上 下
18 / 71
第1章

17.ただいま戻りました。

しおりを挟む
兄様と別れて、久々に自分に与えられた個室に戻る。

思っていたより、ずっと綺麗に保たれていて…側近の部屋なのに?
埃の一つも落ちていない。

クローゼットの中に制服も、きちんとかけられていた。

「熱出して、そのまんまかと思ってたけど…ありがたいなぁ。」

カーテンも開かれていて、窓も換気のためか少しだけ空いている。

机の上にはノートが置いてあるし、教科書には付箋も挟んである。
休んだ分をまとめてくれている。

パラパラと教科書を捲ると、付箋には几帳面な文字でコメントされている。

この文字は、セドリック殿下だ。

ノートは、キースみたい。綺麗なお手本のような文字だ。

「心配かけちゃったな。」
教科書とノートを確認しながら、休んでいた分の勉強をし、自分のノートに書き写す。
課題も置いてあったが、おかげですんなり解けた。

何やら、外が騒がしくなりノックの音が聞こえる。

どうぞと声をかけると、金髪の王子が勢いよく部屋に入って来てなにやら、ドアに魔法をかけたように見えた。

「殿下?何の魔法ですか?」
椅子から立ち上がり、ドアの方に向かうつもりだったのに。


その問いに答えず、早歩きで俺の前に来た殿下に抱きしめれた。

無言のまま。抱きすくめられて、え?どうしたらいいの?寝ぼけてる訳じゃないよね?

「──帰ってこないかもと心配したんだ。」

あー。
あの、兄様の勢いじゃ、そうかも。

「──学園の間は、側近ですから。3年は一緒ですよ?まぁ、他の側近に交代とかあるかもですが…俺の居ない間、学園に通われましたよね?その時の側近と相性がよければ、交代しても構いませんよ?」

抱きかかえられて、ソファに座る。
なんで、膝の上なんだ?
安定する為に首にしがみ付いてしまったけど…ホールド感すごい。

俺の部屋だし、別の従者はドアの外だから、他には見られてないから恥ずかしさはない。

ないけど…思わず殿下の顔を見ると、近い。イケメンのドアップ、破壊力が半端ない。

兄様も格好良い。ハリス宰相閣下も大人で色気たっぷり。

殿下は王子感がすごいから、異世界はイケメンばっかりだななんて、じーっと見つめてしまった。

「俺の側近は、レイリアだけだ。」

頬同士か触れ合うように抱きつかれて、その体温に感触に驚く。

すべすべ。

人肌ってちょっと気持ちいい。
いや、待て。これでいいのか?

えー、どうしよう?

「──もう、身体も問題なくて、来週には学園に行けます。心配してくださってありがとうございました。
あ、ただいま。セドリック殿下。」

頬擦りの後、少し顔の角度がズレてシャツが引っ張られる。鎖骨の辺りで温かく湿った感触がした。

「──っ。い、った。」
思わず、ビクリと身じろぐ。
強く吸いつかれる。


何?

「──お仕置き。遅い。
──会いたかった。おかえり、レイリア。」

意地悪されたのか?ちょっと痛い。跡に残りそうだな。
寂しかったんだね。全く、いち側近の心配なんて必要ないのにな。

「重いでしょう?降ろして下さい。向かい合う席、せめて隣に座らせて下さい。逃げませんから。」


「今日は、このままにさせて欲しい。安心するから。レイリアの匂いが落ち着くんだ。」

本当に猫扱いっぽい。ふふ。それで安心してくれるのなら、いいのかな?

「じゃあ、ちょっとだけですよ?それから痛いのは、止めてください。」

「分かった。痛くしない。」

止める?じゃ無いの?

そう言って、撫でられたりするうちに、ハリス宰相閣下に会って緊張したり、勉強した分の疲れた身体から力が抜けて、うっかりウトウトしてしまう。
体温と、心臓の音と、匂い?寝込んでいた時の多分殿下の匂いのような気がする。そして春の穏やかな気候に、抵抗出来なくなって瞼が閉じてしまう。

「──セドリック、殿下…も、離して…寝て、し、まう」

気合い入れて、起きていないと思うのに…眠ってしまうなんて、側近失格だよね。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

愛して、許して、一緒に堕ちて・オメガバース【完結】

華周夏
BL
Ωの身体を持ち、αの力も持っている『奏』生まれた時から研究所が彼の世界。ある『特殊な』能力を持つ。 そんな彼は何より賢く、美しかった。 財閥の御曹司とは名ばかりで、その特異な身体のため『ドクター』の庇護のもと、実験体のように扱われていた。 ある『仕事』のために寮つきの高校に編入する奏を待ち受けるものは?

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...