33 / 81
32.王都の古書店①
しおりを挟む
朝の騒動から、少し気まずい。ジェイドの準備は済んでいるようで、シャツにはシワひとつない。
風魔法で髪を乾かしてくれて、少し伸びてきた髪を一つに纏めてくれた。事務的な会話しかしていない。まだ怒ってるみたいだ。
食事も黙ったままだった。マナー的には、正解なのかも知れないけど。
参った……。今日は、王都の古書店に連れて行ってもらう予定だ。正直、王宮の外なんて許可は下りないと思っていた。楽しみにしていた分、自分のやらかしに焦っている。
聖女様の攻略対象者。男女間の恋愛小説だから、自分のいた所と変わらないと思っていた。
ジェイドの『犯されてしまう』と言う言葉。王宮内に騎士団もあるから男の人が多いと思っていたけど……つまり、そう言う目で見られやすいのかな? 同性の恋愛も多いのだとしたら。 だから、エドワード王子も心配しているのかも知れない。
エドワード王子に、『聖女様』そう最初に間違えられた。 いわゆる、BLでの受けのように見えるのかも知れない。
椅子に座り、ブーツの編み上げを手伝ってもらっていた。その手を見ながら思わず声がでた。
「気をつけよう……」
「何を気をつけるのですか?」
まだ、怒ってる感じがする。
「こっちの常識が足りないってことだから、情報収集をしようかと」
「『裸で、お風呂に一緒に入ろう?』は、断じて有り得ません!! 恋人同士でもそこまでの仲になるのは、ずっと先です。まして神官様のような神に仕える方は、特に人前で肌を露出はしません。王族や身分が高い方もですが……」
「露出……」
(言い方! 露出狂みたいに思われてる)
「騎士も訓練後着替えますが、着替える場所があります。王宮で務める者も、敷地内で肌は見せたりしませんよ」
「大浴場みたいな場所はない?」
しまった。怖い。ジェイドの顔が怖いすぎる。
「ごめん。俺がいた所は、温泉って言って薬効?の高いお湯が湧くんだ。体調の悪い人を癒すお湯。傷とか皮膚病とかに効くんだよ。身分とかほぼないから、一般市民は一緒に湯船に浸かれるんだ」
(温泉、好きだったのに)
「──温泉? 薬草湯が湧く所の事ですか?」
「そう。それ!」
「傷を癒す為に、騎士が入ることはありますが、服は着てますよ」
「そうなんだ……」
確かに広い所とかは、薄いガウン見たいなの着てうろうろしてたかも。
「ジェイド、気をつけるね。まだ魔法初心者だから身を守れない。犯される……ってマジで怖い」
「──申し訳ありませんでした。怖がらせる気はなくて、危機感を分かって欲しくて。神使様の胸を……俺は、護衛失格ですね」
「待って。辞めるとか無し!! ジェイドが良い。俺が悪かったから。別にジェイドに触られても平気。一緒に寝るのも、誰よりも安心出来るから」
そのセリフを言った途端、お互い真っ赤になった。
「い、言い方が、可笑しいね。やっとここに来て、安心出来る人に会ったんだ」
「本当に、貴方は……」
ジェイドの困ったような、照れた顔が結と被った。
「今日、楽しみにしてたんだ。ジェイドとなら、護衛を減らして行けるって聞いてる」
「離れた所に護衛は付きますね。貴族にあまり見えないようにしますが、琥珀様を平民に見せるのは無理ですね」
「そうかな? こんな顔……ジェイド達に比べたら平凡そのものだけど」
ため息をつかれた。
「無自覚過ぎ。 本当に離れないで下さい」
(いつも、見てた平凡顔だよ)
「でも古書店……楽しみだね」
少しだけくすんだ色のシャツ。焦げ茶のベストとパンツにブーツ。斜め掛けのバックの中身は、護身用の魔道具だ。ジェイドは、黒系統の服を着てるので騎士と言うより、執事のようだ。
ジェイド……全然平民に見えない。そっちの方が問題だと思う。
王宮の裏口のような所に馬車が用意されていた。見た目は古い感じだけど、乗り心地はいい。異国の観光気分になるのは、本当に許して欲しい。馬車から見える景色を、ジェイドに説明してもらった。そして、その古書店は急に視界に入って来たのだ。
風魔法で髪を乾かしてくれて、少し伸びてきた髪を一つに纏めてくれた。事務的な会話しかしていない。まだ怒ってるみたいだ。
食事も黙ったままだった。マナー的には、正解なのかも知れないけど。
参った……。今日は、王都の古書店に連れて行ってもらう予定だ。正直、王宮の外なんて許可は下りないと思っていた。楽しみにしていた分、自分のやらかしに焦っている。
聖女様の攻略対象者。男女間の恋愛小説だから、自分のいた所と変わらないと思っていた。
ジェイドの『犯されてしまう』と言う言葉。王宮内に騎士団もあるから男の人が多いと思っていたけど……つまり、そう言う目で見られやすいのかな? 同性の恋愛も多いのだとしたら。 だから、エドワード王子も心配しているのかも知れない。
エドワード王子に、『聖女様』そう最初に間違えられた。 いわゆる、BLでの受けのように見えるのかも知れない。
椅子に座り、ブーツの編み上げを手伝ってもらっていた。その手を見ながら思わず声がでた。
「気をつけよう……」
「何を気をつけるのですか?」
まだ、怒ってる感じがする。
「こっちの常識が足りないってことだから、情報収集をしようかと」
「『裸で、お風呂に一緒に入ろう?』は、断じて有り得ません!! 恋人同士でもそこまでの仲になるのは、ずっと先です。まして神官様のような神に仕える方は、特に人前で肌を露出はしません。王族や身分が高い方もですが……」
「露出……」
(言い方! 露出狂みたいに思われてる)
「騎士も訓練後着替えますが、着替える場所があります。王宮で務める者も、敷地内で肌は見せたりしませんよ」
「大浴場みたいな場所はない?」
しまった。怖い。ジェイドの顔が怖いすぎる。
「ごめん。俺がいた所は、温泉って言って薬効?の高いお湯が湧くんだ。体調の悪い人を癒すお湯。傷とか皮膚病とかに効くんだよ。身分とかほぼないから、一般市民は一緒に湯船に浸かれるんだ」
(温泉、好きだったのに)
「──温泉? 薬草湯が湧く所の事ですか?」
「そう。それ!」
「傷を癒す為に、騎士が入ることはありますが、服は着てますよ」
「そうなんだ……」
確かに広い所とかは、薄いガウン見たいなの着てうろうろしてたかも。
「ジェイド、気をつけるね。まだ魔法初心者だから身を守れない。犯される……ってマジで怖い」
「──申し訳ありませんでした。怖がらせる気はなくて、危機感を分かって欲しくて。神使様の胸を……俺は、護衛失格ですね」
「待って。辞めるとか無し!! ジェイドが良い。俺が悪かったから。別にジェイドに触られても平気。一緒に寝るのも、誰よりも安心出来るから」
そのセリフを言った途端、お互い真っ赤になった。
「い、言い方が、可笑しいね。やっとここに来て、安心出来る人に会ったんだ」
「本当に、貴方は……」
ジェイドの困ったような、照れた顔が結と被った。
「今日、楽しみにしてたんだ。ジェイドとなら、護衛を減らして行けるって聞いてる」
「離れた所に護衛は付きますね。貴族にあまり見えないようにしますが、琥珀様を平民に見せるのは無理ですね」
「そうかな? こんな顔……ジェイド達に比べたら平凡そのものだけど」
ため息をつかれた。
「無自覚過ぎ。 本当に離れないで下さい」
(いつも、見てた平凡顔だよ)
「でも古書店……楽しみだね」
少しだけくすんだ色のシャツ。焦げ茶のベストとパンツにブーツ。斜め掛けのバックの中身は、護身用の魔道具だ。ジェイドは、黒系統の服を着てるので騎士と言うより、執事のようだ。
ジェイド……全然平民に見えない。そっちの方が問題だと思う。
王宮の裏口のような所に馬車が用意されていた。見た目は古い感じだけど、乗り心地はいい。異国の観光気分になるのは、本当に許して欲しい。馬車から見える景色を、ジェイドに説明してもらった。そして、その古書店は急に視界に入って来たのだ。
4
お気に入りに追加
821
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
咳が苦しくておしっこが言えなかった同居人
こじらせた処女
BL
過労が祟った菖(あやめ)は、風邪をひいてしまった。症状の中で咳が最もひどく、夜も寝苦しくて起きてしまうほど。
それなのに、元々がリモートワークだったこともあってか、休むことはせず、ベッドの上でパソコンを叩いていた。それに怒った同居人の楓(かえで)はその日一日有給を取り、菖を監視する。咳が止まらない菖にホットレモンを作ったり、背中をさすったりと献身的な世話のお陰で一度長い眠りにつくことができた。
しかし、1時間ほどで目を覚ましてしまう。それは水分をたくさんとったことによる尿意なのだが、咳のせいでなかなか言うことが出来ず、限界に近づいていき…?
【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
【グラニクルオンライン】〜女神に召喚されたプレイヤーがガチクズばかりなので高レベの私が無双します〜
てんてんどんどん
ファンタジー
国王「勇者よ!よくこの国を救ってくれた!お礼にこれを!!」
国王は綺麗な腕輪【所有者を奴隷にできる腕輪】を差し出した!
主人公(あかん、これダメな方の異世界転移だわ)
私、橘楓(たちばな かえで)はいつも通りVRMMOゲーム【グラニクルオンライン】にログインしたはずだった……のだが。
何故か、私は間違って召喚されゲーム【グラニクルオンライン】の300年後の世界へ、プレイしていた男キャラ「猫まっしぐら」として異世界転移してしまった。
ゲームの世界は「自称女神」が召喚したガチクズプレイヤー達が高レベルでTUeeeしながら元NPC相手にやりたい放題。
ハーレム・奴隷・拷問・赤ちゃんプレイって……何故こうも基地外プレイヤーばかりが揃うのか。
おかげでこの世界のプレイヤーの評価が単なるド変態なんですけど!?
ドラゴン幼女と変態エルフを引き連れて、はじまる世直し旅。
高レベルで無双します。
※※アルファポリス内で漫画も投稿しています。
宜しければそちらもご覧いただけると嬉しいです※※
※恋愛に発展するのは後半です。
※中身は女性で、ヒーローも女性と認識していますが男性キャラでプレイしています。アイテムで女に戻ることもできます。それでも中身が女でも外見が男だとBLに感じる方はご注意してください。
※ダーク要素もあり、サブキャラに犠牲者もでます。
※小説家になろう カクヨム でも連載しています
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
悪魔の子と呼ばれ家を追い出されたけど、平民になった先で公爵に溺愛される
ゆう
BL
実の母レイシーの死からレヴナントの暮らしは一変した。継母からは悪魔の子と呼ばれ、周りからは優秀な異母弟と比べられる日々。多少やさぐれながらも自分にできることを頑張るレヴナント。しかし弟が嫡男に決まり自分は家を追い出されることになり...
配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました!?お、俺は彼女が欲しいかな!!
ふわりんしず。
BL
晒し系配信者が配信ボタンを切り忘れて
素の性格がリスナー全員にバレてしまう
しかも苦手な歌い手に外堀を埋められて…
■
□
■
歌い手配信者(中身は腹黒)
×
晒し系配信者(中身は不憫系男子)
保険でR15付けてます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる