12 / 72
11秘密の共有
しおりを挟む
「うおおおおおお。け、け、け、け」
「お、落ち着いてディード。シィ──」
思わず人差し指を口元に立てた。
そんなに興奮することだろうか?レライエは早まったのかと心配になった。
「け、契約したんですか!?」
「ま、不味かった?魔法を教えてくれるって」
つい言い訳じみてしまう。無能と呼ばれているレライエにとって、この判断が正解が分からない。ただセーレを信じたかった。
膝をついていたディードが更に近づいてきて、手を広げる。
「え?」
がっしりと抱きしめられた。
「良かった。魔法……私は騎士なので細かく教えることは苦手です。最初は隠れて教える必要もあると思っていたのです。守護者がいるのなら桁違いの魔法を教わることが出来るはずです」
「本当に私で良かった?」
「向こうは、神子様がいて神官長も付いてるんですよ?こっちは、とにかく生きながらえる為に、自身で生命を護るんです。力を借りましょう。魔導書を護ったのは他でもないレライエ殿下です」
ディードは、ハッとして手を離して後ろに下がった。
「申し訳ありません。つい嬉しくて出過ぎました」
深く頭をさげてくれる。第一王子の近衛にいた人だけど本当に騎士としてレライエの従者の道を選んでくれたのだ。嬉しくて泣きそうになってしまいそうだ。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
『ううううう。ディ……本当に良い奴だなぁ』
また、セーレの声が聞こえてきた。
「あ……声が聞こえたけど。ディードは聞こえない?」
「すみません」
『レイ……は、ディを信じる?召喚の時に第一王子殿下の近衛の一員だったよね?』
「──それは……そうですが」
『じゃあ、悪いけど……ディに念の為に魔法かけていいかな?』
「生命を奪うようなものではないですよね?」
人の命が奪われるのは見たくない。それだけは何としても阻止したい。
『そんなことしないよ。ただ、僕たちのことを話せない様にする魔法。僕も信じたいけど。もう少し付き合ってからね。僕の護りたい最優先は君だから』
「はい。ディードに伝えます。ディード……申し分けないんだけど」
「何でしょうか?」
「魔導書守護者が話があるらしい。私達の秘密を守ってもらうために」
「話?……分かりました。でも聞いてもいいのですか?」
「ごめん。拒否権はない、から」
「はい」
魔導書をレライエが捲る。
スッと色白の指先が現れて上半身が出てきた。黒衣にローブ姿だ。裸じゃなくて良かったと一瞬レライエは思う。魔導書を隣に置くとさらに体が出てくる。下半身は透けたままだけど、何となく魔導書の上に座ったように見えた。
『彼には姿は見えてないね。その方がいいよね。せめて声は必要な時に聞こえるようにしてあげたいな……話してもいいかな?』
レライエは、頷いた後ディードを見る。
「ディード……今、魔導書の上に座っているんだ。話をしたいんだって」
ディードは、ガン見して眉間にシワを寄せている。探るような視線からも、本当に見えていないようだ。
『念の為、防音ね』
ページが勝手に捲れて、文字らしき物が一文光る。
そしてカチリと音がした。
「ディードさん、魔導書守護者のセーレです。僕は、レイと契約しました。僕は彼を護り強くしたい。貴方を信じたいのですが、何分レイは敵が多い。この本と僕との関係、魔法に関わること。この三人以外とは共有出来ないように魔法をかけます。もし誰かに自白の魔法を掛けられ時は、自動的にこの部分の記憶を消去されますから安心して下さい」
「認識操作、自動消去」
ディードの眉が寄せられる。
「貴方を守る為でもあるので」
「──分かりました。セーレ様、私のお願いを聞いていただけますか?」
「何でしょう?」
「私に間者がつくようなことが有れば迷わず、切り捨てて下さい。自白の魔法の前に。私が連れていかれるようなことがあれば、それはもう手遅れです。何か理由をつけて、レライエ殿下を断罪するでしょうから。私も殿下を護りたいのです」
『はぅぅ。なんて良い人だ』
この声は、レライエにしか聞こえてないみたいだ。
「セーレ様……」
「ああレイ……ごめんごめん。ディ、僕は貴方を見捨てる気はないから。レイを傍で支えてあげて。断罪とか……そんなことさせない」
「セーレ様、お約束します」
そして、また魔導書の文字が光を放った。ディードの体が光に包まれたのは一瞬だった。
「レイ……明日からいっぱい教えるからね」
「はい。セーレ様」
「そうだ。レイの寝室には防御魔法をかけるから寝室のサイドテーブルにでも魔導書を置いていつも寝てくれる?念の為に護りたいからね。あと……様はいらないよ」
「はい」
◇◇◇
テーブルの上で良かったのに……ベットで抱きしめられてる。まぁお気に入りのぬいぐるみ感覚かな?レイは可愛いなぁ。成長したら凄いイケメンになるんだよね。
おやすみ……レイ。
「お、落ち着いてディード。シィ──」
思わず人差し指を口元に立てた。
そんなに興奮することだろうか?レライエは早まったのかと心配になった。
「け、契約したんですか!?」
「ま、不味かった?魔法を教えてくれるって」
つい言い訳じみてしまう。無能と呼ばれているレライエにとって、この判断が正解が分からない。ただセーレを信じたかった。
膝をついていたディードが更に近づいてきて、手を広げる。
「え?」
がっしりと抱きしめられた。
「良かった。魔法……私は騎士なので細かく教えることは苦手です。最初は隠れて教える必要もあると思っていたのです。守護者がいるのなら桁違いの魔法を教わることが出来るはずです」
「本当に私で良かった?」
「向こうは、神子様がいて神官長も付いてるんですよ?こっちは、とにかく生きながらえる為に、自身で生命を護るんです。力を借りましょう。魔導書を護ったのは他でもないレライエ殿下です」
ディードは、ハッとして手を離して後ろに下がった。
「申し訳ありません。つい嬉しくて出過ぎました」
深く頭をさげてくれる。第一王子の近衛にいた人だけど本当に騎士としてレライエの従者の道を選んでくれたのだ。嬉しくて泣きそうになってしまいそうだ。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
『ううううう。ディ……本当に良い奴だなぁ』
また、セーレの声が聞こえてきた。
「あ……声が聞こえたけど。ディードは聞こえない?」
「すみません」
『レイ……は、ディを信じる?召喚の時に第一王子殿下の近衛の一員だったよね?』
「──それは……そうですが」
『じゃあ、悪いけど……ディに念の為に魔法かけていいかな?』
「生命を奪うようなものではないですよね?」
人の命が奪われるのは見たくない。それだけは何としても阻止したい。
『そんなことしないよ。ただ、僕たちのことを話せない様にする魔法。僕も信じたいけど。もう少し付き合ってからね。僕の護りたい最優先は君だから』
「はい。ディードに伝えます。ディード……申し分けないんだけど」
「何でしょうか?」
「魔導書守護者が話があるらしい。私達の秘密を守ってもらうために」
「話?……分かりました。でも聞いてもいいのですか?」
「ごめん。拒否権はない、から」
「はい」
魔導書をレライエが捲る。
スッと色白の指先が現れて上半身が出てきた。黒衣にローブ姿だ。裸じゃなくて良かったと一瞬レライエは思う。魔導書を隣に置くとさらに体が出てくる。下半身は透けたままだけど、何となく魔導書の上に座ったように見えた。
『彼には姿は見えてないね。その方がいいよね。せめて声は必要な時に聞こえるようにしてあげたいな……話してもいいかな?』
レライエは、頷いた後ディードを見る。
「ディード……今、魔導書の上に座っているんだ。話をしたいんだって」
ディードは、ガン見して眉間にシワを寄せている。探るような視線からも、本当に見えていないようだ。
『念の為、防音ね』
ページが勝手に捲れて、文字らしき物が一文光る。
そしてカチリと音がした。
「ディードさん、魔導書守護者のセーレです。僕は、レイと契約しました。僕は彼を護り強くしたい。貴方を信じたいのですが、何分レイは敵が多い。この本と僕との関係、魔法に関わること。この三人以外とは共有出来ないように魔法をかけます。もし誰かに自白の魔法を掛けられ時は、自動的にこの部分の記憶を消去されますから安心して下さい」
「認識操作、自動消去」
ディードの眉が寄せられる。
「貴方を守る為でもあるので」
「──分かりました。セーレ様、私のお願いを聞いていただけますか?」
「何でしょう?」
「私に間者がつくようなことが有れば迷わず、切り捨てて下さい。自白の魔法の前に。私が連れていかれるようなことがあれば、それはもう手遅れです。何か理由をつけて、レライエ殿下を断罪するでしょうから。私も殿下を護りたいのです」
『はぅぅ。なんて良い人だ』
この声は、レライエにしか聞こえてないみたいだ。
「セーレ様……」
「ああレイ……ごめんごめん。ディ、僕は貴方を見捨てる気はないから。レイを傍で支えてあげて。断罪とか……そんなことさせない」
「セーレ様、お約束します」
そして、また魔導書の文字が光を放った。ディードの体が光に包まれたのは一瞬だった。
「レイ……明日からいっぱい教えるからね」
「はい。セーレ様」
「そうだ。レイの寝室には防御魔法をかけるから寝室のサイドテーブルにでも魔導書を置いていつも寝てくれる?念の為に護りたいからね。あと……様はいらないよ」
「はい」
◇◇◇
テーブルの上で良かったのに……ベットで抱きしめられてる。まぁお気に入りのぬいぐるみ感覚かな?レイは可愛いなぁ。成長したら凄いイケメンになるんだよね。
おやすみ……レイ。
488
お気に入りに追加
937
あなたにおすすめの小説
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。
しかも、定番の悪役令嬢。
いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。
ですから婚約者の王子様。
私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる