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27.聖女と神使の魔力 ②
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場所は、魔塔内だ。外観とは違い、地下がこんなに広いなんて。魔法ってやばいな。少し岩肌でゴツゴツした感じの地面に芝のような緑が点在している。室内なのに、空がある時点で何もかもおかしい。
ジェイドのそばに寄りたがる聖女を、魔法師長が注意する。
「聖女様、集中しないと怪我をしかねません。ジェイド様は、神使様付きの護衛魔法騎士ですから。彼の邪魔をしないように」
本当に懲りない子だな。だけど、渡す気はない。
クスクスと、誰かが笑ったみたいだ。ローブのフードを深く被っている魔法師の誰かだろう。魔力暴走を防ぐ為か、こちらも数名が配置についていた。
笑われた為か、聖女が顔を歪めた。
前回の水晶より少し小さめの物が、二つ別々の台上に置かれた。
距離も十メートル位離されている。もちろん、聖女の方にはカークと神官長が後ろに付いた。
俺の後ろには、ジェイドがいる。やっぱり安心感がある。
真ん中辺りいた魔法師長が、拡声魔法でやり方を教えてくれた。
さっきの魔力の循環と同じだ。ここに来るまで、ジェイドとやっていたやつだ。思わず振り返ると悪戯したっぽい顔になって、口角も僅かにあがった。
笑わないように気を引きしめる。吸い取られたらこの間の二の舞になってしまう。よし循環させたら良いんだな。手を置こうした時に止められてしまった。
「神使様は、少し待ってください。順番に近くに行きますから」
そう言って、聖女の所に魔法師長は、一瞬で移動した。
遅い……全然こっちに来ない。これだと時間がかかりすぎる。ちらりと様子を見ると、魔力が続かないみたいで循環しないみたいだ。カークが手を繋ぐ様に言われて練習しているが、イマイチそうだ。
そして、こちらに魔術師長が移動してきた。
「神使様、すみません。前回の事もありますから近くで待機させて下さい」
両手をつけて、ゆっくりと右から左へ体を通して水晶へ。そしてまた右へ、そのイメージで流してみた。手を繋いだ時は、流れてきた魔力を体内を巡らせてからジェイドに戻した。彼がどうしてたかまでは、知らないけど。
水晶が割れる気配はない。綺麗な白銀の光が、一定の輝きで保たれていた。
「練習されてたのですか? 素晴らしい。それにとても安定しています。聖属性が特出してますね。他の魔法のイメージは出来ますか?」
「試しても……」
「ちょっと待って!!」
魔法師長との会話の途中に、聖女が走ってやってきた。
「そっちの、水晶に変えて」
俺が手を離すと、白銀の色がゆっくりと消えた。
魔法師長を見て、頷きジェイドのそばに行く。
「聖女様。どちらも同じものです。こちらを使っても、出来ない場合……大人しく神殿で、魔法基礎の座学から習ってくださいね」
聖女は両手で水晶に触れた。
「──分かったわ」
ブツブツといいながら、魔力を込めたみたいだ。
結果的に何も起きなかった。白い煙の様なものさえ現れなかったのだ。そして、あろうことか水晶を地面に投げ落としたのだ。
破片が飛び散り、その破片が俺の頬と掌に飛んできた。
血が流れたのを見たジェイドが、剣を抜きかけたのをカークと魔法師長が必死に止めた。
「ひぃ、わ……わざとじゃないから!」
聖女がその迫力に尻もちをつく。
俺も慌てて、ジェイドの手を握った。
「大丈夫だから」
「琥珀様の顔に傷がついたのですよ!」
「ジェイドも、怪我してる。俺より深そうだから見せて」
「俺の事より、琥珀様の手当を!」
「落ち着いて。平気だから」
ジェイドの腕の出血した部分に手を当てる。
治療の魔法って……ヒール?
『回復しろ』
何となく、中二病っぽくて恥ずかしい。
「ジェイド様の傷が消えた」
そんなカークの声が聞こえた。
ジェイドが慌てて、俺の手を取り傷のある頬に手を当てさせる。
「今の魔法を早く!!」
──結みたいだ。
『回復しろ』
傷が消えて、涙ぐんだジェイドに抱きしめられた。
ジェイドのそばに寄りたがる聖女を、魔法師長が注意する。
「聖女様、集中しないと怪我をしかねません。ジェイド様は、神使様付きの護衛魔法騎士ですから。彼の邪魔をしないように」
本当に懲りない子だな。だけど、渡す気はない。
クスクスと、誰かが笑ったみたいだ。ローブのフードを深く被っている魔法師の誰かだろう。魔力暴走を防ぐ為か、こちらも数名が配置についていた。
笑われた為か、聖女が顔を歪めた。
前回の水晶より少し小さめの物が、二つ別々の台上に置かれた。
距離も十メートル位離されている。もちろん、聖女の方にはカークと神官長が後ろに付いた。
俺の後ろには、ジェイドがいる。やっぱり安心感がある。
真ん中辺りいた魔法師長が、拡声魔法でやり方を教えてくれた。
さっきの魔力の循環と同じだ。ここに来るまで、ジェイドとやっていたやつだ。思わず振り返ると悪戯したっぽい顔になって、口角も僅かにあがった。
笑わないように気を引きしめる。吸い取られたらこの間の二の舞になってしまう。よし循環させたら良いんだな。手を置こうした時に止められてしまった。
「神使様は、少し待ってください。順番に近くに行きますから」
そう言って、聖女の所に魔法師長は、一瞬で移動した。
遅い……全然こっちに来ない。これだと時間がかかりすぎる。ちらりと様子を見ると、魔力が続かないみたいで循環しないみたいだ。カークが手を繋ぐ様に言われて練習しているが、イマイチそうだ。
そして、こちらに魔術師長が移動してきた。
「神使様、すみません。前回の事もありますから近くで待機させて下さい」
両手をつけて、ゆっくりと右から左へ体を通して水晶へ。そしてまた右へ、そのイメージで流してみた。手を繋いだ時は、流れてきた魔力を体内を巡らせてからジェイドに戻した。彼がどうしてたかまでは、知らないけど。
水晶が割れる気配はない。綺麗な白銀の光が、一定の輝きで保たれていた。
「練習されてたのですか? 素晴らしい。それにとても安定しています。聖属性が特出してますね。他の魔法のイメージは出来ますか?」
「試しても……」
「ちょっと待って!!」
魔法師長との会話の途中に、聖女が走ってやってきた。
「そっちの、水晶に変えて」
俺が手を離すと、白銀の色がゆっくりと消えた。
魔法師長を見て、頷きジェイドのそばに行く。
「聖女様。どちらも同じものです。こちらを使っても、出来ない場合……大人しく神殿で、魔法基礎の座学から習ってくださいね」
聖女は両手で水晶に触れた。
「──分かったわ」
ブツブツといいながら、魔力を込めたみたいだ。
結果的に何も起きなかった。白い煙の様なものさえ現れなかったのだ。そして、あろうことか水晶を地面に投げ落としたのだ。
破片が飛び散り、その破片が俺の頬と掌に飛んできた。
血が流れたのを見たジェイドが、剣を抜きかけたのをカークと魔法師長が必死に止めた。
「ひぃ、わ……わざとじゃないから!」
聖女がその迫力に尻もちをつく。
俺も慌てて、ジェイドの手を握った。
「大丈夫だから」
「琥珀様の顔に傷がついたのですよ!」
「ジェイドも、怪我してる。俺より深そうだから見せて」
「俺の事より、琥珀様の手当を!」
「落ち着いて。平気だから」
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何となく、中二病っぽくて恥ずかしい。
「ジェイド様の傷が消えた」
そんなカークの声が聞こえた。
ジェイドが慌てて、俺の手を取り傷のある頬に手を当てさせる。
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『回復しろ』
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