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123 逃げ道
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自我を砕くイ=ルグ=ルの思念攻撃で、いささかダメージを受けたものの、さすがに人間のように脆くはない。ケルケルルガの化身は伊達ではないのだ。とは言え一人でイ=ルグ=ルの相手をするのは、ちと骨が折れる。
黄金の神人の両腕が、胴体から離脱した。そのまま宙を飛んで襲いかかって来る。密集した木々のてっぺんをピョンピョンと跳びはねながら、ケレケレは攻撃をかわした。逃げる合間にイ=ルグ=ルの方を見ると、その体からは新しい腕が生えている。いや、その腕もまた胴体から離脱して飛んで来たではないか。
「おいおいおいおい!」
四本の腕につかまれそうになり、叩かれそうになりながら、ケレケレはイ=ルグ=ルの周囲をはね回った。いま自分に出来るのは時間稼ぎだ。魔人たちが戻ってくるまで、イ=ルグ=ルをここに留めておかねばならない。しかしまだか。もうそろそろ戻って来てもいい頃ではないのか。焦れ始めたケレケレの頭の中に声がする。
――ケルケルルガの化身よ。何故人類に味方する
「それは違うぞ、イ=ルグ=ル」
逃げながらケレケレは答えた。
「我は人類に味方しているのではない。ケルケルルガの正義に従っているだけだ」
――正義だと。ならばイ=ルグ=ルを悪だと言うのか
「そうだ。おまえは無意味に争いを撒き散らし、無価値な殺戮を繰り返す。ケルケルルガはおまえを悪と認識している」
――敵対勢力の惑星を破壊し、すべてを飲み込む『宇宙の口』が、イ=ルグ=ルを悪だと罵るのか。笑わせるな
「宇宙開闢以来、ケルケルルガの滅ぼした惑星の数は五指に余る。おまえは幾つ死の星を生み出した。十や二十では利くまい」
――それはケルケルルガが怠け者であったに過ぎない
「無能な働き者が仕事を誇るのか」
――イ=ルグ=ルによる断罪は宇宙の意思
「渇望に突き動かされる者が何を言う!」
ケレケレが叫んだとき、神人の手の一つがその身を捕まえる。だが直後、木々の枝の下から突き出した三叉の槍に、黄金の腕は貫かれた。槍を手に、ガルアムが樹上を飛ぶ。
黒い槍に貫かれた神人の腕は、あっという間にひび割れ砕けた。その破片を浴びながら、ガルアムは槍を振るう。他の三本の腕も次々に斬られ、貫かれ、打ち砕かれた。
「ケレケレ、無事か」
まるで体に重さがないかの如く、木々の頂に立つガルアムに、ケレケレは枝につかまりながら言葉を返した。
「なんとか、な」
「とりあえず、腕に思念結晶がないのは決まりだ。さて、どうする」
ガルアムのつぶやきに、槍がしゃべった。
「んなもん決まってんだろ。全身ぶっ刺せよ。そのための槍だろうが」
「他に取るべき手段はないか」
諦めたとばかりにそう言うと、ガルアムは咆吼と共に黄金の神人に向かって跳んだ。黒い三叉の槍を振りかざして。
自我が崩壊して無抵抗な人間大のゴキブリたちを喰らい尽くして行く人食いの群れ。
「逃げるんだ、早く!」
しかしジュピトル・ジュピトリスの声は届かない。ただ呆然と死を待つばかり。
「ジュピトル様、もう無理です!」
ナーガがジュピトルの腕をつかむ。
「ここは一旦引きましょう!」
ナーギニーも前に回って止めた。だがジュピトルはそれを振りほどこうとする。
「だけど、僕は」
そのときジュピトルの隣に立った人影が、いきなり頭を殴りつけた。
「痛っ」
「……なっとらんのう」
難しい顔で仁王立ちしているのは、ムサシ。
「イ=ルグ=ルの思う壺ではないか。見ておれんわ」
「だけど、彼らを見捨てる訳には」
頭を押さえながら、なおジュピトルは抗う。ムサシのため息が聞こえた。
「お主、本当に3Jと同じ遺伝子を持っておるのか。この程度で頭に血が上るなど、まったく不甲斐ない」
「助かるんだぞ、まだ生きてる」
「助からんよ。連中はイ=ルグ=ルの思念攻撃をくらった時点で全滅しておる。お主もわかっておるはずだ」
「でも」
「戦いは、いかに守り助けるか、いかに見捨て切り捨てるか、その兼ね合いじゃ。どちらか一方に偏れば、確実に敗北する。善人で居たいのなら、人類を救おうなどと思わぬ事……じゃな!」
ムサシは背後に回し蹴りを放った。人食いが吹っ飛ぶ。
「ほれ、グズグズしとると逃げるタイミングを失うぞ! 人並み以上の脳みそを持っておるのじゃろう! 冷静に判断せい、冷静に!」
ムサシは次々に人食いを文字通り蹴散らして行く。けれど倒されても倒されても、人食いは立ち上がり、顔から湧き出した黒いイトミミズをウネウネと揺らしながら迫って来る。キリがない。
そうこうしている間に、やがて人食いたちは周囲を取り囲み、退路は断たれた。
「さあ、どうする。逃げ道はなくなったぞ」
しかしそうは言いながら、ムサシにはまだ余裕があった。ナーガとナーギニーは、これ以上人食いが近付けば思念防壁で跳ね飛ばそうと身構えている。ジュピトルは空を見上げた。
「逃げ道は……ある」
地面に踊る水色の波。数十人の水色の髪の少女が突然現れ、ジュピトルたちの回りを取り囲む。人食いの群れは目の前の少女に飛びかかったが、その体を通り抜けてしまう。
振り仰ぐジュピトルの視線の先には、空に立つドラクル。その隣にはローラを抱えたプロミス。
「一つ聞いていいかい」
ドラクルの言葉に、ジュピトルは無言で見つめ返した。
「君は自分が間違っていると思う?」
「思わない」
ジュピトルは即答した。ムサシはさすがに呆れ顔だ。ドラクルは鼻先で笑った。
「だけど、君のせいでみんな死にかけてるよ」
「感情的にはなった。判断ミスもあった。でも何も間違ってはいない。間違っていてはいけない。僕が見ている方向は、これで正解だ」
「……ふうん。君は3Jとはちょっと違うんだね」
面白そうな顔でドラクルは見つめている。
「助けない方がいいのかも、って思ったんだけど、仕方ない。今回は助ける事にする」
ぶん。耳元で羽虫が飛んだような音がしたかと思うと、周囲の景色が一変した。
「ここは」
正面には大型のモニター、その周囲に二、三十の小型モニターが並ぶ空間。
「エリア・アマゾンのセキュリティセンター、のはずだよ」
ドラクルはそう答えた。
「賢者の像で世界中にアクセス出来そうなとこって、ここしか思いつかなかったんだけど、違うかな」
「いや、ここでいい」
ジュピトルはうなずくと、双子に目をやった。
「エージャンのセキュリティセンターに接続、経由して全エリアと回線をつなげて」
「は、はい」
二人は慌てて席に着き、オペレーションシステムを起動させる。
ドラクルは満足したように微笑むと、こう言った。
「じゃ、ボクらは戻るとしようか」
「戻れって言われてるのかい」
不意のジュピトルの問いに、ドラクルは意外そうな顔を向けた。
「いや、言われてはいないけどね」
「だったら、もうしばらく居てくれないかな。まだ仕事があるかも知れない」
「そういうところは同じ遺伝子なんだな、と思うよ」
ドラクルは苦笑した。プロミスは一歩、二歩とジュピトルに近付くと、顔をのぞき込む。
「……あんた、ちょっと変わったんじゃない」
「いや、さすがに君ほどでは、ね」
今度はジュピトルが苦笑する番だった。
不意に視覚と聴覚が復旧し、ジンライの自動追撃モードは終了した。事前に予告が欲しかったところだが、贅沢は言うまい。見えるようになった瞬間、ヌ=ルマナの手刀突きを顔面に食らいそうになったものの、何とかかわせたので良しとする。
知らぬ間にリキキマが居なくなっている。だがヌ=ルマナは左腕を失っていた。後は一人で仕留めろという事なのだろうか。
とにもかくにも考えている場合ではない。己の役割を果たすことに全神経を集中せねば。ジンライは四本の超振動カッターを振るった。ヌ=ルマナは地面を滑るように後退すると、距離を取った。
ヌ=ルマナは焦っていた。早くイ=ルグ=ルと合流しなくてはならないのに、毎度毎度このサイボーグが邪魔をする。
だが悪い事ばかりではない。吸血鬼はともかく、厄介な魔人が姿を消した。その直後からサイボーグのスピードが上がったとは言え、従来通りになっただけだ。脅威が増大している訳ではない。
この場所に来た目的はすでに達した。ヌ=ルマナとハルハンガイが見せ、聞かせた『真実』は、人間どもを大混乱へと導いたはずだ。なればこそ、ここで一気にたたみ掛けねばならぬ。グズグズしている余裕などないのだ。
イ=ルグ=ルこそが宇宙の意思の体現であり、求められるべき正義である。百年前の人類に後れを取った事など、本来あってはならない異常事態。宇宙を汚染するゴミどもを滅却し、この惑星をニュートラルな状態に戻すための速やかなる勝利が何より重要と言えた。
にもかかわらず、ヌ=ルマナはまた足止めを食っている。苛立ちと腹立たしさがマグマのように内側に溜まって行く。それは爆発寸前であった。だから相手と距離を取り、家の残骸の上に立ったとき、その下から突き出された獣人の手に、過剰反応してしまった。
それは見えていた罠。獣人が隠れている事など『宇宙の目』にはわかり切っていた。残骸の上に立てば足をつかもうとするであろう事も。ならばただ身をかわせば済んだ話。爪先に念を込めて、その腕を切断する必要はなかった。その瞬間にサイボーグが距離を詰める事もまた、わかり切っていたのだから。
ジンライは一気に距離を詰めた。超振動カッターがきらめき、ヌ=ルマナの右腕を斬り飛ばす。その返す刀で首を斬り落とせば一段落、その思いが油断を呼んだのだろうか。ジンライの体は跳ね飛ばされた。背後に現れた巨大な手によって。
黄金の神人の両腕が、胴体から離脱した。そのまま宙を飛んで襲いかかって来る。密集した木々のてっぺんをピョンピョンと跳びはねながら、ケレケレは攻撃をかわした。逃げる合間にイ=ルグ=ルの方を見ると、その体からは新しい腕が生えている。いや、その腕もまた胴体から離脱して飛んで来たではないか。
「おいおいおいおい!」
四本の腕につかまれそうになり、叩かれそうになりながら、ケレケレはイ=ルグ=ルの周囲をはね回った。いま自分に出来るのは時間稼ぎだ。魔人たちが戻ってくるまで、イ=ルグ=ルをここに留めておかねばならない。しかしまだか。もうそろそろ戻って来てもいい頃ではないのか。焦れ始めたケレケレの頭の中に声がする。
――ケルケルルガの化身よ。何故人類に味方する
「それは違うぞ、イ=ルグ=ル」
逃げながらケレケレは答えた。
「我は人類に味方しているのではない。ケルケルルガの正義に従っているだけだ」
――正義だと。ならばイ=ルグ=ルを悪だと言うのか
「そうだ。おまえは無意味に争いを撒き散らし、無価値な殺戮を繰り返す。ケルケルルガはおまえを悪と認識している」
――敵対勢力の惑星を破壊し、すべてを飲み込む『宇宙の口』が、イ=ルグ=ルを悪だと罵るのか。笑わせるな
「宇宙開闢以来、ケルケルルガの滅ぼした惑星の数は五指に余る。おまえは幾つ死の星を生み出した。十や二十では利くまい」
――それはケルケルルガが怠け者であったに過ぎない
「無能な働き者が仕事を誇るのか」
――イ=ルグ=ルによる断罪は宇宙の意思
「渇望に突き動かされる者が何を言う!」
ケレケレが叫んだとき、神人の手の一つがその身を捕まえる。だが直後、木々の枝の下から突き出した三叉の槍に、黄金の腕は貫かれた。槍を手に、ガルアムが樹上を飛ぶ。
黒い槍に貫かれた神人の腕は、あっという間にひび割れ砕けた。その破片を浴びながら、ガルアムは槍を振るう。他の三本の腕も次々に斬られ、貫かれ、打ち砕かれた。
「ケレケレ、無事か」
まるで体に重さがないかの如く、木々の頂に立つガルアムに、ケレケレは枝につかまりながら言葉を返した。
「なんとか、な」
「とりあえず、腕に思念結晶がないのは決まりだ。さて、どうする」
ガルアムのつぶやきに、槍がしゃべった。
「んなもん決まってんだろ。全身ぶっ刺せよ。そのための槍だろうが」
「他に取るべき手段はないか」
諦めたとばかりにそう言うと、ガルアムは咆吼と共に黄金の神人に向かって跳んだ。黒い三叉の槍を振りかざして。
自我が崩壊して無抵抗な人間大のゴキブリたちを喰らい尽くして行く人食いの群れ。
「逃げるんだ、早く!」
しかしジュピトル・ジュピトリスの声は届かない。ただ呆然と死を待つばかり。
「ジュピトル様、もう無理です!」
ナーガがジュピトルの腕をつかむ。
「ここは一旦引きましょう!」
ナーギニーも前に回って止めた。だがジュピトルはそれを振りほどこうとする。
「だけど、僕は」
そのときジュピトルの隣に立った人影が、いきなり頭を殴りつけた。
「痛っ」
「……なっとらんのう」
難しい顔で仁王立ちしているのは、ムサシ。
「イ=ルグ=ルの思う壺ではないか。見ておれんわ」
「だけど、彼らを見捨てる訳には」
頭を押さえながら、なおジュピトルは抗う。ムサシのため息が聞こえた。
「お主、本当に3Jと同じ遺伝子を持っておるのか。この程度で頭に血が上るなど、まったく不甲斐ない」
「助かるんだぞ、まだ生きてる」
「助からんよ。連中はイ=ルグ=ルの思念攻撃をくらった時点で全滅しておる。お主もわかっておるはずだ」
「でも」
「戦いは、いかに守り助けるか、いかに見捨て切り捨てるか、その兼ね合いじゃ。どちらか一方に偏れば、確実に敗北する。善人で居たいのなら、人類を救おうなどと思わぬ事……じゃな!」
ムサシは背後に回し蹴りを放った。人食いが吹っ飛ぶ。
「ほれ、グズグズしとると逃げるタイミングを失うぞ! 人並み以上の脳みそを持っておるのじゃろう! 冷静に判断せい、冷静に!」
ムサシは次々に人食いを文字通り蹴散らして行く。けれど倒されても倒されても、人食いは立ち上がり、顔から湧き出した黒いイトミミズをウネウネと揺らしながら迫って来る。キリがない。
そうこうしている間に、やがて人食いたちは周囲を取り囲み、退路は断たれた。
「さあ、どうする。逃げ道はなくなったぞ」
しかしそうは言いながら、ムサシにはまだ余裕があった。ナーガとナーギニーは、これ以上人食いが近付けば思念防壁で跳ね飛ばそうと身構えている。ジュピトルは空を見上げた。
「逃げ道は……ある」
地面に踊る水色の波。数十人の水色の髪の少女が突然現れ、ジュピトルたちの回りを取り囲む。人食いの群れは目の前の少女に飛びかかったが、その体を通り抜けてしまう。
振り仰ぐジュピトルの視線の先には、空に立つドラクル。その隣にはローラを抱えたプロミス。
「一つ聞いていいかい」
ドラクルの言葉に、ジュピトルは無言で見つめ返した。
「君は自分が間違っていると思う?」
「思わない」
ジュピトルは即答した。ムサシはさすがに呆れ顔だ。ドラクルは鼻先で笑った。
「だけど、君のせいでみんな死にかけてるよ」
「感情的にはなった。判断ミスもあった。でも何も間違ってはいない。間違っていてはいけない。僕が見ている方向は、これで正解だ」
「……ふうん。君は3Jとはちょっと違うんだね」
面白そうな顔でドラクルは見つめている。
「助けない方がいいのかも、って思ったんだけど、仕方ない。今回は助ける事にする」
ぶん。耳元で羽虫が飛んだような音がしたかと思うと、周囲の景色が一変した。
「ここは」
正面には大型のモニター、その周囲に二、三十の小型モニターが並ぶ空間。
「エリア・アマゾンのセキュリティセンター、のはずだよ」
ドラクルはそう答えた。
「賢者の像で世界中にアクセス出来そうなとこって、ここしか思いつかなかったんだけど、違うかな」
「いや、ここでいい」
ジュピトルはうなずくと、双子に目をやった。
「エージャンのセキュリティセンターに接続、経由して全エリアと回線をつなげて」
「は、はい」
二人は慌てて席に着き、オペレーションシステムを起動させる。
ドラクルは満足したように微笑むと、こう言った。
「じゃ、ボクらは戻るとしようか」
「戻れって言われてるのかい」
不意のジュピトルの問いに、ドラクルは意外そうな顔を向けた。
「いや、言われてはいないけどね」
「だったら、もうしばらく居てくれないかな。まだ仕事があるかも知れない」
「そういうところは同じ遺伝子なんだな、と思うよ」
ドラクルは苦笑した。プロミスは一歩、二歩とジュピトルに近付くと、顔をのぞき込む。
「……あんた、ちょっと変わったんじゃない」
「いや、さすがに君ほどでは、ね」
今度はジュピトルが苦笑する番だった。
不意に視覚と聴覚が復旧し、ジンライの自動追撃モードは終了した。事前に予告が欲しかったところだが、贅沢は言うまい。見えるようになった瞬間、ヌ=ルマナの手刀突きを顔面に食らいそうになったものの、何とかかわせたので良しとする。
知らぬ間にリキキマが居なくなっている。だがヌ=ルマナは左腕を失っていた。後は一人で仕留めろという事なのだろうか。
とにもかくにも考えている場合ではない。己の役割を果たすことに全神経を集中せねば。ジンライは四本の超振動カッターを振るった。ヌ=ルマナは地面を滑るように後退すると、距離を取った。
ヌ=ルマナは焦っていた。早くイ=ルグ=ルと合流しなくてはならないのに、毎度毎度このサイボーグが邪魔をする。
だが悪い事ばかりではない。吸血鬼はともかく、厄介な魔人が姿を消した。その直後からサイボーグのスピードが上がったとは言え、従来通りになっただけだ。脅威が増大している訳ではない。
この場所に来た目的はすでに達した。ヌ=ルマナとハルハンガイが見せ、聞かせた『真実』は、人間どもを大混乱へと導いたはずだ。なればこそ、ここで一気にたたみ掛けねばならぬ。グズグズしている余裕などないのだ。
イ=ルグ=ルこそが宇宙の意思の体現であり、求められるべき正義である。百年前の人類に後れを取った事など、本来あってはならない異常事態。宇宙を汚染するゴミどもを滅却し、この惑星をニュートラルな状態に戻すための速やかなる勝利が何より重要と言えた。
にもかかわらず、ヌ=ルマナはまた足止めを食っている。苛立ちと腹立たしさがマグマのように内側に溜まって行く。それは爆発寸前であった。だから相手と距離を取り、家の残骸の上に立ったとき、その下から突き出された獣人の手に、過剰反応してしまった。
それは見えていた罠。獣人が隠れている事など『宇宙の目』にはわかり切っていた。残骸の上に立てば足をつかもうとするであろう事も。ならばただ身をかわせば済んだ話。爪先に念を込めて、その腕を切断する必要はなかった。その瞬間にサイボーグが距離を詰める事もまた、わかり切っていたのだから。
ジンライは一気に距離を詰めた。超振動カッターがきらめき、ヌ=ルマナの右腕を斬り飛ばす。その返す刀で首を斬り落とせば一段落、その思いが油断を呼んだのだろうか。ジンライの体は跳ね飛ばされた。背後に現れた巨大な手によって。
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