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50.浄化同行 ③
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食獣植物は、土の中を移動する。先に蔦だけ伸ばし食料を拘束し、動けなくしてから丸呑みする形が多い。本体の頭の位置が、がま口の様に大きく開く。縁にはギザギザの歯状になっていて、飲み込み難いものは噛み砕かれる。
馬が一頭丸ごと飲み込まれ、骨が砕けて行く音が聞こえてきた。
吐き気がする。
こんなの、うじゃうじゃ出てきたら対応仕切れない。
土が盛り上がる所に、魔法師達が攻撃しても反応がない。無駄に魔力が失われて行くだけだ。
囮になるのは……無謀だよね。飲み込まれた時に中から破壊出来る?
もしも、胃酸の様な液体で溶かされたら魔法なんて使う暇はない。
「ジェイド……あれの弱点はある?」
「土から引きずり出して、核を貫けばいい。でも、引きずり出すのがやっかいだ。それにサイズが大きすぎる」
引きずり出す……なら、まずは広範囲で足止めをして土を凍らす?とか。
聖女を見る。
本当にチートはあるのか? 無かったら……どうなるんだろう。
「ジェイド……」
「囮はだめだ」
「まあ無理だよね。なら範囲が広いけど……地面を凍結させたい。次に土が盛り上がったら、氷の柱を四本アイツを囲むように突き立てられる?それを使って一気に凍結させるから」
「そうか……土の上に出て来ても簡単に潜れなくする。その時に皆で核を狙えばいい」
「うん」
「カーク、殿下、魔法師長……聞こえましたか!」
皆が頷いて、ジェイドの合図で氷の柱が食獣植物囲むように四本突き刺さった。
俺は、ジェイドの前に移動し背後から支えてもらう。
両手を突き出して、魔力の塊をその氷柱を繋ぐようすると、一気に地面が凍結していく。
気温が、ぐんぐん下がっていく。
「琥珀……」
気温は下がっても背中から抱きしめられているので、そこまで寒くない。
「大丈夫、もうすぐ……出てくる。誰か!!食獣植物が出てきたら、核を狙って!」
バキバキと、氷から押し出されるように、緑色の塊が姿を見せる。
皆が一斉に攻撃をした。カークの氷剣とジェイドの雷光が核を同時に貫いた。
一瞬静まり返ったものの、倒した事で歓声があがる。
ジェイドに支えて貰っていなかったら、馬から落ちてたと思う。脱力している体をジェイドに包み込まれるように抱きしめられる。
「聖女様、食獣植物は、討伐出来ました。もう少し先で、皆を休ませましょう。野営も準備しないと、明日は目的の場所で浄化をお願いします」
エドワード殿下が、声をかけると聖女がこちらにやって来た。
「ジェイド、相談したい事があるの。やっぱり、貴方に守って欲しいわ。その方が安心して浄化出来るでしょ?」
「聖女様、俺は琥珀様の専属です」
抱きしめられている体が、さらに強く引き寄せられた。
「エドワード殿下。聖女は国賓で、その言葉は陛下よりも上ですよね?」
「それは、そうですが……神使様は貴方と同等で国賓です。それに神使様とジェイドは、既にペアを組まれています。私はそれを優先します」
聖女様も引き下がらないが、その言葉を聞いたエドワード殿下も反論してくれた。
「神使……様。一度浄化に成功されていますよね? 初めての浄化に緊張する私の為に、明日はジェイド様を貸して下さい。それも駄目ですか?」
魔法師長とミカエル様の視線を感じる。今、こんな状況で、チートが出なかった時……生命の危険がある。
そっとジェイドの腕に手を重ねる。
「ジェイド……明日の浄化の時だけ、聖女様の護衛についてあげて」
それが、精一杯の譲歩だった。
馬が一頭丸ごと飲み込まれ、骨が砕けて行く音が聞こえてきた。
吐き気がする。
こんなの、うじゃうじゃ出てきたら対応仕切れない。
土が盛り上がる所に、魔法師達が攻撃しても反応がない。無駄に魔力が失われて行くだけだ。
囮になるのは……無謀だよね。飲み込まれた時に中から破壊出来る?
もしも、胃酸の様な液体で溶かされたら魔法なんて使う暇はない。
「ジェイド……あれの弱点はある?」
「土から引きずり出して、核を貫けばいい。でも、引きずり出すのがやっかいだ。それにサイズが大きすぎる」
引きずり出す……なら、まずは広範囲で足止めをして土を凍らす?とか。
聖女を見る。
本当にチートはあるのか? 無かったら……どうなるんだろう。
「ジェイド……」
「囮はだめだ」
「まあ無理だよね。なら範囲が広いけど……地面を凍結させたい。次に土が盛り上がったら、氷の柱を四本アイツを囲むように突き立てられる?それを使って一気に凍結させるから」
「そうか……土の上に出て来ても簡単に潜れなくする。その時に皆で核を狙えばいい」
「うん」
「カーク、殿下、魔法師長……聞こえましたか!」
皆が頷いて、ジェイドの合図で氷の柱が食獣植物囲むように四本突き刺さった。
俺は、ジェイドの前に移動し背後から支えてもらう。
両手を突き出して、魔力の塊をその氷柱を繋ぐようすると、一気に地面が凍結していく。
気温が、ぐんぐん下がっていく。
「琥珀……」
気温は下がっても背中から抱きしめられているので、そこまで寒くない。
「大丈夫、もうすぐ……出てくる。誰か!!食獣植物が出てきたら、核を狙って!」
バキバキと、氷から押し出されるように、緑色の塊が姿を見せる。
皆が一斉に攻撃をした。カークの氷剣とジェイドの雷光が核を同時に貫いた。
一瞬静まり返ったものの、倒した事で歓声があがる。
ジェイドに支えて貰っていなかったら、馬から落ちてたと思う。脱力している体をジェイドに包み込まれるように抱きしめられる。
「聖女様、食獣植物は、討伐出来ました。もう少し先で、皆を休ませましょう。野営も準備しないと、明日は目的の場所で浄化をお願いします」
エドワード殿下が、声をかけると聖女がこちらにやって来た。
「ジェイド、相談したい事があるの。やっぱり、貴方に守って欲しいわ。その方が安心して浄化出来るでしょ?」
「聖女様、俺は琥珀様の専属です」
抱きしめられている体が、さらに強く引き寄せられた。
「エドワード殿下。聖女は国賓で、その言葉は陛下よりも上ですよね?」
「それは、そうですが……神使様は貴方と同等で国賓です。それに神使様とジェイドは、既にペアを組まれています。私はそれを優先します」
聖女様も引き下がらないが、その言葉を聞いたエドワード殿下も反論してくれた。
「神使……様。一度浄化に成功されていますよね? 初めての浄化に緊張する私の為に、明日はジェイド様を貸して下さい。それも駄目ですか?」
魔法師長とミカエル様の視線を感じる。今、こんな状況で、チートが出なかった時……生命の危険がある。
そっとジェイドの腕に手を重ねる。
「ジェイド……明日の浄化の時だけ、聖女様の護衛についてあげて」
それが、精一杯の譲歩だった。
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