Alice Zero

百はな

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第1章 鏡の世界で

不思議な男

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ボクの手を掴み頭に乗せずっと頭を撫でさせられていた。

もう何分ぐらい経ったんだろう。

ジャックが探しているかもしれないし、そろそろ行
くとするか…。

「そろそろボク戻らないと。」

「えー!!もう行くの!?」

「あぁ。ジャックが探しているだろうし。」

「つまんなーい!!もっと話そうよ!!」

そう言って駄々を捏ねて来た。

めんどくさいな…。

「めんどくさい男は好きじゃない。」

「あ!ごめん!!もう言わないから嫌わないで!!」

CATは案外扱いやすいかもしれないな。

「分かったなら戻してくれ。」

「分かったよ。はい!!コレ渡しとくね。」

ボクの手のひらに紫色のリボンが付いた鈴を渡して来た。

「コレは?」

「いつでもオレの事を呼べる鈴だよ♪さ、この道を真っ直ぐ行ったらさっきの場所に戻れるよ。じゃあねゼロ。」

そう言ってCATは姿を消した。

この鈴でCATを呼ぶ事が出来るのか…。

ジッと鈴を見つめた。

「普通の鈴だけど…。まぁこの世界自体がファンタジーだからな。」

いちいち驚いて居たら心臓が持たない。

ボクはそんな事を考えながら歩いているとあっという間に森を抜けていた。

ガヤガヤガヤ!!

さっきまでいた場所に戻って来ていた。

ガシッ!!

急に後ろから腕を強く掴まれた。

振り返えるとそこには汗だくのジャックが立っていた。

「あ、ジャック。」

「お前どこに行ってたんだ!!」

ジャックが大声を出すから周りの人がボク達に視線を向けた。

「ちょ、ちょっとジャック。大声出したら目立つだろ…。」

「あ、あぁ…悪い。そこの店入るか。」

そう言ってジャックは喫茶店を指差した。

ボクが黙って頷くとジャックが店の扉を開けた。

カランカラン♪

中はレトロな雰囲気の喫茶店だった。

「いらっしゃいませ。2名様でよろしかったですか?」

「はい。」

「お煙草は吸われますか?」

「あぁ。」

ジャック煙草吸うのか…。

「ご案内致します。」

ボク達は店員の後に付いて行くと案内された席はテラス席だった。

丁度テラス席にはボク達しかいなかった。

「ご注文は後ほどお聞き致します。」

テーブルに水とメニューを置いて中に入って行った。

「さっきは大声出して悪かったな。」

ジャックが申し訳なさそうな顔をして謝って来た。

「別に気にしてない。」

「どこに行ってたんだ?って、まずは飲み物が先だな。好きなの頼んでくれ。」

そう言ってメニューを開いて来た。

ボクに好きなモノなんてないし、ましてや嫌いなモノもない。

「ジャックに任せる。」

「そうか?」

ジャックが手を挙げると店員が来て注文をした。

間もなくしてジャックが頼んだ物が届いた。

ボクの前に置かれたのはホイップクリームが沢山乗っているアイスココアだった。

それと卵とハムのサンドイッチ。

ジャックの前にはアイスコーヒーが置かれた。

可愛らしい飲み物だな…。

ジャックからしたらボクはこんなイメージなのだろうか。

「煙草吸って良いか?」

「あぁ。」

そう言うとジャックはポケットからハートの絵柄が
描かれた煙草を取り出し口に咥え火を付けた。

「それで?どこに行ってたんだ?」

「あぁ…。実は。」

ボクは事の経緯を話した。

「チェシャ猫の主人になったのか!?」

ジャックは飲んでいたアイスコーヒーを吹き出しそうになっていた。

「多分…。CATにコレを貰ったし。」

そう言って貰った鈴をジャックに見せた。

「マジか…ゼロって相当の手だれか?」

ジャックは周りに人がいない事を確認してからボクの名前を呼んだ。

ポワッ。

ジャックに名前を呼ばれて胸が暖かくなった。

何故だろうか…。

「手だれって…。アイツが変なだけだ。」

「ッフ。確かにチェシャ猫は変わり者だしな。」

「へぇ…。アリスとジャクじゃない。」

ジャックと話していると誰かに声を掛けられた。

「お前かインディバー。」

インディバーって確かイモムシの…?

水色の青メッシュの髪は腰まであり男なのにメイクをしていた。

それと派手な格好…だが、良く似合っている。

男なのに綺麗と思ってしまった。

「ご機嫌ようアリス。調子はいかが?」

インディバーはガラスで出来た煙管を口に咥えた。

独特の煙草の匂いだった。

「ぼ、ぼちぼちかな…。」

「元気ないじゃーん?まぁ倒れたって聞いてたしあ
んまり無理すんじゃないわよー。」

ヒョイッとサンドイッチを取った。

「ジャックは相変わらずねぇ。アリスに縛られてる。」

インディバーがそう言うとジャックの顔色がスッと変わった。

ジャックがアリスに縛られてる?

どう言う意味だ?

「喧嘩売りに来たのかインディバー。」

「まさか。ただ事実を言っているだけじゃない。」

インディバーはジャックに近付き胸をトンッと指で軽く突いた。

「ハートを縛られてるって事。そんな事1番アンタが分かってんじゃないのぉ?」

「っ!!テメェ。」

ガバッ!!

ジャックがインディバーの胸ぐらを掴んだ。

「おいジャックやめろ!!」

グリーンアッシュのサラサラヘアーでグレーの瞳にキツイ顔立ち。

そしてジャックと同じ騎士団の服を着ていた。

「落ち着けよジャック。インディバーもわざわざ挑発するような言い方をするな。」

「はいはい。少しからかい過ぎちゃったね。」

そう言ってインディバーは僕に近付き耳元で囁いた。

「やっと来たんだぁ。遅かったわね。」

「っ!?」

ボクはインディバーを振り返って見つめた。

「今度は2人でお茶をしましょ。またね。」

コツコツ。

インディバーはテラスを出て行った。

遅かった?

インディバーはボクがこの世界に来るの分かっていた?

アイツは一体…。




インディバーは長い髪を靡かせながら喫茶店を後にした。

彼の口元が緩み小さな微笑みを作っていた。

「やっと縛りが抜けたわ。」

そう呟いた。
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