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39.森の浄化へ ②

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 馬は思ったより大きくて、視界が高い。正直怖い。俺は、ジェイドの前に座っている。

 日常生活で、乗馬なんてした事なんてない。俺も結も。
 二人乗りなんて、自転車位だ。小さい頃は、俺がこいで後ろが結だ。高校生の頃には、結が前になって……スピード上げたっけ。

 なんで、馬に乗れんの?
 何が本当なのか分からない。

「琥珀様?」
 後ろにいる、ジェイドから話しかけられた。

「ごめん。何? ボーッとしてた」
 気を抜いたら駄目だ。

「いいえ。力まないで下さい。気を抜ける時、休める時は休んで下さい。振り落としたりしませんから……しがみついて寝てもいいですよ?」

 なんて言うか、気配りなのか……弱ってたりするとバレてしまう。こう言う所が似てるって思ってしまうんだ。

「──ありがとう。しがみつかないよ。ただちょっと、昔を思い出してた」
 記憶が消えていない。大丈夫、忘れたりしていない。俺だけでも覚えていたら、きっと大丈夫だ。

 この記憶が夢じゃないなら、こっちが夢なのかな? 背中から伝わる体温は、勘違いで……
『起きて、兄さん』
 そして、夢オチって笑えたらいいのに。

 それに最近の恥ずかしい……事が、夢ならいいのにとは思う。すっきりはしたけど、人にしてもらうとか、考えられなくて困る。

「何か耳が赤いですが、熱でも?」
「な、なんでもない」


 今は、考えないように。目の前の事を受け止めて行こう。怪我とか誰もして欲しくないから。

 道中何も問題はなく、移動も早い。王都を抜けてしまえば、視線も気にならなくなった。ようやく休憩出来る所に着いた。流石に慣れない乗馬はしんどい。お尻と、太ももの違和感がすごい。

 乗馬って、慣れないとお尻?太ももの皮が擦れて剥ける場合があるって聞いた事があるけど。 
 魔法を使われてるのか、それはないみたいだ。

 心配して、見せてって言われそう。視線を感じて、大丈夫だよって手で止める。

「少し軽食を取って休んだ後、もう少し移動して野営の準備をします。翌日はその先の浄化ポイントに移動です」

「分かった」
 体を解しつつ、周りを見渡す。この先に進んで行く。まだ開けた土地だけど……森に入ったら特に気を抜かないようにと、気を引き締めた。


 野営の場所について、今の所何も問題はないと報告を受ける。天幕が殿下や、俺の為に組み立てられて行く。他の魔法士達ももっと簡素なものだ。

 見張り以外は、休息についた。殿下の天幕の周りは護衛が付いている。
 ジェイドが、俺と一緒に使うからと護衛を休ませると言っていた。

「神使様と私なので、問題ない。休める者は仮眠を取るように」

 見張りがいると、申し訳なくて眠れない可能性があった。多分、気を回してくれたんだ。それに野営にしては立派なマットが引かれて、寝るのも外とは思えない位快適だ。

「ありがとう」
「見張りなんて、された事ないですよね? 俺が隣にいれば、安心出来るのならそれが一番ですから。なんなら抱きしめようか?」

「と、隣で寝るだけでいいから!!」
 最近、ジェイドとの距離感が分からなくなっている。

「そうだ、琥珀様。温泉……お湯が湧いてる所が少し先にあります。浄化から戻ったら、こっそり連れて行ってあげますね」

「皆で入るのは不味いんだっけ?」
「そうですね。だからこっそりです。見張りますから」

  そっか、一緒には入らないんだ。

 色々勝手が違う。でも、温泉は楽しみだな。あまり肌を見せたりしない理由に、この世界は女性が少ない。

 ミカエル様の話だと、だから聖女様は、民からの支持をとても受ける。 国民の支持を受けるのは、王家の安定に繋がる喜ばしい事らしい。
『ただ男性の数が増えた事により、男性同士の恋愛も多いのですよ。 それを嫌がる者も今は少ない。神使様は、気を付けて下さい。貴方は人を惹きつけるから』

 つまり、そう言う事なのかな? ジェイドが肌を見せるなって心配してくれるのは。他の人達から守ってくれているのかも知れない。 

 いつもより、一人分は間を開けて寝る事にした。明日はいよいよ、本番だから。


 それなのに……朝になって腕の中で目が覚めるのが、定位置になりそうで勘弁して欲しかった。

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