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第5章

11.さよなら

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「どうしてここに?」



魔法陣から現れたその人は、エミリオ・ブルーローズだった。


淡く艶めいている水色の髪と瞳から目が離せない。




「レイリア様。セドリック殿下。
ご無事でしたか?」

雰囲気も全く違う。
少し、神憑りになっているみたい。
どうして、ここに来たんだろう?




「──あの木。」




「待って。
ここに、呼ばれたけど…彼は悪い人じゃないんだ。殿下を巻き込んでしまったのは、私のせいだから。

責められるべきは、すべて私です。

でも、ここをこの場所をずっと1人で護ってくれた大切な人なんです。

最期の、お願いをされただけ。」

このタイミングで現れた主人公エミリオ


殿下の攻略なんだろうか?
それとも、銀色の魔女が…隠しキャラなのかもしれない。

でも。  

何が彼の助けになるのか分からない。

ずっと苦しいままより…願いを叶えてあげる方が良いのかも知れない。


でも…命を奪って、良いの?


そんな事を考えていたら…綺麗に彼が微笑んだ。



「──力を貸す為に来たんです。」


ふわりと微笑む。
淡い淡い水色の光が、花をひとつひとつ輝かせていく。


「え?」

足もとから、波打つ様に広がっていく。


「──」
言葉が出なくて…ただ木を見つめる。


「何の為に、彼を助けるんだ?」
セドリック殿下がエミリオに質問していた。



「幸せになる為に。手を貸したい。」


「必要とは、思えない。彼の願いは…」


「だからです。これ以上、レイリア様を苦しめたくないから。」


──私?

「貴方が、彼の命を奪ったら、ずっと後悔するでしょう?その役目を代わります。」

──待って。


「いいえ!同じ魔女として、私が彼を救いたい。」

同じ一族のケジメかも知れないし、彼の願いを叶えるべきは自分だと思った。


──どうせ、すぐ私も逝くのだから。その時たくさん謝る。力不足でごめんなさいって。


木に近付いて、手を差し出すと剣が現れた。

「──イリア。君は、後悔なんてしちゃ駄目だよ。君に感謝する事はあっても…怨んだりする事は、一つも無いよ。嬉しいよ。ありがとう。」

震える手を後ろから支えてくれる人がいる。

「躊躇うな。痛みを長引かせてしまう。一緒に罪は背負うから。」


心の臓に突き立てる。

どうか、来世では幸せになって下さい。
どうか──



彼が願うのは、最期の時。


霧のように消えていく瞬間に耳元で、彼の声がした。

「────だよ。」


「──さよなら。」


剣も消えて、残されたのは…私と殿下とエミリオだ。




「──本当に、幸せになって下さい。」



私は、後悔したくない。
涙を殿下が拭ってくれる。この人と離れたくないんだ。



「レイリア様…銀色の魔女を助けに来たのですよ?
僕が助けるのは貴方です。」


まだ、花は淡く輝いている。


「僕…チートがあるんですよ。」


「チート?」
この言葉は、セドリック殿下には分からないはずだ。

分からないのが、自分だけだと理解したみたいで苛立って見える。




でもエミリオって、まさかの転生者?


「何の為にこの世界にいるのか?よく分からなかったけど。の役に立つのいいなぁと思って。」


「チート…推しって」

「あ、やっぱりレイリア様もそうなんだ。この花が、過去を色々教えてくれるんだよね。
呪いの解き方も教えるから…宰相閣下に僕は敵じゃ無いって説明して。あの人、怖すぎるから。」
 
 
エミリオが、枯れた木に手を触れた途端に再生が始まる。

「大丈夫。ここには、あの人の気配はありません。」


たたた…と走り寄って来たエミリオが、ギュッと抱きついてきた。



「殿下、怒らないで。僕の袖掴んで一度王国に帰りましょう?閣下が真っ青になっていると思うから。
レイリア様。大丈夫、ここの結界強化もしたよ。誰にも荒らされる事なんてないから、もう…吹っ切りましょうよ。」

こんな子だった?

本当に癒しの力を持っているだな。

視線が合うと、また笑顔を向けてくる。


「それに…綺麗な花に毒があったとしても、それは身を護る為で誰かを傷つける為じゃないから。誰にも手折られる事がなければ…いいと思うんです。」


そうだね。

もう、ここに縋らずに前を向く時なんだね。



転移陣が発動する。


みんな、私は足掻いてみるね。



──さよなら。
















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