【本編完結】絶対零度の王子様をうっかり溶かしちゃってた件。

第１章

5.主人公は転生者

男爵令息エミリオ・ブルーローズと気づいたのはガルシア王立学園に入学が決まった後。
この世界で珍しい水色の髪・瞳で小柄な少年。

このゲームは、ピンク色の乙女ゲームバージョンと水色のBLゲームバージョンがある。

どちらも、攻略対象は同じなんだけど、BLバージョンの世界だと女性が少ない。女神の恩恵で男の人も妊娠出来るとか流石ゲームの世界だなって思った。

この世界に生まれて来て何の疑問も無かったけど、実際自分の両親は夫夫だったしね。
それが神殿で女神の恩恵によるものなんて、神様が存在しているんだと改めて驚いてしまう。

この世界ではそれが当たり前なんだよね。

魔法が使えるのは楽しい。
生まれ変わってやり直しの人生が主人公になるとは思わなかった。

主人公で、嫌なのは身分が低い事だけだな。
相手は身分の高い人達ばかりだから、玉の輿って事なんだけど、どうしても下に見られる。
設定上仕方ない。
出来れば、対等な立場がいいんだけどなぁ。

あーあ。

それにしても…どのルートが良いのか迷う。
全員を攻略したら、隠しキャラが出るなんて噂があったけど、嘘っぽい。ゲーム第2期の為の布石だったんじゃないかな。
なんせ、第2王子ルートが激ムズなんだよ。

絶対零度とか言われるくらいの人嫌いで、陛下達も扱いに困っている。

第１王子アルバート殿下は、だからと言って弟を嫌っている訳でもなく、心配はしているがその距離を縮める事が出来ずに見守っている。

その上婚約者が優秀過ぎて、息が詰まっている所を癒すのがエミリオの役目で、もっと深く寄り添えば第2王子セドリック殿下の過去について情報をくれるのだ。

過去に何かがあって心を閉ざしたセドリック殿下を主人公のエミリオが冷たくされても、根気強く癒やし尽くして、その心を溶かさないとダメなんだ。
だから、セドリック殿下のルートはとにかく時間を費やす必要があるらしい。

僕が生きている間には、攻略出来なかったんだ。ネット上の噂で、攻略出来ないんじゃないか？とか重課金しても無理ゲーとか…それで運営側がアルバート殿下からの情報以外の攻略のヒントを配信するって所までで終わった。

結局、僕はセドリック殿下の過去を知らない。
唯一攻略出来なかったんだ。

でも、それだけ格好良くて魅力的な王子様なんだよね。


だからアルバート殿下に近付いて…と思ったら、キースと婚約破棄しそうな勢いになったから参った。
まだ早過ぎる。


新入生歓迎パーティーだよ？
婚約破棄なら、卒業パーティーだよね？

セドリック殿下を攻略する為にこの１年かけて迫らないと。
逆にキースと仲良くなった方が近づきやすかったのかも。
セドリック殿下の側近レイリアはキースと友人らしいし。

レイリア・ヴァーミリオン
青銀髪で紫眼。　
侯爵令息の次男かぁ。　

──綺麗だったな。

小柄で華奢だけど、僕よりは少し背が高い。
サブキャラなのにゲーム内で女神か！って言われてて、人気もあった。
セドリック殿下の側近だけど、冷遇される人だ。
殿下のせいで色々矢面に立たされる健気美人。
殿下が傲慢な態度をとり過ぎて唯一の側近に嫌われるのだ。

でも、さっき抱きかかえて出て行ったんだよね。まだ、そこまでの亀裂は入ってないのかな？
今後、何かレイリアが地雷を踏むのかも知れないな。


僕としては、攻略対象の1人でも良いくらいの美人系なんだよね。

レイリアの兄レオンは色味は似ているけれど、細マッチョの美丈夫魔法師。
キースの兄エースは騎士。
主人公は小柄だから、まぁ体格の良い人達が攻略対象者だよねぇ。

レイリアは攻略対象から外されたんだろうけど…結構好みなんだよね。


セドリック殿下にレイリア。

2人にもっと近づけないかな。

『魔法禁止区域って知らなくて、コントロールが上手く出来なかったんです。学園をやめさせられたくなくて、嘘を…こんなに大事になるとは思ってもいなくて…』

泣きに泣き。
謹慎と反省文やら課題やらでなんとかなって良かった。


もっと慎重にしないと駄目だな。
主人公チート無さそうだなぁ。

まさかの、クラスが違うとか。
勉強しなくても、そこそこいける？とか思ったんだけど。


まずは、キースに頭を下げて…敵意が無いようにしておこう。アルバート殿下は、もういいかな。

唯一攻略出来なかった、セドリック殿下を攻略してみたい。



勉強とかマナーとか、教えてもらおうかな？



───レイリア様に。