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第3章

5.羨望嫉妬

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学園に向かう馬車の中、普段から無口な殿下がさらに大人しくて何か考えているように思う…何か話すべきかこのまま黙っているべきか?
 
口を開きかけて、距離を置くと決めた自分が距離を縮める行動をしてどうするのだと、口を閉じる。

馬鹿だな。

婚約者候補になり得る子息を紹介するのは、まだハードルが高い。
この件は王家が動く事だ。
誰か気に入れば、手を貸せるかもしれないけれど。

なら自分の代わりの側近候補を薦めるならば、派閥を意識した方が良いのだろうか?
陛下の派閥は両翼のブラウン侯爵家とヴァーミリオン侯爵家が筆頭になっている。多分そのまま、アルバート殿下に付くだろう。
ブラウン侯爵家は、キースの実家でもあるし。

とくに敵対派閥は無いけど、力が偏り過ぎるのを好まない侯爵家と伯爵家がいたはず。王家とは中立的な位置にいる…有名なのは、スカーレット侯爵家とセルリアン伯爵家。

スカーレット侯爵家には、同い年の子息がいるけど、今は隣国に留学しいるはずだから、紹介は難しい。
性格も温厚だし、頭も良いと聞いた事があるから戻ってくる予定を聞いておくべきかな?あまり僕自身とは交流はなかったから、兄様に聞いたら分かると思う。

セルリアン伯爵家…となりのクラスだったな。
直接の面識はないけれど、伯爵は、博識で外交に強い方だった一度話しかけられたんだ。彼に会ってみようか?


後は、エミリオ・ブルーローズ男爵令息かな。
身分的問題があるなら、今後どこか上位貴族の所へ養子として受け入れてもらえばいいのかも知れない。

ヴァーミリオン家わが家は、不味いか、──キースとの事もあるし。

「難しいなぁ。」思わず漏れる言葉。

ふいに感じる視線。

「どうかしたか?何か問題があるのか?」

首を、軽く横に振り「すみません。独り言がもれただけなんです。」

会話がますます続かない。
ようやく学園に着いた。
2人切りでは無い事にホッとしてしまう。

クラスに入ると、皆の視線が痛い。

あー。昨日の、転移だよね。
しかも、宰相閣下に連れて行かれたのだから。

近づいてきたのは、キースだった。

「レイリア!」

「おはよう。キース。」
慌てて、僕の所に来たは良いけど、挨拶は王子からだよ?
その意が伝わって、慌てている。

「あ、すみません。セドリック殿下…おはようございます。」
慌ててセドリック殿下に挨拶をする。
珍しい、礼儀作法については完璧ないキースなのにね。

「ああ、おはようキース」

良かった。名前まで呼んでいる。いつもは、おはようしか言わない。
こう言うのの積み重ねだ。

「──レイリア?」

「ごめんキース。ちょっと考え事。それより慌ててどうしたの?」

「昨日、宰相閣下に魔法ならったの?どんな感じだった?あの、アルバート様は絶対無理って言うんだ。それでもレイリアから頼んで欲しいの。弟子にして欲しいって。今一緒に教えてもらえば、そんなに迷惑にならないと思うんだよ。」

ハリス師匠の言う通りだ。
あわよくば、弟子に…って。
キースは友達だけど、僕には時間が無い。

「ごめん。出来ないよ。」


「──レイリアは。狡い。」

キース?どうしたの?顔付きが違って見える。怒ってるの?

「レイリアには、魔法師の才能あるでしょう。今でも、私よりレベルが高いし。
両親ともに上級魔法師で、レオン様だっている。
侯爵様にだって指導してもらえる。なんで、カーマイン公爵様まで。宰相の仕事が忙しくて弟子を取らないって思ってたのに。」

「キース…」
珍しく、温厚なキースが怒りを含んでいる。嫉妬みたいな。


「いつも、レイリアに比べられられてた。アルバート殿下に相応しいのは、レイリアだって。」

「キース、そんなこと…」


「紹介くらいしてくれても良くない?聞く前から、断るの?
なんでも持っているくせに狡いよ。」

隣から、圧がかかる。
セドリック殿下?

「叔父上は、レイリアに教える条件付きでサフィア様の弟子になったんだ。その約束を果たしているだけだ。文句があるなら、叔父上かサフィア様…ヴァーミリオン侯爵家に言え。
レイリアは狡なんてしていない。」

キースが真っ青になった。
「ごめん。アルバート様に相応しくなりたいんだ。
八つ当たりして、ごめん。」

そう言って、そそくさと席に戻ってしまった。

「セドリック殿下。ありがとうございました。
ハリス師匠に習うって、すごい事なのですね。狡って言われないように、学びます。
殿下、父様も厳しいと思います。頑張りましょうね。」

必死に笑顔を作る。
ちゃんと、笑えているだろうか?


これで、ハリス様との婚約の話が進んだら…キースに嫌われるだろうか?
それとも、婚約者だから特別扱いを納得してくれるかな。


まだ、過去視だけだ。
未来視は、どうせなら覚醒しないで欲しい。そんなもの、要らない。










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