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【五ノ章】納涼祭
短編 夜鳴き鳥の憂鬱《エピローグ》
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「──表沙汰になってない部分もあるけどそういう事件があり、シュメルさんと出会って、そこからズルズルと取り引き続けた結果……今に至るって感じかな」
『へー』
「そっちから聞いておいて反応軽くない?」
料理で頬を膨らませながら、アカツキ荘の面々とノエルは受け流すように返事をする。
長々と語っても熱心に聞いてくれてると思ったらコレだよ。
「いやいや、驚いてはいるぞ? 一時期、自警団の士気がめちゃくちゃ盛り上がってた理由が分かって納得したぜ」
「ですが実際はクロトさんの功績だった、ということですね。偶然の賜物というか、なんというか……」
「いつだったかの新聞でドラミル家がどうのこうのって見出しが載ってた気がするねぇ。ド派手だったけど興味無いから流し見してたが」
「めっちゃ気合い入ってたから、ボク思わず読んじゃったんだよね。確かドラミル家の息子が違法薬物を所持、及び強盗団との犯罪を企てたとかで逮捕。被害にあった歓楽街から多額の損害賠償が提示されたって話だよ」
とにかく俺とシュメルさんの馴れ初めはこんなもので、やましい部分は何も無い。知りたい情報は得られたのだろう。
公になっている情報と示し合わせて話し出す皆に溜め息を吐き、果実水を呷る。
でも、あんまり大きな声で話さないでほしい。エルノールさんは大人組と歓談中でこちらの会話は耳に入っていないと思うが、俺がドラミル家に関連していることを知られたら面倒だ。
……シュメルさんがバラしてたら意味が無い? それはまあ、うん。
「どうしたの坊や? そんなに暗い顔して」
「おわぁ!」
未だ綱渡り状態な自分の立場に息を潜めていると、背後から柔らかい感触がッ。
「なんですかシュメルさん、いきなり抱き着いてきて!」
「せっかくお祝い事の席で、それも功労者である坊やが落ち込んでるように見えたから。少しでも元気づけてあげようかと思ったの」
「そりゃあどうも……ってか、前から思ってたんですけど会う度にどんどんスキンシップ激しくなってませんか!? もうちょっと落ち着きましょうよ!」
「あら、坊やが私の火照りを鎮めてくれるの? 嬉しいわ」
「ちくしょう、何を言ってもエロ方面に持っていきやがる……!」
空いた手で胴に腕を回すシュメルさんを引き剥がそうとするが、ビクともしない。おかしいなぁ、そんな腕力があるようには見えないんだけどなぁ!
そんな攻防を繰り広げていたら、何やら皆が疑わしい目で俺を見ていた。ち、違うんだ。この人はコレが平常運転だから仕方ないんだ!
「ふふっ、ごめんなさいね。なんだか楽しそうな話をしていたみたいだし、良ければ私も混ぜてくれないかしら。……私の方からも坊やとの思い出をもっと語れるけど、どう?」
「へ?」
「確かに。クロトの主観からしか語られてないし、ここらで第三者目線の声を聞くのは大事かもしれねぇ」
「未だに不明瞭な部分はありますからね。万能石鹸の事に、直近で言えばメイド喫茶で用いたメイド服の作成秘話など」
「ちょっと!?」
「さっきの話も結構スカッとして気分が良いし面白かったが、まだ引き出しがあるなら聞いておきたいねぇ」
「正直、クロト君の弱みを握れそうでワクワクしてる。ここで聞いた話をダシにして生徒会の雑用を押し付けられるかも」
「ロクでもないこと考えてんじゃあないよノエル!?」
面白がったり、興味津々だったり、あくどいことを考えていたり。
様々な考えが集う中、シュメルさんは耳元で鈴を転がすような笑みをこぼし、容赦なく事件後の話を語り出す。
イタズラ好きの彼女のことだ、誇張した表現を用いて勘違いさせる可能性が大いにあり得る。なんとか手を打たなくてはならない。
結局シュメルさんは離れようとしないし……仕方ないからこのままで、話す内容にいつでも修正ができるように気を張って挑むぞ!
「──やはりあれぐらい押していかないと気づいてもらえませんよね」
「ん? どうしたのシルフィ? 手が止まってるけど。その料理、食べないなら私が貰っちゃうわよ」
「いえ、少し彼女を見習う必要があるな、と思っただけです。……狙うべきチャンスはこの後、か……ちなみに、その料理は香辛料をかけているのでかなり辛いですよ」
「かッッッ。先に、言いなさいよ……っ!」
『へー』
「そっちから聞いておいて反応軽くない?」
料理で頬を膨らませながら、アカツキ荘の面々とノエルは受け流すように返事をする。
長々と語っても熱心に聞いてくれてると思ったらコレだよ。
「いやいや、驚いてはいるぞ? 一時期、自警団の士気がめちゃくちゃ盛り上がってた理由が分かって納得したぜ」
「ですが実際はクロトさんの功績だった、ということですね。偶然の賜物というか、なんというか……」
「いつだったかの新聞でドラミル家がどうのこうのって見出しが載ってた気がするねぇ。ド派手だったけど興味無いから流し見してたが」
「めっちゃ気合い入ってたから、ボク思わず読んじゃったんだよね。確かドラミル家の息子が違法薬物を所持、及び強盗団との犯罪を企てたとかで逮捕。被害にあった歓楽街から多額の損害賠償が提示されたって話だよ」
とにかく俺とシュメルさんの馴れ初めはこんなもので、やましい部分は何も無い。知りたい情報は得られたのだろう。
公になっている情報と示し合わせて話し出す皆に溜め息を吐き、果実水を呷る。
でも、あんまり大きな声で話さないでほしい。エルノールさんは大人組と歓談中でこちらの会話は耳に入っていないと思うが、俺がドラミル家に関連していることを知られたら面倒だ。
……シュメルさんがバラしてたら意味が無い? それはまあ、うん。
「どうしたの坊や? そんなに暗い顔して」
「おわぁ!」
未だ綱渡り状態な自分の立場に息を潜めていると、背後から柔らかい感触がッ。
「なんですかシュメルさん、いきなり抱き着いてきて!」
「せっかくお祝い事の席で、それも功労者である坊やが落ち込んでるように見えたから。少しでも元気づけてあげようかと思ったの」
「そりゃあどうも……ってか、前から思ってたんですけど会う度にどんどんスキンシップ激しくなってませんか!? もうちょっと落ち着きましょうよ!」
「あら、坊やが私の火照りを鎮めてくれるの? 嬉しいわ」
「ちくしょう、何を言ってもエロ方面に持っていきやがる……!」
空いた手で胴に腕を回すシュメルさんを引き剥がそうとするが、ビクともしない。おかしいなぁ、そんな腕力があるようには見えないんだけどなぁ!
そんな攻防を繰り広げていたら、何やら皆が疑わしい目で俺を見ていた。ち、違うんだ。この人はコレが平常運転だから仕方ないんだ!
「ふふっ、ごめんなさいね。なんだか楽しそうな話をしていたみたいだし、良ければ私も混ぜてくれないかしら。……私の方からも坊やとの思い出をもっと語れるけど、どう?」
「へ?」
「確かに。クロトの主観からしか語られてないし、ここらで第三者目線の声を聞くのは大事かもしれねぇ」
「未だに不明瞭な部分はありますからね。万能石鹸の事に、直近で言えばメイド喫茶で用いたメイド服の作成秘話など」
「ちょっと!?」
「さっきの話も結構スカッとして気分が良いし面白かったが、まだ引き出しがあるなら聞いておきたいねぇ」
「正直、クロト君の弱みを握れそうでワクワクしてる。ここで聞いた話をダシにして生徒会の雑用を押し付けられるかも」
「ロクでもないこと考えてんじゃあないよノエル!?」
面白がったり、興味津々だったり、あくどいことを考えていたり。
様々な考えが集う中、シュメルさんは耳元で鈴を転がすような笑みをこぼし、容赦なく事件後の話を語り出す。
イタズラ好きの彼女のことだ、誇張した表現を用いて勘違いさせる可能性が大いにあり得る。なんとか手を打たなくてはならない。
結局シュメルさんは離れようとしないし……仕方ないからこのままで、話す内容にいつでも修正ができるように気を張って挑むぞ!
「──やはりあれぐらい押していかないと気づいてもらえませんよね」
「ん? どうしたのシルフィ? 手が止まってるけど。その料理、食べないなら私が貰っちゃうわよ」
「いえ、少し彼女を見習う必要があるな、と思っただけです。……狙うべきチャンスはこの後、か……ちなみに、その料理は香辛料をかけているのでかなり辛いですよ」
「かッッッ。先に、言いなさいよ……っ!」
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