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10.聖女 sideエドワード
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駆け出した先は、王宮図書館の方だ。
音の割に、被害が少ない様に見える。建物の外観は壊れていないようだ。中に入れば、本棚の一部が倒れ本が散乱している。
ジェイドの立っている少し横に、大人が二人程入れそうな穴が空いていた。床が抜け落ちているようだった。見上げれば天井にも穴があり空が見えた。
何らかの魔法が、突き抜けて行った後のようだった。
聖女の護衛についていた魔法騎士と魔法師により、聖女は護られたようだ。魔法攻撃自体は、受けていないようだった。
とにかく無傷の様に見える。周りに被害がない様に魔法の広がりは、ジェイド自身が抑えたのかも知れない。
だが、ジェイドを見れば漏れ出る魔力とその表情に怒りが見える。
呆然としていた聖女が、我に返り走り寄ろうとして見えない壁に跳ね返される。
二、三歩下がった後に尻もちをついた。それでもなお壁の所へ歩み寄り、手で触れて見えない壁を確認した。少しだけ俯いてキュッと唇を噛み締めると、拳を握り壁を叩いた。
ドンドン叩いてみるが透明な壁により、ジェイドの側には近寄れない。
「どうして拒むのですか?」
聖女は気がつかない。ジェイドの魔力に怒りがこもっている事を。俺でも分かる。カークも不味いなという顔をしている。
「そこの護衛騎士、聖女様を治療室へ連れて行ってくれ。万が一怪我をしていたら不味いからね。それからそっちの神官は、ミカエルか神官長に連絡を入れてガ……嫌、聖女様用の貴賓室で対応するように伝えてくれ」
俺の一言に、聖女が振り向いた。
「エドワード様。私の事が気になるのかも知れませんが、今優先されるのはジェイド様が、記憶を取り戻す事です。そうすれば、手を取り合ってこの王国を守ることが出来ます。彼には私が必要なのです。私のせいで異世界に飛ばされて怖い思いをさせてしまったのだから。私の癒しの力が必要です」
言う事は最もらしいが、なぜ空気が読めないのかが分からない。
聖女の魔力はここに来た時からあまり変わらない。ジェイドを癒すような魔力もなければ、魔法も使えないのだ。
魔法師が教えようとするが、途中で飽きるのか進み具合も遅い。私にはチートがあるから大丈夫だと、笑っているとも聞いている。
チートとは、聖女ならではの奇跡の力らしい。
危機に遭うことで開花するそうだ。
『その時を待てば自分は、歴代最強の聖女になりますから。どうぞ安心して下さい』
神官長は、待ちましょうと言った。
神官長補佐のミカエルは、俺と同じ考えのようだった。
魔法師のカークが前に出て、聖女へ冷たい視線を送った。
「聖女様、今のままの貴方では、ジェイド様に触れることも出来ません。貴方の魔力よりジェイド様の方が、何十倍も多いのですから。この先に遭遇する事態を思えば、危機に陥る前にご自身を守れるようにしていただきたい。弱い貴方を守りながら魔物などを相手にするのでは、我々も命が危なくなります」
厳しいその言葉でも、聖女には届かないようだ。
「エドワード様もカークライト様も私とジェイド様を引き離したいのですか?」
斜め上の言葉にすでに皆疲れてきている。王宮内でも聖女は間違って召喚されたのでは?と噂され始めている。
神官長だけは心優しい聖女様が、ジェイドが心配で魔法訓練に身が入らないだけだと言い張っている。
「──違います。貴方よりも私は、ジェイドと過ごした時間が長いのです。彼の事は申し訳ないですが、貴方より理解が出来ます。これ以上勘違いを続ければ、魔法剣で攻撃されかねないですよ?」
少し睨まれたように思うが、聖女はすぐに涙を浮かべて黙った。
「一度治療室へ行ってください。美味しい紅茶を用意させますので、休まれてくださいね」
引きづられる形で、聖女はここから連れ出される。後は神官長が宥めるだろう。修繕等の指示を出し、ジェイドの側に二人が行くと魔力が安定してきた様に思えた。
「ジェイド……」
「エドワード殿下、申し訳ありません」
ジェイドは記憶を取り戻しつつあるのではなく、俺が王国の第一王子であるという事。魔法騎士として警護についていた事を聞いて、順応しその職務を果たそうとしているだけだ。
「いや、聖女が暴走してるみたいだな。止めれなくて済まない」
「本来護衛の任務を果たす所を、こんな状態で申し訳ありません。調べる時間もいただいているのに、魔力を暴走させてしまい……」
反省ばかり述べる彼を止めた。
「気にするな。何か、わかったか?」
「──いいえ」
「聖女召喚の時に、ジェイドは誰かに呼ばれていたんだ。本当に嬉しそうだったんだ。君が呼ばれた先に本物がいたんじゃないかって……今は思っている」
ジェイドの表情が変わり、頭を押さえ震え膝をついた。呼吸は浅く早くを繰り返した。
「ジェイド!!」
会わせてくれ───と、そう呟いてジェイドは、そのまま倒れたのだ。
音の割に、被害が少ない様に見える。建物の外観は壊れていないようだ。中に入れば、本棚の一部が倒れ本が散乱している。
ジェイドの立っている少し横に、大人が二人程入れそうな穴が空いていた。床が抜け落ちているようだった。見上げれば天井にも穴があり空が見えた。
何らかの魔法が、突き抜けて行った後のようだった。
聖女の護衛についていた魔法騎士と魔法師により、聖女は護られたようだ。魔法攻撃自体は、受けていないようだった。
とにかく無傷の様に見える。周りに被害がない様に魔法の広がりは、ジェイド自身が抑えたのかも知れない。
だが、ジェイドを見れば漏れ出る魔力とその表情に怒りが見える。
呆然としていた聖女が、我に返り走り寄ろうとして見えない壁に跳ね返される。
二、三歩下がった後に尻もちをついた。それでもなお壁の所へ歩み寄り、手で触れて見えない壁を確認した。少しだけ俯いてキュッと唇を噛み締めると、拳を握り壁を叩いた。
ドンドン叩いてみるが透明な壁により、ジェイドの側には近寄れない。
「どうして拒むのですか?」
聖女は気がつかない。ジェイドの魔力に怒りがこもっている事を。俺でも分かる。カークも不味いなという顔をしている。
「そこの護衛騎士、聖女様を治療室へ連れて行ってくれ。万が一怪我をしていたら不味いからね。それからそっちの神官は、ミカエルか神官長に連絡を入れてガ……嫌、聖女様用の貴賓室で対応するように伝えてくれ」
俺の一言に、聖女が振り向いた。
「エドワード様。私の事が気になるのかも知れませんが、今優先されるのはジェイド様が、記憶を取り戻す事です。そうすれば、手を取り合ってこの王国を守ることが出来ます。彼には私が必要なのです。私のせいで異世界に飛ばされて怖い思いをさせてしまったのだから。私の癒しの力が必要です」
言う事は最もらしいが、なぜ空気が読めないのかが分からない。
聖女の魔力はここに来た時からあまり変わらない。ジェイドを癒すような魔力もなければ、魔法も使えないのだ。
魔法師が教えようとするが、途中で飽きるのか進み具合も遅い。私にはチートがあるから大丈夫だと、笑っているとも聞いている。
チートとは、聖女ならではの奇跡の力らしい。
危機に遭うことで開花するそうだ。
『その時を待てば自分は、歴代最強の聖女になりますから。どうぞ安心して下さい』
神官長は、待ちましょうと言った。
神官長補佐のミカエルは、俺と同じ考えのようだった。
魔法師のカークが前に出て、聖女へ冷たい視線を送った。
「聖女様、今のままの貴方では、ジェイド様に触れることも出来ません。貴方の魔力よりジェイド様の方が、何十倍も多いのですから。この先に遭遇する事態を思えば、危機に陥る前にご自身を守れるようにしていただきたい。弱い貴方を守りながら魔物などを相手にするのでは、我々も命が危なくなります」
厳しいその言葉でも、聖女には届かないようだ。
「エドワード様もカークライト様も私とジェイド様を引き離したいのですか?」
斜め上の言葉にすでに皆疲れてきている。王宮内でも聖女は間違って召喚されたのでは?と噂され始めている。
神官長だけは心優しい聖女様が、ジェイドが心配で魔法訓練に身が入らないだけだと言い張っている。
「──違います。貴方よりも私は、ジェイドと過ごした時間が長いのです。彼の事は申し訳ないですが、貴方より理解が出来ます。これ以上勘違いを続ければ、魔法剣で攻撃されかねないですよ?」
少し睨まれたように思うが、聖女はすぐに涙を浮かべて黙った。
「一度治療室へ行ってください。美味しい紅茶を用意させますので、休まれてくださいね」
引きづられる形で、聖女はここから連れ出される。後は神官長が宥めるだろう。修繕等の指示を出し、ジェイドの側に二人が行くと魔力が安定してきた様に思えた。
「ジェイド……」
「エドワード殿下、申し訳ありません」
ジェイドは記憶を取り戻しつつあるのではなく、俺が王国の第一王子であるという事。魔法騎士として警護についていた事を聞いて、順応しその職務を果たそうとしているだけだ。
「いや、聖女が暴走してるみたいだな。止めれなくて済まない」
「本来護衛の任務を果たす所を、こんな状態で申し訳ありません。調べる時間もいただいているのに、魔力を暴走させてしまい……」
反省ばかり述べる彼を止めた。
「気にするな。何か、わかったか?」
「──いいえ」
「聖女召喚の時に、ジェイドは誰かに呼ばれていたんだ。本当に嬉しそうだったんだ。君が呼ばれた先に本物がいたんじゃないかって……今は思っている」
ジェイドの表情が変わり、頭を押さえ震え膝をついた。呼吸は浅く早くを繰り返した。
「ジェイド!!」
会わせてくれ───と、そう呟いてジェイドは、そのまま倒れたのだ。
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