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第4章☆前世の2人編
9.崩壊の足音①
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2人で初めてを過ごした夜から、何度となく想いを口にされる。
不意打ちで、キスされたり。耳を甘噛みされたり。
流されてはいけない──そう思う。
だから、こんな風にしか言えない。
「他に相応しい子が…出来るよ。セディには、きっと若くて可愛い子が似合うから。」
それしか言えなくて、そんな言葉の後は口を塞がれて息ができないくらいのキスが降ってくる。
トロトロに溶かされていく。このまま、その手を取ってもいいの?
若い弟子の、パートナーになっても良いの?
「セディ…ちょっと、1人になって来てもいい?」
苦しくて、誰かに聞いて欲しくて。
あの場所しか、自分にはないけれど。
届くか分からない。皆は、どう思うのだろう?
「一緒に行っては駄目ですか?」
首を軽く横に振る。
そんな、顔をしないで。
「次、一緒に行ってくれる?」
セディが少し驚いて、目の前に来た。
両肩に手を置かれて…この青い瞳に嘘がつけなくなっている。
「次は連れて行ってくれるんですね?本当に帰って来ますよね?このまま消えたりしませんよね?」
「当たり前でしょう?
ここは、私の家なんだから。」
ホッとしたのか、そのまま抱き寄せられた。
「約束ですよ。待ってますからね。」
背中に手を回そうとして、止める。まだ、ダメだ。拳を軽く握ったまま背中に触れる前にその手を戻す。
「セディ、薬を町まで納品して来てくれる?後…スィーツとか買ってきてくれたら良いのだけれど。」
「スィーツ?」
にこって、笑ったら。
少し目を細めて見つめ返してきた。
「ちょっと、お祝いっぽいことしたいし。」
「え?」
「お願いね。」
そんな、嬉しそうにするから…子供っぽいんだよ?
「──分かりました。美味しいって言う果汁酒も買ってきますね。」
「うん。私も、ちゃんと済ませてくるね。」
皆に報告に…赦しをもらいに行ってくるね。
ローブをお互いに羽織る。午後のティータイムまでに帰る約束をして、私は森へ。
セディは、町へ。
この小さな青い花は、懺悔を請う花だった。
可愛らしい小さな星形の花が、埋め尽くしいる。見た目は可愛いらしいのだけど、毒にも、薬にもなる花。使い方次第だけれど、特に一際効果の高いものが紛れるのだ。秘匿するには、同じように見えるものの中が1番いいのだから。
これは、魔女に伝えられている特別な花。
種から、育てたもの。
「この中に、多分…あるはず。」
一際美しい青い花。
「ああ。これだね。色も他より深い青い色。花びらの数も一つ多い。」
手を差し伸べては、止まる。
「いつか、必要になるかも知れないもの。」
言い訳しながら、プチっと花を根元から握る。
皆の墓標の前に膝まづいた。
この下に眠る人は誰もいない。
肉体は、持って来れなかったから。
「あの時──逃げてごめんなさい。」
ライムエード王国内に、森の民と言われる魔女の一族がいた。
人知れず隠れ住む森があった。
彼らが作る薬は、万能とまで言われ欲しがる者が森を彷徨う。
魔女の作る薬に無味無臭の毒があると言う。効果は遅効性…いつ効果が現れるか分からない。
病死──として、暗殺に使用するのにちょうど良い毒。
薬を作れるのはその中でも銀色の魔女だけ。
そんな伝承を聞きつけた、貴族の魔法使いに森の魔女達は、惨殺される。魔法の力が強い者はごく僅かしかいなかった。
人質を取られ、魔法を封じられ殺されたんだ。
銀色の魔女を捕まえる為に。
1人薬草をとりに行っていた、私は血の匂いに気がついた。
妹が、母が、叔母さんも…地面に転がっていた。
森にいる銀色の魔女は、1人だけ。
誰かの声がした。
「あの子だけよ!だから私を助けて!!」
友達だった。
剣がその子の首を切り裂いた。
「あんたの、せい…よ。」
怖い───
逃げた。みんなを置いて、逃げたんだ。
どこに行けばいいのか分からない。
こことは、違う場所に…銀色の魔女がいたはず。
助けて…
枝が引っかかる。木の根につまづく。
もう、歩けない。
皆と一緒に死ねば良かったのかな?
「もう、いいや。」
歩けない。大きな木の根元に腰をおろした。
口を塞がれて、意識を失った。
薄暗い部屋の中で目が覚めた。
そこからは、「薬を作れ」と殴られた。髪を引っ張られ、蹴られる。
「知らない。毒なんて作れない。教わってない!」
なんど叫んでも…だめだったんだ。
そのうち、気持ちの悪い男が私を触るようになった。
一つの賭けだったんだ。
仮死の薬。
イリアは、銀色の魔女だから。
何かあった時はこれを飲みなさい。一時的に心臓が止まる。その後本当に刺されたら、死ぬわ。焼かれても。
それでも万に一つ何処かに捨ててくれたら、助かる。
仮死の状態だったらさ…痛くも怖くもないからね。もしも、死んでも平気だろう?
自分より強いものに会った時に、利用される前に飲みなさいね。
「お母さん…仮死の薬飲んだの?戻ってたら、生きてたかも知れないの?助けられたかも知れないの?」
それなら、飲むよ。死にたい。みんなの所に行きたい。
もう、怖くない。待ってて。
それなのに。
捨てられて、生き残ってしまったんだ。
森は、すでに焼かれてた。
1人、森から抜けて隣国に逃れた。
「助けられなくて、逃げてごめんなさい。もう、1人は嫌なんだ。赦して、お願い。」
何度も何度も謝る。
「好きなんだ。セディが。もしまた誰かを不幸にしそうになったら。みんなの所に行くから。その時は待ってて。」
唯一の花を手に、家に戻り、誓いのための薬を作った。小さな小さな爪の大きさ程の瓶に入れて首から下げる。
ティータイムになったのに。
セディが帰って来ない。
夜になっても。セディは、帰って来なかった。
不意打ちで、キスされたり。耳を甘噛みされたり。
流されてはいけない──そう思う。
だから、こんな風にしか言えない。
「他に相応しい子が…出来るよ。セディには、きっと若くて可愛い子が似合うから。」
それしか言えなくて、そんな言葉の後は口を塞がれて息ができないくらいのキスが降ってくる。
トロトロに溶かされていく。このまま、その手を取ってもいいの?
若い弟子の、パートナーになっても良いの?
「セディ…ちょっと、1人になって来てもいい?」
苦しくて、誰かに聞いて欲しくて。
あの場所しか、自分にはないけれど。
届くか分からない。皆は、どう思うのだろう?
「一緒に行っては駄目ですか?」
首を軽く横に振る。
そんな、顔をしないで。
「次、一緒に行ってくれる?」
セディが少し驚いて、目の前に来た。
両肩に手を置かれて…この青い瞳に嘘がつけなくなっている。
「次は連れて行ってくれるんですね?本当に帰って来ますよね?このまま消えたりしませんよね?」
「当たり前でしょう?
ここは、私の家なんだから。」
ホッとしたのか、そのまま抱き寄せられた。
「約束ですよ。待ってますからね。」
背中に手を回そうとして、止める。まだ、ダメだ。拳を軽く握ったまま背中に触れる前にその手を戻す。
「セディ、薬を町まで納品して来てくれる?後…スィーツとか買ってきてくれたら良いのだけれど。」
「スィーツ?」
にこって、笑ったら。
少し目を細めて見つめ返してきた。
「ちょっと、お祝いっぽいことしたいし。」
「え?」
「お願いね。」
そんな、嬉しそうにするから…子供っぽいんだよ?
「──分かりました。美味しいって言う果汁酒も買ってきますね。」
「うん。私も、ちゃんと済ませてくるね。」
皆に報告に…赦しをもらいに行ってくるね。
ローブをお互いに羽織る。午後のティータイムまでに帰る約束をして、私は森へ。
セディは、町へ。
この小さな青い花は、懺悔を請う花だった。
可愛らしい小さな星形の花が、埋め尽くしいる。見た目は可愛いらしいのだけど、毒にも、薬にもなる花。使い方次第だけれど、特に一際効果の高いものが紛れるのだ。秘匿するには、同じように見えるものの中が1番いいのだから。
これは、魔女に伝えられている特別な花。
種から、育てたもの。
「この中に、多分…あるはず。」
一際美しい青い花。
「ああ。これだね。色も他より深い青い色。花びらの数も一つ多い。」
手を差し伸べては、止まる。
「いつか、必要になるかも知れないもの。」
言い訳しながら、プチっと花を根元から握る。
皆の墓標の前に膝まづいた。
この下に眠る人は誰もいない。
肉体は、持って来れなかったから。
「あの時──逃げてごめんなさい。」
ライムエード王国内に、森の民と言われる魔女の一族がいた。
人知れず隠れ住む森があった。
彼らが作る薬は、万能とまで言われ欲しがる者が森を彷徨う。
魔女の作る薬に無味無臭の毒があると言う。効果は遅効性…いつ効果が現れるか分からない。
病死──として、暗殺に使用するのにちょうど良い毒。
薬を作れるのはその中でも銀色の魔女だけ。
そんな伝承を聞きつけた、貴族の魔法使いに森の魔女達は、惨殺される。魔法の力が強い者はごく僅かしかいなかった。
人質を取られ、魔法を封じられ殺されたんだ。
銀色の魔女を捕まえる為に。
1人薬草をとりに行っていた、私は血の匂いに気がついた。
妹が、母が、叔母さんも…地面に転がっていた。
森にいる銀色の魔女は、1人だけ。
誰かの声がした。
「あの子だけよ!だから私を助けて!!」
友達だった。
剣がその子の首を切り裂いた。
「あんたの、せい…よ。」
怖い───
逃げた。みんなを置いて、逃げたんだ。
どこに行けばいいのか分からない。
こことは、違う場所に…銀色の魔女がいたはず。
助けて…
枝が引っかかる。木の根につまづく。
もう、歩けない。
皆と一緒に死ねば良かったのかな?
「もう、いいや。」
歩けない。大きな木の根元に腰をおろした。
口を塞がれて、意識を失った。
薄暗い部屋の中で目が覚めた。
そこからは、「薬を作れ」と殴られた。髪を引っ張られ、蹴られる。
「知らない。毒なんて作れない。教わってない!」
なんど叫んでも…だめだったんだ。
そのうち、気持ちの悪い男が私を触るようになった。
一つの賭けだったんだ。
仮死の薬。
イリアは、銀色の魔女だから。
何かあった時はこれを飲みなさい。一時的に心臓が止まる。その後本当に刺されたら、死ぬわ。焼かれても。
それでも万に一つ何処かに捨ててくれたら、助かる。
仮死の状態だったらさ…痛くも怖くもないからね。もしも、死んでも平気だろう?
自分より強いものに会った時に、利用される前に飲みなさいね。
「お母さん…仮死の薬飲んだの?戻ってたら、生きてたかも知れないの?助けられたかも知れないの?」
それなら、飲むよ。死にたい。みんなの所に行きたい。
もう、怖くない。待ってて。
それなのに。
捨てられて、生き残ってしまったんだ。
森は、すでに焼かれてた。
1人、森から抜けて隣国に逃れた。
「助けられなくて、逃げてごめんなさい。もう、1人は嫌なんだ。赦して、お願い。」
何度も何度も謝る。
「好きなんだ。セディが。もしまた誰かを不幸にしそうになったら。みんなの所に行くから。その時は待ってて。」
唯一の花を手に、家に戻り、誓いのための薬を作った。小さな小さな爪の大きさ程の瓶に入れて首から下げる。
ティータイムになったのに。
セディが帰って来ない。
夜になっても。セディは、帰って来なかった。
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