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47イベント発生②
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セラフィーレは、一度実体化を解除して二度目の実体化をした上に、呪いを受けたような翼竜を元の姿に戻した分、魔力を多く使っている。レライエが傍にいてくれるので直ぐに透けたりはしないと思うが、神子が押しかけてきたのは不安要素でしかない。
ここで、透けるような事があれば、正体を問われてしまう。
「レイ……どうしよう……」
神子の魔導書として使われるのは嫌だ。レライエと引き離されるのは、もっと嫌だった。
腕の中の竜は小さくなった羽をパタパタと動かしながら、少し長い首をセラフィーレの頬へ擦り寄ってくる。
(黒い鱗の姿も見られているから、この子も連れて行かれるかも知れない)
思わず抱き締めて、少し俯いた。
そんなセラフィーレをレライエが縦抱きに抱える。「セーレ様」メグの声がして、ふわりと背中側にケープコートをかけてくれたのが分かった。
「ここは、レライエ殿下のプライベートな場所です。いくら神子様でも許可なく侵入してはいけません」
ディードが、神子や護衛達を止めてくれている。
──でも、神子の立場は王族並みで、しかも第一王子殿下が来ているのだ。ディードに対して不敬だと、切り捨てることも出来る立ち場だ。
「ディードが不敬罪に問われたら……。それくらいなら、僕の正体を……」
「駄目です。今からセーレって呼び捨てにしますし、これからすることを許してください」
「レイ?」
とても優しい顔で、大丈夫って笑ってくれている。今は、レライエに任せておこう。万が一、レライエやディードに何か彼らがする様なら、戦って皆を連れて逃げるくらいしよう。決意を胸に身を任せた。
「レライエ殿下!その魔物は私が浄化します!!」
ケープコートのフードの隙間から神子を見ると、大興奮で大騒ぎをしている。護衛騎士が、危ないので近寄らないようにと言っているのに、振り切って前に詰め寄って来た。第一王子殿下は、神子を止める気がない様でセラフィーレの方をずっと見ている。思わず視線が合いそうになり、顔を背けた。
「──神子様。もう、魔物では無さそうです。浄化をしたのは、君か?一体……君は何者なんだ?」
「テオ!何言ってるの? こ、この世界で、浄化を使えるのは異世界から来た神子だけです!」
「異世界から来た……あの時……」
何か、第一王子殿下が言いかけて黙ってしまった。
「レイ……あの」
「第一王子殿下、本当に俺のものを奪い取ろうとするのは、やめてくれませんか?貴方には、神子様と言う婚約者が居るのに」
「まだ、決定はしていない……話だ。それに、本当にその人はお前のものなのか?」
「メグ。俺とセーレはいつもどうしている?」
「言ってもよろしいのですか?」
「ああ」
「一緒の部屋を使っていますし、寝室もベッドも同じです。体の弱いセーレ様を抱いて移動する姿もよく見ますわ。本当に仲が良くていらっしゃいます」
「俺からもいいでしょうか? メリオル伯爵家の遠縁になる者ですが、浄化が使える代わりに、魔力欠乏症で身体が弱いのです。長く生きられないと言われていたのですが、レライエ殿下の魔力と相性が良く、ずっと傍にいるのです」
メグとディードが打ち合わせていたかにように、スラスラと発言していく。
「第一王子殿下。俺の体質を知っていますよね?セーレと俺は生きる為に必要で、俺の最愛のパートナーなんです。殿下は、一体俺にどうしろと言うのですか?成人したら、出て行くと言っているでしょう?」
「レライエと……その、セーレは本当に恋仲と言うことか?脅されたりしていないのか?」
──脅されたりしていないのか?
どうして、第一王子殿下は、レライエを悪役にしたがるのだろう?ゲームの強制力だろうか?
セラフィーレは、フードを下ろして第一王子殿下を睨んだ。なぜか殿下が苦しそうな顔をしている。この体制だと邪魔になってしまう腕の中にいた翼竜を、メグの所へ行く様に促す。パタパタと羽を動かして、メグの所へ移動するとメグが抱きかかえてくれた。
レライエがセラフィーレに顔を隠したいのか、フードを戻そうとするので、その手を止めてみた。そのまま濃紺に髪の毛を指ですくようにすると、不思議そうな顔を向けてくるので、セラフィーレは体を起こしレライエの唇を奪った。
「セーレ?」
自分からこんな大胆な事を人前でしてしまい、顔が熱いくらいに真っ赤になって思わず目を伏せる。
「だ、だって、脅されたりしてないって……どうやったら信じてもらえるか分からないから」
「ああ。好きだセーレ」
──レライエからのキスを受け入れた。
ここで、透けるような事があれば、正体を問われてしまう。
「レイ……どうしよう……」
神子の魔導書として使われるのは嫌だ。レライエと引き離されるのは、もっと嫌だった。
腕の中の竜は小さくなった羽をパタパタと動かしながら、少し長い首をセラフィーレの頬へ擦り寄ってくる。
(黒い鱗の姿も見られているから、この子も連れて行かれるかも知れない)
思わず抱き締めて、少し俯いた。
そんなセラフィーレをレライエが縦抱きに抱える。「セーレ様」メグの声がして、ふわりと背中側にケープコートをかけてくれたのが分かった。
「ここは、レライエ殿下のプライベートな場所です。いくら神子様でも許可なく侵入してはいけません」
ディードが、神子や護衛達を止めてくれている。
──でも、神子の立場は王族並みで、しかも第一王子殿下が来ているのだ。ディードに対して不敬だと、切り捨てることも出来る立ち場だ。
「ディードが不敬罪に問われたら……。それくらいなら、僕の正体を……」
「駄目です。今からセーレって呼び捨てにしますし、これからすることを許してください」
「レイ?」
とても優しい顔で、大丈夫って笑ってくれている。今は、レライエに任せておこう。万が一、レライエやディードに何か彼らがする様なら、戦って皆を連れて逃げるくらいしよう。決意を胸に身を任せた。
「レライエ殿下!その魔物は私が浄化します!!」
ケープコートのフードの隙間から神子を見ると、大興奮で大騒ぎをしている。護衛騎士が、危ないので近寄らないようにと言っているのに、振り切って前に詰め寄って来た。第一王子殿下は、神子を止める気がない様でセラフィーレの方をずっと見ている。思わず視線が合いそうになり、顔を背けた。
「──神子様。もう、魔物では無さそうです。浄化をしたのは、君か?一体……君は何者なんだ?」
「テオ!何言ってるの? こ、この世界で、浄化を使えるのは異世界から来た神子だけです!」
「異世界から来た……あの時……」
何か、第一王子殿下が言いかけて黙ってしまった。
「レイ……あの」
「第一王子殿下、本当に俺のものを奪い取ろうとするのは、やめてくれませんか?貴方には、神子様と言う婚約者が居るのに」
「まだ、決定はしていない……話だ。それに、本当にその人はお前のものなのか?」
「メグ。俺とセーレはいつもどうしている?」
「言ってもよろしいのですか?」
「ああ」
「一緒の部屋を使っていますし、寝室もベッドも同じです。体の弱いセーレ様を抱いて移動する姿もよく見ますわ。本当に仲が良くていらっしゃいます」
「俺からもいいでしょうか? メリオル伯爵家の遠縁になる者ですが、浄化が使える代わりに、魔力欠乏症で身体が弱いのです。長く生きられないと言われていたのですが、レライエ殿下の魔力と相性が良く、ずっと傍にいるのです」
メグとディードが打ち合わせていたかにように、スラスラと発言していく。
「第一王子殿下。俺の体質を知っていますよね?セーレと俺は生きる為に必要で、俺の最愛のパートナーなんです。殿下は、一体俺にどうしろと言うのですか?成人したら、出て行くと言っているでしょう?」
「レライエと……その、セーレは本当に恋仲と言うことか?脅されたりしていないのか?」
──脅されたりしていないのか?
どうして、第一王子殿下は、レライエを悪役にしたがるのだろう?ゲームの強制力だろうか?
セラフィーレは、フードを下ろして第一王子殿下を睨んだ。なぜか殿下が苦しそうな顔をしている。この体制だと邪魔になってしまう腕の中にいた翼竜を、メグの所へ行く様に促す。パタパタと羽を動かして、メグの所へ移動するとメグが抱きかかえてくれた。
レライエがセラフィーレに顔を隠したいのか、フードを戻そうとするので、その手を止めてみた。そのまま濃紺に髪の毛を指ですくようにすると、不思議そうな顔を向けてくるので、セラフィーレは体を起こしレライエの唇を奪った。
「セーレ?」
自分からこんな大胆な事を人前でしてしまい、顔が熱いくらいに真っ赤になって思わず目を伏せる。
「だ、だって、脅されたりしてないって……どうやったら信じてもらえるか分からないから」
「ああ。好きだセーレ」
──レライエからのキスを受け入れた。
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