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【五ノ章】納涼祭

第七十話 致命的な欠陥《取材編》

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 子ども達の授業補佐をした日から二日が経過した。
 学園内は納涼祭に向けた準備活動で、生徒のみならず教員までもが浮足立っている。まだ開催まで期間があるというのに、どれだけ楽しみにしているのだろう。
 その空気に当てられた七組も、提供する料理や女装メイクの練習などで騒いでいる。
 去年は満足の行く結果とならず、皆にとっても今年が初めて納涼祭らしい取り組みに挑めるのだ。どこかフワフワとした気持ちになりつつも、真剣さが滲み出ている。

 俺も裁縫が得意な面子と共にメイド服の量産に入り、七組全員分の服を仕上げた。
 もっと時間が掛かると思っていたのだが、意外にも男子女子の両方で裁縫の心得を持つ人が多かった。というのもそういった人達は武具の破損、特に鉄鎧などの防具と比べても、決して劣らない防御力を誇る学園制服の修繕を自力でおこなっている。
 中には制服に魔法陣を組み込んで強度を高めている人もいるので、損傷を放置しておくと発動しなくて危険なのだ。故に迷宮ダンジャンで裂けた、破けた、切れた部分を休憩中に直したりもする。
 初等部から続けていれば経験も蓄積されており、別々の人が作りあげたにもかかわらずメイド服にムラは無く、完成度はかなり高い。
 そして良かれと思い、シルフィ先生の分も作ったのだが顔を真っ赤にして着用を拒否された。絶対に似合うのに。

 逆に裁縫が出来ない人達は調理の方に回した。
 基本的なショートケーキ、フルーツロール、クッキー、スコーンなど。シンプルかつ盛り付けや仕込み次第でいくらでも化ける物だ。
 料理上手なカグヤをリーダーに各レシピを渡し、調達した練習用の材料で数をこなしてもらう。こちらも迷宮内で美味しい食事にありつこうと、試行錯誤を重ねていた猛者が何人かいるので。
 迷宮グルメと程度は違えど、きっと短時間で慣れるだろう──などとタカを括っていました。

 興味がある、と目を輝かせたセリスが調理メンバーの一員になってしまったのが事の発端だ。
 分かっていたはずなんだ、《ディスカード》でもセリスに料理を作らせるのは自殺行為だと、子ども達が散々言っていたのに。
 気づいて様子を見に行った時には既に手遅れだった。
 調理場へ足を踏み入れた途端、感じたのは異臭。酸っぱさも甘さも辛みもあり、毒々しい空気が充満する室内に倒れ伏すクラスメイトの屍の山。
 そのそばには見た目は普通のお菓子、スイーツ類が転がっていて。
 部屋の中央、顔の青いカグヤに肩を掴まれ、不思議そうな表情を浮かべるセリスが視界に入る。

 思わず、あっ、と声が漏れ出た口を抑えて。首を傾げるセリスの口に、彼女が作ったであろうケーキを放り込んだ。
 恐らく味見などしなかったのだろう。七色に変わる顔色など初めて見たが、気絶した彼女を遅れてやって来たエリックに任せて、部屋の換気と並行して全員の治療を施した。
 そして目を覚ました調理メンバーの前で正座させたセリスに、今後迂闊うかつに調理場に入らないよう強めに説教した。
 納涼祭前に七組の大半が再起不能となる恐れがあった今回の事件。
 これにより“セリスのメシはヤバい”という共通認識が、七組全員に植え付けられたのだ。

 ちなみに、こんな事があっても変わらずナラタのストーキング……失敬、密着取材は続いている。
 所属してる組や報道クラブの方でも出し物をするのに七組や俺達にべったり過ぎないか? 一応、取材をまとめて構内新聞を更新したり、組の出し物の練習もしていたり。きっちりと仕事はこなしているようだが。
 ……そういえば、以前の敵意丸出しで軽蔑するような視線や態度が鳴りを潜め、なんだか遠慮がちになった気がする。
 子ども達の授業を手伝った日からだ。何か心の変化が起きているのだろうか?
 おどしの材料である写真を握られてる以上、変に指摘する訳にも行かず。
 今日もまた、アカツキ荘のメンバーと行動を共にしている。

 ◆◇◆◇◆

「おい、お前。特待生だな?」

 昼休み。大勢の生徒でざわめく食堂のテーブルで。
 いつもの四人とナラタで昼食を食べている所に、生徒を数人引き連れた男が近づいてきた。
 中肉中背に短めのボサボサとした茶髪。徹夜でもしていたのか目付きは悪く、目元にはくまが出来ている。
 左腕に掛けた報道クラブの腕章から察するにナラタの同輩だろうが、なぜ初対面で喧嘩腰なのだろう。
 後ろにいる連中はニヤケづらでこっちを見てるし、理由は分からないが非常に不愉快だ。
 誰が何とも言わずに食事の手を止めて、静かに男を睨む。
 互いにひるまず熱を孕んだ空気が蔓延していく中、一瞬だけ顔を歪ませたナラタが口を開く。

「ジャン副部長……」
「ナラタ、なんでこんな奴と仲良くメシを食ってやがるんだ? を提案したのはてめぇだろうが」
「……すみません。取材対象の前でそういうのはやめてください」

 副部長と呼ばれた男、ジャンはしおらしく猫耳を垂れさせたナラタを鼻で笑い、次いでこっちに視線を向けてきた。
 嫌な予感がしたので手早く弁当を片付けた──直後にテーブルを力強く叩かれる。衝撃で跳ねた水の入ったグラスを押さえた。

「高ランク冒険者の腰巾着でしかないゴミの分際で、よくもまあしれっと混ざっていられるな。てめぇの居場所はここじゃあないだろうが」
「俺が誰と一緒にいようが勝手だろ。少なくとも、いきなり敵意をぶつけてくるアンタに指摘される筋合いはない」
「身の程を知れって言ってんだよ。イラつくんだ……弱いくせにへらへらと笑って、実力者に取り入って自分の事のように喜んでる、てめぇみたいな奴を見てると……!」

 手が白むほど握り締めた拳が震えている。今にも殴りかかってきそうだ。
 因縁を持たれるようなマネをした記憶は無いのだが、早く用件と文句を言って立ち去ってくれないだろうか。

「知ってるんだぜ。てめぇのクラス、《クレバー》だったか? 、冒険者として致命的な欠陥を持ってるってな!」
『っ!?』
「……えっ」

 わざと周囲に聞こえるように、大声で一部の人物しか知り得ない情報をばら撒かれた。
 エリック達の息を呑む音と目を見開いたナラタと視線が合い、怒声に近いあざけりで静まった食堂に、どよめきが走る。
 ジャンの言う通り、俺のクラスは攻撃スキルを習得できない。できたとしても《アクセラレート》や《コンセントレート》などの、補助スキル程度が関の山。
 子ども達のデバイス調整でギルドを訪れた際、改めて詳細を調べてもらって判明した事実だ。

 最初の頃は《飛躍上達クイック・グロウ》の効果で、どんなスキルであろうと習得できると思っていた。
 ところがこれまで幾度いくたびも死線をくぐり抜けてきて、凄まじい経験を得ているのに攻撃スキルが一つも発現しない。さすがにおかしいと考えたシルフィ先生の訴えで調べた結果、《クレバー》には攻撃スキルに繋がる線が見えないらしいのだ。
 長年クラス鑑定を行っているギルド職員ですら見覚えの無いクラス。不明な部分があるのは当然かもしれない。
 個人的にはスキルの組み合わせで十分に戦えている為、あまり気にしていないが。
 アカツキ荘のメンバーも“まあ、クロトだし”と納得している。

 しかし、この世界はスキルが重要視される。冒険者として活動していく以上、攻撃スキルの有無で生存確率は大きく変動するのだ。
 一般的な認識を持つナラタが哀れむように見つめてくるのも分かる。
 ほとんどが支援クラスで構成された俺は、本来であれば迷宮ダンジャンに潜らず後方支援に徹するべき存在。
 ましてや数々の問題行動……主に教師の私物破損、学園施設の破壊など。理由があって仕方なく背負った汚名──現在は払拭済みだが、それでも根強い悪評は付いて回っている。
 そんな奴が学園内で有名な実力者とパーティを組んでいれば、良からぬ噂を立てるやからが湧いて出るのは避けられない。

 そもそも個人の能力をわざわざ公開する必要は無いのに、人が密集している場所で言いふらす。
 非常識な行為で得をする者など、悪戯に人をおとしめて楽しむ性根の腐った連中しかいない。眼前で腕組みしてふんぞり返っている男達はその筆頭だろう。
 だが、気になるな。どうやってその情報を仕入れたんだ?
 クラスの詳細を知ってるのはアカツキ荘の面子とギルド職員くらいだ。個人情報の漏洩に厳しい職員が口に出すとは思えないし……うーん、誰かなぁ。
 心当たりを探ろうと思考を巡らせる最中も、ジャンと取り巻きの侮蔑ぶべつは止まらない。

「ロクに戦えねぇからって、街の簡単な依頼しか受けられないクズなんだろ?」

 新聞とか荷物配達の依頼は地味で誰も受けたがらないから余ってるし、同時にこなせば迷宮にこもるより稼ぎが良いのだが。

「錬金術、鍛冶にも手を出しておいて何の成果も挙げられないんだってな」

 そりゃあ商売よりも入学金返済を優先してるし、身内にしか爆薬やポーションも武器も提供してないから人目ひとめには付かない。

「実力もねぇのにユニークモンスターに殺されかけて、泣きながらギルドに帰ってきたんだろ? 情けない姿を見って冒険者が言ってたぜ」

 キオとヨムルを救出し、エリックに血まみれのままギルドに運ばれて治療した際に。あまりにも深手だったせいで、血液魔法の治療に凄まじい激痛が伴ってしまったのだ。
 少なくとも胴体を袈裟懸けに切り裂かれ、四肢の筋肉は強引な魔力操作の負荷に耐えられず断裂し、骨もいくつかヒビが入っていた。
 むしろ涙目で済むような怪我ではなかったのだ。泣きたいのを我慢してただけ。
 というか、あの場に居た冒険者の誰かがコイツらにチクりやがったのか。《クレバー》の詳細も同じような経緯で耳にしたのだろう。

「適性属性は燃費が悪いわ癖が強いわ使いづれぇわの特殊魔法……クソみてぇなクラスに魔法も恵まれねぇ。お前、冒険者に向いてねぇんだよ」
「あのさ、余計な御託はいいから。言いたいこと言ってどっか行けよ」

 さっきから神経を逆撫でするような発言ばかりでイラつくんだ。
 対面に座る姉弟きょうだいを見ろよ。俯いた眼光がギラギラしてるし、握ったフォークを今にも投擲しそうな空気をかもし出してるだろ。命の危機を感じないのか。
 俺は隣のカグヤから滲み出てる殺気に冷や汗が止まらないんだぞ!
 仲間の威圧に怯えてる様子を委縮してると思ったのか、ジャンはいやらしく笑う。

「報道クラブはナラタの案で特待生特集ってのを納涼祭で発表すんだよ。てめぇの情報を包み隠さず暴いて学園中に貼り出し、真実を知ってもらう」
「学園長のお気に入りだかなんだか知らないが、てめぇの存在価値なんざ毛ほどもありはしねぇんだよ!」
「初等部のガキと遊んでたって話も聞くしなぁ。ままごとでもやってたのか、ええ?」
「…………ああ、そうか。お前ら、俺の嫌いな人種か」

 言葉の節々に抱いた既視感。過去に経験したマスコミと同じだ。
 取材相手は金の種。上辺しか見ない民衆にウケるだけのゴシップを広める、切除できない社会の悪性腫瘍。
 無遠慮に問い詰めて聞き出した情報は誇張され、有りもしない虚実が真実になる。
 際限なく積もった悪評をくつがえそうとすれば、惨めだ無様だと石を投げられ、痛めつけても構わないサンドバッグだと認知されてしまう。
 い覚悟を秘めたナラタとは違う、対象を食い物としか考えてないゲスだ。

「おい、そんな口を聞いていいのか? 俺らが手を下せば、てめぇの評価は最底辺まで落ちるんだぜ」
「好きにしろ。他人をおとしめる事でしか自尊心を満たせない馬鹿に付き合ってられないんだ。お前らのせいで食堂の雰囲気も悪くなったし……俺に時間を使うくらいなら、もっと別の物に集中しなよ」

 包み直した弁当を片手に立ち上がり、横目で忠告する。
 ピリッ、と空気が裂けた。鼻息荒く、背後から伸ばされた手を取り──体勢を一瞬で切り替える。
 あくまで自然に、相手の力を利用する形で。
 体の関節を駆動させ、全てをフル活用し最小限の動きで放り投げた。
 暁流練武術無級──“綺羅星”。
 空を舞うジャンと目線が合い、口を開く間も持たせず背中から叩きつけた。

「げはっ!」
『ジャン!?』

 苦しげに空気を求めて喘ぐ彼に取り巻きが集まる。受け身を取れなかったんだ、ダメージは残るぞ。
 大勢のどよめきとは別の喜色満面な短い叫びに目を向ければ、姉弟が揃ってガッツポーズをしていた。
 俺が手を出さなかったら、代わりに二人が何かをやるつもりだったな。後ろ手で背中にフォークを隠したのが見えたぞ。

「ふぅ……こうなってしまえば長居は無用ですね。ナラタ、呆けてないで行きますよ」
「う、うん……」

 弁当では物足りなくて、食堂のメニューを頼んでいた姉弟が返却口に向かう背中を見やり、次いでナラタを気遣って席を立ったカグヤ達が食堂を出る。
 ……あの声音、内心かなり怒ってたんだな。
 何気にカグヤを怒らせるのが一番マズいんだよ。意外かもしれないけど、彼女はアカツキ荘の中でもユキと並ぶパワータイプだから。

「こ、のっ……クソ野郎がぁ……!」

 目尻を吊り上げて、恨めしげにジャンが睨んでくる。

「お前がそう思うのならそうなんだろうな、お前の中では。……視野を広げろ、本質を見ろ。情報を発信する側が正しさを捏造ねつぞうするな、痛い目を見るぞ」
「ッ……!」

 身を持って体験したはずなのに何も分かっていないらしい。
 火が出そうなほど顔を真っ赤にした彼は懐からナイフを取り出し、向かって来ようとして。

「こんの、バカどもぉ! 食堂で何をしとるかぁ!!」

 腹の底に響く大声の発生源から超高速で飛来する鍋のフタが、ジャンの後頭部を強打。
 快音を撒き散らして崩れ落ちる彼の背後には、腕を振り抜いた綺麗なフォームでたたずむ学食のおばちゃんがいた。
 どういう原理でそうなるのかは分からないが、跳ね返って手元に戻ったフタを片手に。
 割烹着が似合う、体格の良いおばちゃんは力強く歩み寄ってきて、ジャンの襟首を掴む。

「さっきから黙って聞いてりゃあ、好き勝手言いやがって。食堂はわいわい騒いで食っても構わんがねぇ、喧嘩沙汰で、しかも刃物を持ち出すとはどういう了見だいッ!」
「そ、それはコイツが……」
「やかましい、クロトは何も悪くないだろう! 時間が合えば食堂の手伝いに買い出しもしてくれるこの子を、アンタ達はクズだゴミだとののしった! もう我慢ならないよ、ちょいと説教してやる!」

 ジャンは掴まれたまま引きずられていき、逃げようとした取り巻きは厨房から飛び出してきたおばちゃんズに確保された。
 凄まじい勢いに抵抗は無意味で。学食の守護者の怒りに触れたジャン達は、叫び声を上げながら運ばれていく。
 その横を通って姉弟が戻ってきた。ニヤニヤと笑みを浮かべてる辺り、おばちゃんズが動いたのは二人の仕業なのだろう。

「ぷっ、くくっ……傑作だぜ……っ!」
「ふ、ふふっ。ヤバい、お腹痛い……!」
「あのさぁ……まあ、意図せず仕返しも済んだ訳だし。カグヤ達と合流しようか」

 爆笑寸前の二人を連れて、俺は食堂を後にした。

 ◆◇◆◇◆

「……ごめんなさい」

 喧騒の静まらない食堂から離れた廊下で。
 居心地が悪そうに肩を縮こませたナラタが、唐突に頭を下げた。同じ報道クラブの一員として思うところがあるのだろう。
 気に病んでいるわけではないし、いつもの調子に戻ってもらわないとやりづらいのだが。
 ずっとうつむいたままの彼女を前に、首筋を撫でながら。

「いいんだよ。あの非常識な奴らとナラタは違うんだから、謝る必要なんてない」
「慰めにもならんと思うが、俺達はクロトの事情を承知の上でつるんでる。下手な上下関係だとかは一切無いぞ」
「むしろアタシは色々と教えてもらってる側だしねぇ おかげで何度も助けられてるし」
「彼らの軽薄な思想と貴女の気高い信念はまったく違う。女子寮で過ごしていた時から、ナラタの正しい真実を求める姿は好ましいと思います」
「だけど……私がアイツらに、特待生の特集なんて提案しなければ、あんな……!」

 猫耳と尻尾は垂れ、両手はしわが出来るほど制服を強く握っている。
 ジャンであれば、アイツなら一切悪びれることなく手に入れた薄っぺらい情報を発信するだろう。
 見極めて、調べつくして、見る人を真に納得させようとつとめるナラタとは格が違う。これまでの付き合いで俺に対する心証は大きく変わっているはずだ。
 それがどんな結論に導くのか……少なくとも、真剣に思い悩める彼女を信じてよかった、と。
 本当に、心からそう思う。

「外野の無責任な声ほど耳障りなものはないよ。ああいう手合いは深く知らない癖に言いたいだけ言って、興味が薄れたらトカゲの尻尾を切るみたいに捨てて、別の何かに移ろっていく。正直、気にするだけ損をする傍迷惑な連中さ」
「……そうね。副部長の捻じ曲がった考えに負けない記事を、私が書けばいい」

 伏せていた顔を上げて、向けてくるその瞳は奥に確かな熱を持っていた。

「あんな連中に虚実を広めさせたりはしない……当初の目的と私の芯は変わらない」
「立ち直ったようで何より。それじゃ──喫茶店メニューの試作品づくりに行こうか」
「「「うっ……」」」

 気を取り直して歩き出した足を止めて、苦い表情でセリスを見つめる。

「ちょっと、四人してなんでこっち見てうめいたんだい。そりゃあん時はとんでもない劇物を作っちまったが、今度はそんなヘマしないよ!」
「セリスには悪いけど調理場に入った瞬間、簀巻すまきにするから」
「なんでだよぉー!」
「いや、生死の境を彷徨さまよわせる毒物を作るヤツ、手放しにはできねぇだろ……」

 エリックの言葉を最後に、取っ組み合いになった姉弟を引き連れて。
 俺達は改めて、納涼祭の準備を始めたのだった。
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