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Main Story
リリシーとオーシー②
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ある日、リリシーは自分の体が動くことに気づきました。
空から煙が消えたことで、日の光がリリシーに届き、動く力を与えたのです。
オーシーはリリシーがスクラップの中から見つけ出しました。
言葉のやりとりはできなくても、二体はいつも一緒です。
「コール、『ジニー』!」
リリシーが再び周囲に向かって呼びかけました。すると、今度は重なったガラクタのあちこちから「ポンッ」という音とともに、居場所を示すようにオレンジ色の光が灯りました。
『はい、ご主人様』
『はい、ご主人様』
『はい、ご主人様』
『はい、ご主人様』
一斉に返事をしたのは家庭用の音声アシスタント機器『ジニー』です。
同じ乳白色のガラス素材でできていますが、大きさや形はバラバラです。
スクラップヤードで似ているものを探すなら、一番大きなものはサッカーボールくらいで、小さなものだとテニスボールくらいでしょうか。
また形には楕円のものもあれば、平たい筒型のものもありました。
オブジェ型の音声アシスタントは一時期ブームとなり、家の中に複数台置くのが主流だったため、世代が変わると同時にまとめてスクラップ行きになったのでした。
「ジニー、今夜の天気を教えてくれ」
『――ジ―ジジッ――の天気は晴れで降水確率は十パーセントです』
一番近くにあったキューブ型のジニーが答えました。
音声にノイズは混じりますが、天気予報が外れることはめったにありません。
「晴れか…。来るぞ、オーシー」
「ワンッ!」
リリシーがこのスクラップヤードから離れる計画に必要なのは車です。
新たなゴミを捨てにくる車に乗り込めれば、長い距離を移動することができます。
リリシーに理由はわかりませんでしたが、どうしてか車が多く現れるのは、クラゲが接岸しはじめる季節の晴れた夜なのでした。
オーシーがピッピッと足音を鳴らして、尻尾を振りながら、リリシーの周りを回っています。
リリシーは演算しました――
オーシーと二体、記者に囲まれている自分。
見出しには、
『スクラップ置き場から奇跡の復活!伝説の不死鳥はペンギンだった!』
そう書かれた新聞が号外となって街に配られる未来。
ここで過ごした日々を綴ったエッセイはベストセラーとなり、ラジオで声を聞かない日はない大出世。
想像するだけで回路が熱くなり、ショートしてしまいそうです。
――しかし冷静に行動しなければなりません。
闇に紛れて訪れる車を捉え、オーシーと乗り込まなければならないのですから。
それも運転手には絶対に見つからないようにです。
リリシーは顔をあげて、左右の固い翼をぐるりと回しました。
ペンギンは飛べない鳥ですが、リリシーには歩いていく足があります。
リリシーはオーシーを連れて、移動をはじめました。
空から煙が消えたことで、日の光がリリシーに届き、動く力を与えたのです。
オーシーはリリシーがスクラップの中から見つけ出しました。
言葉のやりとりはできなくても、二体はいつも一緒です。
「コール、『ジニー』!」
リリシーが再び周囲に向かって呼びかけました。すると、今度は重なったガラクタのあちこちから「ポンッ」という音とともに、居場所を示すようにオレンジ色の光が灯りました。
『はい、ご主人様』
『はい、ご主人様』
『はい、ご主人様』
『はい、ご主人様』
一斉に返事をしたのは家庭用の音声アシスタント機器『ジニー』です。
同じ乳白色のガラス素材でできていますが、大きさや形はバラバラです。
スクラップヤードで似ているものを探すなら、一番大きなものはサッカーボールくらいで、小さなものだとテニスボールくらいでしょうか。
また形には楕円のものもあれば、平たい筒型のものもありました。
オブジェ型の音声アシスタントは一時期ブームとなり、家の中に複数台置くのが主流だったため、世代が変わると同時にまとめてスクラップ行きになったのでした。
「ジニー、今夜の天気を教えてくれ」
『――ジ―ジジッ――の天気は晴れで降水確率は十パーセントです』
一番近くにあったキューブ型のジニーが答えました。
音声にノイズは混じりますが、天気予報が外れることはめったにありません。
「晴れか…。来るぞ、オーシー」
「ワンッ!」
リリシーがこのスクラップヤードから離れる計画に必要なのは車です。
新たなゴミを捨てにくる車に乗り込めれば、長い距離を移動することができます。
リリシーに理由はわかりませんでしたが、どうしてか車が多く現れるのは、クラゲが接岸しはじめる季節の晴れた夜なのでした。
オーシーがピッピッと足音を鳴らして、尻尾を振りながら、リリシーの周りを回っています。
リリシーは演算しました――
オーシーと二体、記者に囲まれている自分。
見出しには、
『スクラップ置き場から奇跡の復活!伝説の不死鳥はペンギンだった!』
そう書かれた新聞が号外となって街に配られる未来。
ここで過ごした日々を綴ったエッセイはベストセラーとなり、ラジオで声を聞かない日はない大出世。
想像するだけで回路が熱くなり、ショートしてしまいそうです。
――しかし冷静に行動しなければなりません。
闇に紛れて訪れる車を捉え、オーシーと乗り込まなければならないのですから。
それも運転手には絶対に見つからないようにです。
リリシーは顔をあげて、左右の固い翼をぐるりと回しました。
ペンギンは飛べない鳥ですが、リリシーには歩いていく足があります。
リリシーはオーシーを連れて、移動をはじめました。
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