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第1章

17.ただいま戻りました。

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兄様と別れて、久々に自分に与えられた個室に戻る。

思っていたより、ずっと綺麗に保たれていて…側近の部屋なのに?
埃の一つも落ちていない。

クローゼットの中に制服も、きちんとかけられていた。

「熱出して、そのまんまかと思ってたけど…ありがたいなぁ。」

カーテンも開かれていて、窓も換気のためか少しだけ空いている。

机の上にはノートが置いてあるし、教科書には付箋も挟んである。
休んだ分をまとめてくれている。

パラパラと教科書を捲ると、付箋には几帳面な文字でコメントされている。

この文字は、セドリック殿下だ。

ノートは、キースみたい。綺麗なお手本のような文字だ。

「心配かけちゃったな。」
教科書とノートを確認しながら、休んでいた分の勉強をし、自分のノートに書き写す。
課題も置いてあったが、おかげですんなり解けた。

何やら、外が騒がしくなりノックの音が聞こえる。

どうぞと声をかけると、金髪の王子が勢いよく部屋に入って来てなにやら、ドアに魔法をかけたように見えた。

「殿下?何の魔法ですか?」
椅子から立ち上がり、ドアの方に向かうつもりだったのに。


その問いに答えず、早歩きで俺の前に来た殿下に抱きしめれた。

無言のまま。抱きすくめられて、え?どうしたらいいの?寝ぼけてる訳じゃないよね?

「──帰ってこないかもと心配したんだ。」

あー。
あの、兄様の勢いじゃ、そうかも。

「──学園の間は、側近ですから。3年は一緒ですよ?まぁ、他の側近に交代とかあるかもですが…俺の居ない間、学園に通われましたよね?その時の側近と相性がよければ、交代しても構いませんよ?」

抱きかかえられて、ソファに座る。
なんで、膝の上なんだ?
安定する為に首にしがみ付いてしまったけど…ホールド感すごい。

俺の部屋だし、別の従者はドアの外だから、他には見られてないから恥ずかしさはない。

ないけど…思わず殿下の顔を見ると、近い。イケメンのドアップ、破壊力が半端ない。

兄様も格好良い。ハリス宰相閣下も大人で色気たっぷり。

殿下は王子感がすごいから、異世界はイケメンばっかりだななんて、じーっと見つめてしまった。

「俺の側近は、レイリアだけだ。」

頬同士か触れ合うように抱きつかれて、その体温に感触に驚く。

すべすべ。

人肌ってちょっと気持ちいい。
いや、待て。これでいいのか?

えー、どうしよう?

「──もう、身体も問題なくて、来週には学園に行けます。心配してくださってありがとうございました。
あ、ただいま。セドリック殿下。」

頬擦りの後、少し顔の角度がズレてシャツが引っ張られる。鎖骨の辺りで温かく湿った感触がした。

「──っ。い、った。」
思わず、ビクリと身じろぐ。
強く吸いつかれる。


何?

「──お仕置き。遅い。
──会いたかった。おかえり、レイリア。」

意地悪されたのか?ちょっと痛い。跡に残りそうだな。
寂しかったんだね。全く、いち側近の心配なんて必要ないのにな。

「重いでしょう?降ろして下さい。向かい合う席、せめて隣に座らせて下さい。逃げませんから。」


「今日は、このままにさせて欲しい。安心するから。レイリアの匂いが落ち着くんだ。」

本当に猫扱いっぽい。ふふ。それで安心してくれるのなら、いいのかな?

「じゃあ、ちょっとだけですよ?それから痛いのは、止めてください。」

「分かった。痛くしない。」

止める?じゃ無いの?

そう言って、撫でられたりするうちに、ハリス宰相閣下に会って緊張したり、勉強した分の疲れた身体から力が抜けて、うっかりウトウトしてしまう。
体温と、心臓の音と、匂い?寝込んでいた時の多分殿下の匂いのような気がする。そして春の穏やかな気候に、抵抗出来なくなって瞼が閉じてしまう。

「──セドリック、殿下…も、離して…寝て、し、まう」

気合い入れて、起きていないと思うのに…眠ってしまうなんて、側近失格だよね。





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