。
「ちょ、四郎!!遅いじゃねーか!!」
「そんなに慌ててどうかしたのか?」
「モモが暴れてんだよ!!」
「はぁ?」
「良いから、こっち来い!!」
グイッ。
俺は五郎に手を掴まれ、モモの部屋に連れて行かれた。
モモの部屋に着くと羽が舞っていた。
部屋の中はぐちゃぐちゃで、枕からは羽が飛び出ていた。
二郎と六郎がモモの側にいて、慌てていた。
「モ、モモちゃんっ、落ち付いて…。」
「いや、いや!!」
モモは二郎の声を無視して枕を振り回した。
どうなってんだ?
「四郎、帰って来たのか。」
部屋の前にいた一郎が振り返り、俺に声を掛けた。
「今な、どうなってんの?この状況。」
「モモちゃんが起きてからずっとこの調子だ。四郎の事を探してるうちにな。」
「情緒不安定になってるって事?」
「Jewelry Words の能力が暴走の影響で、精神的に情緒不安定になってる。」
「爺さんがそう言ったのか?」
「診察が終わった後に爺さんに聞いたら、そうだって。周りが見えてない状態なんだよ。」
モモがJewelry Words を使った後に混乱していた状況を思い出した。
まるでこの世の終わりみたいに怖がった顔が、頭から離れなかった。
その顔を過去の自分もしていたからだ。
「もう、やだ!!やだやだ!!」
モモは泣きながら叫ぶ。
「モモちゃん、泣かないでっ?四郎ならすぐ帰って来るから。」
「あんな姿を見たら四郎が気持ち悪いって思う!!だから帰って来ない!!」
あぁ、嫌な思い出が頭に流れて来る。
小さい頃の俺、母親の顔、嫌な思い出がはっきり鮮明に頭に流れ込む。
「ちょっと、退いて。」
一郎を退かして部屋の中に入った。
二郎と六郎は俺の姿を見ると、モモの側から離れた。
「モモ。」
俺の声を聞いたモモは、ピタッと動きを止めた。
「病み上がりなんだから寝とかねーと駄目だろ。ボスが心配する。」
「し、ろう?」
「ほら、枕貸せ。」
俺はモモから枕を取り床に置いた。
「四郎?」
「あぁ。」
「本当に?」
「あぁ。」
「帰って来たの?」
「今な。」
「どこに行ってたの?」
モモは次々と質問を投げて来る。
俺はその質問に淡々と答え、モモは安心した表情を見せた。
「あの姿を見て気持ち悪いって思わなかった?」
「暴走した時の事か?」
「うん…。」
「気持ち悪いとは思ってねぇ。」
「本当?」
「あぁ。」
「じゃあ…、どう思った?」
どう思った?ってなぁ…。
「鼻血出して平気なのかって思った。」
正直な気持ちを言っといた方が良いだろうと思い、俺は思ったままの事を言った。
「心配してくれたの?」
「まぁ、そうなるな。」
タタッ。
ギュウッ。
「四郎に嫌われなくて良かった…。」
モモはそう言って、俺に抱き着いた。
「私、四郎に嫌われたら生きて行けない。」
「それは大袈裟だろ。」
「大袈裟じゃないよ!!」
モモはパッと顔を上げ言葉を続けた。
「四郎は、私を鳥籠から出してくれた!!私、すっごく嬉しかったの!!私ね、王子様が迎えに来てくれたって思ったのっ、黒い王子様が四郎だったの!!」
俺とお前は似ている。
ボスがあの時、来てくれてボスの事をヒーローだと思った。
ボスの為に人殺しでも何でもするって決めた。
だから、今の俺がいるのはボスのおかげだ。
「四郎、お帰り。」
「あぁ…、ただいま。」
俺はそう言って、モモの髪を撫でた。
「3人共、ちょっと良いか?」
モモの部屋から少し離れ一郎が二郎と五郎、六郎に声を掛けた。
「どうかしたのか?」
「ボスから連絡来て、兵頭会と敵対してる椿会に俺
達の存在が知られたらしい。」
一郎の言葉を聞いた3人は暫く黙り、次々に口を開
けた。
「え、え?それってヤバくない!?ヤバイ事だよな?」
五郎は戸惑いながら一郎に尋ねた。
「遅かれ早かれ俺達の存在は調べられるだろ。それが椿会だっただけで、椿会にもJudgement と言う俺達と同じ組織があるみたいだ。」
「は?何それ、あたし等の真似みたいじゃん。キモイんだけど。」
一郎の言葉を聞いた六郎は苛ついた口調で言葉を放った。
「この間、四郎に怪我させた奴等がそのJudgement?だろ?」
一郎の話を聞いていた三郎が自分の部屋から出て来た。
「恐らく、椿会が手を回してJudgement の奴等をショッピングモールに行かせたんだろう。」
「なら、そのJudgementを潰しても問題ないよね?
喧嘩売って来たのソイツ等なんだから。」
「明後日の夜、Jewelry Pupil の賭博に四郎が招待された。その当日、俺達は四郎のサポートに入る。メンバー総出でヒルトン東京周辺に張り付く。辰巳さんも招待を受けてるそうだ。四郎は辰巳さんと一緒に中の調査を行う。」
一郎の指示を聞いた二郎が口を開けた。
「俺達はJudgement が来た時用の備えって所?」
「椿会の組長も参加する賭博だからな、Judgement が来ないって事はないだろ。」
「了解。」
二郎は短く返事をした。
「どんな奴等なのか見てやろーっと。」
「五郎、アンタ呑気ねー。」
「俺達と一緒の組織なのが気になるんだよ。さてと、銃の手入れでもしようかなー。」
五郎はそう言って、自分の部屋に戻って行った。
それから二郎と六郎も自分の部屋に戻り残ったのは一郎と三郎だった。
「明後日の任務が終わったら俺、暫くここを開けるから宜しく。」
「三郎がここを離れるの珍しいな。ボスからの仕事か?」
「それもあるけど、ちょっとね。」
「分かった。メンバーには俺から言っておく。」
三郎が部屋に戻ろうとした時、一郎が呼び止めた。
「おい、三郎。」
「何?」
「お前、危ない事だけはすんなよ。」
一郎は何かを察したのか三郎に釘を刺す。
「危ない事って?」
「三郎、そうやってはぐらかすのはやめろ。」
「何もないよ、じゃ。」
三郎はそう言って、部屋の中に入ってしまった。
パタンッ。
「はぁ…。一郎の奴、勘が鋭いんだから。」
三郎の部屋の中には成人したアルビノの女性と、男性の写真が散らばっていた。
「この2人が、ボスと関係がある人物。何で、ボスがモモちゃんに執着するのか調べてやる。」
そう言って、三郎は1枚の写真を握り潰した。
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