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第5章

1.過去視と目覚め。

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頭が痛い。

呼吸が苦しい。




「──レイリア。目が覚めたかい?」

誰?
にい…さま?

金髪?

「──ハリスさま?」



前髪をかきあげられる。
冷たいハンカチがオデコに乗せられた。

冷んやりとして気持ちがいい。

視界はまだ、ぼんやりとしている。



王家の色を纏うこの人と婚約をするんだ。偽りだけれど。

プッと吹き出した。

なんでかな?

「泣き過ぎ。不細工だよ。」


目が開かないのは…泣いてたから?

不細工って。
「ひどいです。」

睨んでみても、多分…変な顔にしかなっていないと思う。


「知っているよ。」

そう言って手が伸びて来て、ハンカチを目元へとずらされた。

魔法?
緩くなったハンカチが、また冷んやりと冷たくなる。

目を覆う布のせいで、視界はゼロになっている。

でも気持ちいい。


「少しでも腫れが引くといいけどね──もう、起きなかったらどうしようかと思ったよ。
皆に連絡してもいいかな?
そんな顔を晒したくないだろうけどね。」


「え?そんなに寝てましたか?」


「うん。三日間ね。水分は…ごめん。立場的に私が飲ませたよ。」


「三日?立場的に?」
そんなに寝ていたんだ。
立場的ってどういう意味?


「婚約者特権で口移し。」


「は?へ?」
口移し?


「熱も出たから、薬も飲ませた。水分もね。そのまま熱が下がらなかったら、危なかったんだよ。」


「そう、ですね。私達は婚約者でしたね。
いくら何でも、兄様や父様に口移しは頼めませんよね。すみませんでした。」


「はは。レオンなら躊躇わず口移しで飲ませるだろうな。こんな可愛い子になら、特権だって。」


明るい口調で言われるとしなくていいのかな?と思ってしまう。

歳上の余裕なのかな?
まぁ、子供の世話をした感じかも知れないなぁ。

それでも心配させてしまった。
「本当にごめんなさい。」


「それは、さ。私が謝るとこなんだよ?君の気持ちの在処を知っているのに。治療として婚約者の立場を利用したんだから。」

ふるふると首を振る。
ハリス様は、治療をしてくれただけだ。

あの貴族達とは、違う。
舐めまわすような視線とか、ないし。

「でもどうしょうか?その瞼は、魔法を使って治癒した方がいいかな?この顔を見たら、君の家族にもセドリックにも…殺されそうだよ。」


「そんなこと。」
兄様は、心配して連れて帰るって言いそうだけど。
殺される事はない。
セドリック殿下は、まだ会わない方がいい気もする。


「自覚がなさ過ぎる。」

自覚って、なんのかな?
侯爵の息子って事?
母様が早くに亡くなった事を思えば、父様達を不安にさせたのかも知れない。



「とりあえず、皆に目を覚ましたことを連絡するよ。体調を整えてから何を知ったか教えてもらえるかな?
今すぐじゃなくていいからね。」



「──はい。」


相変わらず優しい人。

自分で作った薬は、呪術付きの毒。

覚えている前世の一つは、日本人で病気で死んだ記憶。

その時に少し見せてもらったゲームの世界が、ここだ。

他にも覚えてないだけで、別世界を体験したのかな?

攻略対象者は、アルバート殿下やエース様、レオン兄様たぶんセドリック殿下もだよね?

ハリス様も隠れキャラとかじゃないのかな?

ゲームなら、エミリオが皆を癒す役割のはず。

「──エミリオが、セドリック殿下を癒してくれないかな…」


青い瞳。
大好きだった…セディの瞳の色。
自分は邪魔だと思っていたし、あんな気持ち悪い奴らに触られたく無かった。

消えてしまいたかった。

「毒を飲んだ事…後悔してないんだ。君以外に触られたくなかったから。」




ハリス様は、皆を呼びに行ってる。

過去視したものに、蝕まれていくみたいだ。


「なにやってんだろう。生まれ変わっても…不幸にする気しかしない。」


カーテンが風で揺れている。

「隠れて生きる必要がないだけマシには、なったのかな…」

あの毒の解毒剤…呪いの解き方なんて、知らない。

死ぬための毒を飲むのに、解毒剤なんて作らないよね。

「でも、あの花…この世界にあるかな?」


バタバタ騒がしい。

「レイリア!!」
名前を呼ぶ声と大きな足音が近づいてくる。
勢いよく扉が開き、部屋に誰かが入って来た。







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